もしも障がいのある子が生まれたら…と考えたことはありますか?多くの方は、障がい児を身近に感じる機会はなく、自分とは直接関係ないと感じているかもしれません。筆者もその一人でした。障がい児の誕生は偶発的で、どの家族にも可能性はゼロではありません。
では、障がい児はなぜ生まれるのか、その要因について紹介していきます。
障がい児はなぜ生まれる?
令和5年版「障害者白書」によると、日本の障がい児の数はおよそ89万6000人です。18歳未満の全人口1935万人のうちの4.63%であり、22人に1人は何らかの障がいを抱えているという計算になります。
障がい児が生まれる要因は様々で、染色体異常などの先天性の要因や出産時のトラブルなどの後天性の要因があげられます。障がいの種類は大きく分けると、身体障害・知的障害・精神障害の3種類ですが、細かく分類すると更に多様な障がいがあります。1つの障がいだけでなく、重複して障がいを持っていることも多く、障がいの程度も軽度から重度まで様々です。
このように、障がい児とひとことに言っても、障がいの種類や程度など十人十色です。このような子どもたちを支えるための支援もたくさんあります。
【参考】令和5年版 「障害者白書」内閣府
URL:https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r05hakusho/zenbun/pdf/ref.pdf
障がい児の主な要因
障がい児の生まれる要因は、大まかに先天的なものと後天的なものに分けられます。ここでは、赤ちゃんがお腹の中にいる時から産まれてくる時までにフォーカスを当てて紹介します。
先天性染色体疾患
染色体の数の違いなどによって引き起こされる疾患です。
人間の体は細胞が集まってできています。細胞の中には人間を作る設計図であるDNAが入っており、DNAがかたまりとなったものを染色体といいます。
ヒトの染色体は2本1組で23セット(46本)と決まっています。その内訳は、長い順から1〜22番と名づけられた44本の常染色体と、性別を決定する2本の性染色体です。染色体に異常が起こると、設計図がかわってくるために疾患が起こります。
染色体疾患で有名なものにダウン症があります。ダウン症は21トリソミーとも呼ばれ、21番の染色体が1本多く、3本あるために起こる疾患です。他にも、染色体の一部が欠けていたり、通常ひも状である染色体が、輪っか状になってしまうことで起こる疾患など、様々なものがあります。
先天性遺伝子疾患
遺伝子の異常により引き起こされる疾患です。前述の通り、人間はDNAを設計図として作られます。DNAに記載されている情報のことを遺伝子といい、人間の遺伝子の数は約3万個です。遺伝子は両親から1つずつ子どもへ受け継がれますが、何らかの原因で遺伝子の情報が書き変わってしまうことがあります。
書き変わってしまった遺伝子を変異遺伝子と呼びます。
人間は誰でも変異遺伝子を数個持っています。ですが、それだけで疾患の原因となる変異遺伝子はほんの一部です。
1つの変異遺伝子では疾患が起こらなくても、パートナーとの遺伝子の組み合わせや、複数の遺伝子の要因が重なることで疾患が引き起こされることもあります。
【参照】よくある質問|遺伝カウンセリング外来|九州大学病院 臨床遺伝医療部
先天性感染症
ママのお腹のなかで感染症にかかったことが原因で、赤ちゃんが障がいをもって生まれてくることがあります。有名なものでは、先天性風疹症候群があげられます。その他にも先天性梅毒や先天性トキソプラズマ感染症、先天性サイトメガロウイルス感染症などがあります。
低体重児・早産児
赤ちゃんの生まれた時の体重は、2500g以上が適正です。2500g以下で生まれた赤ちゃんのことを、低出生体重児といいます。赤ちゃんの体重が少ない原因としては、赤ちゃんに栄養を与える胎盤やへその緒のトラブル、子どもの先天性の異常などがあげられますが、一番多いのは早産です。
赤ちゃんがお腹の中で成長し、いつ生まれても安心な時期は妊娠37週からです。それ以前に生まれた子どもは、お腹の中で十分な成長をしないまま生まれてくるため、体重が少なく、身体的にも未熟です。
現代の日本の医療では、500g程度で生まれた赤ちゃんでも育つようになりました。しかし、生まれた時の体重が少なく、お腹の中にいる期間が短かったほど、より未熟なまま産まれることになるため、脳性まひや発達障害などの障がいをもつ可能性が上がります。
新生児仮死
新生児仮死は、出産時に何らかの理由で赤ちゃんに十分な酸素が送られず苦しい状態となり、生まれた時に呼吸がうまくできなかったり、心臓の動きが悪かったりする状態です。新生児仮死には軽度と重度があり、全出産中の10%に起こるといわれています。
赤ちゃんの心拍が低下する原因としては、以下のような出産時のトラブルがあります。
- 赤ちゃんにへその緒が巻き付いてしまう
- 赤ちゃんが生まれるよりも先にへその緒が子宮から出てきてしまう
- 赤ちゃんが生まれる前に胎盤が剥がれてしまう(胎盤早期剥離)
その他、難産であったり、原因不明で赤ちゃんの心拍が低下するケースもあります。
新生児仮死の後遺症は幅広く、軽度では後遺症を残さない場合から、発達障害や知的障害などをきたす場合があります。一方、重度のケースでは寝たきりであったり、自力での呼吸や食事が難しく、気管切開や経管栄養などの医療的ケアが必要になることもあります。
新生児髄膜炎
髄膜炎とは、脳や脊髄を包んでいる髄膜と言う部分にウィルスや細菌が入り感染を起こす状態のことです。中でもB群溶血性連鎖球菌という菌の感染の場合、出産時にママの産道から感染するケースもあります。新生児の髄膜炎は進行が早く、脳や神経に重い後遺症を残すことも多いです。
疾患や障がいの状況は成長と共に変わる
生まれる子ども一人ひとり障害の原因や程度は様々です。生まれた時の状態のままずっと同じというわけではなく、成長と共に疾患や障害の状況は変わってきます。
ある程度成長して手術をすることで改善を認めることのできる疾患もあれば、体の成長やリハビリを重ねることによって改善する障がいもあります。具体的には、心臓の疾患で酸素吸入をしていたが、手術で心臓の状態が良くなったため必要でなくなる。リハビリを重ねて食事を食べられるようになる、などです。
一方で、成長とともに新たな障がいが出てくる場合もあります。例えば、発達障がいの子どもでは睡眠障害を併せ持つケースが多いです。小さなころには大きな問題とならなくても、小学校に入学して集団生活を始めるころから、不眠もしくは過眠により生活に支障がでてくることがあります。
進行性の疾患では、ものを飲み込みにくくなる嚥下障害や、呼吸をする力が弱くなる呼吸障害などが現れることがあります。
成長と共に改善する障がいもあれば、併発することもあるため、生まれた時に障がい児だからずっと同じ状態、ということはありません。
障がい児が生まれる可能性はどの家族にもある
障がい児が生まれる要因は様々で、どれも偶発的なものです。我が子の健康を願わない親などいませんが、障がい児は一定の確率で産まれてくるものなのです。どの家族にも、障がい児が生まれる可能性はあります。
筆者が子供の障がいを知った時、「自分の子供が障がいを持って生まれるとは夢にも思わなかった…」と思いました。多くの障がい児のママやパパも同じことを思ったのではないでしょうか?障がい児の世界は思っていたよりもっと身近な世界だったことに、母となって初めて気が付きました。
世の中にはさまざまな疾患や障がいを抱えた子ども達がおり、それぞれに困難な道のりを乗り越え、一生懸命生きています。そんな子ども達や家族の支えとなれるよう、ファミケアも頑張っていきます!
今回の記事はこちらのサイトを参照して執筆しています。
・新生児仮死 | 産科医療LABO
URL:https://www.sanka-iryo.com/trouble/neonatal-distress/
・新生児髄膜炎について|メディカルノート
URL:https://medicalnote.jp/diseases/%E6%96%B0%E7%94%9F%E5%85%90%E9%AB%84%E8%86%9C%E7%82%8E
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