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【専門家に聞く】親なきあと問題とは?具体的な困りごとや解決手段を紹介

【専門家に聞く】親なきあと問題とは?具体的な困りごとや解決手段を紹介
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「自分がいなくなったらこの子はどうなるんだろう?」

障がい児を育てている親の多くが心配しているのがこの「親なきあとのこと」ではないでしょうか。しかし、具体的にどのように対策したらいいのかがわからず不安を抱えている方も多いと思います。

そこで今回は障がい児・者家族「親なきあと問題」についての不安を解消するお手伝いをしている一般社団法人あしたパートナーズの理事、首藤さんにインタビューし、親なきあと問題とは何か、対策するとしたら何から始めたらいいのかなどをお聞きしました。

\お話を聞いた方/

一般社団法人 あしたパートナーズ 代表理事 首藤徹也(シュドウ テツヤ)さん

一般社団法人あしたパートナーズの理事、首藤徹也(シュドウ テツヤ)さん障害福祉分野を専門としているファイナンシャル・プランナー

障害福祉分野を専門としているファイナンシャル・プランナー。「親なきあとの心配事を家族だけで抱え込まずに、気軽に専門家に相談できるようにしたい」という思いで、障害のある子のいるご家族向けに親なきあと相談室を運営。同相談室では、親なきあとの本人の財産管理、親から子への資産の残し方などについて、法務面、ファイナンス面の専門家がサポートをしており、これまでの相談実績は500件を超える。また、自分自身がきょうだい児ということからきょうだい児支援にも注力しており、親目線ときょうだい児目線の両面から親なきあとの準備の提案が可能。社会福祉協議会や特別支援学校、障害福祉事業者での講演実績も多数あり。

目次

親なきあと問題とは?

ーーまず、親なきあと問題とは何かについて教えてください

親なきあと問題は、障がい児を育てる家庭で「親がいなくなったあとに子どもの生活が難しくなる状況」が発生することです。そのため、障がい児を育てる家族の多くは、あらかじめ対策をする必要があります。

健常児であれば、親がいなくなる頃には自立していることが多いでしょうし、何歳のときに何をする、というのがある程度わかるためどの程度お金を残そう、などの対策が立てやすいと思います。

一方障がい児の場合、自立した生活が難しい子どもも多く、「何年後にどうなっているか」の見通しが立たないことから、先々の対策がしにくい・どう準備すればいいのかわからない課題があるために「問題」と呼ばれます。

まず何から対策すればいい?

ーー親なきあと問題について不安だったら、まず何から取り組むのがおすすめですか?

手軽にできるものとしては、本を読んで知識をつけることかなと思います。

ただ、親なきあとについては多くの本が出ていますが、内容としては一般的な解決策の紹介が多いです。そこから「じゃあ自分の家庭ではどうしたらいいの?」という具体的な解決策を立てたい場合は、やはり親なきあと問題を取り扱う専門家に相談するのがいいと思います。

ここで明確にこう、と言えればいいのですが、それぞれのご家庭でベストな対策が異なるため、一概にどうするのがいい、というのは言えないのが親なきあと問題です。ご家族が不安に思う点はだいたい同じなのですが、解決策は本当にご家庭によって違うというのが相談を受けてきてわかりました。ですので、個別ケースに合わせて対策が取れるよう、専門家に相談をしてほしいですね。

ーー首藤さんはその専門家の一人として親なきあと問題の相談を受けていらっしゃるとのことですが、具体的に親なきあと問題で課題になりやすいことはどんなことでしょうか?

私たちがよく受ける相談から紐解くと、大きく分けて以下の4つの課題になることが多いと考えています。

  1. [住居の課題]自宅に住み続けられるか?施設を探すか?入れる施設はあるのか?など住む場所の課題
  2. [介助の課題]誰が世話をするのか?どこで過ごすのか?など日中の生活の課題
  3. [金銭の課題]財産管理の難しい子どもにどのように遺すか?などお金の課題
  4. [家族の課題]「親がいなくなったら自分にどの程度負担がかかるのか?」と不安に思うきょうだいの課題

この中でもお金の課題きょうだいの課題については、私たちが運営する相談室で相談可能な問題であることから、深くお話を聞くことが多いです。

お金の課題と対策

ーーお金の課題はみなさん気になることだと思います。どんな課題があり、どう解決していくといいのかお聞きしたいです

まず、多くの親御さんが抱えている不安が「いくらお金を残したらいいのか」ということです。相談にくるご家族には、必ずと言っていいほど聞かれます。

しかし、私はいつも「必ずしもお金を残さないといけないわけではない」ということをお伝えしています。

それは、今の日本に障害年金生活保護という制度があるからです。この2つがある限り、実は「残さないといけない」と大きく不安になる必要はありません

もちろん、制度を理解した上で「それでも残してあげたい」とお金を残す選択をすることは自由です。でも「残さないといけない」と思って今使えるはずのお金を使わずに取っておく、ということは、むしろ今の生活が苦しくなったりできるはずの経験ができなくなったりするといったデメリットが大きいので、あまりおすすめしません。

ーーそうなんですね。障がいの程度によっては障害年金を受けられるかどうか不透明なので「残したい」と思う方もいるのではと思うのですが、そういう場合はどう考えたらいいでしょうか?

もちろんそういうケースもありますよね。その場合にも、やみくもに多くのお金を残そうとしないことが大切です。

必要なのは、障害年金や生活保護を「受けられた場合」と「受けられなかった場合」というふうにパターンを想定して対策することです。取れる対策はご家庭によって違うのでこれ、とは言えないですが、例えば生命保険信託などを活用される方もいますね。

ーーなるほど、必要以上に「残そう」と思わないことがまず大事なのですね。それ以外に問題になることはありますか?

「残そうとしない」という認識を持った後、次に考えるべきなのは大きく以下の2つです。

  1. 財産管理が難しい子どもにどう財産を残すか
  2. 財産管理をどうするか(管理者をどうするのか)

持っている資産の状況や家族構成などにもより、実際の対策は千差万別です。

一例だと、遺言信託というところですが、自分たちの状況でどんな対策が立てられるのかは、障害福祉に詳しいファイナンシャルプランナー(FP)や弁護士などの専門家に相談するのが確実です。

きょうだいの課題と対策

ーーお金の課題については専門家に相談しながら進めるのがいいのですね。では、もう1つのきょうだいの課題に関してはどんな困りごとや対策があるんですか?

きょうだいに関しての課題は、「親がいなくなった後のきょうだいの負担を考えてあらかじめ対策をしないといけないこと」です。お金や資産をきょうだいそれぞれにどのくらい残すのか、障がいのある子の生活の世話をする人として家族以外に依頼できる人を考えておくのかどうかなどを考えておかないといけません。

自分が健在かどうかに関わらず、きょうだいに負担をかけたくないと考える親は多いです。でもそのためにしっかり対策して早めにきょうだいにも伝えておかないと、きょうだい自身の「親がいなくなったら自分にはどの程度負担がかかるんだろう?」という不安にもつながります。

ーーきょうだいが不安なままでいることは親御さんにとっても本意ではないですよね。ではどんな対策を立てるといいのでしょうか?

家族の状況やきょうだい間の関係性がそれぞれなので正解はありませんが、まず親がいなくなったら誰に相談する、というのを明確にしておくことはすごく大切だと思います。

親がいなくなった後のお金はどうするのかや頼れるところがどこか、親なきあとの生活にきょうだいがどれくらい携わらなくてはいけないのか、ということを親御さんがなるべく早く明確にして、きょうだいに伝えられると安心してもらえるのではと思います。

親なきあと問題の対策を一歩進めるには

ーーお金の課題ときょうだいの課題、それぞれ伺ってきましたが、一般的な「正解」はなく、それぞれの家庭に合った対策を立てることが必要なのですね。

そうですね。そのためには前述したように専門家に相談することがおすすめです。

相談することのメリットとしてもうひとつ「背中押し」をしてもらえるというのがあります。

普段の生活でも忙しい中で、いつ訪れるかわからない「親なきあと」の問題への対策というのは後回しにされることが多いです。それは当然のことだと思います。みなさん本当に忙しいですし、考えることもたくさんある中で優先順位をつけて生活していかないといけないですから。

そこで「背中押し」をしてくれる存在がいると進めやすいんです。

もちろん、家族だけでスケジュールを決めて話し合いして解決できれば、わざわざ誰かを巻き込む必要はありません。しかし、先ほどもお伝えしたように、実際家族だけでそれができる時間的・精神的余裕がないご家族が多いんですよね。専門知識を持っていない限り、自分たちだけで解決することは難しいです。

でも解決しなければその間ずっと不安を抱えているわけです。そして「その時」が急に来ることもあります。

ですから、誰かに「背中押し」をしてもらえると大きく進みますし、それによってその後不安がなくなって、自分や子どものために今お金を使うという選択もできるようになるため、今の生活も充実させやすくなります

ーー専門家に相談、というと、具体的に誰に相談するのがいいのでしょうか?

私たちあしたパートナーズでももちろん相談に乗れますし、お住まいの地域で親なきあと問題についてのセミナー相談会をやっているかどうか探してみると相談相手が見つかる可能性があります。

ほかには、弁護士・司法書士などの法律家やお金のプロであるファイナンシャルプランナー(FP)が相談する相手としては適しているのではないでしょうか。注意点として、FPの場合は相手に福祉の知識があるかどうかを確認することがとても重要です。保険えらびが主目的の無料相談の場合には「親なきあと」のことまで相談できないこともあるので、相談可能かどうかあらかじめ確認できると安心です。

親なきあと問題の対策は自分だけで抱えず相談を

今回の話のまとめ

  • 親なきあとのことで悩むことが多い課題は[住居の課題][介助の課題][金銭の課題][家族の課題]の4つ
  • そのうちお金の課題については「残さないといけない」という考え方をまず変えることからスタート
  • お金の残し方やお金の管理を誰がするのかも考えないといけない
  • きょうだいの課題についてはきょうだいの不安を解消できるよう早めに話しておくこと
  • いつ来るかわからない親なきあとの準備をスムーズに進めるには、「思い立った時に」「専門知識のある第三者をまきこんで」準備を始めることがポイント

障がい児を育てる親が不安に思うことの多い親なきあと問題。自分一人で抱えず、知識のある専門家に早めに相談し解決策を模索していくことで不安が解消され今の生活が充実する方も多いそうです。日々の生活の中で優先的に取り組みづらい問題ではありますが、早めに不安を解消する一歩を踏み出すためにこの記事がきっかけになれば嬉しいです。


ファミケアの掲載記事およびコラムに関しては、当事者および専門家によって作成しておりますが、全ての方に当てはまる情報ではございません。投稿された情報の利用により生じた損害について、ファミケア運営元では責任を負いかねますので、あくまでもご家庭での判断のもと参考情報としてご利用ください。また、特定の施設や商品、サービスの利用を推奨するものではありません。

【専門家に聞く】親なきあと問題とは?具体的な困りごとや解決手段を紹介

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この記事を書いた人

書くことが好きすぎるフリーランスライター。5歳の息子が遺伝子疾患を持つ医療的ケア児です。子どもを育てる過程で知った社会の生きづらさや情報格差に衝撃を受け、障がい児を育てるための情報がもっと手に入りやすくなるよう発信しています

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