小児慢性特定疾病に該当する子どもの医療負担を軽減するための医療助成制度が、小児慢性特定疾病の医療費助成です。「小児慢性(しょうにまんせい)」や「小慢(しょうまん)」という略称で呼ばれることもあります。
子ども医療費助成と何が違うの?
子ども医療費助成があるのに小児慢性も必要?
など、わからないことが多い方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、小児慢性特定疾病の医療費助成制度と子ども医療費助成との違いや、どちらも取得する必要があるのかなどを詳しく解説します。
小児慢性特定疾病の医療費助成制度とは
国が指定した子どもの慢性疾病群を「小児慢性特定疾病」といいます。小児慢性特定疾病を患うと、治療が長期にわたることなどから治療費負担が大きくなることが多いため、医療費助成などの支援があります。
この小児慢性特定疾病を患う子どもの医療費を助成する制度のことを、「小児慢性(しょうにまんせい)」「小慢(しょうまん)」という略称で呼ぶことがあります。
小児慢性特定疾病の医療費助成制度の内容
小児慢性特定疾病の医療費助成制度では、小児慢性特定疾病にかかっている子どもがいる家庭の医療費負担を軽減することを目的に、患児の家庭が支払う医療費の一部が助成されます。
制度の内容の代表的なものは以下のとおりです。
- 窓口の負担額が2割に軽減する
- 薬局で調剤された薬代、訪問看護や訪問リハビリ等の費用も対象になる
- 自己負担上限額に達した場合は支払いが不要になる
- 入院中の食事が半額になる
- 日常生活用具の給付が受けられる
実際の助成内容は自治体によって大きく変わるため、詳細はお住まいの市区町村の担当窓口やソーシャルワーカーなどに確認しましょう。
▼小児慢性特定疾病の医療費助成制度については、こちらの記事を参考にしてください
子ども医療費助成制度とは
子ども医療費助成は、子どもにかかる医療費を自治体が援助する制度のことです。
子どもの医療費は公的医療保険が7〜8割を負担し、残りの2〜3割を市区町村が補助することで自己負担が抑えられる仕組みになっています。この市区町村の補助割合や対象年齢は、全国的に統一されたものではなく、自治体ごとに異なります。
子ども医療費助成の金額
子ども医療費助成の助成自体はすべての自治体で実施されていますが、助成金額は市区町村によって異なります。子どもにかかる医療費負担を0円とする自治体もあれば、500円程度までの間で自己負担額が決まっている場合もあります。
また同様に、自治体によっては子ども医療費助成にかかる所得制限が設けられている場合もあります。
2023年に東京23区が高校生以下の医療費無償化を実施して以降、同年8月には横浜市も中学3年生までの医療費を無償化するなど子ども医療費助成拡大の動きが全国的に加速しています。
子ども医療費助成の対象年齢
助成金額と同じく、子ども医療費助成の対象となる年齢も自治体によって異なります。
令和4・5年の調査では、就学前までを対象としている都道府県が最も多く、市区町村別でみると通院及び入院はともに18歳年度末(高校生)までとしている自治体が最も多い結果になっています。
小児慢性特定疾病の医療費助成制度と子ども医療費助成制度との違い
ここからは、小児慢性特定疾病の医療費助成制度と子ども医療費助成制度の違いや小児慢性を申請する必要があるのはどんなケースか、また、どちらの制度も併用できるのかなどを解説します。
小児慢性特定疾病医療費助成と子ども医療費助成の比較表
小児慢性特定疾病医療費助成 | 子ども医療費助成 | |
財源 | 国 | 各自治体 |
対象となる疾病 | 制度の対象として定められた疾病(小児慢性特定疾病) | 疾病等による制限はなし |
対象年齢 | 初回申請は18歳まで、継続申請は20歳未満まで | 乳幼児までを対象とする自治体が多い(就学以降は自治体差が大きい) |
初回申請 | 自分で行う | 自分で行う(出生届や引っ越した場合転入届と一緒に申請することが多い) |
申請から交付までの日数 | 1~2か月程度 | 即日交付される場合もある |
有効期限 | 原則1年 | 通常1年 |
更新申請 | 自治体の窓口等で更新(自治体から通知がくる場合と、通知がこない場合がある) | 自治体から通知がきて郵送等で更新 |
医師の診断書 | 必要 | 不要 |
子ども医療費助成があるのに、小児慢性特定疾病も必要?
子どもの医療費負担が0円という自治体の場合、そもそも医療費が発生しないので「小児慢性特定疾病は必要ない」「申請・更新などの手続きや上限管理の手間が増えるだけ」という声がよく聞かれます。
しかし、小児慢性特定疾病によるメリットが大きいケースもあるので、お子さんの場合はどうかを確認してみることが大切です。
小児慢性特定疾病の医療費助成制度を申請するかどうかの確認ポイント
以下のようなケースでは、小児慢性特定疾病を利用することでメリットがあると言えるでしょう。
子ども医療費助成を使っても医療費の自己負担が発生する場合
子ども医療費助成を使っても医療費が無料にならない自治体にお住まいの場合、小児慢性特定疾病を使うことで医療費が抑えられる可能性があります。
所得制限があり子ども医療費助成を利用できない場合
小児慢性特定疾病の医療費助成には所得制限はありません。そのため、もし自治体の子ども医療費助成が所得制限で利用できない場合、小児慢性特定疾病の医療費助成で医療費負担を下げられる可能性があります。
子どもが重症認定されている、もしくは人工呼吸器の使用をしている場合
小児慢性特定疾病の重症認定をされた場合や人工呼吸器を使用している場合、医療費の自己負担上限額が低く設定されることがほとんどです。その場合、ゆくゆく子ども医療費助成でも負担金額が発生する年齢になったとしても、小児慢性によって医療費負担は低額または0円になるため、メリットが大きいと言えます。
子どもの入院が多い場合
小児慢性特定疾病の医療費助成によって入院中の食事代が半額になります。そのため、入院が多いお子さんや、また長期入院の可能性がある場合にはメリットが大きいです。
県外の病院を受診する機会がある場合
お住まいの都道府県外の病院を受診する機会がある方は、小児慢性特定疾病の医療費助成を利用することで立て替え払いの上限額が少なくなります。
子ども医療費助成は県をまたぐと受給者証が使用できないため、一度子ども医療費助成が適用されない医療費を支払う必要がありますが、小児慢性特定疾病は県をまたいでも利用できるため、自己負担上限金額以上に支払う必要はありません。
障害者手帳で申請できない日常生活用具が必要な場合
お子さんがまだ幼くて障害者手帳を申請できない場合や、障害者手帳での日常生活用具給付に該当しない医療・福祉機器を使いたい場合でも、小児慢性特定疾病の助成制度を利用することで給付対象となることがあります。
▼詳しくはこちらの記事を参考にしてください
筆者も、住んでいる自治体では子ども医療費助成により医療費が発生しないので小児慢性を申請するか迷いましたが、取得してからの1年間だけでもリハビリ入院での食事代半額や、県外の病院への通院や検査入院で計3回以上活用することになりました。
小児慢性特定疾病の医療費助成と子ども医療費助成は併用できる?
小児慢性特定疾病の医療費助成と子ども医療費助成の併用ができるかどうかは、自治体によって異なります。
小児慢性特定疾病と子ども医療費助成の併用が認められている自治体では、子ども医療費助成を使っても医療費が無料にならない場合に、小児慢性特定疾病の医療費助成を使うことで医療費が抑えられる可能性があります。
詳しくは病院の窓口やお住まいの自治体に確認してみましょう。
小児慢性特定疾病の医療費助成と子ども医療費助成の違いを理解して、制度を利用しよう
小児慢性特定疾病の医療費助成も子ども医療費助成も、住んでいる自治体や通院状況などによって助成の内容や条件が異なります。
わからないことや不安なことがある場合には、自治体の窓口やかかりつけの病院のソーシャルワーカーなど助成制度に詳しい専門家へ相談してみましょう。
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