車椅子や補聴器、義肢や装具など、身体障害や難病を抱える子どもたちが日常生活を送るのに欠かせない「補装具」。それらを購入する際にかかる費用の補助を受けられるのが「補装具費支給制度」です。
この記事では補装具費支給制度について、編集部の利用者ママの声を交えながら制度の内容や申請の方法を解説します。さらに2023年12月現在検討が進められている補装具費支給制度の所得税撤廃についても最新の情報をお届けします。
補装具費支給制度とは?
補装具費支給制度とは、車椅子や補聴器、義肢や装具といった補装具の購入費用の補助を受けられる制度です。
具体的に受けられる補助の内容は、2024年1月時点の制度においては原則1割負担で、負担額の上限は月額3万7200円です。しかし、所得が一定以上の世帯の場合(※1)は支給の対象外となり、全額を負担する必要があります。(※2)
区分 | 世帯の状況 | 負担上限額(月額) |
一般 | 市町村民税課税世帯 | 37,200円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
※1:本人又は世帯員のうち市町村民税所得割の最多納税者の納税額が46万円以上の場合
※2:2023年12月11日「こども未来戦略会議」にて、「障害を持つ子供向けの補装具費の所得制限の撤廃」について議論が進められました。この件については本記事の最終段落にもまとめています。
支給の対象となる補装具の一例は下記の通りです。
・視覚障害
視覚障害者安全杖(白杖)・義眼・遮光眼鏡・眼鏡など
・聴覚障害
補聴器など
・肢体不自由
義肢・装具・車椅子・歩行器・歩行補助つえ・電動車椅子など
・身体障害児のみ(18歳未満)
座位保持椅子 起立保持具 頭部保持具 排便補助具
出典:厚生労働省「補装具費支給制度の概要」
支給対象品目については厚生労働省が定めており、年度によって変わる項目もあるため、厚生労働省のホームページも合わせてご確認ください。
補装具費支給制度の申請方法
補装具費支給制度を受けるための具体的な申請方法について解説します。申請に必要なものや書類の様式は自治体によって異なるため、必ずお住まいの市区町村のホームページや窓口で確認してみてくださいね。
補装具費支給制度の申請窓口
申請窓口はお住まいの各市町村となります。
補装具費支給制度の申請に必要なもの
申請に必要なものは主に以下の書類と、障害者手帳(受給者証)および本人確認書類となります。必要な書類や様式はお住まいの自治体によって異なりますので、各市区町村のホームページも合わせてご確認ください。
- 補装具費支給申請書
- 補装具費支給意見書
- 身体障害者手帳 ※難病患者は特定医療費(指定難病)受給者証
- その他、本人確認書類など
補装具費支給制度の申請の流れ
自治体によって申請の流れは異なりますが、一般的な申請の流れは下記の通りです。補装具の種類や利用者の年齢(18歳未満か否か)によっても異なりますので、ご注意ください。
- 申請をする
窓口で補装具費補助を受けたいものについて申請書を記入し、申請をします。申請時には、医師発行の書類や見積書等の証明書が必要な場合があります。
- 判定を受ける
市区町村の障害福祉および補装具補助を取り扱う部門の判断の判定があります。質問や問い合わせがあれば、申請者が対応します。
- 支給が決定
判定の結果、支給が決定となれば書面にて決定が通知されます。
- 補装具の製作
製作やカスタマイズが必要な補装具の場合は、工房や業者で製作をします。購入するだけのものの場合は、決定通知がされたことを業者に伝えて製品を購入します。
- 補装具の受領・支払い
補装具を受け取り、自己負担分を支払います。補装具の費用の支払いは、市区町村から直接支払いになることが多くなっています。
補装具の申請には時間がかかることも多いため、欲しいと思った時ではなく前もって準備をはやめに進めておくのがおすすめです!
補助が受けられる補装具の個数に決まりはある?
補装具費の支給対象となる補装具の個数は原則1種目につき1個ですが、必要性が認められれば2個認められるケースもあります。
屋内用と屋外用の装具や、学校用と家用の車椅子などのケースがあるよ!
補装具費は再支給される?
補装具は種類や型式ごとに耐用年数(通常の使用状況で修理不能となるまでの想定年数)が決められおり、耐用年数を過ぎると再支給を受けることができます。耐用年数内でも、障害の状況の変化などで補装具が合わなくなった場合は再支給を申請し、支給決定となれば補助を受けることができます。
個別の事情に応じて臨機応変な対応をしてもらえるのはうれしいね!
【随時更新】補装具費支給制度の所得制限撤廃が検討中
以上、日常生活に必要不可欠な補装具にかかる費用の補助が受けられる補装具費支給制度は当事者家族にとって助かる制度ですが、
我が家は数十万以上の電動車椅子が必要なのに、所得税が上限を超えていて支給を受けられない…
装具は子どもの成長に応じて交換する必要があるのに、所得制限で補助が受けられないのは厳しい…
といった課題もありました。
そうしたなか、2023年12月11日「こども未来戦略会議」にて、「障害を持つ子供向けの補装具費の所得制限の撤廃」について下記の通り言及されました。
“補装具については、障害のあるこどもにとって日常生活に欠かせないものであり、成長に応じて交換が必要なものであることを踏まえ、保護者の所得にかかわらずこどもの育ちを支える観点から、障害児に関する補装具費支給制度の所得制限を撤廃する。”
出典:内閣官房「第8回こども未来戦略案」
今後もより制度が改善されていくと良いですね。
▼こちらの記事は下記サイトを参照した上で執筆しました。
・厚生労働省「補装具費支給制度の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/yogu/aiyo.html
・群馬県みどり市 リーフレット「補装具費支給制度・利用ハンドブック」https://www.city.midori.gunma.jp/www/contents/1000000001992/files/hosougu_midori.pdf
・東京都福祉局「補装具費支給制度」
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shinsho/hosougu/hosougu.html
・茨城県つくば市「補装具費の支給」https://www.city.tsukuba.lg.jp/soshikikarasagasu/fukushibushogaifukushika/gyomuannai/2/2/3/1001364.html
・千葉県市川市「補装具・日常生活用具・小児慢性特定疾病児童等日常生活用具」https://www.city.ichikawa.lg.jp/wel05/1111000004.html
・内閣官房「第8回こども未来戦略会議」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_mirai/index.html
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