療育で大活躍するアイテムの一つ「絵カード」をご存知ですか?絵カードは、イラストや写真を使って状況を視覚化するツールです。言葉だけでは伝わりづらい内容でも、絵を見せることで伝わりやすくなります。
今回は、自閉スペクトラム症の娘と暮らしながら自宅でも絵カードを活用中の筆者が、絵カードの療育に向いている子どもや活用シーン、手作り方法、おすすめ商品などを詳しくご紹介します。
絵カードって療育や自宅でどんなふうに使うの?
絵カードがどんなものかは分かるけど、そもそも作り方が分からない…
そんな方はぜひ参考にしてみてくださいね。
絵カードとは?
絵カードは、日常の出来事や行動、好きなものなどをイラストや写真で表した視覚的な支援ツールです。一つひとつのカードに、簡単な絵と状況を説明する短い言葉が書かれています。
例えば「学校へ行く」という日課は、「靴を履く」→「バスに乗る」→「教室で勉強する」といった一連の絵で示せます。また、カードに「トイレ」の絵を描いて「行きたいときにこれを出してね」と言えば、言葉が出づらい子どもでも要求を伝えやすくなります。
視覚的に情報を絵と言葉を組み合わせることで、子どもが理解しやすい視覚的な情報になるため、主に療育で発達障害児向けに用いられるのが特徴です。
特に自閉スペクトラム症(ASD)の子どもに対して、目で見て理解できる環境を作ってサポートする「視覚支援」のツールで用いられることが多くあります。
絵カードを用いた療育に向いてる子どもって?
絵カードを使った療育は、特に次のような特性を持つ子どもに高い効果が期待できます。
- 言葉の理解や表出が苦手な子ども
- 先の見通しが立たない状況やルーティンの変化に強い不安を感じる子ども
- 目の前で起きているできごとから適切な情報をくみ取るのが苦手な子ども
- 視覚情報からの状況判断が得意な子ども
視覚的な手がかりとなる絵カードは、不安を軽減しながら指示や状況の判断を助けてくれます。また、生活リズムや行動のルール化にも役立ち、子どもの自立の促進に繋がるのも魅力です。
療育で大活躍!絵カードが有効なシーンと使い方
絵カードがどんなものかはなんとなく分かったけど、結局どんなシーンでどんな風に活用できるの?
そう思う方もいらっしゃるかもしれませんね。絵カードは、子どもの年齢や発達段階に合わせてさまざまな場面で活用できます。
毎日のルーティンを視覚で伝えたいとき
「言葉がけだけではうまく行動にうつせない…!」そんな子どもの場合は、行動の流れを絵カードで示せば「今するべきこと」が分かりやすくなります。
例えば、朝起きてから学校へ行くまでのルーティンでは「目を覚ます」「洗面所で歯を磨く」「制服に着替える」「ランドセルを持つ」「玄関でくつを履く」といった一連の行動を、絵カードを順番に並べて提示します。すると、子どもはルーティンを視覚的に把握でき、「次に何をすべきか」がひと目でわかります。
また「朝の支度が終わったらその絵カードを片付ける」などのルールも併せて決めておくと、行動と視覚的な手がかりがリンクしますよ。
日常生活の基本的な一連の流れを絵で視覚化することで、子どもは安心してスムーズに次の行動へ移れるようになります。ルーティン化を促し自立へと繋がる、絵カードの活用方法です。
不安な気持ちを和らげたいとき
初めて行く場所や普段と違うことに対して、子どもは強い不安を感じやすいもの。発達障害児の場合、特にその傾向が強い場合もあります。
そのため「こういうことをするよ」「この順番でいくよ」と絵カードで事前に伝えることで、子どもの不安を和らげられるのです。
例えば、病院へ行く場合「待合室で待つ」「先生に診てもらう」「お薬を受け取る」の一連の流れをあらかじめ絵カードで示すとします。すると「これから何をするの?何をされるの?」を明確にできるため、子どもはいつもと違う場面でも落ち着いて過ごしやすくなるのです。
「どこに行って、誰と会って、何をするのか」を、絵カードでできるだけ明確にしてあげるのが大切といえます
要求を伝える練習がしたいとき
絵カードは「これがしたい」「これをして欲しい」など、子どもが自分の要求を伝えるツールとしても有用です。
例えば、言葉自体は理解しているもののうまく話せない子どもの場合「トイレへ行きたい」「おなかがすいた」などの絵カードを、自分の要求と照らし合わせて主張する練習ができます。「自分の要求や思いを絵カードで伝えて、相手に応じてもらう」という大切なコミュニケーションに繋がるのです。
このとき、子どもが絵カードで示した要求を無視したり拒否したりしてしまうと、コミュニケーションへのモチベーションが下がってしまう場合も。そのため、子どもからの絵カードでの要求に必ず応えることが大切です。
相手の指示を聞く練習がしたいとき
「自分の要求や思いを相手に伝えて応じてもらう」というコミュニケーションだけではなく「相手の要求を理解して自分が応える」練習もできるのが、絵カードの魅力です。療育では、保護者や先生が絵カードで「今やって欲しいこと」を示し、それに子どもが応えるトレーニングをする場合があります。
絵カードは、単語のみ(例:「椅子」と「座る」が別)のものと、行動(例「椅子に座る」で1枚)のものとがあります。子どもの発達段階に合わせて、適切な絵カードを選ぶのがポイントです。
▼言葉の理解が未発達な子どもの場合
椅子、リモコン、ペン、おかしなど “モノ” のカードをいくつか用意する。「絵カードで提示した物を持ってこられた際にはしっかりと褒める」との練習を繰り返す。
▼言葉の理解がある程度できている子どもの場合
“モノ” と “行動” が一緒に書かれている絵カード(例:「椅子に座る」「ペンで書く」など)を示して、指示を出す。子どもと一緒にその行動をすることで、絵カードを見せられた際にするべき行動を認識させる。
絵カードはどのように準備する?
絵カードの使い方や活用シーンをお伝えしたところで、次は「絵カードの準備方法」です。絵カードは、実は意外と簡単に作れてしまいます。
丈夫な紙で手作りする
まずは、画用紙を活用して自分で作成する方法です。より子どもに分かりやすいイラストを描いてラミネート加工すれば、耐久性も抜群の絵カードに早変わり。既製品にはないオリジナルの絵カードを用意できるのが、手作りの魅力です。
絵カードを手作りする際の材料
- 画用紙や色画用紙
- マジック
- のり
- ラミネートフィルム など
絵カードの作り方
- 画用紙や色画用紙をカードの形に均等にカットする
- 素材用のイラストや指示の内容を手書きする
画用紙を均等にカットするのが難しい場合、名刺カードなどを代用してもOKです!
ダウンロードする
手作りしてみたいけど、イラストを描くのはちょっと苦手で…
そんな方におすすめなのが、絵カードにしたいイラストをインターネットからダウンロードしてプリントする方法。選んだイラストに文字を入れたり必要な絵を組み合わせたりと、カスタマイズしやすいのが魅力です。
ただし、イラストには著作権が発生する可能性があります。イラストをプリントアウトしてもよいのか、アレンジを加えてもよいか、費用が発生するのかなどをあらかじめ確認しておきましょう。
▼ スマホで撮った写真も使える!絵カードを簡単に作ってスマホやパソコンに保存できる「絵カードメーカー」
お店やネットで購入する
手作りじゃなく、すでに完成したものを買いたい…!
そんな方は、さくっと既製品を購入するのがおすすめです。
既製品の絵カードは、用途やシーンに分けて販売されています。検討している商品に必要な内容のカードが入っているかを、購入前によく確認しておきましょう。
■ 発達障害&グレーゾーン幼児のことばを引き出す遊び53: 言語聴覚士 なな先生が考案! すぐに試せる絵カード付き
■ 絵をみてまねっこ!いっしょにできたね おしゃべりカード
■ PriPri発達支援 絵カード4気持ち (PriPri発達支援キット)
■ PriPri発達支援 絵カード5コミュニケーション (PriPri発達支援キット)
■ PriPri発達支援 絵カード6ルール・約束 (PriPri発達支援キット)
■ PriPri発達支援 絵カード7集団の生活 (PriPri支援キット)
自宅でも視覚支援!絵カードの作成で筆者が気を付けたポイント
自閉スペクトラム症の診断を受けている筆者の娘は、朝の準備のルーティンが一つでも崩れてしまうと一気に癇癪モードへと入ってしまいます。そのため、自宅でも絵カードが大活躍中。療育計画のねらいを果たすためにも、以下のことに気を付けて作成しました。
一目で内容が理解できるくらいシンプルにする
子どもが一目で内容を理解できるよう、絵カードに記す情報を必要最小限に留めました。特性のある子どもは、一つのものからたくさんの情報を取り入れやすい傾向があります(例:「イラストの子の服の柄が気になる」「靴下の色が気になる」など)。
そのため、ポイント部分には目立つ色を使うものの配色の数はできるだけ抑え、1枚のカードに入れる情報もできるだけシンプルにするようにしました。
用途に合わせた素材で作る
画用紙で作成した絵カードは、市販のものと比較するとどうしても劣化が早いもの。そのため、ラミネート加工をして耐久性をアップさせました。ラミネート加工をすると、破損や汚れも防げて便利です。
また、我が家ではスケジュールやルーティンを説明する際にホワイトボードに貼って使用したかったため、絵カードの裏に磁石を貼り付けました。
マグネットシートに直接絵を描けばより手軽に作成できます!
フォントを見やすくする
絵カードに入れるフォントは、できるだけ娘の読みやすいものにしました。フォントサイズは小さめよりも大きめに、色はパッと見たときに見えやすい色で。背景を塗りつぶす場合、濃い色の文字に明るい背景、または明るい文字に濃い背景を組み合わせるのがおすすめです。
療育での絵カード活用は円滑なコミュニケーションに繋がる
絵カードは、子どもの理解を視覚的に助けてくれる優れたアイテムです。療育施設だけではなく、家庭でも重宝します。
「見てわかる」絵カードを活用すれば、ルーティンの確立やコミュニケーションの円滑化、子どもの不安の軽減にも繋がります。ぜひ絵カードを上手に取り入れ、子育てと療育に役立ててくださいね。
「我が家ではこんな風に絵カードを活用しています」の声は、ファミケアの公式サイトやアプリに投稿してね!
コメント