子どもに用いられることが多い経管栄養には、経鼻胃管栄養、経鼻腸管栄養、胃ろう、腸ろうの4種類あります。今回は、それぞれの経管栄養の特徴や対象者、種類、メリット・デメリットを解説します。
経管栄養とは
経管栄養とは、口から食事をすることが難しい人のための栄養補給方法です。チューブを通して直接胃や腸に栄養剤やペースト食などの流動食を入れ栄養摂取に使うほか、水分補給や内服薬を口から飲むことが難しい場合の投薬にも使われます。
何らかの理由で食事が口から取れなくなった人や嚥下機能が低下した高齢者、疾患や障がいにより嚥下が難しい子どもにも取り入れられています。
▼経管栄養について詳細はこちらの経管栄養とはの記事を読んでみてください
経管栄養の種類
経鼻胃管栄養、経鼻腸管栄養、胃ろう、腸ろうの4種類あります。それぞれの特徴や対象者、メリット・デメリットを紹介します。
経鼻胃管栄養
経鼻胃管栄養とは何かや経鼻胃管栄養の対象者、経鼻胃管栄養のメリット・デメリットについて説明します。
経鼻胃管栄養(NGチューブ)とは
経鼻胃管栄養とは鼻からチューブを挿入して胃にチューブ(NGチューブ)の先端を留置し直接胃に栄養や薬を届ける方法です。
子どもの状態によっては口から挿入することもありますが、鼻から挿入したほうが違和感が少なく、チューブを抜いてしまうリスクが低くなります。また、固定もしやすいです。
経鼻胃管栄養の対象者
経鼻胃管栄養の対象は、消化管には問題はないものの、食べることや飲み込むことが難しい人などです。例えば、筋肉の疾患で、飲み込む力(嚥下)が弱く食べ物や飲み物などを飲み込めないけれど、消化機能の働きは問題がない場合などに、経鼻胃管栄養を使用します。
経鼻胃管栄養のメリット
経鼻胃管栄養のメリットは、チューブの挿入が比較的簡単であることや手術が必要ないこと、腸管を使用した生理的な栄養摂取のため腸の免疫が保たれることです。
経鼻胃管栄養の場合、チューブが抜けてしまっても親や訪問看護師など、医療的ケアができる人であれば誰でも挿入することができるため、安定して栄養を摂取することができます。
また、手術が必要ないため、何らかの理由で手術ができない子どもの栄養補給手段としても有効です。
さらに胃腸を使うことから、自然な栄養摂取に近く、消化管の機能を維持することに繋がり、腸の免疫が保たれるメリットもあります。
経鼻胃管栄養のデメリット
経鼻胃管栄養のデメリットの1つは、鼻から胃へチューブを挿入しているため、本人が違和感を感じることです。
また、頬にテープで固定することによるトラブルも発生します。主なトラブルは肌荒れと自己抜去です。
自己抜去とは、テープを邪魔に感じたり貼っている部分がかゆくなってしまうことから自分の手でチューブを抜いてしまうこと。注入中に自己抜去してしまうと、窒息や誤嚥性肺炎になる可能性もあるため注意が必要です。
友人の話では、1歳半の子どもで1日に3回以上自己抜去してしまうこともあると言っていました。その度に挿入し直さなければならず、ストレスに感じていたとのことです。
また、長時間テープを貼っていることにより肌の弱い子どもなどは肌荒れを起こしてしまうこともあります。
▼経管栄養の自己抜去についてはこちらの記事が詳しいです
経鼻腸管栄養
経鼻腸管栄養とは何かや経鼻経腸栄養の対象者、経鼻腸管栄養のメリット・デメリットについて説明します。
経鼻腸管栄養とは
経鼻腸管栄養とは、鼻から胃にチューブ(EDチューブ)を挿入し、胃の出口である幽門(ゆうもん)を超えて十二指腸または空腸に留置する方法です。
経鼻胃管栄養とは異なり、挿入は医師がX線透視下または内視鏡で行います。親や看護師が挿入することはできません。
経鼻腸管栄養の対象者
経鼻腸管栄養の対象となるのは、嘔吐や胃からの逆流などによって経鼻胃管栄養が使用できない人であることが多いです。
経鼻腸管栄養のメリット
経鼻腸管栄養のメリットは手術をすることなく、栄養摂取ができる点です。十二指腸や空腸に留置しているため、胃からの逆流や嘔吐の心配が少ないのもメリットです。
経鼻腸管栄養のデメリット
経鼻腸管栄養のデメリットは、EDチューブを自己抜去してしまった場合、すぐに挿入することが難しく、病院に行って医師にX線透視下で挿入をしなければならない点です。挿入しなければ水分摂取ができず、脱水になってしまう可能性もあるため、すぐに挿入できない場合は挿入できるまで点滴で水分をとることもあります。
息子のかかりつけの病院では、EDチューブが挿入できる日にちが決まっているため、自己抜去したときは入院して、挿入するまでは点滴で水分を摂取していました。
また経鼻腸管栄養のチューブは内径が細いものを使用しているため、閉塞に注意が必要です。閉塞やチューブの破損を予防するために定期的にチューブを交換する必要があります。
息子の場合は2ヶ月に1回、2泊3日の入院をし、経鼻腸管栄養のチューブ交換を行っています。
胃ろう
胃ろうとは何かや胃ろうの対象者、胃ろうの種類、胃ろうのメリット・デメリットについて説明します。
胃ろうとは
胃ろうとは、お腹の表面から胃にかけて小さな穴を開け、栄養カテーテルという管を留置する方法です。カテーテルには、胃内部のストッパーと外部の接続部分によって4種類のタイプがあります。
胃ろうの対象者
消化管の働きは問題ないけれど、口から食べ物や飲み物を飲み込むことが難しい嚥下障害のある人や経口摂取だけでは安定して栄養や薬の摂取が難しい人が対象者です。
胃ろうの種類
胃内部のストッパーはバンパー型とバルーン型の2種類あり、外部の接続部分にはボタン型とチューブ型の2種類あります。この組み合わせによって、全部で4種類のタイプがあることになります。
胃ろうのメリット
胃ろうのメリットの1つが、顔にチューブを固定するテープがないので邪魔にならず、顔の見た目もスッキリとした状態でいられることです。衣服を着ている状態であれば目立つこともなく、自己抜去のリスクも低いです。
また、気管への誤挿入がないため、安全性が高いです。
さらに、チューブが太いため閉塞の心配が少なく、ミキサー食やペースト食などの流動食を注入することができ、食事の幅が広がります。
胃ろうのデメリット
胃ろうの大きなデメリットは、手術が必要なことです。比較的負担の少ない手術ではありますが、子どもの身体に負担をかけてしまうことには変わりません。
また、以下のようなトラブルが起きることもあります。
- カテーテルの抜去
- 胃ろう周辺の皮膚トラブル
- 胃ろうからの漏れ
チューブが抜けてしまうと、一晩程度の短時間で穴が塞がってしまう可能性があり、再手術が必要になることもあるため特に注意が必要です。
胃ろう周辺は皮膚トラブルが起こりやすいため、漏れがないかこまめにチェックする、ガーゼの交換を頻繁にするなど清潔に保つためのケアにも気を配らなくてはいけません。
▼子どもの胃ろうや体験談についてはこちらの記事もチェック
腸ろう
腸ろうとは
腸ろうとは、腸に小さな穴を開け、十二指腸または空腸に栄養カテーテルを留置する方法です。カテーテルは、EDチューブを適切な長さに切って使用します。
腸ろうの対象者
胃の病気を患っていたり、胃を切除していたりして、胃に何らかの原因があり胃ろうを選択できない場合に腸ろうになることが多いです。
もしくは、胃ろうを行ったものの、嘔吐が続いたり栄養剤が漏れてしまったりする場合に、腸ろうに切り替えることもあります。
腸ろうの種類
胃ろうを通じて栄養カテーテルを十二指腸または空腸まで挿入する経胃ろう的十二指腸ろうと、腹腔外から経皮的に空腸内に栄養カテーテルを挿入して腹壁に固定する空腸ろうの2種類あります。
腸ろうのメリット
腸ろうは小腸に直接栄養剤を注入するため、胃ろうに比べて逆流しにくいのは1つのメリットです。
他のメリットは胃ろうと同じく、洋服を着ていれば目立ちにくかったり、自己抜去するリスクが低かったりする点です。
口や鼻からチューブを挿入することもないので、チューブが喉を通ることへの不快感もありません。
腸ろうのデメリット
腸ろうは腹部に穴を開ける手術が必要になるだけでなく、カテーテルの交換をするときに通院しなければいけません。万が一カテーテルを抜去してしまった場合には、家では挿入することはできないので、医療機関に受診する必要があります。
また、チューブの太さが胃ろうよりも細いため、栄養剤や詰まりやすく注入に時間がかかってしまうのもデメリットの1つです。
胃ろうと同様、腸ろうまわりの皮膚トラブルは起きやすいので、清潔に保つケアが必要になります。
経管栄養の種類は4種類!子どもの状態に合わせて適切な経管栄養を選ぼう
子どもが取り入れることの多い経管栄養の種類は経鼻胃管栄養、経鼻腸管栄養、胃ろう、腸ろうの4種類あります。
経管栄養は、子どもの成長や状態によって適切な経管栄養は変わってきます。例えば、現在、経鼻胃管栄養だからといって、一生そのままというわけではありません。自己抜去のリスクが大きいと考えた場合、成長とともに胃ろうに変更するケースもあります。
また、子どもによっては嚥下ができるようになり経管栄養を卒業する場合もあります。
それぞれ特徴やメリット・デメリットを理解し、医師と相談しながら子どもの状態に合った経管栄養の選択をしていきましょう。
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