母乳を寄付したり提供してもらうことが出来ることを知っていますか?
授乳や搾乳中のお母さんの中には、母乳が余ってしまい、泣く泣く捨てたことがある人もいるのではないでしょうか。一生懸命つくった母乳を捨てる瞬間は、とても悲しいですよね。そんなときは、母乳を必要とする人に寄付するという選択があります。
今回は、母乳の提供活動をする「母乳バンク」についてご紹介します。
母乳バンクとは?
母乳バンクは、何らかの事情で赤ちゃんに母乳を与えることが難しい場合に、ドナーから提供された母乳を無償で提供する取り組みです。余っている母乳を提供するお母さんが団体を通じて協力し、提供された母乳は施設で安全に処理されたのち、必要な赤ちゃんに提供されます。日本では2014年から母乳バンクの活動が行われています。
どうして母乳バンクが必要なの?
早産や病気のある赤ちゃんの中には、母乳の栄養方法が人工乳よりも好ましい子どもたちがいます。しかし、お母さんの母乳が出なかったり、特別な事情で母乳を与えられないことがあります。そこで、母乳バンクからの母乳提供が必要になります。母乳提供の対象となる赤ちゃんは全国に年間約5000人います。
母乳バンクに母乳を提供するには?
自分の母乳を提供したい時は、母乳バンクの団体を通して、ドナー登録を行う必要があります。健康状態などの対象条件をすべて満たしている事を確認し、手順に従ってドナー登録を行いましょう。
対象条件
- 自身の子どもが必要とする以上に母乳が出ること
- これまでに輸血や臓器移植を受けていないこと
- 血液検査の結果に異常がないこと(HIV1/2、HTLV-1、B型肝炎、C型肝炎、 梅毒のスクリーニング検査がすべて陰性)※ドナー登録前6か月以内に行った検査結果が有効
- 過去3年間に白血病やリンパ腫など 悪性腫瘍の治療歴がないこと
- タバコ、アルコール、薬剤についての確認項目を受けること
ドナー登録後も、該当すると母乳の提供が不可になる項目
- 急性感染症に罹患している場合や乳頭・乳房感染がある場合
- 風疹や水痘に感染した家族がいた場合、感染性がなくなってから4週間経過するまで
- 乳房や胸部の単純ヘルペスや帯状疱疹がある場合、かさぶたができてから1週間経過するまで
- アルコール摂取後は12時間経過するまで
- 本人または家族が天然痘ワクチンを接種した場合、21日間経過するまで
- 認可された場所で清潔な針とシリンジでタトゥーを入れた後、8日が経過するまで
- 流行性耳下腺炎、麻疹、風疹、水痘のワクチン接種後は1か月経過するまで
【参照】ドナー向けパンフレット|一般財団法人日本財団母乳バンク
URL:https://milkbank.or.jp/wp-content/uploads/2023/08/Human-Milk-Bank-Donor-Booklet.pdf
【参照】ドナー登録について|一般財団法人母乳バンク協会
URL:https://jhmba.or.jp/donate.php
ドナー登録の手順
その1:母乳バンク団体の各HPにてドナー登録の申込みをする
一般財団法人日本財団母乳バンク ドナー登録申込みページ
URL:https://milkbank.or.jp/for-donors/
一般財団法人母乳バンク協会 ドナー登録申込みページ
URL:https://jhmba.or.jp/donate.php
その2:団体から連絡を受けたのち、対象施設での検診を受ける
検診時には血液検査をおこないます。血液検査結果に問題が無ければ、ドナー登録が完了します。この時に、搾乳方法、保管・冷凍方法や母乳の送付方法についての説明を受けます。
その3:搾乳し、母乳を冷凍する
申込みをした団体から説明のある注意事項に従って、搾乳と保存作業を行いましょう。
その4:搾乳チェックリストを記入、冷凍母乳を郵送する
搾乳時の健康状態やアルコール等の摂取状況を答えるアンケートを記入したのち、クール便(ヤマト運輸着払い)で母乳を母乳バンクに送付しましょう。梱包の際は、冷凍母乳が破損しないように、箱の隙間を緩衝材で埋める等の工夫をしましょう。
母乳バンクから母乳提供を受けるには?
母乳提供の対象条件を満たし、医師が母乳栄養が必要であると判断した場合に、病院施設を通じて母乳の提供を受けることが出来ます。子どもが母乳の提供対象になるお母さんで、自分で搾乳するのが辛い方や搾乳量が減ってきた方は、病院で母乳バンクの提供を受けることが可能かどうか、相談してみましょう。
母乳の提供対象
NICUで治療を受けている1500g未満の極低出生体重児
【参照】ドナー登録について|一般財団法人母乳バンク協会
URL:https://jhmba.or.jp/donate.php
赤ちゃんとお母さんを救う母乳バンク
今回は「母乳バンク」についてご紹介しました。
母乳バンクは、NICUに入院中の赤ちゃんとその家族にとって、また母乳の提供をするお母さんにとっても、とても意義のある取り組みです。母乳バンクというシステムが、これからもっと注目を集め、より広く認知されることを筆者は願っています。
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