ADHDには治療薬があります。しかし、子どもに対して医師から薬の使用をすすめられると

できれば薬に頼りたくない



副作用が怖い
と不安に思うママ・パパも多いのではないでしょうか。
この記事では、ADHDの治療薬について薬の種類や効果、副作用、何歳から使えるかなどを現役薬剤師が解説します。
ADHDとは
ADHDとは注意欠如・多動性障害の略で、「不注意」「多動性」「衝動性」の3つの特性がみられる発達障害の一つです。それぞれの特性によって、以下のような行動がみられることがあります。
- 不注意:活動に集中できない、物をなくしやすい など
- 多動性:じっとしていられない、手足をそわそわ動かす など
- 衝動性:急に走り出す、突然立ち歩く など
これらの行動は、決して親のしつけや本人の怠けの問題でなく、生まれつきの脳の仕組みによるものです。
子どものADHDの治療
ADHDの治療法として、主に薬物療法と心理社会的治療があります。
子どものADHDの治療としては、まず心理社会的治療が優先的に行われます。心理社会的治療を行っても十分な効果が得られない場合に、医師の判断で薬物療法が開始されることがあります。
心理社会的治療
心理社会的治療とは、子どもの持っている力を発揮しやすい環境を作る治療です。
具体的な治療として以下が挙げられます。
・環境調整
本人の特性や困りごとに合わせて、生活しやすいように周囲の環境を工夫します。
・行動療法
できたことを褒めたり、ご褒美を活用したりしながら、社会生活を送りやすくするための望ましい行動を定着させていく方法です。
・ソーシャルスキルトレーニング
社会とうまく関わっていくために必要なスキルを学ぶ取り組みです。スキルとは、社会のルールやマナー、人とのやりとりや感情コントロールの仕方を身に着けていきます。
・ペアレントトレーニング
保護者が子どもの適切な行動を増やし、不適切な行動を減らすための関わり方を学びます。
▼ペアレントトレーニングについて詳しくはこちらの記事で解説しています。


これらは家庭だけでなく学校などの先生と連携することで、より効果的になることも知られています。
薬物療法
ADHDは脳内の神経伝達物質の「ドパミン」と「ノルアドレナリン」のバランスが乱れていることが原因のひとつとされています。これらは集中力、感情のコントロール、衝動性の抑制に深く関わっています。
ADHDの薬は、これらの神経伝達物質の働きを調整することで、症状の改善に繋げます。



「性格を変える薬」や「おとなしくさせる薬」ではなく、脳内のバランスを整えることで「子どもが本来持っている力を発揮しやすくする薬」というイメージです。
通常、薬は少量からはじめます。薬の効果と副作用は人によって違うので、体の反応を確認しながら薬を調整していきます。
ADHDの薬は何歳から使える?いつまで飲む?
ADHDの薬は6歳から使えます。
薬物療法を開始したからといって、一生薬を飲み続けなくてはいけないわけではありません。ライフステージの変化や環境調整が進むことで症状が改善され、不要になることもあります。



薬を続けるのが不安なときは、迷わず医師やその他の医療者に相談してくださいね。
ADHDの薬物療法で期待できる効果
ADHDの薬を飲むと、「不注意」「多動性」「衝動性」を和らげて集中力を高めたり、気持ちを落ち着かせたりする効果が期待できます。
具体的な効果の例としては以下が挙げられます。
- 授業中の集中力が上がり、勉強についていきやすくなる
- 突然立ち歩く、友達にちょっかいをかけるなどの衝動的な行動が減る
- 忘れ物や失くし物が減り、日常生活がスムーズになる
- 怒りっぽさが減り、対人関係のトラブルが減る



薬を使うことで、学校や家庭でうまくいかない場面が少なくなります。そして、成功体験が積み重なることによって、子どもの自己肯定感の向上につながる可能性があります。
ADHDの薬の種類と特徴
ADHDの薬は中枢刺激薬と非中枢性刺激薬に分けられます。
中枢刺激薬
中枢性刺激薬とは、脳の中枢神経系を直接刺激して効果を発揮する薬です。飲んだら効果がすぐにあらわれるので、日中に効果を期待したいときに使います。朝に飲むと、放課後の時間帯まで効果が続きます。
中枢刺激薬には、コンサータとビバンセがあります。
それぞれの特徴は以下の通りです。
| 先発名 | コンサータ | ビバンセ |
| 一般名 | メチルフェニデート塩酸塩 | リスデキサンフェタミンメシル酸塩 |
| 年齢 | 6歳以上 | 6歳以上18歳未満 |
| 効果発現時期 | すぐ | すぐ |
| 持続時間 | 約12時間 | 10~13時間 |
| 登録医の処方 | 必要 | 必要 |
これらの薬剤は乱用や不正な横流しを防ぐために、流通管理体制が厳格です。ADHDの診断や治療に精通している登録医しか処方できず、登録調剤責任者がいる登録薬局でないと調剤できません。



どの薬局で薬をもらえるかわからない場合は、病院で聞いてみるか、かかりつけの薬局に事前に相談してみてください。
非中枢性刺激薬
脳の中枢神経系を直接刺激せず、脳内の伝達物質のバランスを整える薬です。効果があらわれるのがゆっくりで、安定するまでに数週間の服用継続が必要です。安定すれば、1日を通して効果を発揮します。
非中枢刺激薬には、ストラテラとインチュニブがあります。
それぞれの薬剤の特徴を表にまとめました。
| 先発名 | ストラテラ | インチュニブ |
| 一般名 | アトモキセチン塩酸塩 | グアンファシン塩酸塩 |
| 年齢 | 6歳以上 | 6歳以上 |
| 効果発現時期 | 1~2週間 | 1~2週間 |
| 持続時間 | 24時間 | 24時間 |
| 登録医の処方 | 不要 | 不要 |
なお、ストラテラカプセル・内用液は製造工程で有害物質が混ざるリスクが判明し、2024年9月に製造中止になりました。現在、同じ成分ではジェネリック医薬品のアトモキセチン錠とカプセルが使用できます。



2026年7月現在、新しい作用機序の非中枢性刺激薬、センタナファジンが開発中です。米国では申請済みで、優先審査中。日本ではまだ申請されていないので、使えるようになるまではまだ時間がかかりそうです。
ADHDの薬の副作用
ADHDの薬による副作用は、新たに薬の服用をはじめたときや量を増やしたときに起こりやすいです。
頭痛や腹痛、眠気など一部の副作用は、薬を少ない量からゆっくり増やして服用を続けていくことで体が慣れて、症状が出にくくなることもあります。
代表的な副作用と対策を以下にまとめました。
| 代表的な副作用 | 起こりやすい副作用と対策 | |
| コンサータ | 食欲低下、吐き気、不眠、口の渇き、頭痛、腹痛など | ・食欲低下が起こりやすく、体重が減りやすくなるため、定期的な体重チェックが必要。薬の影響が少ない朝に食事をしっかりとったり、夜に捕食をとるなどして体重が減らないようにする ・夕方以降に服用すると、脳が活性化し不眠になりやすいため、朝に服用する |
| ビバンセ | 食欲低下、体重減少、不眠、頭痛など | |
| ストラテラ | 吐き気、食欲低下、眠気、腹痛、頭痛、動悸など | ・服用しはじめは吐き気などの胃腸症状が出やすい。継続して服用すると出にくくなることも多い |
| インチュニブ | 眠気、倦怠感、低血圧、徐脈(脈が減る)、頭痛など | ・朝に服用して日中眠くなる場合は、夕方以降の服用を検討する |



非常にまれですが、失神した、強いめまいやふらつき、意識がぼーっとするなどの激しい症状が出た場合は、速やかに医療機関を受診してください。
もしかして副作用かな?と思った場合は、いつ頃から、どんな症状が起こったのか記録しておきましょう。副作用が出たからといって薬を自己中断すると、体調が悪化することがあります。勝手に服用をやめず、必ず医師や看護師、薬剤師に相談してください。
医師の指示のもと薬の量を調整したり、飲むタイミングを変えたり、他の薬に変えたりして対応します。
依存性はないのか?
ADHDの薬を始めるにあたり、依存性を心配するママ・パパもいるかもしれません。
中枢刺激薬は依存性が懸念されることがあります。しかし、医師の処方通りに服用していれば依存性のリスクは低いとされています。
非中枢刺激薬は依存性はほとんどありません。
薬はその子らしさを支える選択肢。悩んだら相談を
ADHDの薬を飲むことに不安を感じる保護者の方も多いかもしれません。しかし、薬はその子らしさを支える選択肢の一つです。薬を飲むことによって、生活の中でうまくいかない場面が減り、子どもが生活しやすくなる可能性があります。その結果、成功体験が積み重なり、自己肯定感を高めることも。
薬の効果と副作用は人によって違います。様子をみながら薬の量を調整したり、種類を変更したりすることで解決するケースも多いです。



お薬への不安や疑問はどんな小さなことでも遠慮なく医師や薬剤師などに相談してくださいね。薬剤師も安心して治療に向き合えるようお手伝いします。
【参考】
注意欠如・多動症-ADHD-の診断・治療ガイドライン 第5版 2022年
出版社:じほう
















コメント