経管栄養が必要と医師に言われたけど何かわからない
経管栄養には種類があるの?
そんな疑問にお答えすべく、今回は息子が経管栄養である筆者が経管栄養とは何かや経管栄養の目的、対象となる人、メリット・デメリット、種類などを解説します。
経管栄養とは
経管栄養は、口から食事をすることが難しい子どものための栄養補給方法です。胃や腸にチューブを入れ、そこから直接胃や腸に栄養剤や水分、ペースト食などの流動食を入れることで栄養をとります。
中心静脈栄養など点滴で栄養補給する方法もありますが、胃や腸から栄養を吸収する利点が大きいため、胃や腸に問題がなければ経管栄養を選択します。
経管栄養の目的
経管栄養の目的は、生きるために必要な栄養補給を行うことです。障がいや疾患により食べることや飲み込むことが難しい子どもであっても、経管栄養を使うことで必要となる栄養を胃や腸から吸収することができ、成長していくことができます。
また、食べることが難しい入院中の子どもが自宅に帰るために医師から経管栄養を提案されることもあります。経管栄養は家族が手技を習得すれば自宅でも栄養をとることができるため、在宅生活を送ることが可能です。
経管栄養の対象となる人
経管栄養の対象となる人は、口からの栄養補給が難しい人です。
たとえば、以下のような方が該当します。
- 障がいや疾患により食べることや飲み込むことが難しい人
- 飲み込むことが難しく、誤って気管に入ってしまう可能性がある人
- 食べることや飲み込むことはできても、食事への意欲がない人
- 口に食べ物を入れたがらない、または吐き出してしまう人
経管栄養のメリット・デメリット
経管栄養にはメリット・デメリットがあるので、それぞれ紹介します。
経管栄養のメリット
直接胃や腸に栄養を注入することで、口からものを食べたり飲み込んだりしなくても確実に栄養を吸収できることが経管栄養のメリットです。
食べる量が少ない子どもや嘔吐が多くて食べることはできても栄養の吸収まで至らない子どもは、体重が増えづらく低血糖や脱水などの心配もあります。経管栄養を使えば、それを防止し確実に栄養をとることが可能です。
また、消化管の運動や消化液の分泌などの消化管機能を促進し、腸管の免疫を活発にすることによって、全身の免疫状態の改善にもつながります。
経管栄養のデメリット
経管栄養のデメリットは、種類によっては自己抜去のリスクがあったり、ケアが必要だったりする点です。
経鼻経管栄養の場合、顔にテープを貼ってチューブを留めておかないといけません。そのため、子どもの手が届きやすい位置にチューブがあり、自分で抜いてしまうこと(自己抜去)があります。注入中にチューブを抜いてしまうと気管に栄養剤が入ってしまい、窒息や誤嚥性肺炎になる危険性があるため常に注意が必要です。
また胃ろうや腸ろうでは、液漏れをすることで皮膚トラブルを起こしてしまうこともあります。
それぞれの経管栄養のデメリットを理解し、自己抜去や皮膚トラブル防止策を考えなければいけません。
▼経管栄養の自己抜去や防止方法はこちらの記事で解説しています!
経管栄養の種類
経管栄養には、経鼻胃管栄養(NGチューブ)、経鼻腸管栄養(EDチューブ)、胃ろう、腸ろうの4種類があります。通常は子どもの状態に合わせて医師からどの経管栄養を選択するか提案されることがほとんどです。
でも、実際にすすめられたらどんな種類があるのか知った上で決断したいですよね。そこでここからは、それぞれの特徴を簡単に説明していきます。
経鼻胃管栄養(NGチューブ)
NGチューブを用いた経鼻胃管栄養は、鼻からチューブを挿入して胃に留置する方法です。子どもの状態によっては口から挿入することもありますが、鼻からの方が固定しやすく、自己抜去のリスクも少なくなります。
手技を習得すれば、チューブが抜けてしまっても家族が挿入し直すことが可能です。
筆者の息子も最初は経鼻胃管栄養でしたが、逆流してしまうことが多かったため、途中から経鼻腸管栄養へと変更になりました。
経鼻腸管栄養(EDチューブ)
EDチューブを用いた経鼻腸管栄養とは、鼻から胃にチューブを挿入し、胃の出口である幽門(ゆうもん)を超えて十二指腸または空腸に留置する方法です。
チューブは一般的に内径が細いものを使うため、詰まりやすいことに注意が必要です。
NGチューブと異なり、挿入は医師がX線透視下で行います。そのため、チューブが抜けてしまった際や入れ替えの際には病院の受診や入院が必要です。親や訪問看護師、病院の看護師では挿入できません。
筆者の息子も経鼻腸管栄養ですが、閉塞防止のため2ヶ月に1回入院してチューブの交換を行っています。1度自宅で息子が自己抜去した際には、緊急外来に行き、外科の先生にX線の透視下で挿入してもらいました。
胃ろう
胃ろうとは、胃に小さな穴を開け、栄養カテーテルという管を留置する方法です。
胃ろうをつくるには手術が必要になりますが、気管への誤挿入がなく、安全性が高いと言われています。
顔にチューブを固定して邪魔になったり、子どもの苦痛になりやすいチューブの入れ替えがなかったりなど、利点が大きいです。栄養剤だけでなく、ミキサー食やペースト食も注入できるのが特徴です。
▼子どもの胃ろうに関する経験談はこちらで紹介しています
腸ろう
腸ろうとは、腸に小さな穴を開け、十二指腸または空腸に栄養カテーテルを留置する方法です。
腸ろうには種類がありますが、患者が子どもですでに胃ろうを使用している場合は、胃ろうから十二指腸へのカテーテルを通す経胃ろう的十二指腸ろうにすることが多いです。
胃ろうよりも逆流が少なく、胃ろう同様に顔にチューブを固定して邪魔になったり、チューブの入れ替えによる苦痛がなかったりなどの利点があります。ミキサー食やペースト食を楽しめるのも特徴です。
経管栄養にしたら口からものは食べられないの?
経管栄養をしていても子どもの状態によっては口から食べ物を食べることはできます。経管栄養と口から栄養をとる経口摂取を併用している子もたくさんいます。ただ、誤嚥などのリスクがあるため、希望する際にはかかりつけ医に相談すると安心です。
また成長に伴って、食べることや飲み込むことができるようになり、経口摂取に変わっていく可能性もあります。
経管栄養について理解して経管栄養になるときに心の準備ができるようにしよう
チューブを通して直接胃や腸に栄養剤を入れる方法である経管栄養。食べることや飲み込むことが難しい子どもなどが直接胃や腸から必要となる栄養を吸収できるようにする栄養補給の方法です。
食べることや飲み込むことが難しい子どもの他にも、食事への意欲がない人や食べ物を口に入れたがらない人などにも、経管栄養は有効です。
経管栄養にはメリットやデメリットもあります。メリットは、口から栄養を摂取できなくても直接胃や腸から必要な栄養を吸収できることなどです。デメリットは、経管栄養の種類によっては自己抜去のリスクがあったり、ケアが必要だったりする点です。
また経管栄養には、経鼻胃管栄養、経鼻腸菅栄養、胃ろう、腸ろうの4種類があります。それぞれ特徴があるので、自分の子どもにはどの経管栄養が合っているのか知りたい場合は、病院の担当医に相談してみてくださいね。
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