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子どもの心を落ち着かせるカームダウンスペースとは?効果や作る方法、実用例などをご紹介

子どもの心を落ち着かせるカームダウンスペースとは?効果や作る方法、実用例などをご紹介
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感情を落ち着かせるための場所として活用されている「カームダウンスペース」。空港などの公共施設に設けられたりニュースで取り上げられたりと、名前を聞いたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

でも実際、カームダウンスペースって何?

どんな効果があるの?

家でも作れる?

そんな疑問をお持ちの方に向けて、今回はカームダウンスペースの活用で得られる子どもへの効果や簡単に作る方法、自閉スペクトラム症の娘と暮らす筆者の実用例などをご紹介します。

目次

カームダウンスペースとは?

カームダウンスペースは、直訳すると「落ち着くための空間です。周囲の音や光、においなど外部からの刺激で興奮したりストレスを感じたりした場合に、外からの音や光、目線を遮って、安全に気持ちを落ち着かせられる場所を指します。

特に障がいのある子どもは、感覚の過敏さに日々戸惑ったり、強い不安で常に緊張していたりするケースも少なくありません。そのため、自分の感情をコントロールして落ち着きを取り戻すことをサポートする目的で、カームダウンスペースの需要は高まっています。

カームダウンスペースを使うのはどんなとき?

カームダウンスペースは、主に以下のような場面で活用されています。

  1. 感覚過敏による不快感が強いとき
  2. 予定の変更などで不安が高まったとき
  3. 他の子どもとのトラブルで興奮しているとき
  4. 学習や活動で疲れてしまったとき
  5. パニック発作や感情の爆発が起きそうなとき


例えば、突然の大きな音に驚いて不安になった自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもがカームダウンスペースで過ごせば、高ぶった感情が鎮まりやすくなる、といった効果があります。

また、集中力を使い果たして疲れてしまった注意欠如・多動性障害(ADHD)の子どもがカームダウンスペースで休憩すれば、気持ちをゆっくりとリセットしやすくなります

カームダウンスペースはどんな子どもに効果があるの?

カームダウンスペースは、不安や癇癪、パニックなどで気持ちが落ち着かない場合に活用できる空間です。そのため、自閉症スペクトラム障害(ASD)注意欠如・多動性障害(ADHD)など、過度の刺激からパニックを起こしやすい発達障害のある子どもに特に有効といえます。

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その他、障がいの有無に関係なく、ストレスや不安を感じやすい子どもにも効果が期待できます

カームダウンスペースの効果

カームダウンスペースがどんなものかはなんとなくわかったけど、実際にどんな効果があるの?

そう気になっていらっしゃる方も多いはずですよね。カームダウンスペースの活用で得られる具体的な効果には、以下のようなものが挙げられます。

穏やかな環境でストレスを軽減できる

外部からの刺激が遮断されているカームダウンスペースで過ごすと、ストレスホルモンの「コルチゾール」の分泌を抑制する効果が期待できます。そのため、穏やかな気持ちでゆっくりと気持ちを落ち着けられるのが魅力です。

感覚刺激を調整しやすくなる

障がいのある子どもは、特定の感覚刺激に対して過敏または鈍感な反応を示す場合があります。カームダウンスペース内では、光、音、触覚などの刺激を個別に調整できるため、自分にとって心地よい刺激レベルを見つけ、感覚の調和を取り戻しやすいのも大きな魅力です。

「ここは自分だけの特別な場所」「いつでも利用できる」と知ることができれば、日常生活全体に対する安心感が増します。

感情をコントロールしやすくなる

カームダウンスペース内では、自分のペースで感情と向き合う時間を持つことができます。さらに、利用する習慣をつけられれば、感情が高ぶる前に自ら落ち着く場所を求める能力も身につくかもしれません。

経験を積み重ねれば、長期的には日常生活での感情コントロール能力の向上にも繋がります。

集中力の回復につながる

障がいのある子どもは、長時間集中するのが難しい場合があります。カームダウンスペースで好きな音楽を聴いたり簡単なパズルをしたりすると、脳を優しく刺激しながらリラックスしやすいのがメリットです。

これらを習慣にすると、子どもは自分で「集中力が切れたな」と気づき、上手に休憩を取れるようになります。

子どもと一時的に距離を取ることで親も冷静になれる

子どもは可愛いけど、自分の感情やストレスをどうコントロールしたらいいかわからない…

障がいのある子どもとの暮らしのなかで、そう感じたことのある方も多いのではないでしょうか。

子どもがカームダウンスペースを利用している間は、親も一時的に育児から解放され、自分自身をリセットする機会を得られます。自分の感情を整理して冷静さを取り戻すために、たとえ短くても「休憩時間」として捉えてみましょう。

家にカームダウンスペースを取り入れる方法

子どもが落ち着ける空間を自分で作るのってちょっとハードルが高そう…!

ここまでお読みになり、そう感じた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実はカームダウンスペースは、自宅の一角を利用して簡単に作ったり手軽に購入できたりします。

家でカームダウンスペースを手作りする

まずは、自宅でカームダウンスペースを手作りする方法をご紹介します。

1. 場所の選定

はじめに、カームダウンスペースを作る場所を選びましょう。子どもの身長に合わせたサイズが確保でき、囲まれている感覚を得られる場所が理想的です。

一部屋まるまる用意しなければならないわけではありません。部屋の隅クローゼットの中など、子どもにとって落ち着けるスペースが確保できればOKです。スペースがあれば、部屋の中にテントを立ててカームダウンスペースを作る方法もあります。

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ポイントは静かで人通りの少ない場所を選ぶことです

2. 快適性と安全性を確保する

場所を決めたら、次は快適性と安全性を確保します。クッションや柔らかいマットを敷いて座り心地をよくしたり、小さなテーブルや本棚を設置したりなど、子どもにとって安心できる空間を作りましょう。

お気に入りの毛布やぬいぐるみ、感覚遊びができるおもちゃやストレッチボールなどは、気を紛らわせるアイテムになります。

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癇癪時に物を投げてしまう子どもの場合は、怪我を避けるために硬いものや尖ったもの、鋭利なものなど危険な道具は置かないようにしましょう

3. 光を調整する

視覚過敏のある子どもの場合は、窓から入る日光や室内の電気の光の調整も必要です。外からの光はカーテンやブラインドで調整できるようにしましょう。室内の光は、間接照明調光可能なライトを活用するのがおすすめです。

4. 音環境を整備する

聴覚過敏のある子どもの場合は、外部からの音を調整できる工夫も大切です。耳栓ノイズキャンセリングイヤホンは、大きな音から子どもの耳を守ったり静かな環境を手軽に作れたりします。

また、耳障りな音を消してくれるといわれているホワイトノイズや自然音を流せる小型スピーカーを設置してみるのもおすすめです。

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筆者の娘は、耳の中にイヤホンが入っている感覚が苦手だったため、耳当てで対応しています

5. 視覚的な刺激を調整できるようにする

必要に応じて、光以外の視覚的な刺激も調整してみましょう。落ち着いた色合いの壁紙やファブリックは、気が散るのを抑制できます。

また、視覚的なスケジュールや感情を示せる絵カードは、うまく言葉にできない感情を視覚的に落とし込むのに役立ちます。

6. ルールの設定

カームダウンスペースは感情を落ち着かせるための大切な場所ですが、使い方や滞在時間のルールはあらかじめ決めておくとよいでしょう。ルールを伝える際は「〇分経ったら必ず出る」ではなく「〇分経って落ち着いたら出よう」とできるだけポジティブな言葉を使うと、子どもにとって“安心してもいい空間なんだ”というイメージを保てます。

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ルールは、口頭で伝えるよりも紙に書いて壁に掲示しておくと、子どもが自分のタイミングでいつでも確認しやすくなります

カームダウンスペースを購入する

それでもやっぱり、1から作るのはどうやっていいかわからない

そんな場合は、カームダウンスペースに使えるグッズをさくっと購入するのも一つです。カームダウンスペースとして使用できるテントやボックスをはじめ、感覚遊び用のおもちゃや感覚過敏を軽減するためのアイテムなど、さまざまなものが展開されています。

▼感覚過敏研究所オンラインストア「KANLAKU FACTORY」

https://kankakufactory.com/search?q=%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%80%E3%82%A6%E3%83%B3&options%5Bprefix%5D=last

▼特別支援グッズを取り扱う通販サイト「SQ Labo 特別支援ドットコム」

https://tokubetushien.com/?mode=cate&cbid=2717759&csid=0

https://tokubetushien.com/?mode=cate&cbid=2482626&csid=0

カームダウンスペースの実用例

参考までに、自閉スペクトラム症の娘が実際に自宅で活用しているカームダウンスペースを簡単にご紹介します。

実際に自宅で活用しているカームダウンスペース。部屋の一角にマットを敷いて区切られている。また、硬いものや尖ったもの、鋭利なものなど危険な道具は遠ざけられている。
娘は癇癪が出現すると物を投げてしまう傾向があるため、硬いものや尖ったもの、鋭利なものなど危険な道具は遠ざけています。
実際に自宅で活用しているカームダウンスペース。部屋の一角にレジャーシートを敷いて区切られている。
かならずしも個室である必要はなく、子どもが落ち着けるなら、小さなテントやクローゼット内でも構いません。場所の確保が難しい場合は、お部屋の一角にマットやレジャーシートを敷いて区切るだけでも十分です。

カームダウンスペース使用時の注意点

カームダウンスペースを効果的に活用するためには、いくつかの重要な注意点があります。

罰として使用したり強制したりしない

カームダウンスペースを「うるさいからカームダウンスペースにいなさい」など罰のように使用したり、行くことを強制したりしてしまうと、子どもはこの空間を否定的に捉えるようになり、本来の効果が失われてしまいます。あくまで「子ども自身が選択して使える場所」として位置づけましょう。

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「ここに行けば落ち着ける」と前向きな認識を持てるように、普段から肯定的な言葉かけをしながら使用を促すことが大切です

時間制限を設ける

例えば、タイマーを使って視覚的に時間を示したり、終了5分前に声かけをしたりしながら「カームダウンスペースにいる時間のゴール」を示すのがおすすめです。

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パニック症状などが発現した際、一般的には静かな場所で15〜20分程度過ごすと落ち着くとされています。ただし、時間が来ても落ち着かない場合は少し延長するなど、臨機応変に対応して構いません。

定期的に見直す

カームダウンスペースの効果を最大限に引き出すためには、定期的な見直しと調整が欠かせません。例えば、月に一度程度子どもと一緒にスペースの内容を確認し「この遊具はまだ好き?」「他に欲しいものはある?」などと話し合ってみましょう。

また、専門家のアドバイスを取り入れながら、スペースの配置使用ルールを適宜更新するのも大切です。

他の対処法と併用する

カームダウンスペースは非常に有効なツールですが、他の対処法と組み合わせて使用すれば、より効果的に子どもの感情コントロールをサポートできます。深呼吸法マインドフルネス軽い運動など、子どもに合った他のリラックス方法を教えましょう。

カームダウンスペースは「子ども自身が選択して使える場所」

カームダウンスペースは、外部からの予期せぬ刺激や変化から守られた、いわば「避難所」です。「ここに行けば落ち着ける」と子どもが前向きな認識を持てるように、普段から肯定的な言葉かけをしながら使用を促してみてください。

もしも子どもがカームダウンスペースを使いたがらない場合は、その気持ちを尊重し、他の方法でのサポートを検討しましょう。時には、親と一緒に過ごしたり外で体を動かしたりするのが効果的な場合もあります。

専門家の療育や家族全体でのコミュニケーション改善など、カームダウンスペースを中心としながら、多角的なアプローチで子どもの感情調整能力を育んでいきましょう。


ファミケアの掲載記事およびコラムに関しては、当事者および専門家によって作成しておりますが、全ての方に当てはまる情報ではございません。投稿された情報の利用により生じた損害について、ファミケア運営元では責任を負いかねますので、あくまでもご家庭での判断のもと参考情報としてご利用ください。また、特定の施設や商品、サービスの利用を推奨するものではありません。

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この記事を書いた人

日本心理学会認定心理士、サービス介助士。「自分らしさを忘れない」をコンセプトに、自閉スペクトラム症の娘との暮らしをゆるりと楽しむママです。フリーライターとして臨床心理・介護・児童福祉・療育関連のコンテンツ制作および書籍編集などに携わりながら、児童福祉施設へも訪問しています。

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