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自閉スペクトラム症(ASD)とは?特性や診断の流れ、実際の暮らしの様子などをご紹介します!

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幼少期から症状が認められやすい発達障害の一つ「自閉スペクトラム症」。「この特性があるから自閉スペクトラム症」とは一概に言えないものの、早期の理解と適切なサポートは子どもの成長を大きく後押しできます。

この記事では「自閉スペクトラム症の子どもってどんな特性があるの?」「診断まではどんな流れ?」などを詳しく解説。自閉スペクトラム症の娘を育てている筆者の生活の様子も、合わせてご紹介します。

この記事を監修してくれた先生

佐々木 美都樹のプロフィール画像

言語聴覚士 佐々木 美都樹(ササキミヅキ)先生 / ササミ先生

北里大学言語聴覚療法学専攻を首席卒業。言語聴覚士免許(国家資格)及びパーキンソン病治療「 LSVT®︎LOUD」ライセンス所持。マカトン法ワークショップ基礎1、PECS®︎レベル1ワークショップ修了。成人を対象とした外来リハビリテーション施設・訪問リハビリテーション施設・介護老人保健施設、小児を対象とした児童発達支援事業所に勤務。息子の超希少進行性遺伝子疾患をきっかけに、オンラインでの相談事業を立ち上げる。現在は、児童発達支援事業所で勤務する傍ら、ことばの相談室Hopalを運営している。

目次

自閉スペクトラム症(ASD)とは?

自閉スペクトラム症とは、対人関係や社会的コミュニケーション面での困難や空間・人・特定の行動に対して強いこだわりを示す特性がある発達障害です。Autism Spectrum Disorderの頭文字を取って「ASD」とも呼ばれています。

自閉スペクトラム症と混同しやすいものに「注意欠如・多動症(ADHD)」がありますが、それぞれ特性が異なる障がいです。自閉スペクトラム症は「対人関係や社会的なやりとりの特性」「こだわりの特性」、注意欠如・多動症は「不注意」「衝動性」「多動性」がみられます。

自閉スペクトラム症の原因

自閉スペクトラム症の原因は、正確にはまだ解明されていません。現在のところ「遺伝や両親の年齢、出生時低体重、多産や妊娠中の母体感染症など、さまざまな要因が複雑に関わっている」と考えられています。

「親の育児が悪かったからかもしれない」「愛情不足が関係している」と心配する方もいるかもしれませんが、自閉スペクトラム症は、親の育て方が原因ではありません。

情報の整理に必要な脳の中枢神経系のメカニズムに生まれつき特性があるため、「できる」「できない」にばらつきが出てしまうのです。

自閉スペクトラム症の発生頻度・患者数

データによってさまざまですが、日本の5歳児における自閉スペクトラム症の割合は3.22%という弘前大学の調査報告があります。

【参照】【プレスリリース】5歳における自閉スペクトラム症の有病率は推定3%以上であることを解明(医学研究科)|弘前大学
URL:https://www.hirosaki-u.ac.jp/topics/49291/

性別では男性に多く、女性の約2〜4倍の発生頻度といわれているのが特徴です。

自閉スペクトラム症の捉え方や自閉症との違い

自閉スペクトラム症は、かつて次のように分類されていました。

疾患名特徴
自閉症言葉の発達に遅れがありコミュニケーションが困難
アスペルガー症候群言葉や知的発達に遅れはないもののコミュニケーション面などで支援が望ましい
広汎性発達障害自閉症やアスペルガー症候群などの特徴がみられるもののそれらの基準を満たさず特定不能
小児期崩壊性障害言えていた言葉が言えなくなる、排便や排尿ができなくなるなど、以前できていたことがいくつもの領域でできなくなる
レット症候群体が柔らかい、四つ這いや歩行など運動の遅れ、周囲への反応が乏しい、視線が合いにくいなどの症状がみられる

しかし、2013年にアメリカの精神医学会(APA)が発表したDSM-5で「自閉スペクトラム症または自閉症スペクトラム」に統合されています。(ただし、レット症候群は除く)

【参照】DSM‒5 病名・用語翻訳ガイドライン|日本精神神経学会 精神科病名検討連絡会
URL:https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/dsm-5_guideline.pdf

自閉スペクトラム症の子どもの特性

自閉スペクトラム症の子どもには、基本的に次の2つの特性がみられます。

対人関係や社会的なやりとりの特性

自閉スペクトラム症には、「対人関係や社会的なやりとりの特性」があります。

▼例えば…

  • 友達の表情や話しぶり、視線などから相手の気持ちをくみ取りにくい
  • セリフを棒読みするように話す、妙に大人びた言葉遣いをする
  • 一方的に話し続けてしまう

この特性の本質は、「発達の遅れ」ではなく「コミュニケーションが独特」ということ。経験を重ねるごとにゆっくりと変化していくため、自分で特性をカバーしていける子どもも少なくありません。

こだわりの特性

「こだわりの特性」も、自閉スペクトラム症が持つものの一つです。

▼例えば…

  • 自分の好みの物を集める、揃えることにこだわる
  • イメージなど、目に見えないものの共有が苦手
  • 変化が苦手で、同じ行動を繰り返すのが好き

物の配置や順番、勝敗、自分のやり方への強い固執など、興味や関心に極端な偏りがみられます。こだわりの程度や種類には個人差がありますが、いずれも見通しを立てるのが難しいため、同じパターンを繰り返す行動が安心しやすいと考えられています。

感覚面の特性

上記の主な2つの特性以外に「刺激に著しく敏感、または著しく鈍感」という特性を持つ場合もあります。

▼例えば…

  • 大きな音や特定の音が苦手
  • 日光や蛍光灯など、特定のまぶしい光が苦手
  • 香水や消毒の臭いなど、特定の臭いが苦手
  • 痛みを感じにくい

感覚の偏りは、特にストレスが高まったときに強く出やすいといわれています。一見「わがまま」と受け取られがちですが、「感覚情報処理の偏り」としての対応が必要です。

突出した能力を発揮する場合も

「苦手」が表立ってしまいがちな特性ばかりではありません。知的機能や特性がアンバランスであるがゆえに突出した能力を発揮するケースが多いのも、自閉スペクトラム症の大きな特徴です。

つい困りごとばかりに目がいきがちですが「得意なこと」「没頭していること」に注目すれば、能力を最大限に発揮できる分野が見つかりやすくなります。

▼例えば…

  • 絵が非常に得意
  • 計算力や記憶力が著しく優れている
  • 絶対音感がある

自閉スペクトラム症の発覚や診断の流れ

特性が見られたとしても、必ずしも自閉スペクトラム症とは断定できません。そのうえで心配や不安がある場合は、一人で悩まずに、専門機関への相談から始めてみましょう。

まずは気軽に専門機関に相談

最初から医療機関へ受診するのに戸惑ってしまう場合は、子育て支援センターへの相談でもOKです。

その他、小児科児童精神科療育センターなどでも相談できます。ただし、発達障害を専門に診療する医療機関は数が少ないため、予約をしてから受診までに数ヶ月かかるのが一般的です。

心配や不安を持ったまま何ヶ月も過ごすのは、家族としても辛いところですよね。そのため、まずはかかりつけ医や自治体の発達相談窓口、療育機関で「日常生活でこんな困りごとがある」と、悩みや課題を気軽に相談するのがおすすめです。

診察を受ける

診察の際には、子どもの出生時から現在までの成長の様子、日常生活や困っていることなどを医師に伝えます。母子手帳やメモなどの資料を持参すると、スムーズにお話しできますよ。

その後、医師が子どもと面談したり、スタッフと遊ぶ姿などを通じて医師が「名前を呼んだ際にどんな反応をするか」「視線は合うか」「言葉はどれくらい発達しているか」などの様子を観察したりします。

発達検査を受ける

心理士による心理検査、発達検査、知能検査などを受けます。必要に応じて、脳波検査や血液検査などの医学的検査も実施されます。

診断が出たら今後の支援を相談

自閉スペクトラム症と診断が出た場合、複雑な気持ちになるご家族もいらっしゃるかもしれません。

しかし、子どもの特性を理解して長期的な見通しを立てることは、生活上の支障の軽減につながりやすくなります。そのため、子どもに適した今後の支援を、主治医や支援者に相談しましょう。

特性をゼロにしようとするのではなく、「得意を伸ばして苦手を補う」というイメージです。

自閉スペクトラム症に併存しやすい疾患・障がい・症状

自閉スペクトラム症の方のうち、約7割以上の方が1つの精神疾患を、4割以上の方が2つ以上の精神疾患をもっているといわれています。自閉スペクトラム症と同じ疾患でも、障がいや症状は種類も程度も人それぞれです。一人ひとりの適切なケアを探していっていただくための参考に、併存しやすい疾患や障がいを紹介します。

注意欠如・多動症(ADHD)

注意欠如・多動性障害は、集中力が散漫になりやすい「不注意」、じっとしていることが困難な「多動性」、やりたいと思ったことを我慢しにくい「衝動性」がみられる状態です。Attention-Deficit/Hyperactivity Disorderの頭文字を取って「ADHD」と呼ばれています。

学習障害(LD)

学習障害は、書く・読む・計算する・推論する能力を学んだり行ったりするのに支援を要する状態です。Learning Disabilitiesの頭文字を取って「LD」と呼ばれています。

知的障害

知的障害は、発達期までに生じた知的発達の遅れによって、社会での生活で支援が必要な状態です。自閉スペクトラム症の依存症で最も多いのは、知的障害だといわれています。

発達性協調運動症(DCD)

発達性協調運動症は、感覚をまとめ上げてなめらかな運動に繋げるための脳機能の一つ「協調運動」のコントロールが年齢相応にできず、食事や着替えなどの日常生活の動作、運動バランスや姿勢の保持、学習などがスムーズにできない状態です。

抑うつ状態

抑うつ状態は「気分が落ち込んで何もする気になれない」「憂鬱な気分」など、心のエネルギーが低下することで、精神面や身体面にさまざまな症状が出現することを指します。

不安症・強迫症

不安症は、不安が伴うさまざまな症状が通常の限度を超えてしまい、行動や心理的に支障をきたす疾患です。また強迫症は、非常に強い不安感や不快感(強迫観念)をもち、それを打ち消すための行為(強迫行為)を繰り返す疾患を指します。

感覚過敏・感覚鈍麻

感覚過敏は、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などの感覚が過剰に敏感な症状を指します。反対に感覚鈍麻は、光や音などをはじめとする五感や痛みなどの刺激に対して、反応が低くなる症状です。

そのほか、医学的併存疾患として「てんかん」「睡眠障害」「便秘」などを合併しやすいことも分かっています。

自閉スペクトラム症の治療

自閉スペクトラム症の根本的な治療は、現代の医学ではまだ不可能です。しかし、一人ひとりの発達ペースに合わせた療育や教育で「得意を伸ばして苦手を補うこと」を目指せます

自閉スペクトラム症の治療法は、次の4つです。

  • 行動療法
  • 言語療法
  • 理学療法および作業療法
  • 薬物療法

癇癪や多動・こだわりなどの個別の症状は、服薬で軽減する場合があります。ただし、あくまでも医師や専門家のアドバイスをもとに状態を正しく理解し、子どもに合った適切な治療をしていくことが大切です。

自閉スペクトラム症の子どもとの暮らし・経験談

筆者は、自閉スペクトラム症の9歳の娘と暮らしています。娘とのめまぐるしい毎日は、親としても「気付き」の連続。生活の一部をちょっぴりご紹介します。

癇癪が始まったら体力と気力の勝負

自閉スペクトラム症の子どもは、少しの刺激に過敏に反応してしまう傾向があります。筆者の娘も、普段と違うことや突然の予定変更が得意ではありません。

例えば「学校の帰りにお買い物に寄るよ」と伝えると、大声で泣き叫んだり物を投げたりなど癇癪がスタートすることも。「ここは見通しを立てた方がいいんだな」との発見に繋がるものの、癇癪が収まるのをじっと待つのは、体力と気力の勝負です。

自閉スペクトラム症の娘専用カレンダー
予定通りに終わった日には「娘専用カレンダー」へシールをぺたり

娘の「習慣」がなぜか自身の習慣に

あくまで我が家の場合ですが、ルーティン化を好む娘と過ごすことで、筆者自身も習慣がゆるやかに変化していきました。

朝起きたら、必ず右のカーテンから開ける。ベッドメイキングをして一緒にコップ1杯のお茶を飲んだら、りんごヨーグルトを食べる。娘が落ち着くようにと始めた習慣が、いつしか自身の習慣になっているのでおもしろいものです。

お茶が入った器
お水ではなく、お茶一択

こだわりが明確なため「好き」を見つけやすい

自閉スペクトラム症ならではのこだわりは、娘の「好き」が見つかるヒントでもあります。

例えば「本の“黙読”は苦手だけど“音読”は何時間もできるくらい大好き」「絵を“描く”のは苦手だけど“色を塗る”のはおやつの時間を忘れるくらい没頭する」などなど。こだわりが明確だからこそ、得意・好きを発見しやすいのです。

子どもが塗り絵をしているところ
こだわりの中で見つけた「好き」は娘の宝物

「特性」のいいところにも目を向ける

育児書で発達の目安を見て落ち込んだり、同年代の子どもと比べて不安を覚えたりしてしまう日もあるでしょう。しかし、子どもはみんな同じ速度で発達するわけでもなければ「○ヵ月までにこれができなければならない」という基準もありません。

障がいのある子どもに対して、幼少期からの早期支援を導入する地域も増えています。特性があっても、自分らしく充実した生活を目指せるのです。

この記事が、自閉スペクトラム症の特性の「いいところ」を知るきっかけとなれば嬉しいです。

こちらの記事は下記サイトを参照した上で執筆しました。
・自閉スペクトラム症(ASD)とは?|一般社団法人 日本自閉症協会
URL:https://www.autism.or.jp/about-autism/

・ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について|e-ヘルスネット(厚生労働省)
URL:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-005.html

・自閉スペクトラム症|MSDマニュアル家庭版
URL:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/23-%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E5%AD%A6%E7%BF%92%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%A8%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E8%87%AA%E9%96%89%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%A0%E7%97%87

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この記事を書いた人

日本心理学会認定心理士、サービス介助士。「自分らしさを忘れない」をコンセプトに、自閉スペクトラム症の娘との暮らしをゆるりと楽しむママです。フリーライターとして臨床心理・介護・児童福祉・療育関連のコンテンツ制作および書籍編集などに携わりながら、児童福祉施設へも訪問しています。

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