会話での単語やテレビ映像などを著しく早く覚えるので驚いてしまう
苦手なものはとことん苦手だけど、ある特定のものごとは著しく得意
「得意なことに対して何時間も集中して没頭するので、こっちが心配してしまうほど…
年齢からは想像できないような才能を見せて、ときに周囲の大人を驚かせてしまう子ども、「ギフテッド」。群を抜いて優れているとのイメージを持ちやすいギフテッドですが、実は発達障害とも共通している特性があります。
今回は、自閉スペクトラム症の娘と暮らす筆者が、ギフテッドの定義や種類、ギフテッドの子どもとの関わり方などについて解説します。
ギフテッドとは?
「ギフテッド」とは、先天的に非常に優れた知能や共感的理解などを持つ子どものことです。「神からの贈り物」という意味から、Giftedと呼ばれています。
ギフテッドは、いわゆる早期からの教育によって優秀になった子というよりは、特定の能力が生まれつき著しく突出している子を指すのが特徴です。遺伝要因が大きいとされ、もしも親族にギフテッドがいる場合、ギフテッドの子どもが生まれる可能性は高くなるといわれています。しかし、まだはっきりと解明されているわけではありません。
ギフテッドの定義
日本では、ギフテッドの明確な定義はまだありません。しかしアメリカでは、州によってさまざまな定義が用いられています。なかでも大半の州が定義として用いているのが、下記のテキサス州の内容です。
“ギフテッド・タレンテッドの生徒とは、同じ年齢・経験・環境を持つ子供と比較して、著しく高いレベルを達成する、あるいはその可能性をうかがわせる子供。知的能力、独創性や芸術の分野において高い実行能力を示す、並外れたリーダーシップ能力を持つ、あるいは特定の学術分野で秀でている。”
【引用】74th legislature of the State of Texas, Chapter 29, Subchapter D, Section 29.121
URL:https://statutes.capitol.texas.gov/Docs/ED/htm/ED.29.htm
そもそもギフテッドとは教育用語であり、医療や診断に使われる用語ではありません。ギフテッドであるかを認定する際も、IQの高さだけではなく、才能の領域に応じた評価やチェックリストの活用など多様な評価方法が用いられます。
ギフテッドの特徴
乳幼児期から才能を発揮することもあれば、小学校就学以降に能力を発揮することもあるギフテッドの子どもたち。主に次のような特徴が見られます。
- 言語の習得が早い
- 好奇心旺盛で知識欲が強い
- 並外れた記憶力と理解力を発揮
- 集中力が著しく高い
- 知能が年齢以上に発達するため、同年代の子どもと話が合いにくい傾向
- 感受性が強い など
早ければ2〜3歳頃には、親が子どもの特性に気付き始める場合があります。また「保育園や小学校で先生から指摘された」というケースも少なくありません。
幼少期
幼少期は「我が子はギフテッドなの?」と判断するには、まだ難しい時期です。しかし「数多くの単語を覚えて長文で話し始める」「本やテレビの内容をすぐ覚える」などで周囲の大人を驚かせることがあります。
また、一つのものごとに長時間集中力を発揮したり、優れた想像力でごっこ遊びなどをするのもこの時期です。知能に言葉や運動神経などが追いつかないもどかしさから、癇癪を起こす場合もあります。
学童期
小学校に入学して本格的な学習が始まると、ギフテッドの特性はより分かりやすくなります。そのため、ギフテッドの子どもにとって学童期は、同学年の子ども達と関わるなかで違和感を覚え始める時期です。
例えば、テストでいい成績が取れたとしても、友達との会話が噛み合わず、人間関係の構築に悩んだり学校生活自体に楽しさを感じなかったりする場合があります。「テストをあっという間に終える」「授業の内容が簡単すぎて面白さを感じない」など、高い知能を持つゆえの苦痛が芽生えやすいため、特性に理解を示したり子どもの気持ちを尊重してあげたりすることが大切です。
学童期に周囲の大人がどのように関わるか、どのように得意分野を活かすか、子ども本人が特性をどのように受け止めるかなどで、成人期における生活のしづらさの程度が変わってくる場合があります。
成人期
ギフテッドの特性は、成長に伴ってなくなるものではありません。「頭の回転が速くて会話がスピーディー」「好奇心旺盛で意欲的」「職場のリーダーとして活躍する」など、さまざまなシーンで優れた能力を示します。
仕事をしたり家庭を持ったりとさまざまなライフステージがある成人期には「自分のこの能力を活かせる仕事は何か」「ギフテッドの特性を理解してくれる人は誰か」の視点が大切です。
成人期のギフテッドは、集団生活や社会生活を送るうえで自分に適した環境に身を置けない場合、うつ状態や不安障害などの精神疾患を併発するケースも多数あります。ギフテッド特有の悩みを相談できる場所や、安心して能力を発揮できる居場所を見つけられることが重要な時期です。
ギフテッドの種類
ギフテッドには「英才型」と「2E型」の2種類があります。
英才型
「英才型」のギフテッドとは、ある特定の分野が突出して得意というものではなく、認知や記憶など全面的に高い知能を示す人です。周囲の人たちからも「群を抜いて才能がある」と見えるため協力を得やすい環境で過ごせる場合が多く、能力を伸ばすための機会やチャンスが提供されやすいともいえます。
▼例えば…
- 国語、数学、理科、社会、英語、美術、体育などどの学業においても得意!
- 社会性も兼ね備えているから、日常生活をスムーズに送りやすい!
2E型
「2E型」のギフテッドとは、ギフテッドの特性と発達障害を併発している人です。「twice-exceptional(二重に特別、二重の特別な支援を要する)」を指しています。2E型のギフテッドは、突出した能力を持つ一方で、苦手なことはとことん苦手な傾向を示しやすいのが特徴です。そのため「発達に凹凸がある」との表現が使われることも少なくありません。
▼例えば…
- 数学は大人でも難しい分野まで解ける!ただし、国語の読解や英語理解などは難しい。
- 興味のあることには高い集中力を発揮できる!ただし、こだわりや多動症があるため、他の人との交流が得意ではない。
2E型は、突出した能力があるにもかかわらず、できないことや苦手なことだけに着目されてしまいがちです。そのため、ギフテッドの才能に気付かれず、発達障害児としての支援のみを受けているケースもあります。
家族や先生など周りの大人だけではなく、本人すら気付いていない場合もあるよ
ギフテッドの診断方法
ギフテッドの判定方法は、各国のギフテッドの定義により異なります。それを踏まえ、診断に用いられるのは主に次のような方法です。
▼ギフテッドの診断方法
- 知能検査
- 学習進度評価テスト
- 保護者や担任への問診表 など
知能検査では、言語能力や記憶力などの知的能力を数値で表したIQ(知能指数)を測る「WISC-Ⅳ(ウェクスラー式知能検査)」と「QEEG検査」の2種類が用いられます。
WISC-Ⅳ(ウェクスラー式知能検査)
「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」の4つの項目を測定。同年齢の子どもと比較して突出した領域から、ギフテッドを診断する目安にします。 子どもの得意・不得意の分野を見つけられる手がかりにもできるのがメリットです。
QEEG検査
脳波が、脳のどの位置からどのようなタイミングで、どのくらい出ているのかを画像で可視化し、脳の各部位が正常に機能しているかを調べる検査。平均よりも活性化している脳の部位から診断します。
上記の2つの検査は、発達障害の特性や得意・不得意の分野を把握するためにも用いられる検査です。 一般的にIQが130を超えるとギフテッドとされています。
ただし、創造性や芸術性、運動能力などはIQだけでは診断できるものではありません。子ども一人ひとりの差も大きいため、慎重な診断が必要です。
ギフテッドと発達障害の違い
ギフテッドと発達障害は重なる特徴がある一方で、目立った相違点も見られます。
発達障害児の場合、他人の感情をくみ取ったりリーダーシップを発揮したりなどは苦手な傾向が見られます。しかしギフテッドの場合、人が考えていることをすみやかに感じ取ったり、積極的に場を仕切ったりなどを得意とする傾向があります。
また、発達障害児がルーティンワークを得意とするのに対し、ギフテッドは同じことの繰り返しを苦手とする傾向があるのも特徴です。
ギフテッドの子どもへの関わり方
ギフテッドの子どもは、同年代の子どもと自分との違いに非常に敏感です。場合によっては自信を喪失してしまったり、自分に嫌悪感を抱いてしまったりする場合もあります。
そのため、次のような接し方を、まずはできる範囲で始めてみてください。
- 子どもが興味を持った分野の教育を受けさせる
- 幼児の良い面、得意なものを尊重する
- 新しいことにチャレンジさせて知識欲を満たす
- 積極的に会話をする
- 子どもがリラックスできる環境を作る
なお、この記事で挙げたギフテッドの特徴、また発達障害との共通点や相違点の特徴は、あくまで一つの目安に過ぎません。「ギフテッドだからこうするべき」「発達障害だからこうしなければならない」と固定観念で決めつけず、子どもの個性を尊重しながらどちらの特性を持っているかを慎重に見ていくことが大切です。
“知的ギフテッドのある子どもは高い理解力から困り感が隠れてしまい,学業成績に反映されない本人の訴えを些細な問題として片付けられてしまう場合もある(小泉,2014)。また学習速度や学習内容に関するミスマッチや認知的アンバランスによる学習の問題が表面化しなくても,友人関係等の社会的スキル,感情のコントロールなど学校生活上,困り感をもつ場合もあると考えられる。そのため,知的ギフテッドの子どもがどのような性格や行動傾向を持つか理解を深めることは,子どもとどのように関わるか,という基本的な部分の助けになると考えられる。”
【引用】知的ギフテッドの子どもの持つ特別な教育的ニーズの理解|CiNii
URL:https://cir.nii.ac.jp/crid/1050287462775939584
才能の開花はギフテッドを正しく理解することから
日本語では「天賦の才」「鬼才」とも表現される、ギフテッド。実は「優れた子ども」の一言では語りつくせないほど、複雑な要素で構築されています。
特徴と当てはまっている気がするので、一度検査させてあげたい
我が子がギフテッドといわれたけど、関わる際のヒントになった…!
そのようにギフテッドに興味を持たれた方、またはギフテッドに関してすでにお悩み中の方の参考になると嬉しいです。
【参考】
ギフテッドの概念と日本における教育の可能性|CiNii
URL:https://cir.nii.ac.jp/crid/1050001338441936000
ギフテッドの子ども支援に関する研究動向と課題|国立情報学研究所(NII)(PDF)
URL:https://hbg.repo.nii.ac.jp/record/5440/files/kr09-03.pdf
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