言葉の発達がゆっくりな子どものコミュニケーションを支援するツールの一つが「絵カード」です。
そして近年では、スマートフォンやタブレットなどのデジタル機器を活用した「絵カードアプリ」の活用も広がりつつあります。
この記事では、さまざまな機能を持つ絵カードアプリの特徴や、発達障害児への効果的な活用法について詳しくご説明します。また、2024年現在のおすすめ絵カードアプリもご紹介いたしますので、ぜひ参考にしてみてください。
絵カードアプリとは?
絵カードアプリとは、スマートフォンやパソコンから、文字や手書きで主に自閉スペクトラム症・発達障害児への視覚的な支援ができるツールです。好きなイラストなどを自分で選択して絵カードを自作できるものや、アプリ画面そのものがボードになり手書きで絵カードのように指示を描けるものなど、さまざまな種類があります。
言語に支援が必要な子どもにとって、言葉や文章を使わずに意思疎通できる絵カードは、コミュニケーションの大切な手段です。それがアプリとなれば、子どもたちが自分の意図や欲求を表現できるだけではなく、保護者や支援者もよりスムーズに子どもとのコミュニケーションを図れます。
▼ 絵カードの有効なシーンや手作りのコツは、こちらの記事をご覧ください!

絵カードアプリの特徴と活用法

絵カードのアプリって、実際どんなふうに使えばいいの?
そんな方のために、絵カードアプリの特徴と活用法をご紹介します。
絵カードアプリのメリットと発達障害児への効果
絵カードアプリには主に次のような特徴があり、発達障害児のコミュニケーション支援に効果的です。
視覚的な情報が豊富で分かりやすい
そもそも絵カードには「イラスト」「指示」など視覚情報が豊富に盛り込まれています。そのため、文字や言葉だけでは伝えきれない内容を、子どもが直感的に理解しやすいのが魅力です。



これは絵カードと同様ですね!
必要に応じてカスタマイズできる
紙の絵カードを作り直したい場合、汚れやシワ予防のラミネート加工などの工程を一からしなくてはなりません。しかしアプリなら、個別のニーズに合わせて作成や編集を手軽に行えます。子どもの発達段階や興味関心に合わせてさくっと調整できるのは、アプリならではの魅力です。
家庭や学校など、さまざまな場面で活用できる
日常生活でのコミュニケーションツールとして絵カードを使う際、アプリならどこでも同じツールが使え、場面を選ばずに一貫したサポートができます。療育の現場だけではなく、家庭や学校など、場面を問わず発達障害児の理解のサポートが可能です。
携帯性に優れ、外出時の持ち運びが簡単
デジタル化された絵カードアプリは携帯端末に入れておけるので、外出先でも手軽に活用できて便利です。いつでもどこでも使えるため、紙の絵カードより携帯性が高くなります。
汚れや破損のリスクが軽減できる
紙で作成した絵カードももちろん便利ですが、雑に扱ってしまうとあっという間に破れたりシワシワになってしまったり…なんていうことも。アプリなら、汚れや破損のリスクが軽減できます。



冷蔵庫と壁の隙間にストッと落ちてしまった…!という失敗もありません
絵カードアプリの基本的な使い方
絵カードアプリの基本的な使い方は以下の通りです。
- アプリをインストールし、必要な絵カードを選択/作成する
- 環境やニーズに合わせて、絵カードを提示する
- 子どもの反応を見ながらコミュニケーションを図る
- 徐々に子どもの理解度に合わせて、絵カードの種類を増やしていく



絵カードアプリは、子どもの発達段階に合わせて柔軟に活用できます。保護者や先生と連携しながら、子どもの特性に合わせた使い方を見つけていくことが大切です。
おすすめの絵カードアプリ6選



絵カードアプリが便利なのは分かったけど、比べてみたいのでいくつか知りたい!
そんな方のために、おすすめの絵カードアプリを6つご紹介します。使いやすいものをぜひ見つけてみてくださいね。
アプリ1 : 絵カード・コミュニケーション
絵カードを並べて文章を作り、相手に見せることで言いたいことを伝えられるアプリ。音声再生もできるため、コミュニケーションのための音声出力型支援機器「VOCA」としても使えます。
▼ポイント
- 簡単に絵カードを並べられる
- 絵カードの配置が自由
- 新しい絵カードの追加が簡単
- 絵カードが発語する
- 有料(¥1,200)
絵カードコミュニケーション
URL:https://maho-prj.org/app/app-detail/?app_content_id=251
アプリ2 : 絵カードボード
紙にペンで絵や文字、線を書いて見せる視覚支援と同じことを画面で行えるアプリです。相手に見せるだけではなく、支援を受ける本人が手書きをする、絵カードを動かす、タップして拡大表示する、タイトルを読み上げるなどさまざまな操作ができます。
▼ポイント
- 無料
- 紙とペンのように自由に描ける
- テンプレートは自作可能
- 絵カードをタップするとWebページが表示される絵カードブックマーク付き
- 絵カードをタップするとYouTube動画が再生される絵カードYouTubeプレイヤー付き
アプリ3 :視覚支援シンボル「さがすんです。」
インターネットで公開されている視覚支援に使えそうな素材を、フォルダにいれて利用管理できるアプリです。使いやすい名前を付けて保存できるため、数多くの素材を簡単に管理できます。
▼ ポイント
- 無料
- ネット上のイラストを検索し名前を付けて保存
- いらすとやの画像を検索して保存可能
- 素材はAir Dropやメールなどで他のiPadなどにも送信可能
視覚支援シンボル「さがすんです。」
URL:https://apps.apple.com/jp/app/%E8%A6%96%E8%A6%9A%E6%94%AF%E6%8F%B4%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%83%AB-%E3%81%95%E3%81%8C%E3%81%99%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%99/id1095084521?uo=4
アプリ4 : 絵カードタイマー
シンプルで見やすいタイマーに、絵カード表示機能が加わったアプリ。時間の感覚をつかむための支援ツールに適しています。残り時間が、視覚的に分かりやすく表示されるのが魅力です。同時に絵カードが表示されるため、何のための時間かを理解しやすくなります。
▼ ポイント
- 無料
- 直感的に使える
- 鍵マークで画面ロックが可能
- タイマーの色は変更OK
- シンボルの説明を文字で入力可能
- 1時間以内のタイムタイマーとして使用可能
- フォルダに保存済みのデータやカメラで撮影した画像を絵カードとして指定できる
アプリ5 : 絵カードカウンター
シンプルなカウンターと絵カードが同時に表示されるアプリ。病院やレストランの順番待ち、目的地までの駅の数、大事な予定までの残り日数、ゲームのプレイ回数など、時計では表現できない時間や回数などがカウンターで視覚的に表示されるため、終了の見通しが分かりやすくなり、子どもの安心に繋がります。
▼ ポイント
- 無料
- 時間ではなく回数を示すのに使える
- 「あと何回」「あと何人」「あと何日」など“終わり”が視覚的に分かる
- カウントアップ・カウントダウンが選べる
- 操作が簡単
アプリ6 : 絵カードメーカー.
スマホだけで絵カードが作成できるアプリ。素材を選んでタイトルを入れ、サイズ選択をしてプリンタから印刷します。家庭用プリンターのほか、コンビニなどのマルチコピー機、店頭プリント機でも印刷可能です。
▼ポイント
- 無料
- iPhone、iPad対応。Android未対応
- 印刷した絵カードは自動的にライブラリに追加され、次回も使用できる
- 絵カードは別のアプリや絵カードタイマー、絵カードカウンターでも使用可能
- 絵カード画像をSNS(X、Facebook、LINEなど)で共有できる
- タイトルだけ登録して後から絵カードを作成できる「タイトルメモ機能」付き
絵カードメーカー.
URL:https://apps.apple.com/jp/app/%E7%B5%B5%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC/id1370746347
番外編 : ザ・プロンプト!絵カードセンター
自閉スペクトラム症支援に特化した絵カードのサイトです。好きなイラストを選んでカードを作成し、ダウンロードできます。スマホやパソコン内の写真からも作成可能です。なお、画像を保存してプリントアウトすればすぐに絵カードとして使える「初心者向け」もあります。
▼ポイント
- 無料
- 初心者向け「簡単ダウンロード」か「自分で作成してダウンロード」かが選べる
- 使い方や作り方など詳しく説明があり、簡単に絵カードを作成可能
ザ・プロント!絵カードセンター
URL:https://ecard.theprompt.jp



これらのアプリは、いずれも発達障害児のコミュニケーション支援に役立つ機能が備わっています。特性や年齢、ご家庭の状況に合わせて、適切なアプリを選んでみてください。
絵カードアプリ活用のポイント
絵カードアプリは、次のように活用するのがおすすめです。
家庭と専門機関でアプリを共有する
家庭では、日常生活のさまざまなシーンで絵カードを提示することで、子どもとのコミュニケーションが円滑になります。「今日の予定」「いまの気持ち」「欲しいものは?」など、子どもの意思表示を促すのに効果的です。
放課後等デイサービスなどの専門機関では、スタッフと保護者が連携しながら活動時間にアプリを活用することで子どもの理解を深め、一貫したコミュニケーションの支援につなげられます。
家庭と学校が連携して絵カードアプリを活用することで、子どもの成長に合わせたきめ細かい支援が可能です。
発達段階に合わせた選び方をする
発達するにつれ、使う言葉が増えるだけではなく、絵カードを利用する目的が変わってきます。そのため、絵カードアプリを選ぶ際は、子どもの発達段階に合わせて選ぶことが大切です。
▼例えば…
- 言葉の理解を促したい場合:「単語ごと」の絵カードを作成できるアプリ
- 言葉の理解が十分ある場合:「行動が1枚」になった絵カードを作成できるアプリ
- 特性からくる「苦手」への対策の場合:困りごとに合わせた絵カードが作れるアプリ



『絵カードアプリの内容や操作の理解に時間がかかって、口頭での指示のほうがすぐに反応できる気がする…!』そんな場合には絵カードでのサポートが合っていない可能性があるため、通っている施設などで適切な方法を相談するのもおすすめです。
絵カードアプリで “いま” 必要な支援を
発達障害児のコミュニケーション支援において、絵カードアプリは非常に有効な手段です。子どもの“いま”の発達に応じた適切な支援が、スマートフォンやパソコンで効率的にできます。
ぜひ絵カードアプリを活用して、子どものコミュニケーション能力の向上を楽しく図ってみてください。



「アプリでこんな絵カード作ってみたよ!」のご報告は、ファミケア公式SNSまたはアプリなどで待ってるよ~
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