センサー活用したリハビリをお試し>> 詳しくはこちら

小児の急性脳症とは?経験者ママが主な症状や後遺症、発症後に受けられるサポートなどを解説

小児の急性脳症とは?経験者ママが主な症状や後遺症、発症後に受けられるサポートなどを解説
  • URLをコピーしました!

小児での発症例が多い「急性脳症」。

インフルエンザや突発性発疹など子どもがよく罹る感染症が原因の大半を占め、高熱からけいれんや意識障害といった症状が現れ、脳の機能に異常をきたす病気です。

この記事では、実際に急性脳症を発症し後遺症を抱えることになった娘を持つママである筆者が、「発症直後にこんな記事が読みたかった!」という想いを込めて、急性脳症の主な症状や予後、後遺症について、また退院後に受けられる支援などをまとめました。

医師 おkら先生

おkら先生のプロフィールイラスト

呼吸器専門医、がん薬物療法専門医、総合内科専門医。嚥下機能評価研修会修了、医療型児童発達支援/放課後等デイサービスの嘱託医。仕事大好き、2児の母。長男がダウン症、気管切開をしている医療的ケア児。障害児を育てる環境が優しくなって欲しい。その為に自分に何か出来る事はないかと日々考えています。
X:@oke_et_al,ブログ:じょいく児。

目次

急性脳症とは

急性脳症とは、脳に起こった炎症によって発熱・頭痛・意識障害・けいれんなどの症状がみられる病気の総称です。

多くの場合、脳に浮腫(むくみ)が生じて脳の機能に異常を引き起こします。

急性脳症の原因

急性脳症の原因はさまざまですが、インフルエンザ突発性発疹など小児の罹患しやすい高熱を呈するウイルス性の感染症であることが多いです。なかには、背景として先天性代謝異常症が隠れている場合もあります。

急性脳症の発症は小児が多い

急性脳症はあらゆる年齢層で起こり得る症例ですが、中でも小児期、特に乳幼児期での発症が多いのが特徴です。急性脳症全体としては、年間罹病率は数百例(100~200例程度)といわれています。

なぜ急性脳症の発症が小児に多いのかについては、明確な理由は現在でも不明です。

発病のきっかけとして上記のようなウイルス感染が原因であることが多いですが、病気になりやすい素質として、複数の遺伝子の型があることなどがわかっているそうです。だからといって明らかな遺伝子の素因があるわけではありません

急性脳症の診断名

前述したとおり「急性脳症」というのは総称であり、診断名はいくつかに分かれます。

症候群の名称で診断されるものの一例

  • けいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD)
  • 急性壊死性脳症(ANE)
  • 難治頻回部分発作重積型急性脳炎
  • 脳梁膨大部脳症(MERS) など

病原ウイルスに関連した名称

  • インフルエンザ脳症 など

小児の感染に伴う急性脳症のうち、日本で最も頻度の高い型は「けいれん重積型(二相性)急性脳症」で、急性脳症全体の34%を占めます。

【引用】

痙攣重積型(二相性)急性脳症(指定難病129) | 難病情報センター

https://www.nanbyou.or.jp/entry/4513

ライター 原島

筆者の娘は1歳10ヶ月で「けいれん重積型(二相性)急性脳症」を発症しました。原因は突発性発疹を呈するウイルスでした。

急性脳症の主な症状

急性脳症の主な症状と経過は、以下のとおりです。

※編集部註:急性脳症は多くの場合ウイルス感染により発症するため、この記事では、ウイルス感染の場合を例に挙げて解説します。

ウイルス感染による初期症状

ウイルス感染が原因の場合、まずは感染したウイルスによる初期症状が現れます。インフルエンザの場合だと発熱、頭痛、全身倦怠感、関節痛などです。突発性発疹の場合は3日間ほど続く高熱と、その後全身に現れる小さな赤い発疹などです。

この段階ではウイルス感染のみの症状です。

急性脳症の主症状

ウイルス感染自体の初期症状の後、急性脳症の主症状が現れます。多くの場合は意識障害、けいれんですが、場合によっては嘔吐、血圧・呼吸の変化、発熱なども生じます。

乳幼児の場合は、一般的な発熱でも「熱性けいれん」を引き起こすことがありますが、急性脳症でのけいれんはけいれん重積(15分~1時間程度続く長いけいれん)」をきたす場合がほとんどです。

ライター 原島

初めてのけいれんで不安な場合や、けいれんが5分以上続くような場合には迷わず救急車を呼びましょう。救急車を呼んでもすぐに駆けつけられない場合や、搬送先がなかなか決まらない場合もあるため迅速な対応が必要です。筆者の場合も、すぐに救急要請しましたが到着にも搬送にも時間がかかってしまいました。

けいれん後

けいれんが止まった後には意識障害を生じる場合があります。また、最初のけいれんが起こってから一時的に意識障害が改善傾向になるものの、その数日後に2回目以降のけいれんが群発し重症化するケースもあります。特に「けいれん重積型(二相性)急性脳症」ではそのパターンが多いと言われています。

急性脳症の治療

急性脳症を発症した場合、その後の経過は患者によって非常にさまざまです。「急性期」と「回復期」に分けて、一例を紹介します。

発症直後(急性期)に必要な治療・ケアなど

  • けいれんに対する治療
  • その他の症状に合わせた治療

発症直後でけいれんが継続(重積)していた場合には、けいれんを抑える抗けいれん薬抗てんかん薬などを用いてけいれんを抑え、状態に合わせ呼吸補助なども含めた全身管理を行います。

「小児急性脳症診療ガイドライン2023」やインフルエンザ脳症の診療戦略に準じて、ステロイド療法脳低温・平温療法を選択するケースもあります。

また、急性脳症以外の介入すべき病態がないかの検査なども合わせて行います。

急性脳症の急性期治療が一区切りした後は、後遺症や予後に合わせた治療・サポートへ移行します。

急性期明け(回復期)の治療・過ごし方など

急性脳症の急性期を過ぎると、多くの場合は退院して自宅での生活に戻ります。

しかし、急性脳症を発症すると多くのケースで後遺症が残るため、以前と同じ生活に戻れることもあれば、リハビリテーションの介入を受けて機能の回復を目指したり、後遺症の治療を続けたりすることもあります。

急性脳症の予後や後遺症は患者によりさまざまですが、詳しくは以下で解説します。

急性脳症の予後

急性脳症全体の致死率は6%神経学的後遺症の率は36%とされています。

予後は症候群別で大きく異なり、急性壊死性脳症は死亡・神経学的後遺症ともに多く脳梁膨大部脳症では大多数で後遺症なく治癒しているという結果です。

けいれん重積型(二相性)急性脳症では死亡例は少ないものの、神経学的後遺症が多く、約70%の患者に神経学的後遺症(知的障害、運動障害やてんかん)が認められています。

【引用】

急性脳症の概念と疫学

https://www.childneuro.jp/uploads/files/about/AE2016GL/4ae2016_1general.pdf

痙攣重積型(二相性)急性脳症(指定難病129) | 難病情報センター

https://www.nanbyou.or.jp/entry/4513

急性脳症による後遺症

では、急性脳症による後遺症にはどのような症状があるのでしょうか。ここからは急性脳症による後遺症を、多いとされる障がいや症状の順に解説します。

知的障害

一般的に知的機能の回復よりも、運動機能の回復の方が良好であることが多いとされています。つまり急性脳症の後遺症として最も残りやすいのは知的な障害ということです。

障がいの程度は患者によって軽度から重度までさまざまです。

高次脳機能障害

高次脳機能障害は、脳機能に障がいが生じて日常生活や社会生活に支障が生じる状態をいいます。 

急性脳症後にみられる高次脳機能障害としては、視覚認知障害と注意障害が特徴です。具体的には段差や物が認識しづらく転びやすい、集中できない、漢字が書けない、などです。

小児における高次脳機能障害は、成人と異なり発達に伴って症状が変化する・脳の可塑性(かそせい)があるため症状の改善がある・環境により症状が変化するといった特徴があります。

そのため、急性脳症後でも高次脳機能障害の診断を受けることはまだまだ難しい状況です。

ライター 原島

ちなみに、口唇傾向(手に取るものを何でも口に運んだり食べようとすること)も高次脳機能障害の一つという見方もあります。筆者の娘にもあり、非常に悩まされています。

運動機能障害

急性脳症の発症直後には不随意運動(本人の意思とは無関係に身体に異常な運動が起きること)が起きやすいですが、これは急性期が明けると落ち着くことが多いです。

その後に残る後遺症として肢体不自由や麻痺、身体の機能がうまくコントロール出来ない協調運動障害など、さまざまな運動機能障害を呈する場合があります。

てんかん

急性脳症の罹患後1年以内での「てんかん」の発症も多く、発作のコントロールが難しい例がかなりの割合を占めます。そのため、急性脳症発症後にはてんかんを発症していなくても定期的に脳波検査を受けるケースが多いです。

ライター 原島

筆者の娘の場合、発症から約2~3か月間ほど首が座らない状態でした。この記事の執筆時は病後1年が過ぎた頃ですが、てんかん発作がようやく抑制できた頃からつかまり立ちとよちよち歩きをするようになりました。知的障害も重く、典型的な急性脳症の後遺症を背負ったといえます。

後遺症が残った場合に受けられるサポート

急性脳症罹患後に後遺症が残った場合、元の生活に戻ることは本人にとっても家族にとってもさまざまなハードルがあります。そういった局面では、医療や福祉、日常生活における以下のような支援を活用しましょう。

医療・福祉面でのサポート

リハビリ

病院や療育センターへ通って受けるリハビリの他、自宅で受けられる訪問リハビリや、集中的にリハビリを行うリハビリ入院という選択肢もあります。

小児慢性特定疾病の医療費助成

「小児慢性特定疾病」に該当する場合、医療費負担を軽減するために助成を受けることができます。助成の内容などの詳細は、かかりつけの病院に確認してみましょう。

障害者手帳の取得により受けられる福祉制度

急性脳症の後遺症の程度によっては、障害者手帳を取得できる場合があります。

障害者手帳を取得することで、障害者割引や税金の減免など、さまざまな経済的支援をうけることができます。

日常生活におけるサポート

運動障害や知的障害に対する療育サービス

療育とは、障がいのある子どもに対して発達を促し、円滑な日常生活を送るようにするための支援のことです。療育サービスを受けたい場合は医師に相談しましょう。

訪問看護や居宅介護による生活介助

看護師に自宅まで来てもらい、医療や日常のケアをしてもらうことができます。

また、居宅介護(ホームヘルプサービス)といって訪問介護員(ホームヘルパー)に自宅へ来てもらい日常生活の介護を受けたり、家事の援助を受けられるサービスもあります。

その他の支援や検討できる選択肢

医療や福祉サポート以外にも、以下のような支援や仕組みも活用してみてください。

  • 住んでいる自治体の「子育て支援課」や「障害福祉課」と繋がる
  • 家族会などのピアサポートを利用する

地域など身近な環境に頼れる存在を作っておくと、より安心です。

子どもが急性脳症を発症したご家族の方へ

もしもお子さんが急性脳症を発症した直後にこちらの記事へたどり着かれた場合、これから具体的に何をするべきなのか・何が必要なのかなど、まだ困惑の中にいらっしゃると思います。

また、今現在後遺症と戦っているお子さんをお持ちのご家族の皆さんも、毎日大変なことや先々への不安や心配事が尽きないのではないでしょうか。どうかご自身のことも労わりながら、ぼちぼちやっていきましょう。

また、SNSで「#急性脳症」や診断名で検索すると、お子さんの経過をまとめてくれている先輩ママパパも多くいらっしゃいます。よりリアルな情報を知ることができるかもしれないので、活用してみてくださいね。

この記事を当事者として参考にする方が一人でも少ないことを祈りつつ、必要としている方へ広く届くように願っています。

※主な参考文献:「小児急性脳症診療ガイドライン2023」

https://www.childneuro.jp/about/6443

利用中の事業所・施設でデジリハしよう!特集


ファミケアの掲載記事およびコラムに関しては、当事者および専門家によって作成しておりますが、全ての方に当てはまる情報ではございません。投稿された情報の利用により生じた損害について、ファミケア運営元では責任を負いかねますので、あくまでもご家庭での判断のもと参考情報としてご利用ください。また、特定の施設や商品、サービスの利用を推奨するものではありません。

小児の急性脳症とは?経験者ママが主な症状や後遺症、発症後に受けられるサポートなどを解説

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よろしければシェアおねがいします!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

フリーランス編集者/ライター。2021年生まれの娘が2歳手前で急性脳症を発症。重い後遺症とてんかんと付き合いながら日々の暮らしを模索中。障がい児、疾患児の子育てにおける情報格差を減らしたい!

コメント

コメントする

※コメントは運営の承認後、表示されます
※コメント欄は現在一時的に公開しております。状況によってはコメント欄を停止する場合がございます。ご了承ください。

目次