
気管切開が必要と言われたのだけど、この子は声が出せなくなるの?
医師から気管切開が必要と言われたとき「もうこの子の声は聞けないの?」と不安でどうしようもない気持ちになったパパ・ママも多いのではないでしょうか。
気管切開をしたら絶対声を出せないというわけではありません。声を出せるかどうかは気管切開の種類や子どもの状態によって異なります。
この記事では看護師である筆者が、気管切開後でも声を出せる理由や声を出すのが難しいケースなど、気管切開後の発声について解説します。あわせて、気管切開後の発声練習の進め方についても触れているので参考にしてみてください。
この記事を監修してくれた先生
医師 おkら先生


呼吸器専門医、がん薬物療法専門医、総合内科専門医。嚥下機能評価研修会修了、医療型児童発達支援/放課後等デイサービスの嘱託医。仕事大好き、2児の母。長男がダウン症、気管切開をしている医療的ケア児。障害児を育てる環境が優しくなって欲しい。その為に自分に何か出来る事はないかと日々考えています。
X:@oke_et_al,ブログ:じょいく児。
気管切開とは
気管切開は、首の前側にある気管に小さな穴(気切孔)を開け、空気の通り道を確保する手術です。何らかの原因によって通常の呼吸ではうまく空気を取り込めない場合や痰の喀出が困難等様々な理由で行われます。気管切開後には、気切孔にカニューレと呼ばれる管が挿入されることが多いです。
気管切開には、単純気管切開と喉頭気管分離の2種類があります。


単純気管切開は、気道を確保するために気管に穴を開ける手術で、声帯がある喉頭(こうとう)と気管はつながったままです。


一方、喉頭気管分離は気管を喉頭から完全に切り離す手術で、食べ物や痰などの分泌物が繰り返し気管に入ってしまう場合に選択されます。
▼気管切開について詳しくはこちらの記事を参考にしてください


気管切開しても声は出せる?
気管切開後も声を出すことは可能です。ただし、声を出せる可能性があるのは、原則として単純気管切開を行っている場合です。喉頭気管分離では、声帯と気管がつながっていないため、声を出すことが難しくなります。
声が出る仕組み
私たちが声を出すとき、肺から吐き出した空気が気管を通り、喉頭にある声帯を振動させます。この振動が声になるのです。さらに、声帯を通る空気の量や速さ、声帯の動き方によって声の高さや大きさが変わります。
つまり、空気が声帯を通れば、声を出すことはできるのです。
気管切開後に声を出すのが難しいケース
気管切開後に声を出しにくくなるのは、吐く息が声帯まで届きづらくなる場合です。
以下のような状態では発声が難しくなります
- カフ付きカニューレを使用している
カフとはカニューレの先端付近についている風船状の部分です。空気を入れてふくらませることで、気管とのすき間をふさぐ役割があります。カフがあると空気が上に抜けにくくなるため、声が出にくくなります。
- 分泌物が多い状態
声帯周辺に痰などがあると、うまく声帯が振動しにくくなります 。
- 人工呼吸器を使用している
呼吸のタイミングや設定によって、声帯へ空気が流れにくくなります 。



声が出にくい理由は一つではないことが多いです。カニューレの種類や人工呼吸器の有無など、複数の要因が重なっていることもあります。
気管切開後に声を出すには?
気管切開後に声を出すためには、吐いた息が声帯を通る必要があります。そのため、以下のように吐いた息が声帯へ流れやすい状態では、声を出せる場合があります。
カフなしカニューレを使う
カフなしのカニューレを使うことで、吐いた息がカニューレの外側を抜けて声帯の方へ流れやすくなります。
子どもの場合は声帯の発達を促すためにも、もともとカフなしのカニューレを使用している場合が多いです。



息子は単純気管切開をしていますが、カフなしカニューレ+人工鼻で発声しています。( ただし、これは例外的なケースであり、あくまで我が家の場合です。 )
スピーチカニューレとスピーチバルブを使う
スピーチカニューレは、背面に小さな穴があるカニューレです。吐いた息がスピーチカニューレの背面の穴から声帯へと流れることで、声帯を振動させやすくなります。
さらに、スピーチバルブと呼ばれる器具を合わせて使用することもあります。スピーチバルブは、息を吸うと開き、吐くと閉じる弁の構造になっており、吐いた息がすべて声帯を通るため、声を出す事が可能になります。
どの方法が合うかは、子どもの呼吸状態や使っているカニューレの種類によって異なります。主治医と相談しながら進めましょう。
▼カフあり・なしのカニューレの違いやスピーチカニューレについては以下の記事で解説しています


気管切開後の発声練習の進め方
発声の練習を始めるときは、まずは主治医に相談しましょう。カニューレの変更やスピーチバルブを使用することで、子どもの呼吸に影響を与える可能性もあります。子どもの状態を注意深く観察しながら、医師の判断のもとで行う必要があります。
主治医の許可があれば、発声練習を開始することができます。SpO2(酸素飽和度)の変化や子どもの顔色、疲れ具合を細かく確認しながら進めていきます。無理をすると呼吸状態が不安定になることもあるため、焦らず少しずつ進めていきましょう。



吐く息の使い方を少しずつ学んでいくイメージで取り組むと、子どもにとって無理のないペースで進められます
また、発声練習は言語聴覚士(ST)と一緒に進めると安心です。言語聴覚士は発声だけでなく、飲み込みや口腔機能も専門としているため、子どもの状態に合った方法を一緒に考えてもらえます。
声の出方には個人差があります。ある日突然声が出ることもあれば、少しずつ発声できる時間が伸びていく場合もあ。すぐに変化が見られなくても、日々の積み重ねで変わっていくことがあります。
気管切開しても声を出せる可能性はある
気管切開をしていても、声を出せる可能性があります。
ただし、声の出しやすさはカニューレの種類や人工呼吸器の有無、子どもの状態によって異なります。発声練習を進めるときは主治医や言語聴覚士に相談しながら取り組むことが大切です。
我が子が話せるようになるかどうか、不安を感じることも多いと思います。しかし、 気管切開をしながら話せるようになった子どもたちは確かにいます。



筆者の友人の子どもは、単純気管切開をしていますが2〜3歳頃には発語があり、中学生になった現在はスラスラ話すことができています。
一人で抱え込まず、周りの力を借りながら、子どものペースに合わせて進んでいきましょう。














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