事故や病気が原因で、手術で腹部にストーマと呼ばれる人工肛門や人工膀胱を作った人をオストメイトといいます。
通常のトイレでの排せつが難しいオストメイト。街中ではオストメイトが使いやすい「オストメイトトイレ」を設置する施設が増えています。一方で、オストメイトがどのようにトイレを利用しているのか、実際の使い方まで知っている人は少ないかもしれません。
今回の記事では、娘がオストメイト対応トイレを利用した経験のあるママが、オストメイト対応トイレの設備内容やその意義をご紹介します。意外と知らないオストメイト対応トイレの具体的な使用法についてもみていきましょう。
オストメイト対応トイレとは
オストメイト対応トイレは、便意や尿意がなく、排せつをコントロールできないオストメイトのためのトイレです。意志に関わらず自然に排出される便や尿をためておく「パウチ」などストーマ装具を捨てやすいように作られています。
オストメイト対応トイレには、ストーマ装具や汚れ物を洗うための汚物流し、汚れた腹部を洗うことができる水栓器具などが設置されています。
また、シャワーヘッドや荷物を置く台などがついた機能的なもの、ストーマ装具を洗う洗浄水栓と背もたれが一体化した簡易的なものなどもあります。
万が一、排せつ物が漏れてしまった場合も、機能の整ったオストメイト対応トイレがあれば、新しいパウチ交換、また汚れてしまった衣服の交換も安心して行えます。
緊急処置ができるオストメイト対応のトイレがあると、オストメイトの外出のハードルは下がりますね。
オストメイト対応トイレは、多目的(多機能)トイレの中に設置されていることが一般的です。また、個室のオストメイト対応トイレもあります。
オストメイト対応トイレの設置増加
2006年に施行された「バリアフリー法」(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)によって、オストメイト対応トイレの設置義務付け範囲が広がりました。このような動きによって、オストメイトが外出時に利用できるトイレも徐々に増加しています。
オフィスや学校でも、バリアフリー法認定を得るためにはトイレへのオストメイト対応設備の設置が各階で必要となりました。
ホテルなど宿泊施設をはじめ、公共機関にもオストメイト対応トイレが設置されるようになってきています。
オストメイト対応トイレのマーク
オストメイト対応トイレには「オストメイトマーク」が掲示されています。このマークは、トイレにオストメイト用の設備が準備されていることを示すサインです。
また、トイレだけではなく、オストメイトマークを身に着ける方もいます。オストメイトは外見からは判断がつきにくく、マークを示すことで自分の身体の状態を周囲に理解してもらいやすくなります。
オストメイト対応トイレを使う人
オストメイトトイレの使用対象者は、手術でストーマを作ったオストメイトです。人工肛門や人工膀胱、もしくはその両方をつけた人たちが、より快適にトイレを使えるよう、オストメイトトイレにはさまざまな設備が用意されています。
オストメイトトイレの種類と設備
オストメイト対応トイレにも種類があります。代表的なものは、洗浄台が設置されている機能的なタイプで、ほかにも背もたれと洗浄水栓が一体化したタイプなどがあります。
洗浄台が設置されている機能的なタイプ
設備 | 用途 |
---|---|
汚物流し台 | 腹部の洗浄、ストーマ装具の交換と洗浄、衣服の洗濯も |
カウンター | ストーマ装具や交換に必要なものを置くスペース |
各種フック | 小物や衣服、手荷物用品をかける |
鏡 | ストーマ装具をつける際に腹部を写す |
汚物入れ | 使用済みのストーマを廃棄する |
着替え台 | 服の着替え時に利用する |
洗浄水栓と背もたれが一体化したタイプ
洗浄水栓と背もたれが一体化したタイプは、汚れたパウチを洗浄するために使います。腹部を直接洗うことにはあまり適していないかもしれません。
便座の前方が広いタイプ
便座に座ったままパウチから排せつ物を出し、処理がしやすいよう便座の形状が工夫されたトイレです。便座の前部分が広めに形作られています。洗浄機能などは設置されていません。
オスメイトトイレの使い方
ここからはより具体的に、洗浄台などが設置されている機能的なタイプのオストメイト対応トイレの使い方をステップにわけて紹介していきます。
1.排せつ物を捨てる
たまった排せつ物が流れ出ないよう、パウチにたまった排せつ物はあらかじめ出してからパウチをはずすようにしましょう。
2.パウチや腹部の洗浄
流し台で、使用済みのパウチや汚れた腹部を洗います。伸びる蛇口が設置されていれば、汚れたストーマや腹部を直接シャワーで洗います。
流し台には温水が出るタイプもあります。冷たい水で腹部を洗わずに済むのは嬉しいポイントです。
3.新しいパウチを取り付ける
外れないように接着面を腹部に密着させ、新しいパウチをストーマに取り付けます。必要に応じて、テープで補強します。
まれにテープが肌に合わないこともあるため、肌荒れ予防に使う皮膚の保護剤、テープを切るはさみ、粘膜から時おり出る血液などをふき取るウェットティッシュなど、パウチの着脱には細かな道具があると便利です。
なお、オストメイト対応トイレのカウンターは、オストメイトが排せつ物の処理をするための物品や着替えを置くため広めになっています。
4.着替え
万が一、パウチから排せつ物がもれ、衣服が汚れた場合は着替えをします。着脱の際には収納式の着替え台を使います。
オストメイトトイレの探し方
オストメイトトイレを探したい場合は、まず近くの多目的(多機能)トイレを探します。オストメイト対応トイレのマークが記載されているかを確認することでトイレを見つけることができます。
また、全国のオストメイト対応トイレの場所や設備情報などを検索できる無料のWEBサイトもあります。オストメイトjpは、オストメイトやそのご家族の願いをうけ2007年に誕生したもので、実際に利用した人たちの投稿によって、日々データが集積されています。
オストメイトjp
オストメイト対応トイレはなくてはならないもの
ここまでご紹介した通り、オストメイト対応トイレはストーマから排せつするオストメイトの方が、より快適に排せつ物の処理ができるよう配慮された設備です。
オストメイトトイレがあることで、オストメイトの方たちが外出する際の不便さや不安感は大きく軽減します。
しかし通常のトイレのように、オストメイトに対応したトイレはいつ、どこに行っても設置されているものではありません。また近年は、多目的トイレを利用する人の数が増え、トイレを使いたいときに使えず、パウチにたまった排せつ物が漏れてしまった経験のあるオストメイトの方もいます。
すべての人がより快適に過ごせる社会に必要なことは、一人ひとりが「さまざまな事情」に意識を向けることだと感じます。
デパートや公共施設でオストメイトマークを見つけた際は、ぜひ気にかけてみていただけたらと思います。一人ひとりが視点を変えたとき、すべての人がより快適に過ごせる社会に近づける気がしています。
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