健診で「言葉が少ないですね」と言われたり、同じ年頃の子と比べて「うちの子、言葉が遅いかも」と感じたりして、心配になる保護者の方は多いものです。
気になって検索してみると「発達障害」という文字が目に入り、不安が大きくなってしまうこともありますよね。
この記事では、保育士の筆者が言葉の遅れと発達障害の関係、言葉が遅くなる要因、専門機関に相談するタイミングの目安を解説します。家庭でできる関わり方についても、保育士としての経験も交えながら紹介しますのでぜひ参考にしてください。
言葉が遅い=発達障害ではない
前提として、言葉の発達は個人差がとても大きいものです。言葉が遅いからといって発達障害だと決まるわけではありません。
たとえば「1歳半を過ぎても意味のある単語が出ていない」「3歳頃になっても二語文が出ていない」といった目安はありますが、これはあくまで発達を確認するための一つの基準です。
また、発達障害は言葉の遅れだけでなく、日常生活の様子など総合的にみて診断されます。そのため、健診などで「言葉に遅れがあります」と指摘されても、それだけで発達障害と決まるわけではありません。あくまで、経過を見ていくためのきっかけととらえましょう。
ライター アリサ保育の現場では、1歳半頃には発語が少なくても、理解する力や人とのやりとりが育つなかで、言葉が増えていく子どもを見かけることがあります。ただし、言葉の増え方には個人差があるため、気になる様子がある場合は、年齢だけで判断せず相談先を活用することが大切です。
言葉が遅くなる要因として考えられること
言葉が遅くなる背景には、さまざまな要因が考えられます。ここでは主な4つの要因を紹介します。どれかひとつに当てはまるとは限らず、いくつかが重なっている場合もあります。
個人差によるもの
単純に「言葉を覚えるペースがゆっくり」というケースです。言われていることはきちんと理解できていても、自分から話すのには時間がかかる子どももいます。この場合、周囲の言葉を聞きながら言葉の意味を頭にため込んでいて、ある時期を境に一気に話し出すことがあります。
難聴など聴覚の問題
言葉の発達は周囲の言葉を繰り返し聞いて、少しづつ語彙を増やしていくことで進みます。そのため、聞こえにくさがあると、周囲の言葉を十分に聞き取れず、言葉が育ちにくくなるのです。
一見、音への反応があるように見えても、片耳だけの難聴や特定の音域だけ聞こえにくいケースもあり、言葉の遅れをきっかけに難聴が発見されることもあります。
周囲とのかかわりや環境の影響
大人との関わり方や環境が影響しているケースです。子どもは、大人との会話や遊び、表情や指さしを通したやりとりのなかで、少しずつ言葉に触れていきます。
そのため、大人が先回りして子どもの要求を満たしてしまうと、子どもが自分から言葉を使う必要性を感じにくくなり、言葉が遅れることがあります。
発達障害・知的障害が関係しているもの
言葉の遅れの背景に発達障害や知的障害が隠れていることもあります。
たとえば、自閉スペクトラム症などの発達障害では、人とのやりとりやコミュニケーションそのものに苦手さがあることが多く、その結果として言葉の発達がゆっくりになることがあります。
一方、知的障害の場合は言葉だけでなく、運動や理解、身のまわりのことなど、全体的な発達がゆっくり進むため、その一部として言葉の発達もゆっくりになると考えられています。
いずれの場合も、言葉の遅れだけで判断できるものではなく、日常生活全体の様子をあわせてみていくことが大切です。



言葉が遅くなる背景にはさまざまな要因があるので「家庭での関わりが悪かったのかな」と自分を責める必要は、まったくありません。「言葉」という手段だけにこだわらず、指さしや表情、スキンシップなど今の子どもの姿に合わせたやりとりを楽しむことが、結果的に言葉の発達にもつながっていきます。
言葉の発達を促すために家庭でできる関わり方
ここからは、家庭でできる、言葉の発達を後押しする関わり方を紹介します。
生活の中で言葉を使う場面を増やす
日常のなかで、子どもが言葉を使いたくなる場面を少しずつ増やしていきましょう。
たとえば飲み物を指さしたときには「お茶ちょうだい、だね」と気持ちを言葉にして代弁してあげます。「〇〇したいの?」と気持ちを汲み取り言葉にしてあげると、子どもは「伝わった」とうれしくなります。このとき、間違いを焦って訂正したり直そうとしたりしすぎないことも、話す意欲を保つうえで大切です。



大人が先回りしすぎず、子どもからの発信を待って拾ってあげる関わりを意識するのがコツです。
絵本の読み聞かせで語彙を広げる
絵本の読み聞かせは、ものの名前や気持ちの表現を自然に身につけられる、身近な方法です。最後まで読み切らなくても「わんわんいるね」「赤い車だね」と、絵を見ながら親子でおしゃべりを楽しむ気持ちで大丈夫です。ページをじっくり眺めながらのやりとりそのものが、言葉に触れる豊かな時間になります。
手遊び・わらべ歌でリズムのある言葉に親しむ
リズムや繰り返しのある言葉は、子どもにとって真似しやすく、発語のきっかけになりやすいものです。手遊びやわらべ歌は、まさにそうした言葉に親しめる遊びです。
大人が歌ってみせたり、子どもの反応に合わせて声をかけたりするなかで、言葉への関心が少しずつ育っていきます。うまく言葉を発せなくても、一緒に体を動かして楽しむこと自体に意味があります。



保育の現場でも、子どもの言葉を正そうと急ぐより「そう言いたかったんだね」と気持ちを受け止めてから、自然な言葉を返す関わりを大切にしています。子どもが安心して伝えようと思えることが、やりとりを続ける土台になります。
いつまで様子見でいい?相談するタイミングの目安
言葉の遅れのある子どもを育てていると「もう少し様子を見ていいのか、そろそろ相談したほうがいいのか」は、多くのママ・パパが迷うところです。ここでは相談を考えるタイミングの目安を3つ紹介します。
1歳半を過ぎても意味のある言葉が出ていない場合
1歳半頃は、言葉の発達や理解の様子を確認する1つの目安となる時期です。この頃までに「わんわん」「まんま」など、意味のある言葉が出ていない場合は、相談を検討する目安になります。
3歳で2語文が出ていない場合
「ジュースのむ」のように2つの単語をつなげた2語文が、3歳の時点で出ていない場合も、相談を考えるタイミングの一つです。
言葉の遅れ以外にも気になるサインがある場合
言葉の遅れ以外にも気になる様子があるときは、早めに相談すると安心です。たとえば、名前を呼んでも反応が薄い、指さしをしない、視線や表情を通したやりとりが少ない、といった様子です。
こうしたサインが複数みられる場合は、早めに専門家に相談することで、その子の発達の状態を把握しやすくなります。その結果、必要に応じて発達を促す支援につなげられたり、家庭での関わり方のアドバイスをもらえたりします。
具体的な相談先は、次のような場所です。
- 地域の保健センター
- 子育て支援センター
- 児童発達支援センター
- かかりつけの小児科
こうした相談先では、言葉の数だけでなく、大人の言うことを理解できているか、指さしや視線でのやりとりができているかなど、全体の様子をあわせてみながらこれからの見通しを一緒に考えてくれます。「相談=診断を受けに行く」と身構える必要はありません。専門家に様子を見てもらいながら、安心材料や次の一歩を得るための場だと考えてみてください。
一人で抱え込まず、専門家と一緒に見守ろう
言葉が遅いことは発達障害と直結するものではありません。言葉の発達には大きな個人差があり、聴覚や環境などさまざまな要因が関係していることもあります。
まずは、この記事で紹介したような家庭での関わり方をできる範囲で楽しみながら取り入れてみてください。
一方で、心配な気持ちが続くときは年齢の目安にこだわりすぎず、早めに専門家へ相談するのをおすすめします。相談することが、子どものためにもママ・パパ自身の安心のためにも役立ちます。
一人で抱え込まず、保健センターや小児科など頼れる場所や人と一緒に、子どものペースをあたたかく見守っていきましょう。

















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