今住んでいる地域には、支援学校に通う子が地域の小学校を訪れ、お互いを知り合う機会を作る「地域校交流会」という制度があります。
幸太郎が未就学児だった頃。
兄を通じて、たくさんの小学生との出会いがありました。
それはとても温かいものばかりで、子どもたちの障がいに構えない姿に何度も元気をもらいました。
そんな経験があったので、交流会の話が出た時は迷わず「参加します」と答えました。
ただ、ひとつ気がかりだったのが、最近の兄のこと。
人に見られたり目立つことに、恥ずかしさを感じるようになり、幸太郎がジロジロと見られることを、気にする様子も出てきました。
仲の良い兄弟ですが、幸太郎が自分の学校に来ると知ったら、どう感じるだろうか…と、私は少し気になっていたのです。
そんな心配をよそに、兄からこんな言葉が。
「幸ちゃん、僕の学校に来るとき、僕の教室にも寄ってほしい!クラスの友達に教えたい^^」
想定外な一言に、平静を装いながらも、内心は嬉しさで胸がいっぱいでした。

そして当日。
今回の目的は、幸太郎が無理なく教室の雰囲気を知り、顔と名前を覚えてもらうこと。そのため、朝の会のみの参加で小学校へ向かいました。
兄と幸太郎と3人で歩く、少し特別な通学路。
兄は少しはにかんでいて、幸太郎は笑顔が止まらず大喜びでした。
私はというと、幸太郎を同じ1年生に紹介してもらえること、兄が教室に呼んでくれたことが嬉しくて、それはもうウキウキでした。
兄の教室では、いつもの楽しい我が家を見てほしいなぁ、なんて想像を膨らましていたのです。
……が。
教室に着くと、普段はいない幸太郎の登場に、少しずつ集まってきた友達に兄が
「これ、俺の弟」
と、想像の1/100くらいクールな紹介をしたのです。そしてクールに去っていきました・・・
去年までは、友達に会うと
「僕の弟は脳みそケガしてて車椅子なんだけど、死にかけて生き返ったスーパーベイビーなの!」
なーんてペラペラ話していたのに…
私は正直戸惑いました。
あれ、思ってたんと違う…!って(笑)
幸太郎に「そろそろ一年生の教室に行こうか」と声をかけると、全身反り返って「まだ行きたくない!!!」の意思表示をされ…
本番前にご機嫌ナナメになる…!
と内心かなり焦りました。
そこで兄に向かって
「幸ちゃん、まだここから離れたくないんだって~!テヘへ」
と、いつもの調子でヘラヘラ話しかけたんです。
すると、兄は更にクールに
「ふっ」
と笑って、ランドセルをしまいに遠くへ離れていきました…
母、完全に空振りです(笑)
嫌がる幸太郎と1年生の教室に向かう間は、泣いてしまったらどうしようと、まるで吊り橋を渡っている気分でした。
でも、教室に着くと、担任の先生も、事前に話を聞いていたお友達も温かく迎えてくれて。幸太郎に笑顔が戻り、私もホッと胸をなでおろしたのです。
先生からクラスの子達と同じように、名字で「のぐちさん」と呼ばれると、慣れない呼び名に幸太郎はキョトンとしていました。
朝の会で絵本を読んでもらい、怒っている描写が出ると、クラスの男の子が
「のぐちもおこってるよ~!」
と幸太郎を指さしました。
表情がそう見えたのか、決して怒ってはいなかったのだけど、私は名前を呼んでくれたことがとても嬉しく感じました。
教室の中で時折見せる幸太郎の笑顔が、素敵な経験をさせてもらえたのだなと感じるサインでした。
最後は上手にバイバイと手を振って
「また一緒に行こうね」と話しながら帰りました。
とても温かい気持ちと同時に
「兄の成長に合わせて、親の距離感を整えないと、、」と、母は反省のLINEを夫に送ったのでした。

そして後日・・・
小学校の前を幸太郎と散歩していると
「あ!」
と声が。
振り向くと、そこには幸太郎に手を振ってくれている女の子がいました。
きっとあの日、クラスで一緒に過ごした子。
嬉しくて、幸太郎の手を取り、大きく手を振り返したのでした。



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