障がい児育児では、疾病や障がいの程度に合わせて特別な介護用品や医療機器が必要になる場合があります。特殊で専門性の高い用具であるため高価なものも多く、継続的に利用する必要があることから、経済的な不安を感じている方も多いのではないでしょうか?
この記事では、経済的な負担軽減に繋がる制度である「日常生活用具給付等事業」について解説します。
日常生活用具給付等事業とは
日常生活用具給付等事業とは、障害者自立支援法に基づく地域支援事業の中の一つであり、障がいのある人の日常生活を円滑にするために必要な用具の給付を行う制度です。実施主体は各市区町村となります。
制度の対象者と認められれば、必要な用具の購入の際に費用の助成を受けることができます。
日常生活用具給付事業を利用できる対象者
利用できる対象者は「重度の障がい者、障がい児、難病患者等で、日常生活用具を必要とするもの」と規定されています。つまり、身体障害者手帳、療育手帳もしくは精神障害者保健福祉手帳を持っていて、国から障がい者として認定を受けている方が対象です。
ただし、国が定める難病の患者で必要性が認められた場合には、障害者手帳を持っていなくても制度が利用できるケースもあります。
日常生活用具の種目
日常生活用具給付等事業の対象となる用具は主に5種目に分けられ、それぞれに具体的な品目が定められています。以下の表は、厚生労働省の提示する日常生活用具の品目を一部抜粋したものです。
介護・訓練支援用具 | 特殊寝台、特殊マット、訓練いすなど |
自立生活支援用具 | 入浴補助用具、頭部保護帽、移動・移乗支援用具など |
在宅療養等支援用具 | ネブライザー(吸入器)、電気式たん吸引器など |
情報・意思疎通支援用具 | 点字ディスプレイ、情報通信・支援用具(パソコン周辺機器やアプリケーションソフト)など |
排泄管理支援用具 | ストマ装具、紙おむつなど |
【参照】日常生活用具給付等事業の概要|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/toukatsu/suishin/dl/04.pdf
それぞれの品目ごとに対象者や耐用年数、上限額が決まっています。例えば、介護・訓練支援用具であれば下肢または体幹機能障害の方が対象となります。
対象者の基準や上限額は各自治体によって若干異なっていたり、変更されたりする場合があります。自治体のホームページに日常生活用具の種類や対象者についての一覧表が記載されていることも多いので、お住まいの自治体の最新の情報を確認してください。
例えば、大阪市では「特殊寝台」の対象は学齢時以上で下肢または体幹機能障がい2級以上、限度額が154,000円、耐用年数は8年です。つまり160,000円の特殊寝台を購入したとすると、154,000円までは制度が適応されて原則1割の自己負担となりますが、限度額から超えた6,000円は全額自己負担となります。つまり自己負担の合計額は21,400円となる計算です。また、8年の間は同じ特殊寝台の項目での再給付は受けることができません。
【参照】重度障がい者日常生活用具給付基準|大阪市福祉局障がい者施策部
https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/cmsfiles/contents/0000626/626534/kyuufukijun_besshi123.pdf
日常生活用具給付事業の所得制限と自己負担額
日常生活用具給付事業を使って用具を購入する場合、自己負担額は基本的に購入額の1割となります。更にほとんどの自治体でひと月の自己負担上限金額を設定しているため、購入金額がいくらであっても自己負担は37,200円までに抑えられるところが多いです。
ただし自己負担額や自己負担の上限金額は自治体ごとに設定しているため、前年度の世帯課税状況とお住まいの地域によって異なることに注意が必要です。
また、日常生活用具給付等事業は所得制限があり、前年度所得が市区町村が定める一定金額以上であった場合は制度の対象外となり、全額自己負担となります。
障がい児の日常生活用具に対する所得制限撤廃の声の高まりを受け、所得制限を撤廃している自治体もあります。例)神戸市、高知市など
日常生活用具給付事業の申請方法
日常生活用具給付事業を使いたい時は、必要書類を準備してお住まいの自治体の窓口に提出します。注意していただきたいのは、必ず購入前に申請が必要な点です。日常生活用具給付は、購入後の申請は認められませんので、利用の際はまず窓口で相談しましょう。
申請先
自治体の担当窓口(障がい者福祉課など)に申請します。
申請に必要なもの
- 障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神福祉保健手帳)
- 日常生活用具給付申請書
- 世帯状況申告書
- 印鑑
- 購入する用具の見積書、内容が分かるカタログ等
その他、医師の診断書または意見書が必要になる場合があります。必要な書類は自治体によって異なる可能性がありますので、あらかじめ自治体の窓口で確認しておきましょう。
申請の流れ
申請する品目によって対象者が異なりますので、まずは申請の前に自治体の障がい福祉担当窓口で、子どもが対象となるかどうかを確認しましょう。給付を受けることができる場合、必要な申請書類を受け取ります。Webサイトからで書類一式をダウンロードできる自治体もあります。
日常生活用具給付等事業では、身体障害者手帳の障害名で対象者が規定されているものも多く、場合によっては手帳の再判定をしなければいけない可能性があります。筆者の住んでいる自治体の場合、紙おむつ支給の対象者は「脳原性移動機能障害」でしたが、息子はその障害名を取得していなかったため、手帳の再判定の手続きをして障害名を追加しました。複数の障がいに該当する子どもで、その中の一つの障害名しか取得していないケースでは注意が必要です。尚、障害名を追加しなくても、診断書の提出で同程度の障がいであると認められれば対象としてくれる自治体もあります。まずは一度、窓口で相談しましょう。
用具を購入する業者を決め、どの用具を購入するか検討します。購入するものが決まったら、金額の見積書を出してもらいましょう。申請の際に、購入業者や見積額の申告が必要となります。
申請に必要な書類の記入をします。診断書や意見書が必要な場合は、医師に相談し作成してもらいます。
必要書類を持って窓口で申請をします。
自治体が申請を認めた場合、給付決定通知と給付券が届きます。決定通知が届いたら、購入業者に連絡しましょう。
支払い方法には、償還払いと代理払いの二通りがあります。
償還払いとは、用具の受け取りの際に購入代金を一度全額支払う方法です。その後、自治体窓口に給付券の持参をして、助成分の還付手続きを受けます。一方、代理払いでは自己負担金の支払いのみで用具を受け取ることができます。給付券は購入業者に提出し、業者から自治体に助成分の金額を請求します。
支払い方法についても、自治体に確認しておきましょう。
日常生活用具給付等事業が使えるかどうか確認しよう!
疾患児・障がい児との暮らしの中では、一般的な育児では使用しない専門的な用具が必要となることがあります。その用具を購入する際に、日常生活用具給付事業を使えば費用の助成を受けることができます。
自分の子どもが対象であることがわからなかったり、制度自体が知られていなかったりして、本来使用できるはずなのに使用されていないケースも少なくありません。ぜひ一度、自治体のホームページで対象品目を確認してみてください。
この記事を読んで、日常生活用具給付等事業について知っていただき、経済的な負担や不安を軽減する手助けができたら嬉しいです。
この記事はこちらのサイトを参照して作成しました。
日常生活用具給付等事業の概要 |厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/yogu/seikatsu.html
後半 2. 給付手続きの流れ|知っておこう福祉用具の給付制度2|特集記事|福ナビ
https://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/contents/tokushu/fukushiyogu2/02_02.html
神戸市:日常生活用具・補装具の利用者負担
https://www.city.kobe.lg.jp/a95295/kenko/handicap/zaitakufukushi/kigu/s039-1.html
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