保育園や学校と子どもの情報を共有したいけど、どうしたらいい?
こんな時や子どもの情報共有をしたい時に役に立つのが「サポートブック」です。筆者は、自閉スペクトラム症の娘が小学校へ入学する際、支援者と情報共有ができる「サポートブック」を作成しました。
この記事では、筆者の経験をもとに、サポートブックの作成方法やメリット、作成のポイントなどについてご紹介します。子どもの様子を支援者と共有して環境の変化への応用に役立ててみたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
サポートブックとは?
入園や入学、就職など、人生にはさまざまなライフステージがあります。そんな各ライフステージの変化に合わせて、保育園や学校の先生など子どもと関わる支援者と子どもの情報共有に活用できるのが「サポートブック」です。
作成にあたって決まった形式はありません。日常生活の様子や行動、コミュニケーションの対応などをサポートブックにまとめ、子どもの成長に合わせてさらに書き換えていきます。
支援者へ伝えたい内容を整理することで、子どもとご家族が安心して毎日を過ごせたり、子どもと接する全ての人が同じ方針で関わりやすくなったりするのがサポートブックの役割です。
子どものライフスタイルの変化がある際に作成することが多くなっていますが、決まった作成タイミングはないため、いつでも作成して活用することができます。
サポートブックを作成するメリット
子どもの生活の様子や行動、コミュニケーションの対応などは環境によって異なります。
- 家庭ではうまくできることが環境の変化で困難になる
- 家では困難なことが外ではスムーズに行える
といったケースも多くあります。普段から子どもをよく知る保護者がこれらの情報をサポートブックにまとめることで、他の人が知り得ない子どもの行動などを支援者とすみやかに共有可能です。
作成時点での状況や配慮事項などが早く伝われば、必要な配慮やサポートが最初から提供されるため、子どもの安心に繋げられます。
- 他の人が知り得ない情報を的確に伝えられる
- 子どもの情報を支援者としっかり共有できる
- 早い段階で必要な支援が提供されて子どもとご家族の安心に繋がる
- 子どもに適した支援方法を考えるきっかけにできる
▼サポートブックのメリット・デメリットについてはこちらの記事もどうぞ
サポートブックを活用できるシーンの一例
サポートブックを活用できるのは、次のようなシーンです。
- 保育園や幼稚園への入園
- 学校への入学
- 転校
- 学童クラブや放課後デイサービスの利用
- 移動支援やショートステイなどの利用
- インターンシップ
- 就職
- 福祉事業所の利用
- 災害時
- 支援者の変更
子どもは、さまざまなステップを踏んで成長していきます。そのなかで、入園や入学などは“初めて触れる社会”といっても過言ではないステージです。過ごす場所や関わる支援者の変化に応じてサポートブックを活用すれば、子どもと関わる人とのよりスピーディーな支援に繋がりやすくなります。
入園・入学以外でも、病気やケガ、災害時には情報がうまく伝わりにくいことも。サポートブックを作成しておけば、口頭では言いそびれてしまいがち、または聞き逃してしまいがちな子どもの情報を確実に伝達するために備えておけます!
サポートブックを作成する方法
サポートブックの主な作成手順は、次のとおりです。
1.テンプレートを準備する
まずは、サポートブックのテンプレートを準備します。他の書類とまとめて管理しやすいように、A4サイズで用意するのがおすすめです。
テンプレートは、自治体の窓口にもらいに行く方法の他に、インターネットで気に入ったものをダウンロードして使用する方法もあります。
例えば横浜市青葉区や神戸市は、わかりやすいサポートブックのテンプレートをホームページ上で配布しています。
参照:「サポートファイルかけはし」について 横浜市青葉区
https://www.city.yokohama.lg.jp/aoba/kurashi/kosodate_kyoiku/kosodateshien/20171225155929.html
参照:神戸市 サポートブック
https://www.city.kobe.lg.jp/a86919/kosodate/sodan/hattatsushogai/siryo.html
また、自治体が作成や配布をしているサポートブックは、地域のニーズに合わせて改良がされています。詳しくは、お住まいの自治体でご確認ください。
パソコン作業に抵抗がない場合、インターネットや自治体のテンプレートを参考にしながらワードやエクセルで自作もできます。
2. 共有する情報を決める
子どもの普段の行動や言葉遣い、それに対するご家族の対応…これらは、家庭で習慣化していても他人には得られない情報です。どんなことを伝えておきたいか、または支援者がどのようなことを知りたいか事前に話し合っておくと、作成がスムーズに進みやすくなります。
【共有する情報の一例】
・基本的なプロフィール(氏名・生年月日・連絡先・家族構成・診断名など)
・緊急連絡先
・医療情報(医療機関名・通院間隔・服薬・体調不良のサインなど)
・相談している機関(保健センター・療育センター・相談支援事業所など)
・長所
・コミュニケーションに必要な配慮や工夫
・好きなものと嫌いなもの
・得意なことと支援が必要なもの
・日常生活について(食事・着替え・排泄・入浴など)
・安全面や危険認知
・こだわりやパニックの内容と対応
サポートブックでは、あくまでも「ありのままを記す」ことが大切。例えば、できるかどうか分からないことについては「このような支援があれば取り組みやすい」など具体的に記載しましょう。
3. 項目内容を記入する
伝える項目を決めたら、書けるところから埋めていきます。まずは、子どもの普段の様子を書き出してみましょう。
とはいえ、子どもの特性をどう表現したらいいの?
そんなときは、記入例を参考にするのがおすすめです。テンプレートによっては、記入例も一緒に配布しているものもあります。「この特性は我が子にも当てはまりそう」という文章があれば、どんどん参考にしましょう。
ひと通り書き終えた後、意外と誤字脱字が見つかるもの。チェックも兼ねて、何度か自分でも読んでみましょう。
4. クリアフォルダーやクリアファイルで保管する
記入したサポートブックは、クリアフォルダーやクリアファイルに収納します。必要なときにさっと取り出せるよう、収納後は分かりやすい場所で保管すると便利です。
筆者は、医療機関で発行された診断書や児童発達支援施設での個別指導計画書などを一緒に綴じています。
サポートブック作成のポイント
作成の手順は分かったけど、どんなことに気を付けて書いたらいいんだろう…?
そんな方のために、サポートブックを作成する際に筆者が気を付けたポイントをご紹介します。
子どもの特徴だけではなく必要な対応や配慮も明記
支援者に伝えておくとよいのは、子どもの特徴だけではなく「その先の対応方法」。子どもの特徴を記入する際「こういう場面でこういった特徴が出現しやすい」だけではなく「どのような対応や配慮があると本人が力を発揮できるか」をセットで記入しました。
要点をしぼってシンプルに書く
求めたい支援の内容は、要点を絞ってシンプルに書くのがコツです。まずは簡潔な言葉でまとめて、詳しい要望や具体的な対応方法を追記すると分かりやすくなります。
共通理解したい優先度の高いものから記入
サポートブックへ記入するのは、共通理解していきたい優先度の高い情報から。決まりごとはありませんが「初めて子どもと関わる人が知りたいことは何か」をイメージすると書きやすくなります。
支援が必要なことだけではなく「得意なこと」も記入
できないこと・不得意なことを挙げるだけでなく、得意なことや長所も記入するのがポイントです。その際「こういった理由で○○ができません」よりも「○○すればできます」と肯定文で書くと、支援者がより手厚くサポートしやすくなります。
子どもと関わりのある身近な人と相談しながら記入
子どもの普段の様子を振り返りながら書いていても、つい不明点が出てくることも。その場合に助かるのが、ご家族または子どもと関わりのある身近な人と相談しながらの作成です。
「何をしているときが落ち着く?」「苦手なことはどうすると取り掛かりやすい?」など、サポートブックに記しておきたい内容について子ども本人にも話を聞きながら取り組むと、支援者の理解や対応の幅を広げられますよ。
筆者の場合、作成を進めるうちに娘の意外な考えが聞けたり親としての考えをそっと伝えられたりと、コミュニケーションの一環にもなりました。
サポートブック、実際に活用してみての感想
筆者は、自閉スペクトラム症の娘が小学校へ入学するタイミングでサポートブックを作成しました。
サポートブックを試して感じたことは、ずばり「作成してよかった」。行動やコミュニケーションなどの特性、対処法をまとめて共有できるため、なめらかな共通理解に繋がりました。
「娘と初めて関わる人が知りたいことは何だろう?」の視点から特性をまとめるのは、親の筆者にとっても新鮮な作業でした。
個人的にデメリットはありませんが、敢えて挙げるとすれば「取り扱い注意」なこと。子どもの個人情報を明記するため、紛失しないようにしなければなりません。プライバシー保護のために、表紙を付けるのもおすすめです。
また、子どもの成長に合わせて作り直す必要があります。しかし「手間がかかる」というよりは「更新のたびに成長ポイントや伸びしろをわずかでも再確認できる」ため、かえってメリットと捉えてもよさそうです。
サポートブックで子どもの情報共有をスムーズに
サポートブックは、我が子の「できないこと」をピックアップするものではありません。子どもの具体的な情報を支援者と共有しながら、配慮の幅を広げるのが目的です。
さらに、保護者やご家族もよりよい支援方法を考えるきっかけになります。何度も説明を繰り返す必要がなく一貫した支援を受けやすくなるのも、サポートブック作成の魅力です。
成長に応じて書き換えていけば育児記録にもなり、後から読み返すのもまた感慨深い!
子どもに関わる人と情報を共有したい場合は、サポートブックの作成を検討してみてくださいね。
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