近年、てんかん重積の治療薬として、ブコラム口腔用液やスピジア点鼻液が新しく発売されました。
てんかん発作が止まりにくい子どもを育てる方の中には
どうやって使う薬なの?



学校や放課後等デイサービスで使ってもらえる?
など気になっている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、新しい治療薬と従来の薬の違いや使用上の注意点、学校や事業所での使用などについて現役薬剤師が解説します。
てんかんとは
てんかんとは、大脳の神経が一時的に過剰に興奮することで繰り返し発作を起こす慢性の病気です。
基本的に、てんかん発作は単発で短時間でおさまることが多いですが、発作が長く続いたり、短い間隔で繰り返し起こったりする場合もあります。
発作の症状は大脳の興奮が起こる場所によってさまざまで、患者ごとに一定の発作を繰り返し起こすことが多いです。
てんかん発作はどうして止めないといけないの?
てんかん発作の多くは数分以内におさまりますが、発作が長く続くと「てんかん重積状態」になることがあります。
「てんかん重積状態」とは、発作が長時間持続する、もしくは短い発作を繰り返して、その間の意識が十分に回復しない状態です。発作が長時間に及ぶと後遺症が残ったり、呼吸困難を招いたりすることもあります。
てんかん発作は5分以上持続すると自然に止まりにくくなるため、速やかに発作を止めることが大切です。
てんかん重積の新しい薬が登場
近年、在宅で使用できるてんかん重積の新しい薬として、ブコラム口腔用液(以下ブコラム)とスピジア点鼻液(以下スピジア)が登場しました。
てんかん発作を止める薬として、以前はダイアップ坐薬などが使われていました。しかし、坐薬は効果が出るまでに15分から30分、薬によってはそれ以上かかります。ブコラムとスピジアは多くの場合5分以内に効果が出るといわれているため、今起きている発作を速やかに止め、てんかん重積をしずめることが期待できます。
これまで病院外の選択肢がほぼ坐剤に限られていた中で、ブコラムやスピジアが加わったことは大きな変化です。とくにてんかん重積を起こしやすい子どもにとって、家庭で迅速に対応できる手段が広がったのは、心強い選択肢が増えたといえます。



なお、これらの薬はてんかんのあるすべての人に処方されるわけではありません。発作の種類や持続時間、これまでの経過などをもとに、医師が必要性を判断して処方します。
従来の薬との違い
てんかん発作が起こった際の頓服薬として、従来から使われている薬として「ダイアップ坐剤」があります。以下に、ダイアップ坐剤と新しい薬の比較をまとめました。
| 投与目的 | 投与経路 | 効果発現までの時間 | その他のメリット | |
| ダイアップ坐剤 | 発作を止める、発作予防 | 肛門から | 時間がかかる(15-30分) | |
| ブコラム口腔用液 | 発作を止める | 頬と歯茎の間から | すぐに効く | 外出時に服を脱がせなくてもよい |
| スピジア点鼻液 | 鼻から |



筆者の娘はもともと発作のときはダイアップ坐剤を使用していましたが、年齢を重ねるにつれて発作がとまりにくくなりました。そこでブコラムが処方され、発作がすぐとまるようになりました。ブコラムを持ち歩くようになり、外出のときの安心感が変わりました!
ブコラム口腔用液の使い方と特徴
ブコラムは2020年12月に発売された薬です。注射薬のような容器に薬剤が入っており、頬と歯茎の間(頬粘膜)に投与します。
▼詳しい投与方法についてはこちらで確認できます
ブコラムを使用されるお子さんの介護者の方へ|クリニジェン株式会社
ブコラムの特徴は以下の3点です。
- 18歳未満の方に使用できます。
- 発作時に1回のみ投与できます。投与後に発作が再発しても追加投与はできません。
- 常温保存可能です。ただし、ふた部分を上にして立てて保管する必要があります。
なお、ブコラム使用後は原則救急搬送が必要です。投与後の対応についても事前に医師と話し合っておきましょう。
スピジア点鼻液の使い方と特徴
スピジア点鼻液は2025年12月に発売された薬です。一般的な点鼻薬と同様に、ノズルを鼻に入れてボタンを押して投与します。
▼詳しい投与方法についてはこちらで確認できます
スピジアを使用される患者さんと介護者の方へ|ヴィアトリス製薬合同会社
スピジアの特徴は以下の2点です。
- 発作が再発したとき4時間あければ追加投与が可能です。3回目は投与できません。
- 小児(2歳以上)だけでなく成人も使用できます。
使用上の注意点
ブコラム、スピジアの使用時の注意点は以下の3点です。
- 医師の指示のもと、投与のタイミングは厳守する
- 発作の予防目的には使用できない
- 使用後は副作用がないか確認が必要
とくに重要なのが副作用の確認です。ブコラム、スピジアともに最も注意が必要な副作用として呼吸抑制があります。呼吸抑制とは、呼吸が弱くなったり、ゆっくりになったりして、うまく息ができなくなる状態のことで、具体的には以下の症状がみられます。
- 呼吸が浅くなる
- 呼吸回数が減る
- 脈拍が減る
- 唇が青くなる など
投与後は発作の経過とともに、副作用の有無も確認することが大切です。
学校や放課後等デイサービスでの使用はできる?



ブコラムやスピジアを使いたいけど、学校や放課後等デイサービスでも使ってもらえるのかな…
いざ使用したいと思っても、このような不安もあるのではないでしょうか。
結論からいうと、ブコラムは条件を整えれば学校や放課後等デイサービスでも使用することは可能です。
教員や支援員などの非医療職の方がブコラムを投与することは、国の通知に「医師法違反には当たらない」と明記されています。
ただし学校や事業所で投与する条件として、次の項目が示されています。
- 学校等での薬剤使用の必要性と留意事項を、医師が書面で指示していること
- 保護者が学校・事業所に投与を依頼していること
- 教職員が医師の指示内容を確認、遵守し使用すること
- 投与後は必ず医療機関を受診すること
【参照】
学校等におけるてんかん発作時のミダゾラム(ブコラムⓇ)口腔用液の投与について
https://www.childneuro.jp/uploads/files/information/buccolam20220719.pdf
これらの条件がそろっていれば制度上は投与可能ですが、実際に使用できるかは学校や事業所ごとに異なります。事前に問い合わせてみるとよいでしょう。



筆者の娘がブコラムを使い始めた際も、事業所での調整が必要でした。具体的には、主治医の指示書と保護者の依頼書を用意し、娘のてんかん発作の様子やブコラムの使用方法をお伝えしました。事業所側も連携医療機関の先生と相談して職員研修を行ってくださり、無事に使えるようになりました。



息子は、家では最初にダイアップを使用し、それでも発作が治まらなかった場合にブコラムを使用しています。学校では「一人の生徒につき、ブコラムかダイアップ、どちらかの使用のみ」というルールなので、ダイアップを持参しています。学校によってルールが異なる可能性もあるので、養護教諭に確認してみるとよいでしょう。
2026年4月、スピジアも学校や放課後等デイサービスでの利用が可能となりました。
ただし、こちらも実際の使用については学校や事業所の体制により異なりますので、事前に確認・相談が必要です。
【参照】
「学校等におけるてんかん発作時のジアゼパム点鼻液(スピジア ®)の投与について」事務連絡が出されました|公益社団法人 日本てんかん協会
また、学校や放課後等デイサービスと発作時の対応を共有する際には、以下のような教育・保育現場の方向けのサイトも参考になるかもしれません。
スピジアを使用される教職員または保育士など教育・保育現場の方へ |スピジア.jp
ブコラムを使用される教職員または保育士など教育・保育現場の方へ |ブコラム.jp
薬を知り環境を整えて、てんかん重積に備えよう
てんかん重積を防ぐためには、発作が始まったときに早めに対処することが大切です。
近年、ブコラムとスピジアが登場したことで、病院以外でも迅速に発作を止められるチャンスが広がりました。
国からの通知により、学校や放課後等デイサービスでも投与の協力が得られやすい状況になりつつあります。薬の使用に関しては、まず学校や事業所に相談してみてください。
【参考】
てんかん診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/tenkan_2018.html
小児てんかん重積状態、けいれん重積状態2023
https://www.childneuro.jp/uploads/files/about/SE2023GL/01SE_all.pdf
ブコラム.jp
https://www.buccolam.jp/patients
スピジア点鼻液 使用ガイド














コメント
コメント一覧 (2件)
当方、ブコラムを使用している親です。
知り合いの薬剤師・医師に確認を取りながら使用しています。
気になった記載があるため、以下にコメントします。
①
>ブコラムとスピジアは5分以内に効果が出るため、
と書かれておられますが、誤解を招く表現と思います。
治験の結果が以下のページに書かれていますが、
https://clinigen.co.jp/medical/.assets/BUC250803_%E3%83%96%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0%E7%B7%8F%E5%90%88%E8%A3%BD%E5%93%81%E6%83%85%E5%A0%B1%E6%A6%82%E8%A6%81_03.pdf
のP.13に、5分以下の消失が64%と書かれています。
「5分以内に効果が出るため」
⇒「一般的に5分以内に効果が出ると言われているため」などの表現が良いのではと思います。
②
>薬の使用後、以下の症状がみられた場合は、すぐに医療機関の受診が必要です。
と書かれていますが、
「ブコラム投与後は、原則救急搬送の手配が必要です」
https://www.buccolam.jp/patients/how_to/carry.html
一方では、
>学校や放課後等デイサービスでの使用はできる?
の項目には、投与後は必ず医療機関を受診することと記載されており、
対応方法をそろえて記載されたほうが良いのではないでしょうか?
③ 学校等におけるてんかん発作時のジアゼパム点鼻液 (スピジア)の投与について、こども家庭庁及び文部科学省から添付に示す通知がでています。
https://www.wam.go.jp/wamappl/26KYOTO/26bb01kj.nsf/bb01d8a8451715f5492567d00007331a/456879B79D196D3849258DDC00078E1A?OpenDocument
ファミケア編集部です。コメントありがとうございます!
このたびは丁寧にご確認いただき、また具体的な資料も添えていただきありがとうございます。
内容を確認し、以下のように修正・追記いたしました。
①表現が断定的であったと感じ「5分以内に効果が出るため」→「多くの場合5分以内に効果が出るといわれているため」に訂正いたしました。
②ブコラムの使用方法の項に、原則救急搬送が必要である旨を追記いたしました。
③のスピジアに関する通知について、記事に追記いたしました。
貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。
より安心して読んでいただける記事になるよう、引き続き務めてまいります。
今後ともファミケアをよろしくお願いいたします。