子どもに障がいや疾患、医療的ケアなどがあっても、さまざまな理由や考え方から地域の学校に通わせたいと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
きょうだいと同じ学校に通わせたい
地域とのつながりを持ちたい
だけど専門的な特別支援教育も受けたい
と悩むこともありますよね。
そんな方にとって一つの解決策となるのが「副次的な学籍制度」です。ただ、制度自体も利用方法もまだまだ広く認知されていないのが課題となっています。
そこでこの記事では、副次的な学籍制度をどうしたら利用できるのかについてお伝えします。
副次的な学籍制度とは?
特別支援学校に通う児童生徒が居住地の学校に副次的に学籍を置くことができる制度を総称して副次的な学籍制度といいます。
副籍、副学籍、支援籍、交流籍など、呼称も制度の利用条件も実施自治体によってばらつきがありますが、副次的な学籍の対象者は多くの場合「主に特別支援学校に籍を置いている児童生徒のうち、保護者が希望した者」となっています。
▼副次的な学籍の制度内容や実施自治体についてはこちら
副次的な学籍制度を利用する際の注意点
副次的な学籍を置いた居住地校への通学には、多くの場合、保護者の付き添いが原則必須です。また、送迎や昼食準備、放課後の対応など、制度利用には保護者の負担がかかってしまうことも多いのが現状です。
筆者が住む長野県の場合、送迎も含め、基本的には保護者の付き添いが必須で、昼食も持参する必要があります。また、副学籍校に通った日は放課後等デイサービスの送迎は利用できません。どうしても保護者が仕事の予定を調整しなければならない状況です。
ただし、副次的な学籍制度の大枠は自治体ごとに決まっていても、細部は副次的な学籍を置く学校によって様々です。
利用を検討する際は、お住まいの自治体ではどのような生活になるのか、保護者への負担も含めて確認しておくと安心です。
副次的な学籍はどうしたら利用できる?実際の手順を紹介!
上記の注意点を理解した上で「制度を利用してみたい!」「興味がある」と思う保護者の方のために、実際に筆者が経験した副次的な学籍の利用手順をまとめました。筆者が住む長野県佐久市での実体験をもとに、同地域の「副学籍」と言う呼称を使ってご紹介します。
各自治体により利用方法は様々です。ただ、「教育委員会に申請する」といった流れは共通するところも多いと思いますのでご自身の自治体に問い合わせる際の参考にしてみてください。
手順1:副学籍希望調査用紙の提出
まず最初に、入学の前年度に実施される就学前相談で教育委員会に副学籍の利用希望を伝えます。すると、「副学籍希望調査用紙」が渡されますので、副学籍を希望する居住地校の名前と登校頻度、出席したい行事や名簿掲載の希望などを記入し、11月ごろまでに教育委員会に提出します。
また、入学後に副学籍を希望することも可能です。その場合には、毎年前年度の10〜11月ごろに、特別支援学校を通じて配布される副学籍希望調査用紙に記入し、学校を通じて自治体の教育委員会に提出します。
手順2:副学籍校決定通知書の受理
秋に提出した副学籍希望調査用紙をもとに、2月ごろに副学籍校決定通知書が届きます。手続き上は、これで副学籍を利用することができます。
手続き自体はこれだけのシンプルなものです。ただ、入学後の生活をスムーズに始めるためには、入学前の連絡や相談も行っておくことを強くおすすめします。
副学籍校でどう過ごす?授業実施例をご紹介
実際に副学籍制度を利用した場合、副学籍校で子ども同士はどのように関わっていくのでしょうか。
筆者の娘の経験から、一例をご紹介します。
娘の紹介と質問受付
最初の授業では、娘がみんなと違うところや副学籍を利用する思いを、子どもたちにわかりやすく説明する時間をもらいました。
子どもたちの不安や疑問をできるだけなくしてもらえたらと、説明後は質問を受け付けました。単純な疑問だけではなく、娘の表現や感情に関する深い質問もたくさんもらえたことが印象的でした。
音楽会への参加
副学籍校の音楽会に参加することもできました。
音楽会は、音楽が好きな娘にとって一番参加しやすい行事だと考え参加を希望。音楽会への参加希望を担任の先生に伝えた当初は難色を示されたものの、特別支援学校の先生もまじえて相談した結果、参加が可能に。お友達の力を借りてウィンドウチャイムを鳴らしました。
みんなに混じって舞台に並んでいる娘の姿を見ると、胸がいっぱいになりました。
地域の大学の福祉系の学部のゼミ生を招いてのワークショップ
図工の時間を使ってワークショップを実施したこともありました。
近くの大学の先生が強化ダンボールを使ったユニバーサル遊具を開発されているという情報を得て交渉し、教授とゼミ生に出張していただいて強化ダンボール遊具の制作を行いました。
大学としても地域貢献事業と認定してくれ、ゼミ生の皆さんにとっても地域の子どもたちと触れ合う機会となったことが、実施の後押しとなったのかもしれません。学校には保護者である私から提案し、大学の先生を交えてメールなどで準備のためのやりとりをした上で実現に至りました。
ただし、このような特別な授業は、先生によっては負担に感じる方もいらっしゃいます。通常の学校カリキュラムでもできることがたくさんあるので、担任の先生と相談しながら進めましょう。
クラスのみんなによる音遊びの授業
クラスの子どもたちから声があがり、担任の先生と一緒に「音遊び」の授業を用意してくれたのは思わぬ嬉しい出来事でした。
娘は身体障害に加えて視覚障害もあるため、音に敏感であることを最初の紹介のときに伝えていました。それをきっかけに、クラスのみんなで話し合ってくれたようです。学校の周りから植物や石ころなど、いろいろなものを集めてきて音を作り、娘が好きな音を探してくれました。
年末年始の書き初め授業への参加
娘が副学籍を置いている学校では毎年年末年始に書き初めの授業があります。たまたまその時期に通学の希望を伝えると、先生から書き初めの授業に参加しますか、と提案をしていただきました。
学校に行く回数を重ねるごとに、子どもたちも先生もあまり構えることなく、ごく普通の学校生活に混ぜてもらえるようになっていったような気がしています。
副次的学籍の利用手順はシンプルだが、学校との話し合いは必要
副学籍制度の利用自体は書類の提出と教育委員会による受理というシンプルな方法で可能になりますが、実際に利用する際には、副学籍を利用する意図や思い、お子さんの特徴を学校にしっかりと伝え、利用頻度やタイミングなどを学校とよく相談していくことが必要になってきます。
学校によってはエレベーターがないなど、設備が十分でない場合もあると思います。その場合には場所を配慮してもらったり、他の先生や児童たちに移動を手伝ってもらうなど、実際に学校での生活を想定しながらお互いに困りごとが発生しないよう話し合いをしておくのが大切ですね。
また、担任の先生や学校側もどのように受け入れたらよいか戸惑うこともあると思いますので、困ったときは専門知識や経験豊富な第三者に相談して話し合いに参加していただくよう、地域の資源を確認しておくと安心です。
先生はエレベーターがないことを含め事前にいろいろな心配をしていましたが、行ってみると子どもたちがみんなで移動を手伝ってくれたり、嬉しそうに学校を案内してくれたり。事前の話し合いも大切ですが、子どもたちは想像以上にいろんなことを軽々と乗り越えていってくれました!
副学籍を上手に活用して、特別支援教育を受けながら、地域の一員として関わりを持てると嬉しいですね。
▼副次的な学籍を利用する際のポイントをこちらの記事で解説しています
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