「お子さん、胃ろうにした方がいいと思います。」
医師からこう告げられた時の不安と期待を、今でもよく覚えています。
しなくていいならしたくない。
でも、することで子どもが楽になるならしてあげたい。
した方がいいの?それは今なの?
いま記事を開いてくれたあなたも、もしかしたら今、似たような気持ちなのでしょうか。
今回はそのような不安に対し筆者がどう向き合ったか、解消したか、などを書いていきます。同じように不安を抱えられている方にとって、少しでも参考になれば、「一人じゃないんだ」と思ってもらえれば、とても嬉しく思います。
なぜ胃ろうにしたの?胃ろうにする目的や悩んだこと
息子の場合、胃ろうにする目的がはっきりしていましたし、手術は避けられない状況でした。それでも不安は大きく、即断即決、とはいかなかったです。
胃ろうにする目的
胃ろうにする目的は患者さんによって違うと思いますが、周りでよく聞くのは「誤嚥防止」のために行うケースや、嘔吐の多いお子さんのために逆流防止手術と合わせて胃ろう造設を行うケースです。
息子の場合は後者で、逆流防止手術(ニッセン手術)と合わせて胃ろう造設手術を行うことになりました。
▼詳細は前回の記事で読めます▼
ちなみに胃ろうというと「延命治療」のようなイメージを持たれる方もいらっしゃるようですが、子どもの胃ろうの場合、どちらかというとQOL向上の意味合いが大きいようです。
「無理して食べさせなくてもいい」という状況を作ることで、焦らず安全に、口から食べさせる訓練をすることが可能になるという医師もいらっしゃいます。
【参考】「胃ろうは適切な栄養ルート。成長のため積極的に薦めます!!」|長野県立こども病院
URL:https://www.pegsupport.net/voice/nagano_kodomo/interview01.html
胃ろう手術前に迷ったこと、悩んだこと
私たち家族の場合、手術自体を悩む余地はありませんでした。息子の胃に病気が見つかり、「その治療手術は避けられない、だったらこの機会に同時に胃ろう手術をした方がいい」と医師に言われたためです。
でも不安はものすごくありました。
まず、手術を受ける、ということ自体への不安です。
全身麻酔についてのリスクを麻酔科の先生に聞いて、「うちの子は大丈夫かな、何もないよね…?」と怖くなりました。
全身麻酔で最悪の事態になるリスクは、成人で10万人に一人だそうです(息子が手術を受けた2019年時点)。それでも、ものすごく少ない可能性の疾患を持って息子が生まれたということを考えると、「じゃあ大丈夫」とはとても思えなかったんです。
それから一番不安だったのは、「胃ろうにした後の生活」についてです。
お腹に穴を開けたまま生活するってどうなるの?
痛くないのかな?動くたびに痛がって泣いたりしたらどうしよう。
お風呂はどうしたらいいの?雑菌が体に入ったりしないのかな……
と、その後の生活のイメージがつかず漠然とした不安がありました。
今だからこそ冷静に振り返ることができますが、当時はそんな余裕もなく、ただ「こんな小さな体に穴を開ける、ということへの不安」が大きかったです。そしてそれを本人ではなく私たちが決めないといけないということに、重圧も感じていました。
胃ろう手術に踏み切った最終的な決め手は?
最終的に胃ろう手術に踏み切る覚悟を決められたのは、「他のご家庭はどうしているんだろう?」という情報を納得いくまで集めて検討できたからです。
医学的なことは医師に確認できます。でも、「胃ろうにしてどうなの?」「生活がどう変わったの?」「胃ろうにしてよかった?」といった率直な感想や実際の生活は、当事者にしかわかりません。しかしそれは毎日一緒に暮らす家族にとって、とても重要なことです。
そこで私は、実際に胃ろう手術をされたご家族の体験談をとことん探しました。
子どもの胃ろう手術を経験された親御さんのブログを読んだり、SNSで普段の生活を発信されている方の投稿を読んだり。
ほとんどの方が「胃ろうにしてよかった」と言っていたことは、大きな安心材料となりました。「生活がこんな風に変わった」「こんなメリットがあった」「起きたトラブルはこんな感じ」など、これから私たち家族が踏み入れる世界がどんなところなのか、想像できる情報があることはとてもありがたかったです。
子どもが手術を受けた立場だからこそ感じること
手術を受けて実際どうだった?
不安を払拭して臨んだ手術でしたが、術後すぐは正直、何のために胃ろうにしたんだろう?という後悔や自責の念に苛まれました。息子の術後の経過が思わしくなかったからです。
▼手術後の詳しい経緯は前回の記事で読むことができます▼
息子は吐き気で苦しそうだし、ケアは楽にならないし、付き添い入院で大変だし、と、術後、退院の目処が立たないまま入院していた時期は本当に苦しかったです。
胃ろう手術の目的は二つ。嘔吐を軽快させるためと、胃から栄養を摂るためでした。その両方が叶えられないままだったら何のために手術したのか、痛い思いをさせただけになってしまったら息子に申し訳ない……と絶望の淵にいました。
その後状態がよくなり、胃ろうを使って栄養を摂取することができるようになったこと、その後時間はかかったけれども嘔吐もなくなったことから、今では胃ろうにしてよかった、と思うことができます。
胃ろうはいつまでにするのがいい?胃ろうにするタイミングは?
息子は1歳8ヶ月の時に胃ろうにしましたが、その後劇的に生活が変わったので、正直、「こんなことならもっと早く胃ろうにしたいと言うべきだったかも?」と思ったこともありました。
胃ろうにすると、早く食事ができるようにと焦って訓練を行う必要もなく、ペースト食にすれば口から食べるのと同じメニューが摂れるので栄養的にも充実します。
さらに息子は、術前はEDチューブを使った経腸栄養で、注入時間をものすごく長く取る必要があったため、それが短縮されたことで活動できる時間が増えたことも大きかったです。
息子のケースのように、胃ろうにすることでQOLが大きく改善する場合や、経鼻経管栄養で何かしらトラブルや不都合が生じている場合は、患者側から医師に相談してみるのは一つの方法かもしれません。「うちの子はいずれ胃ろうが必要ですか?」「いつ頃胃ろうにするのがいいと先生はお考えですか?」など、かかりつけ医に聞いてみるといいかなと思います。
私の周りのお子さんを見ていると、注入が「夜のみ」や「食べ進みの悪い時のみ」など一時的な場合、胃ろうにせず経鼻経管栄養を離脱するケースが複数あります。わざわざ手術をしなくていいケースもあるので、やはり医師に相談が一番確実ですね。
▼胃ろうのメリット・デメリットについてはこちらの記事でも解説しています
胃ろうへの不安と向き合えたのは、先輩の体験談のおかげ
私の場合は、先輩たちの体験談を参考にして不安を払拭し手術に踏み切りました。
もしかしたら私の体験談も役に立つ!と思ってくださる方がいらっしゃるかもしれませんので、別の記事では、手術当日のことや術後の生活についても紹介しています。
ファミケアにある子どもの胃ろうに関する記事は4つです。
ご関心に合う記事があれば嬉しいです。また、「こんなことも知りたい」というご要望がありましたらぜひお寄せください!
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