医療的ケア児とはどんな子どものことか知っていますか?
今回は、医療的ケア児を育てるママが医療的ケア児とはどんな子どもなのか、人数推移や医療的ケア児支援法、医療的ケア児に対する支援や課題、医療的ケア児を育てる親のリアルな気持ちなどを紹介します。
医療的ケア児(医ケア児)とは
日常生活において、人工呼吸器や吸引器、経管栄養など、医療器具や医療機器を必要とする子どもを医療的ケア児と呼びます。運動障害や知的障害の有無については問いません。
医療的ケア児の疾患や病態は個々により様々であり、あまり聞き慣れない疾患や症候群であることも少なくありません。心臓や消化器、視力、聴力の障がいなど、多くの合併症をもつ子どもが多いのも医療的ケア児の特徴の1つです。
また、成長や発達などによる状態変化が大きく、節目ごとに支援の見直しが必要となるのも医療的ケア児の特徴です。医療的ケアの施術後の退院の準備からはじまり、保育園や幼稚園の通園や学校の進学、卒業後の生活に至るまで、子どもとその家族は様々なイベントや身体、知能の発達に合わせて支援の見直しをします。
そして医療的ケアの内容は、子どもの状態により新しく追加されることもあれば、逆に不要になることもあります。例えば、24時間人工呼吸器が必要だった子どもが日中は不要になり、寝るときだけ人工呼吸器を装着する、といったようなことです。
退院後に関わる支援機関や医療機関も多いのも特徴です。病院をはじめ、訪問診療やリハビリテーション、レスパイト入院施設、療育施設など様々な機関に関わります。子どもと家族の支援チームとして、市区町村や保育・教育機関、療育施設が参加し、子どもと家族が過ごしやすい生活を目指しています。
医療的ケア(医ケア)とは
病院のような医療機関以外での場所、例えば、家や学校にて、日常的に継続して行われる医療的な生活援助行為です。
令和3年度障害福祉サービス等報酬改定では医療的ケアの判定スコアが設けられ、次の14項目があげられています。
- 人工呼吸器
- 気管切開の管理
- 鼻咽頭エアウェイの管理
- 酸素療法
- 吸引
- ネブライザーの管理
- 経管栄養
- 中心静脈カテーテルの管理
- 皮下注射
- 血糖測定
- 継続的な透析
- 導尿
- 排便管理
- 痙攣時の坐剤挿入、吸引、酸素投与、迷走神経刺激装置の作動等の処置
▼医療的ケアについてや種類についての詳しい解説はこちら
【参照】令和3年度報酬改定における医療的ケア児に係る報酬(児童発達支援及び放課後等デイサービス)の取扱い等について|厚生労働省
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000763142.pdf
医療的ケア児の人数推移
医療的ケア児の人数の推移とその背景について説明します。
全国の医療的ケア児は約2万人
厚生労働省の資料によると、令和3年時点で全国の医療的ケア児は約2万人です。
平成17年から約20年間で、約2倍に増えています。医療的ケア児の数が増えたことにより、医療的ケア児の世の中への認知度も高くなりつつあります。
【参考】厚生労働省 医療的ケア児について
医療的ケア児が増加した背景
医療的ケア児が増加した背景には医療の発展があります。総合周産期母子医療センターやNICUの増設など、高度な医療施設の整備や医療技術の発展が進み、昔は助けることができなかった命を今では助けることができるようになったということです。
命を助けることができるようになったことはとても素晴らしいことではありますが、医療的ケア児に関する法律の制定や支援はまだ発展途上です。
医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(医療的ケア児支援法)とは
医療的ケア児に関する法律として、医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(医療的ケア児支援法)があります。
医療的ケア児を法律上できちんと定義し、国や市区町村が医療的ケア児の支援を行う責務を負うことを、日本で初めて明文化した法律です。
医療的ケア児とその家族が健やかに、健常児が生まれたときと同様に自由な選択ができるように、国や市区町村が医療的ケア児の支援をすることを約束した内容になっています。
法律には、具体的に以下のようなポイントが定められています。
- 医療的ケア児の健やかな成長を図るとともに、その家族の離職の防止に資すること
- 医療的ケア児が医療的ケア児でない児童とともに教育を受けられるように最大限に配慮すること
- 各都道府県に、医療的ケア児センターを設置すること
- 個々の医療的ケア児の状況に応じ、切れ目ない支援を行うこと
【参照】医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(令和3年法律第81号)|厚生労働省
医療的ケア児支援法の策定以前には、2018年に第1期障害児福祉計画を開始し、国を中心として全国の市区町村で、以下のような内容が3年ごとに作成されていました。
- 児童発達支援センターを各市町村に少なくとも1カ所設置
- 主に重症心身障害児を支援する児童発達支援事業所、放課後等デイサービスを各市区町村に少なくとも1箇所確保する
- 医療的ケア児支援の協議の場を設置する
- 保育所等訪問支援を利用できる体制を各市町村で構築
【参照】第5期障害福祉計画・第1期障害児福祉計画の概略|厚生労働省
医療的ケア児に対する支援
医療的ケア児に対する支援は、子どもの状態や医療的ケアの多さなどによって必要性や受けられる内容は変わりますが、多数用意されています。
例えば、以下のような支援があります。
訪問看護 | 家で看護師が子どもの看護をしてくれる支援 |
訪問診療 | 家に医師が訪問し診察や処方をしてくれる支援 |
訪問歯科 | 家に歯医者や歯科衛生士が訪問し歯の状態をみてケアをしてくれる支援 |
居宅介護 | 日中や夜間の見守り・ケアなど生活全般にわたる援助をしてくれる支援 |
短期入所 | 障害福祉サービス等受給者証を利用し、数時間または数日間、病院や施設にて子どもを預かってくれる支援 |
児童発達支援や放課後等デイサービス | 通所受給者証を利用し、未就学の子どもや小学生〜高校生までの子どもの発達を事業所や支援センターにて促してくれる支援 |
PT(理学療法士)、ST(言語聴覚士)、OT(作業療法士) | 身体または言語発達を促すために専門家によってリハビリを行う支援 |
移動支援 | 病院や保育園など、移動する際に保護者について子どもを見守ってくれる支援 |
一時預かり支援 | 施設や支援センター等で数時間など一時的に子どもを預かってくれる支援 |
支援サービスを利用するには、相談支援専門員や市区町村の担当課に相談して決めていくと安心して生活を送ることができます。
筆者も半年入院していた息子が退院することが決まったとき、どの支援サービスを利用していくか、相談支援専門員や退院調整看護師と相談して決めました。支援サービスの中にもいろんな事業所があり、特徴を教えてもらいながら、自分たちに合った支援サービスを選びました。
訪問看護師についての詳しい情報はこちらの記事へ
相談支援専門員についての詳しい情報はこちらの記事へ
支援も徐々に整備されつつありますが、医療的ケア児や家族にとっての課題もまだまだ多く存在しています。
医療的ケア児を育てる親の気持ち
医療的ケア児を育てることで筆者の経験を踏まえた親としての気持ちも紹介します。
息子の情報
- 年齢:1歳8ヶ月
- 病名:先天性ミオパチー
- 必要な医療的ケア:人工呼吸器、吸引、経管栄養(EDチューブ使用)
医療的ケアの練習は不安を感じながらのスタート
医療的ケア児を育てていてまず1番に思うのは、医療的ケアを習うのはすごく大変で不安だったということです。
筆者は医師や看護師ではないので、医療行為はもちろんしたことはありません。そんな中でドラマや映画でしか見たことないような医療器具や医療機器を触り、子どものケアをしていくのはなかなかハードだったなと思います。ただ、息子と一緒に生活していくためには必要なことだったので、夫と一緒に約2ヶ月間医療的ケアの練習を頑張りました。
支援に支えられながらも在宅でのケアは大変
今では一緒に暮らして1年以上経つので、医療的ケアには慣れ、訪問看護や訪問医、リハビリ、児童発達支援などいろんな支援サービスを利用しているので心身の負担は軽減されています。しかし、息子が風邪や肺炎になり、入院するほどではない状態になると、家で息子を見守ることになるのでケアや仕事の調整が大変になります。
時間とともに医療的ケアにも慣れ息子との生活が楽しいものに
それでも一緒に暮らしたばかりのころに比べれば、医療的ケアは難なくできるようになっており、生活の一部になっています。大変なことも多いですが、バリアフリーになっている出かけ先に一緒に遊びに行ったり、自然を感じられる公園に遊びに行ったりして、一緒に暮らしているからこそ感じられる息子との生活の喜びも増えていてとても嬉しく思っています。
医療的ケア児を育てるのは正直大変です。しかし、子どもは子ども。愛する気持ちは他のご家族と変わりなく、必要であるから医療的ケアをするだけだと今では思っています。
医療的ケア児を理解することで課題や大変なこともわかる
日常生活において、人工呼吸器、吸引器、経管栄養などの医療器具や医療機器を必要とする子どもである医療的ケア児。
医療の発展により救えなかった命を救えるようになったことで、年々増えていっています。
医療的ケア児を支援する法律や支援サービスは今では整い始めたところです。
だからといって、何不自由なく生活できているかというとそうではなく、保育園に入るにはハードルが高かったり、出かけ先ではバリアフリーな場所であるかチェックをしなければならなかったりと、課題があるのが正直なところです。
また、これまでドラマや映画でしか見たことないような医療器具や医療機器を触って医療的ケアを練習していたころは、筆者は不安との戦いでした。しかし息子と一緒に生活を送るためには必要なことだったので頑張るしかありませんでした。
一緒に生活するようになってから1年以上経った今では医療的ケアにも慣れ、支援者の力を借りて負担を軽減しながら安心して毎日を過ごすことができています。
大変なことがないかと言えば嘘になりますが、それでも子どもは子どもです。愛する気持ちも、育児をすることも、健常児の子どもを育てるご家族と何も変わりません。
この記事を読んで、医療的ケア児とはどんな子どものことなのか理解を深めてくれたら嬉しいです。
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