医療的ケアが必要な子どもを産んだら、家庭だけで見ないといけないのかな」
健常の子どもはもう保育園や幼稚園に行ってる年齢なのに、うちの子は集団生活を経験しないまま育っていいの?
これはかつての私が思っていたことです。
筆者は医療的ケア児を育てていますが、子どもが就学前に通える場所が見つからず、どう見つけていいかも分かりませんでした。
医療的ケアや障がいがあっても、子どもは子どもです。ずっと親と一緒に過ごすよりも、同年代の子どもと過ごして受けられる刺激もあるんじゃないか。そう思って集団生活ができる場を調べた結果、宮城県仙台市にある児童発達支援事業所「あいの実クランベリー」と出会いました。
先日、その「あいの実クランベリー」にお邪魔してきたので、実際によかったところや通っている子どもたちの様子をこの記事でレポートしたいと思います。
未就学期の医療的ケア児が過ごす場所はあるの?
医療的ケア児が安心して過ごせる場所を見つけたい
首都圏の情報はあるけど地方都市の情報が見つからない!
など、未就学期の医療的ケア児が過ごす場や預け先を探している方にとって、「こんな事業所があるんだ!」という発見になれば嬉しいです。
▼「児童発達支援って?」という方はこちらの記事からどうぞ。
あいの実クランベリーとは?
「あいの実クランベリー」は、重症心身障害児に対する支援などを提供している「SWC(社会福祉法人)あいの実」が運営する児童発達支援事業所です。
▼SWCあいの実の詳細はこちらで読めます。
児童発達支援管理責任者、看護師、保育士、介護士、PT、OT(非常勤)といった複数の職種のスタッフが在籍していて、それぞれの職種のプロの目線から、遊び方、姿勢などを一緒に考えて療育を行ってくれます。
一人に対して複数の職種の方が子どもに関わってくれるのは嬉しい!
児童発達支援「あいの実クランベリー」のここが素敵!ポイント
実際に管理者の方にお話を聞いてみて、筆者が素敵だなと思ったポイントを紹介します!
どんな医療的ケアがあっても断らない
あいの実の児童発達支援は、「どんなに重い障がいがあっても、どんな医療的ケアがあっても受け入れられる」重症心身障害児向けのサービスです。
人工呼吸器を装着する子どもも受け入れが可能です!
医療的ケアがあると子どもを受け入れしてくれる施設はとても限られてしまうので、断られるのが怖くて「問い合わせする」ことすらできないこともあります。「どんな医療的ケアでも」と言ってくれるのは医療的ケア児の親としてはすごく嬉しいし、今まで居場所がなかった人たちにとってもきっと救いになる言葉だろうなと思います。
親子分離の児童発達支援
子どもに医療的ケアがあっても親が付き添いする必要はありません。子どもを預けて、親はその間、外や自宅など、好きな場所で自由に過ごすことができます。
「医療的ケアがあるから預かれません」という言葉を何度聞いてきたことか…仙台市内にある児童発達支援センターはほぼ親子通園だということもあり、早くても小学校に上がるまでは一人の時間を取るなんて無理なんだと思っていた私にとっては、夢のような施設です。
お風呂に入れてもらえる
医療的ケア児を受け入れてくれる、さらに親子分離ができる、これだけでもう十分魅力的ですが、あいの実クランベリーではさらに、親にとって大助かりのサービスがあります。それが、「入浴サービス」です!
児童発達支援の利用時間中に、子どもをお風呂に入れてもらえます。
重症心身障害児や医療的ケア児の場合、親だけでお風呂に入れることは難しいことも多いですよね。体の緊張があったり、気管切開をしていると水が入らないようにと気をつけたり。体が大きく重くなっていけば、体力的にも子どもにお風呂に入れるのは重労働になっていきます。
うちの子は今5歳ですが、私も子どもの入浴は負担感が大きいです。一緒にお風呂に入れるのは楽しい反面、体が濡れている分滑りやすくなり抱っこにも気を遣いますし、何より5歳ともなると重さも出てくるので、持ち上げてお風呂に入れるのは一苦労。終わるともうぐったりですし、お風呂上がりも自分のケアは二の次で子どものケアをするので、化粧水をつける暇もありません。涙
あいの実では、こうした「重症心身障害児の入浴が大変」という保護者の声を聞き、なんとかそのお手伝いができないかと考え、まずは放課後等デイサービスで「銭湯プロジェクト」という名前の入浴サービスを始めました。
その後2014年からは児童発達支援にも入浴サービスを取り入れています。
入浴の件数も全国で比べても相当数やってる自信がありますし、安心してお任せいただきたいです!ちなみに、2022年度の実績であいの実として5,706件(児童発達支援・放課後等デイサービス・生活介護の総数)でした。スタッフのひとり立ち基準も厳しく設定しているので、自信があります。
放課後等デイサービスの仕組みができてすぐに導入されたそうなので、日本でも始めたのはかなり早い方ではないか、とお話しされていました。しかもこれがボランティア(無報酬)だというから驚きです…!
これは保護者からもかなり好評で、
子どもを預けられるだけでなく、帰ってきてからの負担も減った
自宅でお風呂に入れる必要がなくなったことで、入浴の準備なども含めると1時間くらい時間が生まれた
などの声が保護者から届いています。
視線入力などICTの活用
見学のために入った施設にあった、個性的なポスター。
こちらは、あいの実のサービスを利用している児童が視線入力で描いた絵だそうです。
視線入力とは?
手や指を使うことなく、視線のみでパソコンやタブレットなどを操り、絵を描いたり文字を入力したりする方法のこと。
あいの実クランベリーでは、通所を始めた児童を対象に視線入力を試してみているそうです。
子どもによって得意不得意がありますが、利用児は誰でも一度は試してみるようにしています!もしかしたら得意なことが見つかる可能性があるかもしれませんからね。
子どもが一つでもできることを探していけるというのは嬉しい!家ではできないことを試せる機会があることも親としてはありがたいです。
あいの実クランベリーの1日を紹介!(見学レポート)
ここからは実際あいの実クランベリーに行ってきたことをレポートしつつ、あいの実クランベリーの1日を紹介します!
こちらがあいの実クランベリーです。外観からはあまり重症心身障害児の施設だということは感じられません。
中に入ると広い空間にマットが敷いてあり、子どもたちがゆったりと過ごしていました。
天井や壁にある飾りが季節感があってかわいい!スタッフの方が作ったり、子どもたちと一緒に作ったりしたものだそうです。
存在感のある大きなクマのぬいぐるみがどうにも気になってしまった筆者。
これ、クラウドファンディングをした時にあいの実の活動を知ってくれた方が、ご寄付で下さったものなんですよ!
くたっとした様子がかわいい!
児童発達支援あいの実クランベリーのタイムスケジュール
あいの実クランベリーは児童発達支援と放課後等デイサービスの施設ですが、今回は児童発達支援の1日を紹介します。
児童発達支援のタイムスケジュールは次のようになっています。
10:00〜子どもたちが来所
ほとんどの方が車でお越しになるようです。駐車場は完備されていますので安心です。施設に着くと職員の方が出迎えてくれて、挨拶をしながら今日の子どもの様子や引き継ぎなどを行います。看護師さんもいらっしゃるので、体調のことで不安なことなどは看護師さんにお話しすることも可能です。
施設にはバギーのまま入ることができます。入口でバギーのタイヤを消毒してくれて、マットで汚れを落とし、施設内に入ります。
着いたら体温測定やバイタルチェックなど、その子に合ったケアをし、あいの実での1日の始まり!
10:00~11:30入浴タイム
ケアが終わったら、順次入浴を行います。お風呂には昇降できる入浴装置があり、寝たきりの子でも安心して入浴することができます。
お風呂に入ると心も体もリラックスできますよね。体がほぐれて、療育にもいい効果があるんですよ。数を数えたり、お湯の感触を覚えたり、お風呂でできることってたくさんあります。
お風呂を待っている間やお風呂上がりは各自、自由に遊ぶことができます。お気に入りのおもちゃやスタッフの方が手作りした遊具で遊んだり、創作をして過ごしたり、施設の周りをお散歩したりして午前中の時間を過ごします。
11:30~12:30昼食
口からご飯を食べられる子は職員の介助で食事をとり、経管栄養の子は注入を行います。
食事の時間や姿勢についてもその子に合わせて考えてくれています。
筆者が見学に訪れたのはちょうどこのくらいの時間でしたが、食べ終わった子、注入がまだ終わってない子などそれぞれが無理なく過ごしていました。
12:30~15:00まったり遊びタイム
昼食後ということもあり、あまり激しい遊びはせず、ゆっくり過ごしていることが多いようです。
寝ころがってゆったりと過ごす子もいれば、マットに座っておもちゃ遊びをしている子もいました。寝たきりの子にはPTさんがマッサージをしてくれていて、気持ちよさそうにしていました。
「ご飯終わったらリハビリもしようかー」なんて声をかけながらマッサージしてくれていました。
先ほど紹介したクマのぬいぐるみにもたれかかってまったりする子も。
昼食後、お腹が落ち着いてきたら、それぞれの特性にあわせて遊んでいました。
今回はハンモックが出ていたので、ゆらゆら揺らして遊んでいたり、電動乗用玩具『デンデン・サイエンス』という自走する機械に乗って施設を走り回ったり。
こちらはハンモックで遊ぶ様子。
すごい楽しそう!
激しいのが好きなんだねー!もっとやりたい??
なんていう声が飛び交っていました。
これが「デンデン・サイエンス」です!前方にレバーがあり、それを押すと走ります。
お友達が乗っている様子を見て、他の子どもも興味津々!ずっと目で追いかけて、「僕も乗りたい」アピールをしたりしていました。
次乗りたいのかな?乗ってみよう!
スタッフさんがアピールに気づき、リクエストが叶ってその子も乗車!
クッションを使えば乗れるかな?みんなで支えてみようよ!
座るのが難しい子でしたが、職員さんが支えることで乗って遊ぶことができていました。
こういう、他の子がいるからこその刺激や関わりができるのも、集団で過ごす場のメリットですよね。お友達がやってるからやってみたい!っていうことを一緒にできて私たちも嬉しいです。
重心児で座るのが難しかったりしても、姿勢とか工夫して、「やりたい!」に応えてくれるのは親としても嬉しいです!
15:00 親御さんのお迎えで帰宅
児童発達支援は15:00まで。親がお迎えに来る時間です。
この時間までに帰りの支度を済ませておいてくれるので、迎えに来た親は順次子どもを引き渡されます。お迎えに行った時に、「今日は創作をしましたよー」とか「ご飯たくさん食べましたよ!」など簡単な引き継ぎをしてくれます。帰りに連絡帳も渡され、その中にも今日したことなどを書いてくれています。
あいの実クランベリーを利用できる子どもは?
こんなに素敵な児童発達支援を提供してくれるあいの実クランベリー、どんな子どもが利用できるのでしょうか。その点を管理者の方にお聞きしました。
1、療育の必要性が認められている子ども
あいの実クランベリーに限らず、児童発達支援を利用するためには療育の必要性が認められ、「通所受給者証」が発行されている必要があります。
▼通所受給者証について詳しくはこちらの記事をご覧ください
仙台市の場合、通所受給者証を発行するためには仙台市発達相談支援センター、通称「アーチル」への相談が必要です。
時期によっては相談待ち期間が長くかかる(3〜4ヶ月)場合がありますので早めに連絡をするのがおすすめです。
2、重症心身障害児、または医療的ケア児
前述したように、あいの実クランベリーは重症心身障害児向けのサービスです。そのため、利用できるのは基本的に、下記に該当する子どもとなっています。
・重心判定が出ている(障害者福祉サービスの受給者証に記載)
・身体障害者手帳1級
・療育手帳A
その他、医療的ケア判定スコアを参照したりする場合もありますので、対象になるかどうかはお問合せしましょう。連絡してみることで、実際に詳しく聞きたいことの相談などもできます。
医療的ケア判定スコアとは?
医療的ケア判定スコアは、医療的ケアを必要とする者が障害福祉サービス等(通所サービスや(短期)入所施設等)を利用するにあたり、どの程度の看護職員の配置を必要とす るか等を判断するためのスコアです
引用元:「P3」障害福祉サービス等利用における医療的ケア判定スコア(医師用)https://www.mhlw.go.jp/content/000763142.pdf
重症心身障害児も医療的ケア児も、自宅以外に居場所ができる!あいの実の雰囲気を感じに来てみて
あいの実クランベリーにお邪魔してみて、私は率直に、ここなら安心して子どもを預けることができる!と感じました。
スタッフの方はみんな子どもに愛情を持って接してくれているし、子どもたちもリラックスして過ごしています。看護師がいるので医療的ケアも安心。
子どもが自宅以外で過ごせる場所や、家族以外に子どものことを知ってくれている人がいるというのは、障がい児や医療的ケア児の親にとっては嬉しいことではないでしょうか。そんな「居場所」を提供してくれるのがあいの実クランベリーです。
親も、安心して預けられる場所があることで、ゆっくり過ごすことができます。親が一人の時間を持つことだってとっても大切なことだと私は思います。
仙台市にお住まいで、
・児童発達支援事業所を探している
・他の児童発達支援施設に通っているけれど、親子分離の児童発達支援事業所に興味がある
・重症心身障害や医療的ケアがあってなかなか通える場所がない、と困っている
など、この記事を読んで少しでもいいな、と思った方はぜひ一度あいの実クランベリーへ相談してみてください。
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