子どもの発達に大切な「感覚統合」。季節ごとに変わる自然環境は、子どもたちの感覚を刺激する宝庫です。

子どもと楽しく手軽にできる感覚統合に着目した遊びを知りたい!
そのように思っている方に向けて、この記事では、四季折々の素材を活かした家庭でも手軽に実践できる感覚遊びをご紹介します。
「感覚統合」が子どもの発達に大切な理由って?
「感覚統合」とは、体が受け取るさまざまな感覚情報を脳が整理して、適切な行動につなげる能力のことです。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感に加え、前庭感覚(バランス感覚)や固有受容感覚(体の位置感覚)など、複数の感覚が協調して働くことで成り立っています。
上記の感覚を活用した「感覚統合遊び」は、発達障害や感覚過敏のある子どもだけではなく、肢体不自由や重症心身障害の子どもにも有効です。例えば、感覚統合で得られる力は、以下のようなさまざまな面で成長を促します。
- 姿勢の安定
- 運動の協調性
- 注意力の持続
- 学習能力の向上
- コミュニケーション能力の向上
- 楽しさと達成感 など



日常生活で四季の変化を感じる遊びは、自然な形で感覚統合を促す最適な機会です!
▼感覚遊びの効果についてはこちらの記事で詳しく解説しています


気軽に実践!四季ごとの感覚統合遊び



感覚統合遊び、なんだか難しそう…



療育では経験があるけど、家でもできるの?
そのように思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、ご家庭でも簡単に実践できる「春夏秋冬の感覚統合遊びアイデア」をご紹介します。自然の変化を感じながら、家族で楽しく五感を刺激しましょう。
春の感覚統合遊び
お花見ピクニック
桜の季節には、ぜひお弁当を持ってピクニックに出かけてみてください。視覚や聴覚、味覚などの五感を総動員して季節を感じることができます。
用意するもの
お弁当、レジャーシート、手拭きシートなど
遊び方
桜の舞い落ちる様子や鳥のさえずりを楽しみながら、お弁当を味わいましょう。落ちた花びらを集めて型はめ遊びをしたり、ビニールシートやレジャーシート、毛布など触感の違う素材を敷いて座り比べるのも感覚統合に効果的です。



姿勢を変えて空を見上げたり地面に寝転んだりすることでバランス感覚も刺激され、空間認識能力の発達にもつながります
裸足で春の土や芝生を歩く
暖かくなったら、裸足で土や芝生の上を歩いてみましょう。足の裏は多くの神経が集まっており、地面の感触を直接感じることで、触覚と体の位置感覚の発達を促すことができます。
用意するもの
水を入れたバケツや洗面器、足ふきタオル、着替え用の靴下
遊び方
活動前に必ず遊ぶ場所にガラス片や尖った石などの危険物がないか確認します。安全が確保できたら、裸足で土の感触を楽しみます。
湿った土や砂の上など異なる地面で足跡を作ったり、芝生の上でつま先立ちやかかと歩きをして感触を言葉にしたりするのもおすすめです。足跡の形を観察したり足跡の深さを比べたりする活動は、視覚と触覚を結びつけるよい機会になります。



活動後は足をしっかり洗って清潔に保ちましょう
春の草花を使った遊び


春の草花を使った以下のような遊びもおすすめです。
- タンポポの綿毛を飛ばす
- クローバーで冠を作る
- 花びらや葉っぱを使って葉脈スタンプを作る
などの遊びは、指先の細かな運動と触覚刺激に効果的です。呼吸のコントロールや、手先の器用さも育めます。



春の草花遊びをさらに発展させて、花びらを使った色水作りをするのもおすすめです 。桜やパンジーなどの花びらを水に浸して色を出す活動は、色の変化を観察する視覚体験と、花びらの質感を感じる触覚体験を同時に得られます。
夏の感覚統合遊び
水遊び
水の抵抗感や浮力は、体の位置感覚やバランス感覚を刺激できます。


用意するもの
洗面器や小さなプール、水鉄砲、おもちゃ、スポンジ、氷など
遊び方
洗面器や小さなプールに水をためて、水の感触を楽しんだり、水中でのジャンプやバランス遊びをしたりします。
水鉄砲で水をかけたり、スポンジを絞る、氷を溶かすなど水の形の変化を体験する活動もおすすめ。科学を楽しく学びながら感覚体験も得られます。



水の深さを変えることで抵抗感や浮力を調整して運動能力を高めたり、水温の変化がによって触覚刺激になったり、や筋緊張を調節できたりします
泡遊び
水遊びのバリエーションとして、泡遊びもおすすめです。視覚的な美しさと触覚刺激を組み合わせた体験ができます。
用意するもの
石鹸、シャボン玉
遊び方
洗面器やプールの中で石鹸を泡立てて遊びます。また、シャボン玉を作って風に飛ばされるのを眺めたり、風にのったシャボン玉を追いかけるのも楽しいですよ。



五感を使って楽しめるだけではなく、追視や身体の動きの調整能力も自然と育まれます。石鹸は肌に優しいものを選び、目に入らないように注意しながら、親子で感動を共有してみてください!
砂場遊び
砂は、さまざまな触覚体験ができるアイテムです。手指の力加減や協調性を養ったり、全身への心地よい重みや包まれる感覚を得られたりします。
用意するもの
スコップ、バケツ、手足を拭くタオル
遊び方
- 砂場での山作り
- トンネル掘り
- 砂の中に手足を埋める
- 砂の上に模様を描く
また、砂は乾湿によって触感が変わります。乾いた砂を指の間からサラサラと落として感覚を楽しんだり、湿った砂を握って形を保持できる特徴を確かめたりするのも感覚統合遊びの一つです。



砂の中に小さなおもちゃや貝殻を隠して「目を使わずに触って何か分かるかな?」と声掛けすると、触覚への意識や探索力を高めながら、手指の敏感さを育てられます
夏野菜を観察・触る・食べる
鮮やかな色彩を楽しめる夏野菜の栽培と収穫は、五感を総合的に使う活動です。
用意するもの
きゅうり、トマトなどの夏野菜
遊び方
例えば、キュウリのでこぼこした表面と中のなめらかさの対比、トマトの皮と果肉の質感の違いなど、細かな触覚の違いを言語化する機会を作ってみましょう。
- 野菜の色や形の観察
- 香りや味わい
- 触感
- 収穫作業での体の動き



また、収穫した夏野菜を使った料理を取り入れてみるのもおすすめです。野菜を洗う、皮をむく、切る、混ぜるなどの作業は、手で触れる感覚を鍛えながら、体の動きを順序立てて考える力を育てられます。
秋の感覚統合遊び
落ち葉を使った遊び
全身の感覚を刺激できる活動として、集めた落ち葉の中で遊ぶのもおすすめです。鮮やかな紅葉や落ち葉の音、木の実の香りなど、あらゆる感覚を同時に刺激する機会といえます。


用意するもの
落ち葉を集めるための袋やバケツ、軍手や薄手の手袋、観察するための虫眼鏡など
遊び方
- 落ち葉の中でゴロゴロ転がる
- 落ち葉を高く投げて降ってくる感覚を楽しむ
- 落ち葉を踏んで音を出す など
これらの遊びは、バランス感覚や体の位置感覚感覚を刺激するのに有効です。また、落ち葉の上に寝転んで空を見上げる体験は、背中からの触覚と視覚の広がりを感じる特別な時間になります。



落ち葉を拾って裏表を当てる「落ち葉じゃんけん」も、触覚と視覚の違いを見分ける能力を養えます
木の実や果物を使った遊び
聴覚の発達の促進には以下のような活動もおすすめです。それぞれの木の実が生み出す独特の音を聴き比べる活動は、聴覚の発達を促します。
用意するもの
どんぐり、まつぼっくり、クルミなど秋の木の実、プラスチック容器
遊び方
- どんぐりを容器に入れて振る
- まつぼっくりを床に落とす
- クルミの殻を割る など
また、目を隠して手で触るだけでどんな木の実かを当てる遊びは、手の感覚で物の違いを見分ける力を育てられるためおすすめです。



自閉スペクトラム症の娘と暮らす筆者は、秋の果物を切って断面を観察し、その模様をスケッチして視覚的な注意力や手と目の協調性を育んでみています
自然素材を使ったクラフト
目で見た情報から細かな違いを見分ける力や創造力を育てるために、落ち葉やどんぐり、まつぼっくりなどを集めてアート作品を作るのもよいでしょう。素材の選び方、配置、接着など、さまざまな感覚と認知能力を使う活動です。
用意するもの
手ふきタオルやウェットティッシュ、軍手や薄手の手袋、工作用の接着剤や画用紙
遊び方
落ち葉の脆さやどんぐりの硬さ、松ぼっくりのトゲトゲした感触など、素材の特性を言葉にしながら扱うことで、感覚と言語を結びつけます。また、素材の重さや大きさを比較したり、バランスを考えて組み立てたりする過程は、空間認知能力と手指の細かな運動を促進できるのがメリットです。



完成した作品を飾ると、達成感と自分の考えやイメージを形にする喜びも味わえます!
冬の感覚統合遊び
雪で「宝探し」
雪遊びといえば、雪合戦や雪だるま作り、そり遊びなどが思い浮かびますよね。その他にも、感覚遊びとしては、雪の中に小さなおもちゃや色とりどりの物を隠して探す「宝探し」もおすすめです。
用意するもの
防水性の高い手袋、替えの衣類や靴下、宝物として隠すアイテム、小さなスコップやシャベル
遊び方
冷たい雪の感触を手で感じながら、隠された宝物を見つけ出します。
この遊びでは、触覚と視覚の協働が促されます。雪をかき分ける動きは手指の微細運動を発達させ、宝物を見つけたときの達成感も得られるのが特徴です。



雪の固さや深さによって難易度を調整できるため、子どもの発達段階に合わせて遊べます


毛布や布団で「巻き寿司遊び」
子どもを毛布や布団で優しく巻いて「巻き寿司」にする遊びです。全身に均等な圧がかかることで安心感が生まれ、自分の体の境界を感じる位置感覚が刺激されます。
準備するもの
柔らかい大判の毛布や薄手の布団、クッションや小さな枕、巻かれている時間を計るタイマー、床に敷くマット、汗拭き用のタオル
遊び方
子どもを毛布や布団でお寿司のように優しく巻きます。
巻く強さを調整したり巻いた後にゆっくりほどいたりする変化が、バランス感覚も刺激します。特に感覚過敏や不安のある子どもにとって、深い圧力感覚は情緒の安定につながりやすいものです。
温かさと冷たさのコントラスト体験
温かいものと冷たいものを交互に触れる体験も感覚刺激には有効でしょう。例えば、以下のような活動です。
準備するもの
安全な温度のお湯や冷水を入れるバケツまたは洗面器、温度計、ホットパック、保冷剤、タオル、厚手と薄手の手袋
遊び方
- 温かいお湯の入った容器と冷水の容器に交互に手を入れる
- 温かいホットパックと冷たい氷嚢を体の同じ部位に当てる
- 手袋をした状態と素手での触感の違いを見つける
- ホットケーキやゼリー作りなど、温度変化を伴う調理をする
温度差で感覚の違いを認識する能力を高めたり、温度変化を言葉で表現したりすることで言語発達も促して自分の体がどう感じるかを意識する機会にもなります。



温めたタオルと冷やしたタオルを交互に肌に当てるマッサージ遊びも、親子のスキンシップを兼ねた感覚統合活動です。温かさと冷たさを皮膚で感じる力が鍛えられると同時に、体と心がリラックスする効果もあります
感覚統合遊びで四季をまったり楽しんで
四季の変化を感じながら親子でさまざまな感覚体験を重ねることは、子どもの発達支援になるだけではなく、かけがえのない思い出にもなります。遊びを通してさまざまな感覚を一緒に体験したり「どんな感じ?」「何に似てる?」などのシンプルな問いかけをしながら感覚を言語化したりする機会を作ってみましょう。
感覚過敏や感覚鈍麻など、子どもの感覚特性に合わせて活動を調整していくことも大切です。子どもの反応を見ながら、無理なく楽しく取り入れてみてくださいね。
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