子どもが言うことを聞いてくれなくて困っている…
もっと上手な関わり方があるはずなのに、叱ってばかり…
子育てのなかで、このような悩みを抱えていませんか?「発達障害のわが子にどう接したらいいのかわからない…」と、保護者が心を痛めているケースもよく耳にします。
そんな子育ての悩みに対する効果的な支援方法として、近年注目を集めているのが「ペアレントトレーニング」です。この記事では、ペアレントトレーニングについて、その目的や効果、具体的な実践方法までわかりやすく解説していきます。
ペアレントトレーニングとは
ペアレントトレーニングは、1960年代にアメリカで行われた、科学的根拠に基づく子育て支援プログラムです。日本でも1990年代から発達障害のある子ども向けのペアレントトレーニングプログラムが発展してきました。
代表的なプログラムを以下に紹介します。
- 肥前式:講義で学んだ内容をグループワークで話し合ったり、家庭で記録をつけたりする
- 精研式・奈良式:講義やグループワークで学習したテーマを家庭で実践し、その結果を参加者同士でシェアし合う
- 鳥取大学式:応用行動分析を用いた講義やワークをグループワークを通じてシートを記入したり話し合ったりする
特に、注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)など発達障害のある子どもの親に対して、ペアレントトレーニングは高い効果を示しています。また、一般の子育てでも、親子関係の改善や子どもの健全な発達を促進する効果が報告されているプログラムです。
ペアレントトレーニングの主な目的
ペアレントトレーニングでは、保護者のほめ方や指示で子どもの考え方や行動、習慣が変わり、その変化が定着していくことを目指しています。保護者が子どもの行動を客観的に観察し、効果的に対応するスキルを身につけることで家庭内の関係性を改善して、子どもの健全な発達を促進するのが主な目標です。
ペアレントトレ-ニングでは、まず子どもの行動を丁寧に観察し、背景にある要因を分析するスキルを学びます。それぞれの状況に適した対応方法を選択する判断力を養い、問題が起きる前に予防的に関わる方法についても理解を深めていきます。
同じような立場の保護者と交流できる機会の提供も、ペアレントトレーニングの大切な目的です。保護者同士での心理的サポートに加え、専門家から必要な助言やサポートを受けることで、一人で悩みを抱え込まない環境づくりを目指します。
ペアレントトレーニングから期待できる効果
ペアレントトレーニングの概要はわかったけど、実際に効果はあるの?
ここまでお読みになって、そう考える方もいらっしゃるはず。実はペアレントトレーニングは、多くの研究により効果が実証されています。主な効果は以下の通りです。
子どもへの効果
問題行動の軽減に繋がる
例えば子どもが癇癪(かんしゃく)を起こす際、その行動の裏には「伝えたい気持ちがうまく表現できない」「不安で落ち着かない」など本当の理由が隠れている場合があります。ペアレントトレーニングでは、保護者が子どもの行動の意味や背景を理解して適切な対応方法を身につけられるため、問題行動の改善を期待できるのが魅力です。
基本的な生活習慣が改善され、衝動的な行動をコントロールする力も身につきやすくなります。
社会性を向上させられる
子どもの社会性を向上させられるのも、ペアレントトレーニングで期待できる効果の一つです。例えば「順番を待つ」「おもちゃを貸し借りする」など、友達と遊ぶ際の基本的なスキルを少しずつ練習します。そのため、集団活動での協調性が養われ、コミュニケーション能力の向上も目指せます。
自尊心を向上させられる
ペアレントトレーニングでは、保護者が我が子の小さな成功や努力を見逃さずに具体的な言葉で認めることを学ぶため、子どもは「できた」「うまくいった」と達成感を繰り返し味わうことができるのです。
片付けができたね
一生懸命頑張ったね
上記のような声かけを適切なタイミングで行うと、子どもは自分を大切に思える気持ちや「やればできる」という自信を育んでいき、自尊心の向上につながっていきます。
学習意欲を刺激できる
ペアレントトレーニングは、子どもが「できた」と感じられる適切な難易度の課題を用意したり、失敗を恐れずに挑戦できる安心な環境を整えたりする技術を身につけられる場です。さらに、我が子が課題に取り組む過程を具体的に褒めることで、子どもは学ぶことの楽しさや達成感を実感できるようになります。
子どもの学びへの興味や意欲が自然と高まり、自ら進んで新しいことにチャレンジする姿勢も育まれていきます。
感情コントロールを改善できる
子どもが自分の感情を表現するための健全な方法を学べるのも、ペアレントトレーニングのメリットです。また、活動を通じてストレスへの対処法も学べるため、自分の行動や感情をコントロールして、やりたいことを実現する能力の向上も目指せます。
保護者への効果
子育てスキルの向上
ペアレントトレーニングを通じて、保護者は子どもの行動を促す効果的な声かけ方法を習得できます。適切な褒め方についての理解も深まるため、子育てスキルが総合的に向上しやすいのが魅力です。また、問題行動への具体的な対処法、予防的な関わり方についても実践的に学んでいきます。
子育てへの自信の回復
ペアレントトレーニングで適切な対応をして成功体験を重ねることで、自分の子育て方法に確信が持て、自信を取り戻す効果が期待できます。また、専門的な知識を習得できるため、より確かな判断をしやすいのもメリットです。
ストレスや不安の軽減
ペアレントトレーニングで支援者や仲間との繋がりができると、孤立感が軽減されます。そのため、育児に関するストレスや不安が軽減しやすいのも、ペアレントトレーニングの大きな利点です。
また、同じ立場の保護者との情報共有を通じて、自分自身をリラックスさせる方法を学べるメリットもあります。
子どもとの関係性の改善
ペアレントトレーニングでは、保護者と子ども双方の理解が深まり、ポジティブな関わりの機会が増えていきます。そのため、徐々に信頼関係を築くことができ、親子で楽しく過ごす時間を増やしていきやすいのが魅力です。
子育ての悩みに寄り添うペアレントトレーニングの可能性
ペアレントトレーニングの最大の特徴は「完璧な親になる」ことを目指すのではなく「よりよい関わり方を学ぶ」ことに重点を置いている点です。一歩ずつ、自分のペースで学んでいけるのが、多くの親御さんに支持されている理由でもあります。
ペアレントトレーニングに興味を持たれた方は、ぜひお近くの医療機関や福祉施設、発達支援センターなどで実施されているプログラムに参加してみてください。同じような悩みを持つご家族との出会いが、新たな気づきや学びのきっかけになるかもしれません。
【参照】
発達障害支援における ペアレント・トレーニング はじめの一歩|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12600000/000888060.pdf
ペアレント・トレーニング実践ガイドブック|厚生労働省
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