障がい児や疾患児の子育てでは、疾患や障がいの程度に応じて特殊な介護用品や医療用品などが必要となることがあります。そのような特殊な生活用品を購入する場合の経済的負担を軽減できるのが、日常生活用具給付等事業です。
この日常生活用具給付等事業、障がい者手帳を持っている子どもだけでなく、小児慢性特定疾病を持つ子どもも申請ができることをご存じでしょうか?
この記事では、小児慢性特定疾病対策における、日常生活用具給付の仕組みや対象者、申請方法について紹介していきます。
日常生活用具給付等事業とは
日常生活用具給付等事業とは、障がい者や難病患者の日常生活を円滑にするために必要な用具の給付を行う制度です。利用できる対象者は「重度の障がい者、障がい児、難病患者等で、日常生活用具を必要とするもの」と規定されており、制度の対象者と認められれば、必要な用具の購入の際に費用の助成を受けることができます。
▼日常生活用具給付事業についてくわしくはこちらの記事をご覧ください
小児慢性特定疾病対策の日常生活用具給付等事業とは
小児慢性特定疾病対策の日常生活用具給付事業とは、小児慢性特定疾病の受給者証を持っている人が対象の日常生活用具給付等事業です。
▼小児慢性特定疾病についてはこちらの記事で詳しく解説しています
給付できる種目と対象者
小児慢性特定疾病情報センターでは、日常生活用具給付の対象となる種目と対象者について以下の18種目を示しています。
種目 | 対象者 |
便器 | 常時介護を要するもの |
特殊マット | 寝たきりの状態にあるもの |
特殊便器 | 上肢機能に障害のあるもの |
特殊寝台 | 寝たきりの状態にある者 |
歩行支援用具 | 下肢が不自由な者 |
入浴補助用具 | 入浴に介助を要する者 |
特殊尿器 | 自力で排尿できない者 |
体位変換機 | 寝たきりの状態にある者 |
車いす | 下肢が不自由な者 |
頭部保護帽 | 発作等により頻繁に転倒する者 |
電気式たん吸引器 | 呼吸器機能に障害のある者 |
クールベスト | 体温調節が著しく難しい者 |
紫外線カットクリーム | 紫外線に対する防御機能が著しく欠けて、がんや神経障害を起こすことがある者 |
ネブライザー | 呼吸器機能に障害のある者 |
パルスオキシメーター | 人工呼吸器の装着が必要な者 |
ストーマ装具 | 人工肛門を造設した者 |
人工鼻 | 人工呼吸器の装着又は気管切開が必要な者 |
それぞれの品目ごとに上限額、耐用年数も決まっています。対象者の基準や上限額は各市区町村によって若干異なっていたり、変更されたりする場合がありますので、お住まいの自治体のホームページで最新の情報を確認してください。
なお、小児慢性特定疾病対策事業の日常生活用具給付については、自治体のホームページ上では障害者福祉ではなく子育て支援のページに記載されていることもありますので注意が必要です。対象となるかどうかわからないときは、まずは自治体の障害福祉を管轄する課に問い合わせてみると良いでしょう。
自己負担額と所得制限
日常生活用具の給付を受ける場合、一部自己負担金が必要です。自己負担額は前年度の世帯収入によって、自治体ごとに基準額が設定されています。また、購入する種目の支給上限額を超えた分の金額についても、自己負担となります。
注意したいのは、日常生活用具給付を利用するには所得制限があることです。自治体が定める基準を大幅に超えて収入がある場合は、制度の利用はできず全額自己負担となります。
身体障害者手帳を使った日常生活用具給付等事業との違い
日常生活用具給付等事業は、身体障害者手帳保有者が対象となる制度もあります。では、小児慢性特定疾病の日常生活用具給付等事業との違いは何でしょうか。
1.根拠となる法律の違い
身体障害者手帳保有者が対象のものと小児慢性特定疾病の受給者証保有者が対象のものでは、根拠となる法律が異なります。
- 障害者手帳保有者対象:障害者総合支援法に基づいた事業
- 小児慢性特定疾病受給者対象:児童福祉法に基づく小児慢性特定疾患対策の一環としての事業
根拠となる法律は異なりますが、日常生活に必要な用具の給付として費用助成をするという制度概要はどちらも同じで、実施主体は各市区町村です。
2.対象年齢の違い
小児慢性特定疾病の日常生活用具給付等事業では、基本的に年齢制限は設定されていません。一方、障害者手帳を用いた日常生活用具給付等事業では、「学齢期以上」や「3歳以上」など年齢の制限が課されていることが多いです。
筆者の息子は3歳の時に吸引器を購入しました。障害者手帳と小児慢性特定疾病のどちらも持っていましたが、障害者手帳の日常生活用具等給付は「学齢期以上」が対象となっていたため対象とならず、小児慢性特定疾病の受給者証を利用して日常生活用具給付の申請をしました。
3.支給対象となる用具や用品の違い
小児慢性特定疾病の日常生活用具給付等事業では、「情報・意思伝達支援用具」や「自立生活支援用具」の一部の用品については対象外です。
また、身体障害者手帳保有者対象の日常生活用具給付等事業では「居宅生活動作補助用具」の項目で住宅改修費の給付が申請できますが、小児特定慢性特定疾病の日常生活用具給付等事業では住宅改修費は対象外です。
もし日常生活に必要な物品や用具を申請したい場合、身体障害者手帳と小児慢性特定疾病それぞれの事業で「どちらかが対象でどちらかが対象外」というケースが発生するということです。両方の日常生活用具給付等事業の対象品目を確認して申請するようにしましょう。
障害者手帳と小児慢性特定疾病受給者証をどちらも所持し、どちらの該当要件も満たしている場合は、基本的に障害者手帳で申請できる日常生活用具給付制度の利用が優先されます。
日常生活用具給付等事業(小児慢性)の申請方法
ここからは、小児慢性特定疾病受給者の日常生活用具給付の申請方法について解説していきます。日常生活用具給付は、用具の購入後に申請をすることはできません。必ず購入前に申請をしましょう。
申請先
各市区町村の担当窓口に申請します。窓口は障害者福祉課や子育て支援課など、自治体により異なります。
申請に必要なもの
- 日常生活用具給付申請書
- 小児慢性特定疾病受給者証
- 世帯状況申告書
- 印鑑
- 購入する用具の見積書、内容が分かるカタログ等
その他、医師の意見書が必要となる場合があります。
申請の流れ
申請する品目によって対象者が異なりますので、まずは申請の前に子どもが対象となるかどうかを確認しましょう。給付を受けることができる場合、必要な申請書類を受け取ります。
用具を購入する業者を決め、どの用具を購入するか検討します。購入するものが決まったら、申請の際に必要となるため、金額の見積を出してもらいましょう。
申請に必要な書類の記入をします。意見書が必要な場合は、医師に依頼して作成してもらいます。
必要書類を持って窓口で申請をします。
自治体が申請を認めた場合、給付決定通知と給付券が届きます。決定通知が届いたら、購入業者に連絡しましょう。
支払い方法は、償還払いと代理払いの二通りです。
償還払いとは、用具を受け取る際に購入代金を一旦全額支払う方法です。その後、自治体窓口に給付券を持参をし、助成分の還付手続きを受けます。一方、代理払いでは自己負担金のみを支払えば用具を受け取ることができます。給付券は購入業者に提出し、業者から自治体に助成分の金額を請求します。
支払い方法についても、自治体に確認しましょう。
制度を活用して日常生活用具の給付を受けよう
障がい児に関わる制度には複雑なものも多く、せっかく制度があるのに知らなかったために利用できなかったというケースもあります。この記事を読んで、日常生活用具給付等事業について知ってもらい、生活に役立ててもらえると嬉しいです。
子どもたちとより良い暮らしができるように、使える制度は利用して負担を軽減していきましょう!
▼この記事は以下のサイトを参照して作成しています
重度障がい者日常生活用具給付基準|大阪市福祉局障がい者施策部
https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/cmsfiles/contents/0000626/626534/kyuufukijun_besshi123.pdf
小児慢性特定疾病児日常生活用具給付申請のご案内|大阪市
https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/cmsfiles/contents/0000302/302914/shoumannisseigu040401.pdf
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