療育ってよく聞くけど、実際は何をするの?
療育は本当に効果があるの?
発達障害のある子どもとの暮らしで、このような疑問を感じた経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで本記事では、発達障害の療育について、実際に行われる内容や期待される効果をわかりやすく解説していきます。
子どもが発達障害と診断後に療育を勧められたけど、何をする場所かわからない
そんな方は、ぜひ参考にしてみてください。
療育とは?
療育とは、発達障害などのある子どもに対して日常生活での困りごとを軽減し、社会との関わりを円滑にしていくための支援やサポートをすることです。その子らしく生活を送れるよう、一人ひとりの特性に合わせて、社会的な自立に向けた力を育んでいきます。
▼療育についての詳細はこちらからご覧いただけます
発達障害の療育で行われることと期待される効果
療育では、子どもの特性や発達段階に応じてさまざまな支援が行われます。主な療育の内容とそれぞれの活動で期待される効果は、以下のとおりです。
コミュニケーションのトレーニング
言葉でのやりとりや相手の気持ちを理解するのが苦手な子どもに対して、療育では、段階的にコミュニケーション能力を育てていきます。主に用いられるのは、言語聴覚士が子どもの言語理解や発話などを支援する「言語療法」、社会で他者と関わるために必要なスキルを身につける「ソーシャルスキルトレーニング」などです。
▼コミュニケーションのトレーニングで期待できる効果
- 語彙の増加
- 文章表現力の向上
- 友達との関わり方の習得
- 表情や身振りを理解する力の向上
▼言語聴覚士(ST)の支援を受けたい場合はこちらの記事をチェック!
感覚統合療法
感覚には、五感と呼ばれる「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」のほか、手足の位置や動き、力の入れ具合などを感じることができる「固有覚」、重力や回転、加速度(スピード)を感じられる「前庭覚」があります。感覚統合とは、これらの感覚を適切に整理したりまとめたりする脳の働きです。
感覚統合に課題のある子どもは、特定の音や光、触感に過敏に反応したり、逆に痛みへの反応が鈍かったりすることがあります。また、不器用さやバランスの悪さといった運動面での困難や、常に動き回る、危険な行動を好むなどの行動がみられるのも特徴です。
さらに、感情のコントロールが難しく、予期せぬ変化に不安を示したり、他の子どもとの距離感がつかめないなどの社会性の課題を抱えるケースも少なくありません。
療育の感覚統合療法では、子どもの学習や行動、情緒面、社会性などの発達課題を感覚統合の観点から分析し、その課題へ専門的な治療的アプローチで支援を図ります。
▼感覚統合療法で期待できる効果
- 姿勢を保持する力の向上
- 感覚過敏の緩和
- 感覚を理解する力の向上
運動トレーニング
はさみを上手に使えない、なわとびがうまくできないなど体の使い方や動きのコントロールに課題がある子どもに対し、運動を通じて能力の向上を目指す療法です。「体力がつく」「体がうまく使えるようになる」など運動能力の向上だけではなく、心理的な発達も促せるのが魅力といえます。
▼運動トレーニングで期待できる効果
- 全身の協調性の向上
- 体力アップ
- 手先の不器用さの改善
- 自己肯定感の向上
- 社会性の向上
認知・行動の発達支援
発達障害のある子どもは、物事を極端に良い悪いで判断したり、一度の失敗を全ての場面に当てはめてしまったりする傾向があります。また、他人の考えを否定的に推測してしまったり、「自分はダメな人間だ」と自己否定的な思考を持ちやすかったりするのも特徴です。
療育では、発達障害のある子どもにしばしば見受けられるこの「認知の歪み」に対し、物事の理解や記憶、思考に関する能力を高めるようにアプローチをします。自分のいる環境の情報を基に、適切な行動へとつなげていけるための支援です。
▼認知機能の発達支援で期待できる効果
- 必要な情報を収集する力の向上
- 「自分はいま何をしたらいいのか」が理解できる力の向上
- こだわりや偏食の緩和
ライフスキルの取得
WHO(世界保健機関)は、日常生活で必要な基本的なスキルに以下の10の要素を掲げています。
- 意思決定
- 問題解決
- 創造的思考
- 批判的思考
- 効果的コミュニケーション
- 対人関係スキル
- 自己認識
- 共感性
- 情動への対処
- ストレスへの対処
とはいえ、発達障害のある子どもにとって、上記の項目を自然に身につけていくのはなかなか難しいものです。そのため療育では、トレーニングを通じて生活習慣や家事スキル、時間・金銭管理など、生活に必要最低限のライフスキルを学びます。
▼日常生活スキルの練習で期待できる効果
- 自分のことを自分でできるようになる力の向上
- 自己肯定感の向上
- 社会性の向上
学習支援
学習面の困難さを改善したり、学ぶ習慣を身につけたりするための療法です。「字の書き取りが苦手な場合は鉛筆の持ち方から始める」「集中力がない場合は楽しめるようなプリント作りや声掛けの工夫をする」など、子ども一人ひとりの特性に合わせながら進めていきます。
▼学習支援で期待できる効果
- 学習の基礎力向上
- 学ぶ意欲を養える
- 学習の楽しさを感じられる
- 集中力・持続力の向上
発達障害の療育の実施方法
療育では、子どもの特性や状況に合わせて支援内容が異なります。なかでも、発達障害のある子どもへの支援は、主に「個別療育」と「集団療育」の2種類です。
個別療育
子どもと支援員が1対1で行う療育です。一人ひとりの発達状況や困りごとに合わせて、きめ細やかな支援が期待できます。
また、1対1のコミュニケーションを通して、子ども自身が成功体験を積み重ねやすいのも魅力です。一方で、同年代の子どもとの接点が限られるため、社会性の育成が課題になる可能性があります。
総合的に見て、子どもの特性に応じて個別療育のメリットを最大限活かしつつ、他の療育形態とも組み合わせていくことが大切です
集団療育
複数の子どもたちが集まり、ゲームやものづくりなどを通じて集団生活に必要なソーシャルスキルやコミュニケーション能力の向上を図る療育です。ルール付きのゲームやスポーツ、音楽活動、グループディスカッションやロールプレイングなど、施設によってさまざまなプログラムを実施しています。
グループ療育のメリットは、同年代の子どもたちとの交流を通じて、言葉遣いや行動、感情コントロールなどを学べる点です。社会性の発達や集団での適応力を養いながら、集団生活に関する困りごとにも取り組めます。
一方で、集団行動が苦手な子どもにとっては、強いストレスを感じやすい方法です。個別のケアが行き届きにくい点からみても、子どもの特性を踏まえつつ、個別療育と適切に組み合わせていけるのが理想と考えられています
発達障害のある子どもが療育を受けるメリット
発達障害の診断と療育はよくセットで聞くけど、本当にメリットがあるの?
そのように考える方もいらっしゃると思います。
しかし療育は、専門家の指導を通して、子どもの特性に合った関わり方や支援の方法を学べる場所です。そのため、ご家族自身の子育ての悩みや孤独感も軽減しやすくなります。
また、早期からの適切な支援を受けることで、二次障害の予防につながるのも療育を受けるメリットです。
発達障害の子どもが利用できる療育機関
療育を受けられる機関として主に以下のようなところがあります。
施設に通う方法(通所型)がとられることが多いですが、施設に一定期間宿泊して療育を受ける場合(入所型)もあります。
通所支援型
児童発達支援センター
未就学児に対し、専門的な療育サービスを提供する施設です。主に日常生活での基本的な動作の指導や、集団生活への適応訓練などを行います。
▼児童発達支援センターについて詳しくはこちら
放課後等デイサービス
小学生から高校生までの就学児童に対し、生活能力の向上に必要な訓練や地域との交流などを行う施設です。学校帰りや長期休暇中に利用できます。
▼放課後等デイサービスについて詳しくはこちら
保育所等訪問支援
保育所や幼稚園、小学校などに専門職員が訪問し、集団生活に必要な訓練やスタッフへのアドバイスをする方法です。日常の保育・教育のなかで発達支援を受けられます。
医療機関
小児科、精神科、リハビリテーション科などで、医療的な視点からの支援を受けられます。言語聴覚士や作業療法士など、専門家による個別的な支援も可能です。
▼療育センターについて詳しくはこちら
入所支援型
福祉型障害児入所施設
日常生活で必要な基本的動作の指導や、集団生活への適応訓練を受けられます。
医療型障害児入所施設
発達支援といった福祉サービスだけではなく、医師の治療も並行して受けられます。
療育を受ける場所や頻度は、子どもの特性やニーズに応じて異なり、自治体や専門家と相談しながら決めていきます。療育を始めたいと思ったらまずは主治医や自治体の障害福祉担当課、ソーシャルワーカーなどに相談しましょう。
発達障害の療育を始める前に押さえておくとよいポイント
療育は、発達障害のある子どもの成長を支えていくための心強い味方といえます。そのため、まずは子どもの特性をよく理解し、家族で支援方針を共有するのが大切です。
また療育では、子どもの評価を行いながら、状況に合わせて計画の見直しをします。そのため、医療や福祉の専門家と連絡を密に取り、信頼関係を築いていくことも欠かせません。
さらに、利用可能な制度やサービスについての知識を定期的に収集すると、常に新鮮な情報に触れられます。
情報の収集にはファミケアもぜひ活用してみてね!
我が子に寄り添った療育を見つけよう
これまで「療育はなんだかハードルが高い」と感じていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。発達障害のある子どもへの療育は、決して「修行」ではありません。子どもの特性を理解し、その子らしい成長を支援するための取り組みです。
たとえ療育を受けても、すぐに効果が現れるものではないかもしれません。しかし、長期的な視点で取り組めば、子どもの「できた」を積み重ねるきっかけにできます。
子どもに合った療育を見つけるための相談は、地域の福祉課や保健センター、医療機関などで受け付けています。一人で抱え込まず、まずは専門家に相談することから始めましょう。
▼家庭でもできる関わりはこちら
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