障がい児に対して支給される手当の1つが「障害児福祉手当」です。障害児福祉手当には所得制限があります。
この記事では、障害児福祉手当の所得制限の金額や所得制限が設けられている理由などを解説します。
障害児福祉手当とは
障害児福祉手当とは、精神または身体に重度の障害がある20歳未満の子どもに支給される手当です。
そのため、保護者ではなく障がいのある子ども本人が受給者となり、手当は子ども名義の口座へ振り込まれます。
▼障害児福祉手当についての詳細はこちらの記事を参考にしてください
障害児福祉手当の所得制限
障害児福祉手当には所得制限が設けられています。受給資格者本人、もしくはその配偶者または扶養義務者の前年の所得(※)が一定の額以上だと手当は支給されません。
所得制限の金額は以下のとおりです。
障害児福祉手当の所得制限の金額
扶養親族の数 | 受給資格者 | 配偶者及び扶養義務者 |
0 | 3,604,000 | 6,287,000 |
1 | 3,984,000 | 6,536,000 |
2 | 4,364,000 | 6,749,000 |
3 | 4,744,000 | 6,962,000 |
4 | 5,124,000 | 7,175,000 |
5 | 5,504,000 | 7,388,000 |
※所得額は、地方税法の都道府県民税についての非課税所得以外の所得等から、医療費控除、障害者控除及び寡婦控除等の額を差し引いた額です。
具体的な家族構成に当てはめてみると、以下のようになります。
【4人家族で子どもに障害児福祉手当の受給資格者がいるケース】
家族構成:父、母、長女、次女の4人家族(そのうち子ども1人が手当の対象)
扶養関係:父親が子ども2人を扶養
受給できる条件:受給資格者本人(子ども)の所得が3,604,000円以下・受給資格者本人(子ども)の扶養義務者である父(扶養親族2人)の所得が6,749,000円以下であること
障害児福祉手当と特別児童扶養手当は所得制限の金額が違う
障害児福祉手当と似た制度に、特別児童扶養手当があります。特別児童扶養手当にも所得制限が設けられていますが、障害児福祉手当と特別児童扶養手当ではそれぞれの所得制限の金額に違いがあります。以下の表をご覧ください。
障害児福祉手当 | 特別児童扶養手当 | |
受給資格者 | 障がいのある子ども本人 | 障がいのある子どもを扶養する者(保護者) |
支給金額 | 15,690円 | 1級(重度障害児):55,350円2級(中度障害児):36,860円 |
所得制限(扶養親族は1人の場合) | 受給資格者本人(子ども)の所得:3,984,000円受給資格者本人(子ども)の配偶者及び扶養義務者の所得:6,536,000円 | 受給資格者本人(保護者)の所得:4,976,000円受給資格者本人(保護者)の配偶者及び扶養義務者の所得:6,536,000円 |
支給対象の要件(一例) | ・身体障害者手帳1級、および2級の一部・療育手帳等級A・これらと同等の疾病・精神障害 | ・身体障害者手帳1、2級相当の障害が重複している・療育手帳判定Aで、その他の障害・疾患が重複している・これらと同等の疾患・精神障害 |
このように障害児福祉手当と特別児童扶養手当では、受給資格者と所得制限の基準が異なります。そのため、所得制限が理由で特別児童扶養手当を受給できないケースでも、障害児福祉手当ならば受給できるという場合があります。
例えば次のようなケースです。
【3人家族で子どもに障がいがあるケース】
家族構成:父、母、子
扶養関係:父親が子どもを扶養
所得:父親の所得5,000,000円、母親の所得2,000,000円
このケースでは、特別児童扶養手当については、受給資格者である父親の所得が所得制限を超えているので対象外です。
一方、障害児福祉手当は受給対象となります。受給資格者である子ども本人に所得がなく、受給資格者の扶養義務者である父親の所得が制限を超えていないためです。
このようにそれぞれ支給要件が異なるため、一方の制度が対象外であるからといって、もう一方の制度も対象外であるとは限りません。わからないことや心配な点がある場合は、市区町村の担当窓口へ相談してみましょう。
ちなみに、障害児福祉手当と特別児童扶養手当、さらに通常の児童手当は、受給資格を満たしていればそれぞれ受給が可能です。
▼特別児童扶養手当の詳しい内容は以下の記事で解説しています
障害児福祉手当の所得制限対象になったらどうなるか
障害児福祉手当の所得制限対象になった場合、手当を受け取ることができなくなります。
障害児福祉手当の認定を受けると、自治体へ年に1回「現況届」として所得金額を届け出ます。前年度の所得が基準額より多い場合、1年間手当の支給が停止します。
支給停止となった場合にも、受給資格認定は取り消しにはなりませんので、翌年度「現況届」を提出し、その結果次第で支給停止のままか、または支給停止解除(支給再開)となるかが決定されます。
支給停止後の対応や必要な手続きも自治体ごとに異なる可能性があります。詳細は市区町村の担当窓口へ確認してみましょう。
なぜ障害児福祉手当に所得制限があるのか?所得制限は撤廃されないのか
障害児福祉手当には、なぜ所得制限があるのでしょうか。
障害児福祉手当などの社会福祉に使われる財源は、健康保険などの保険料を徴収することができる社会保険とは違い、国や地方公共団体の公費から出ています。そのため財源に限りがあり、所得に応じて対象者を限定するという結果に繋がっているのです。
一方で、所得制限の限度額の根拠となる法令自体が60年前のものであり、現在の社会環境もふまえて再検討が必要であるという指摘もあります。
近年では当事者団体や弁護士会などが、所得制限の存在そのものが「障がい児(者)の権利を侵害している」として、所得制限の撤廃を含めた各種制度の見直しを求める声明などを発表しています。
実際に特別児童扶養手当の所得制限については、国会でも質問が上がりました。
▼詳しくはこちらの記事で解説しています
2024年10月からは児童手当の所得制限が撤廃されることになりましたよね。障害児福祉についてもぜひ早急に議論を進めてほしいものです。
所得制限に該当するか確認して、障害児福祉手当を申請しよう
障害児福祉手当は、特別児童扶養手当や児童手当など似た名前の制度が多いにも関わらず、所得制限金額が異なっていたり「何となく理解が難しい」と感じている人もいるかもしれません。
障害者福祉手当には所得制限があり、基準以上の所得があると受給対象者にはなりません。
もし障害児福祉手当の申請をまだしていない場合には、是非この機会に所得制限に該当するかを確認し、受給資格があれば申請してみてください。
障害者福祉にかかわる各種制度の所得制限については、撤廃を求める動きはあるものの今後どうなるかは未定です。
障害児福祉手当は障がいのある子ども本人が受給資格者であり、受給すること自体が子ども自身の大切な権利です。必要な子どもたちが等しく受給できるようになる未来がくることを願っています。
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