発達障害のある子どもを育てながら「この子は障害者手帳をもらえるのかな」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。支援を受けるためには障害者手帳が必要だと聞き、どの手帳を申請すればよいのか迷われている方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、発達障害で障害者手帳はもらえるのかや手帳を申請できる条件、取得できなかった際に受けられる支援まで、わかりやすく解説していきます。
障害者手帳とは
障害者手帳とは、障害のある方が公的支援やサービスを受けるための証明書です。身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者福祉手帳の3種類がありますが、日常会話では単に障害者手帳と総称されることが増えてきました。これらの手帳を持つことで、障害者総合支援法に基づくさまざまな支援制度を利用できるようになります。
▼障害者手帳の詳しい役割やメリット・デメリットについては、こちらの記事からご覧いただけます

発達障害で障害者手帳はもらえる?
発達障害がある場合に取得できる可能性があるのは、3種類の障害者手帳のうち「精神障害者保健福祉手帳」か「療育手帳」です。
精神障害者保健福祉手帳とは
精神障害者保健福祉手帳とは、精神障害や発達障害のために、長期にわたって日常生活や社会生活に影響がある場合に交付される手帳です。
療育手帳とは
療育手帳とは知的障害のある方に交付される障害者手帳です。そのため、発達障害のある方で、知的障害(知的発達症)を伴う場合には取得できる可能性があります。
障害者手帳には年齢制限がありません。そのため、大人になってからでも取得可能です。
▼療育手帳について詳しくはこちらの記事で解説しています

療育手帳の申請方法
療育手帳を申請したい場合は、お住まいの地域の自治体が設けている障害福祉の窓口で手続きを始めます。ただし、その場ですぐに手帳が発行されるわけではなく、発達検査の実施や生活環境についての詳しい聞き取り調査が必要です。
なお、検査を行う機関は年齢によって分かれており、18歳未満の方は児童相談所、18歳以上の方は知的障害者更生相談所で実施されます。

療育手帳は通常10歳くらいまでに取得するケースが多いものの、大人になって発達障害の診断を受けてから療育手帳を取得する方もいらっしゃいます
▼療育手帳の詳しい申請方法についてはこちらの記事からご覧いただけます


発達障害で障害者手帳がもらえないケースって?



発達障害の特性がみられれば障害者手帳は必ずもらえるの?
このような疑問を持たれた方に向けて、ここからは「発達障害であっても障害者手帳の取得ができないケース」について解説します。
医師からの診断を受けていない場合
障害者手帳を申請するには、医師による発達障害の診断書が必要です。そのため、発達グレーゾーンなど、発達障害の特性がみられても診断が付かないケースでは交付されません。
診断を受けてから6カ月未満の場合
精神障害者保健福祉手帳の申請条件の一つに「長期にわたって精神疾患があり、生活に制限が出ている人」があります。そのため発達障害の診断を受けた初診日から6ヶ月経過するまでは、障害者手帳の申請自体が行えません。
障害の程度が基準に満たない場合
精神障害者保健福祉手帳は、長期にわたって日常生活や社会生活に影響がある場合が取得条件です。つまり発達障害があると診断されても日常生活や社会生活に大きな支障がなく比較的自立していると評価された場合は、手帳の取得はできません。
発達障害で障害者手帳をもらえなくても受けられる支援は?



障害者手帳をもらえなかった場合、支援は受けられないということ…?
ここまで記事をお読みになり、そう不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、障害者手帳を取得できない場合でも、以下のような支援を受けられる可能性があります。
公的機関での相談・情報提供
お住まいの自治体の子育て支援課
地域の子育て支援課では、発達障害の子どもとご家族向けの相談支援を行っています。育児の悩みや発達に関する相談には、障害者手帳の有無は関係ありません。また、利用できる福祉サービスの情報提供や、必要に応じて専門機関の紹介も行っています。



自治体によって担当する課の名称は異なります。お住まいの自治体のホームページなどであらかじめ調べてから行くのがおすすめです
子ども家庭支援センター
子ども家庭支援センターは、子どもや家族が抱えるさまざまな問題についての総合的な相談窓口です。 障害者手帳の有無に関係なく、18歳未満の子どもがいる家庭からのあらゆる相談への対応、ショートステイや一時預かりなどの在宅支援サービスの提供、個別のケース支援、子育てサークルのバックアップ、地域ボランティアの育成などを行っています。
また、地域における子育て関連の情報提供も行っているため、子育てに役立つ地域の情報がわかるのも便利です。
児童相談所
児童相談所は、児童福祉法に基づいて設置されている行政機関です。児童心理司や児童福祉司などの専門のスタッフが在籍しており、18歳未満の子どもに関するあらゆる相談に無料で対応しています。
発達障害者支援センター
発達障害に特化した専門的な相談・支援機関です。発達障害のある方やそのご家族に対して、生活相談、就労支援、発達支援などを提供しています。また、発達障害に関する情報提供や啓発活動も行っています。



発達障害と診断されていない、いわゆる「グレーゾーン」の子どもの気になる特性や発達上の課題についても、児童福祉司や児童心理司が相談に応じてくれます
障がい児通所福祉サービスの利用
障害者手帳がない場合でも、通所受給者証があれば以下の障害福祉サービスを利用できます。
▼通所受給者証についてはこちらの記事で解説しています


児童発達支援事業所
児童発達支援事業所は、就学前の子どもを対象です。発達段階に応じて、日常生活における基本的な動作の指導を行ったり、集団生活への適応訓練などを行っています。
▼児童発達支援についてはこちらの記事で解説しています


放課後等デイサービス
放課後等デイサービスは、学校就学中の障がいのある子どもが対象です。放課後や夏休みなどの長期休暇中に、学習や就労に向けた支援を行ったり、生活能力向上のための訓練などを提供したりする施設です。
▼放課後等デイサービスについてはこちらの記事で解説しています


障害者手帳や支援について気軽に相談してみよう
発達障害の特性があることに気づいても、すぐに障害者手帳の取得につながるわけではありません。しかし、手帳を持つこと自体のマイナス面はほとんどないため、条件を満たしている場合は申請を検討してみてもよいのではないでしょうか。
もしも障害者手帳がなくても、利用できる支援サービスは数多くあります。まずは身近な相談窓口に足を運び、発達障害のある方やそのご家族をサポートするさまざまな機関とつながってみてください。
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