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我が子がダウン症の疑いを告げられた日から4ヶ月間の変化と、今思うこと。【世界ダウン症の日特別インタビュー】

世界ダウン症の日特別インタビュー
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愛しい我が子に病気や障がいの疑いを指摘された時。また、確定診断を受けた時。動揺しない親は、ほとんどいないのではないでしょうか。

今回インタビューさせていただいた佐藤さん(仮名)もその一人。現在4ヶ月の赤ちゃんが、生後すぐにダウン症の疑いを指摘され、その時は「この子はこの先どうなってしまうんだろう」「かわいそう」と不安のあまり泣いて過ごしていたと言います。

でも4ヶ月経った今は、「かわいそう」という気持ちは消え、涙する日もなくなったそうです。この記事では、ダウン症の疑いがあると言われた時から今までの佐藤さんの心境の変化や、具体的に何をして気持ちの整理をしていったのかなどについてお伝えしていきます。

今日3月21日は世界ダウン症の日。ダウン症の子どもがいるご家庭のひとつのケースとして、関心を寄せていただけたら嬉しいです。

世界ダウン症の日とは

毎年3月21日は世界ダウン症の日として、国連が国際デーのひとつとして定めています。ダウン症のある人たちやそのご家族の生活に関心を寄せ、より安心して暮らせる社会にするための啓発や理解を促進するために制定されました。21日になっているのは、ダウン症が21番染色体に異常がみられることに由来しています。

目次

ダウン症(ダウン症候群)とは?

ダウン症(ダウン症候群)は、21番染色体が1本多い3本になる染色体異常のことです。

小児の場合、発育や精神発達の遅れや、低身長がみられることもあります。心臓や消化器に先天性異常があることが多く、また、顔つきも特徴的です。

▼ダウン症についてはこちらの記事で詳しく解説しています

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子どものダウン症を受け入れるまでと今の生活を当事者にインタビュー

実際、ダウン症の子どもがいる家庭の暮らしはどのようなものなのでしょうか。ダウン症と診断されてから今までのことや、今の生活の困りごとなどについて、ダウン症の子どもを育てているママ、佐藤さんに伺いました

お子さんの簡単な状況

  • 2024年3月現在、生後4ヶ月
  • 妊娠経過は順調、街のクリニックで出産したが、心疾患の疑いにより大学病院のNICUに搬送
  • 心臓の検査の過程でダウン症の疑いを指摘され、検査の結果確定診断となる
  • NICUは1ヶ月ほどで退院し、現在は自宅で暮らしている

生まれたばかりの赤ちゃんが救急搬送され、ダウン症の疑いを指摘

うつぶせになって顔を上げている赤ちゃん
生後4ヶ月の赤ちゃん。表情と仕草が可愛らしいと思い佐藤さんが撮影した写真だそうです。

ーーダウン症と診断されるまでのことを教えてください。

妊娠中の経過は順調で、出産もスムーズに終わりました。でも出産した翌日、産院で「赤ちゃんの手と足の酸素が違っているので、念のため保育器に入れ酸素投与をしています。先天性の心疾患の疑いがあるため、大きい病院で精査が必要です」と言われてしまい、赤ちゃんだけ大学病院に搬送され、NICUに入ることになりました

産後すぐの体で私が行くことは難しく、搬送先には夫に行ってもらい、そこで詳しく心臓の検査をすることに。検査をしていく中で、主治医からまずは夫に「ダウン症の疑い」を告げられました。

私は夫から電話で「子どもにダウン症があるかもしれない」と聞いたのですが、電話口の夫は嗚咽がもれるくらい号泣していて。夫の声を聞いて、「私はしっかりしなければ」と思ったことを覚えています。産後に数分抱っこしたくらいで赤ちゃんが搬送されてしまったので、顔つきもよく見ていなかったし、第一、素人が見たってわからないし…そんな状況で私が考えたのは、母として私が今できることって何だろう、っていうことでした

そこで私は「母乳をあげたい」と思いつき、赤ちゃんを追いかけて大学病院に転院することにしました。産後2日でまだボロボロの体でしたが、今できることは赤ちゃんの近くにいることと、母乳をあげることじゃないかなって思ったんです。

転院して、改めて夫婦そろって主治医から話を聞きました。ダウン症の疑いのこと、確定のためには検査が必要なこと、それから、先天性心疾患のこと。検査をすることについて、「診断が受けられればその子にあった環境を整えられるのがメリット」と主治医に聞いた私は、これが親としてできることだなと思い、その場でダウン症の検査をお願いしました。

結果が出たのはそのひと月ほどした後です。やはり疑い通りダウン症、とのことでしたが、その時までにかなりいろんなことを調べて心の準備ができていたからか、その時は「そうだよね、そうだよね」といった感じでそこまでの動揺はなかったです。

自分にできることを探して行動した入院中

ーーあまり動揺されなかったんですね。いろいろ調べたとのことでしたが、ダウン症の疑いを指摘されてから確定診断を受けるまで、どんなことをされて過ごしていましたか?

主には赤ちゃんへの授乳と、情報収集ですね。

赤ちゃんと同じ病院に転院してから私は1週間ほど入院していたんですが、その時は授乳のために3時間おきにNICUに面会に行く生活をしていました。母乳をあげたい一心で転院してきたので、それができる環境に身を置けたことはよかったです。

でも転院後すぐは、私もまだ気持ちの整理がついてなかったのと、ダウン症のことについて何も知らなかったので、あれこれ考えて泣いてしまうことが多かったですね…この子はこれから私の知らない世界を生きていくんだな。人より病弱かもしれない、言ったことも理解しにくいかもしれない。差別されてしまうだろうな。きょうだいも結婚できなくなったりするかも…とか、とにかく変な妄想ばかりしてしまって、つらかったです。

ストレスのせいか、泣きすぎたせいか、母乳も出なくなってしまったりして、私は何のために赤ちゃんを追いかけてきたのか、と自分を責めてしまうこともありました。

授乳以外で眠くない時は何もせずにはいられなくて、Amazonで本を探して読んだり、ネットでダウン症の子育てをしている方のブログを読んだりしてダウン症について理解を深めることに時間を使っていました。

とにかく今自分ができることを、と必死に考えて行動していたと思います。今思うと、それがよかったかもしれません。

診断が出るころには、動揺することなく受け入れた

ーーよかったと思うのはどうしてですか?

授乳を続けているうちに、やっぱりかわいいな、って思う気持ちが増えてきたんですよね。そうしているうちに、心配していた心疾患は自然に軽快し、命に関わることがなくなったんです。命に別状がないなら何が問題なんだろう?と思うようにもなりました。

また、ダウン症に関しての本を読み漁ったおかげで、知識もついてきて「こういう障がいが出やすいんだ」「今後こういうふうに生きていくんだ」ということがわかるようになってきたのも大きかったです。漠然とした不安が解消されて、だんだん受け入れる準備ができていったんだと思います。診断結果を待つ間にそうして準備ができたので、診断結果はさほど動揺することなく受け止めることができました。

今はただかわいい赤ちゃん。先のことは、必要以上に考えない。

100日祝いで「100」の形をおむつと一緒に作った赤ちゃんの記念写真
100日祝いの写真。赤ちゃんのことをきょうだいもすごくかわいがっています。

ーーダウン症と診断を受け、今一緒に生活をしていて、困っていることはありますか?

周りに恵まれていることもあると思いますが、実は体感として特にすごく困っていることはないんですよね。ちょっとお腹の筋肉が弱いのか、便秘気味で毎日綿棒浣腸が必要なくらいで、あとは普通の赤ちゃんです。

今育休中ですが、保育園もダウン症がわかる前から決まっていたところにそのまま通えることになって、仕事復帰もできそうです。

上にきょうだいが2人いるのですが、その子たちも赤ちゃんをとってもかわいがってくれています。

現状、生活してて困ったことやつらいことがないので、生まれたばかりの頃に思っていた「かわいそう」と思うことも全然なくなりました。命があって、育てられる私たち親が健在で、きょうだいもかわいがってくれている、じゃあ何の問題もないじゃないって。

先のことを考え始めてしまうと不安になることはありますし、これから成長するに従って、問題が出てくるんだろうなとも思います。親亡き後の問題とか、就学のこととか、そういうことを考えないといけなくなる時がくるのかもしれません。

でも今から考えても仕方ないな、と思うこともあるので、まずは今できることをしようと考えるようにしています。あんまり深く先のことを考えなくても、なるようになるかなって。

「正しく知る」ことが受容につながることも

今回お話を聞いた佐藤さんが、泣いて暮らすほどの不安から脱する機会になったのが本を読むことだったそうです。インターネットでは心ない言葉が目に入ってしまうこともあるので、本を選んだとおっしゃっていました。

本を読んで得た知識から「この子がどう育っていくのか」というイメージが湧き、また赤ちゃんが母乳を吸って「生きようとする力」にパワーをもらって、診断を受け入れる心の準備が整っていったと言います。

子どもがダウン症と診断されたのがたった3ヶ月前と思えないくらい冷静に現状を見つめ、かつ気持ちのコントロールをされているように見えた佐藤さんの姿から、子どもが障がいや病気と診断された時の心の持ち方のヒントがあるように筆者は感じました。


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世界ダウン症の日特別インタビュー

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この記事を書いた人

書くことが好きすぎるフリーランスライター。5歳の息子が遺伝子疾患を持つ医療的ケア児です。子どもを育てる過程で知った社会の生きづらさや情報格差に衝撃を受け、障がい児を育てるための情報がもっと手に入りやすくなるよう発信しています

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