障がいのある子どもとの暮らしは、さまざまな不安や疑問がつきものです。診断を受けた直後や子どもの成長に伴って新しい課題に直面した際、途方に暮れたことのある方もいるのではないでしょうか。
しかし、日々の「どうしたらいい?」を解決する場所さえ知っていれば、障がい児育児の適切な知識や支援方法、新しい情報を得られます。この記事では、自閉スペクトラム症の娘と暮らす筆者が、障がい児を育てる親が必要な知識や支援を得るための方法について、経験談も含めながら詳しく解説していきます。
「知ること」で精神的負担が減る
子どもの障がいについて初めて知ったとき「どこに相談すればいいの?」「どこから情報を得ればいいの?」と困った経験はありませんか?
適切な勉強方法が得られず、孤立感や孤独感を感じたことがある
誰に相談したらいいかわからず、一人で悩んでいた
そのような声も少なくありません。しかし反対に、障がい児育児についての情報を得られる場所や新しい知識を得られた後、
一人で頑張っていた過去の自分に教えてあげたい
勇気を出して障がい児育児コミュニティへ参加したけど、こんなに見える世界が違うんだと思った
このような声も聞かれます。「知らなかった」を「知っている」にどれだけ変えていけるかで、精神的な負担も大きく変わってくるのです。
障がい児育児についての学びを得られる方法
とはいえ、一体どこでどんなふうに障がい児育児の勉強をしたらいいの…?
そう感じる方もいらっしゃいますよね。障がい児育児についての学びを得られる主な方法は、次の通りです。
地域のペアレントトレーニングを受ける
ペアレントトレーニングとは、障がいのある子どもの親を対象とした育児支援プログラムです。多くの自治体や医療機関、福祉施設で実施されており、専門家のガイダンスのもと、子どもとの関わり方や効果的な育児テクニックを学べます。
ペアトレーニングで学べること
- 子どもの行動の理解と対応方法
- コミュニケーションスキル
- ストレス管理とセルフケア
- 家族全体でのサポート体制の構築方法
ペアレントトレーニングは、発達障害者支援センターや保健センター、病院、クリニックなどさまざまな機関や組織で受けられます。
ペアレントトレーニングは、厚生労働省の「発達障害児及び家族等支援事業」においても、各自治体に対して推奨されているトレーニングです。専門家からの直接指導を受けられるのに加え、同じ悩みを持つ親同士で情報交換もできるのが利点といえます。「頑張っているのは自分だけじゃない」という安心感を得られ、孤立感の軽減にもつながりやすいのが魅力です。
ピアサポートから情報を見つける
ピアサポートとは、同じような経験を持つ人同士が支え合う活動です。お互いの体験談を語り合うことで同じ視点から共感が生まれ、お互いに寄り添い合ったりわかり合ったりできます。
ピアサポートグループで得られるメリットは、次のようなものです。
- 経験者からの実践的なアドバイス
- 情緒的なサポートと共感
- 地域の資源や支援サービスについての情報交換
- 長期的な視点からの子育てのイメージづくり
障がい児育児に関するリアルな体験を語り合うことで、同じ経験者にしかわからない喜びや悩み、不安などの胸の内を共有できます。説得やカウンセリングとは別の切り口で、自然体な共感や共有、学び合いができるため、孤独感や疎外感が軽減されるのが特徴です。
ピアサポート探しは、インターネットでの検索はもちろん、各自治体の地域活動支援センターなどでもご相談できます。
自分の知らなかった話を聞けるため、新たな発見に繋がったり視野が広がったりするのもピアサポートの大きな魅力といえます。
コミュニティを活用する
地域のコミュニティも、障がい児育児に関する情報やサポートを得る重要な場所です。コミュニティに参加すれば、利用しやすい施設や理解のある医療機関など地域に根ざした具体的な情報を得られるだけでなく、長期的な支援ネットワークも構築できます。
例えば、活用できるコミュニティは次のようなものです。
- 家族会
- 患者会
- オンラインコミュニティ
- SNSグループ
- オンラインサロン
- 地域のペアレントトレーニング
ポータルサイトから情報を得る
近年では、障がい児育児に特化したポータルサイトもあります。これらのサイトでは、次のような情報を効率的に収集可能です。
- 障がいの種類別の基礎知識
- 利用可能な福祉サービスの概要
- 教育や就労に関する情報
- 最新の研究や治療法についての情報
ただし、情報の信頼性には十分注意を払いましょう。基本的には、公的機関や専門家の監修が入っているサイトの利用がおすすめです。また、厚生労働省などの省庁が出している情報、新聞社などの大手メディアが出している情報、大手企業が発信している情報なども信頼性が高いといえます。
SNSで情報収集
ソーシャルメディアは、リアルタイムで最新の情報を得たり、同じ立場の親とつながったりするのに有効なツールです。特に次のような使い方が効果的といえます。
- Facebookのグループ:障がい種別や地域ごとのグループに参加し、情報を交換する
- X(旧Twitter)のハッシュタグ:関連するハッシュタグをフォローし、最新の情報をキャッチする
- Instagramのアカウント:日常生活の様子や工夫を視覚的に学ぶ
SNSを通じて得られる情報は即時性が高く、また他の親の実体験に基づくものが多いため、実践的で役立つものが多いでしょう。
ファミケアにも障がい児・疾患児の親が利用できるアプリがあるよ!
ただし、個人の体験や意見が中心となるため、情報の取捨選択には注意が必要です。
専門の支援機関に相談する
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害のある方やその家族を支援するための専門機関です。主に次のようなサービスを提供しています。
- 発達障害者とその家族、周囲の人の発達支援に関する相談支援
- 発達支援
- 発達検査の実施
- 支援計画の作成や助言
- 児童相談所や知的障害者更生相談所、医療機関との連携
発達障害者センターには、専門的な知識を持つスタッフが常駐しています。そのため、個別の状況に応じた具体的なアドバイスを得られるのが魅力です。
▼全国の発達障害者センターはこちらから検索いただけます
医療的ケア児支援センター
医療的ケア児支援センターは、医療的ケアを必要とする子どもとその家族を総合的に支援する専門機関です。主に次のようなサービスを提供しています。
- 医療的ケアに関する相談や情報提供
- 関係機関との連携調整や支援計画の作成
- 医療的ケアに関する専門知識の普及や関係者の育成
- 地域の医療・福祉・教育機関との連携強化
なお、難病や小児慢性特定疾患児への総合的な支援をしている地域もあります。
医療的ケア児支援センターには、地域によって異なりますが、医師、看護師、ソーシャルワーカー、療法士など他種職の専門家が常駐しています。そのため、医療的ケア児とその家族の多用なニーズに対して、ワンストップで包括的な支援を受けられるのが魅力です。
イベントや勉強会に参加する
障がい児育児に関するイベントや勉強会は、最新の情報や専門知識を得る絶好の機会です。イベントに参加することで、書籍やウェブサイトだけでは得られない生の情報や、最新のトレンドを把握できます。
- 講演会:著名な専門家による最新の研究成果や支援方法の紹介
- ワークショップ:実践的なスキルを学ぶ参加型のセッション
- 交流会:他の親や支援者との情報交換の場
上記のようなイベントや勉強会は、地域の障害児支援センターや特別支援学校、療育施設などで定期的に開催されています。自治体の福祉課など、障がい児育児に関する行事の情報を提供している行政機関もあるため、広報誌やウェブサイトをチェックしてみるのもおすすめです。
障がい児育児の情報をはじめ、同じ関心を持つ人々とのネットワークづくりにも役立ちます!
支援者へ相談する
子どもの成長と発達を支援するうえで、療育の先生や訪問看護師など、今子どもと関わっている支援者の存在を身近に感じている方も多いのではないでしょうか。子どもの状態を知っている支援者に相談することは、適切な支援や対応方法を学べる貴重な機会です。積極的に活用していきましょう。
例えば、次のような専門家へ相談可能です。
- 医療機関の専門医:障がいの診断や医学的なアドバイスを得る
- 療育施設の先生:日常生活での具体的な対応方法を学ぶ
- 特別支援教育コーディネーター:学校生活や教育に関する相談をする
- ソーシャルワーカー:利用可能な福祉サービスについて相談する
障がい児育児について相談する際は、具体的な状況や気になる点を明確に伝えると、より明確なアドバイスを得やすくなります。
包括的な支援につなげるために、具体的な日常生活での困りごとや行動で気になる点と併せて、子どもの長所や好きなことも伝えてみましょう。定期的に相談することで、子どもの成長に合わせた支援を受けられますよ。
とはいえ、毎日忙しすぎて日常生活での困りごとを細かく覚えておけない…なんていう方もいらっしゃいますよね。筆者もつい取りこぼしてしまうため、日常生活のなかで「これは相談したい」と思う困りごとに直面するたびにさくっとメモへ残しています。走り書きでもOK。
障がい児育児についての学びを得るメリット
障がい児育児についての学びを得ると、子どもの行動や反応をより深く理解できるようになります。そのため、適切な対応や支援を探りやすくなるのが魅力です。
また、専門的な知識や他の親の経験から、効果的な支援方法や対応策を学べます。これにより、日々の育児がより楽になったり、孤独感や孤立感を和らげられたりするのも利点です。
自閉スペクトラム症の娘と暮らす筆者は、コミュニティを形成したり長期的な視点から子どもの成長や将来について学んだりしたことで、先を見据えた準備や計画を立てやすくなりました。
障がい児育児についての学びを得る際に気を付けるポイント
前提として、障がいの特性や程度は個人によって大きく異なります。得た情報を鵜呑みにするだけではなく、自分の子どもの特性に合わせて適用することが大切です。
また、情報収集の際は、信頼性に注意を払いましょう。前述したように、できるだけ公的機関や専門家が監修している情報を参考にするのがおすすめです。
なお、ピアサポートや体験談は貴重ですが、医療や教育に関する重要な決定は、必ず専門家の助言を踏まえて実践してください。
あまりに多くの情報に触れすぎると、かえって混乱してしまう場合があります。必要な情報を選択的に取り入れ、消化する時間を持つことが大切です。
子どものペースを大切にしながら柔軟に情報を取り入れる姿勢を
専門家の助言や他の親との交流は、貴重な情報源です。しかし、全てを鵜呑みにするのではなく、自分の子どもに合わせて取り入れることが大切です。
特性や成長のペースを尊重しながら、柔軟な姿勢で新しい知識や方法を選んでいきましょう。
「こんな風に情報を取り入れています!」「こんなおすすめ情報あります!」などの声は、ファミケアの公式SNSやアプリからぜひ聞かせてね
【参考】
ペアレント・トレーニング実践ガイドブック|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000653549.pdf
「発達障害の子の学び」孤立する親 つながりで作る情報サイト|NHK 首都圏ナビ
https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20230519b.html
図表9-1-6 発達障害児者及び家族等支援事業(新規)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/18/backdata/02-09-01-06.html
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