「医療的ケアのある子どもや特性上よく眠れない子どもの夜の見守りは私たち親がやっている」というご家庭は多いのではないでしょうか。
実際に障がいのある子どもを育てる家庭では、親の慢性的な睡眠不足が家族の問題になりがちです。
そんな夜間の問題を解決できるのが、夜間ヘルパーです。今回は、筆者が夜間ヘルパーを利用してみた経験から、夜間ヘルパーについてご紹介します!
「夜間へルパーってなに?」「何をしてくれるの?」「実際にお願いしてよかった?」そんな疑問にお答えします!
夜間ヘルパーとは
夜間ヘルパーとは、夜の間に介護福祉士が親に代わって介護の必要のある子どもの見守りをしてくれる障害福祉サービスです。夜の時間帯に介護福祉士が自宅へ訪問し、親が寝ている間などに子どもを見守ったり、お世話をしたりしてくれます。
制度上の給付関連の障がい福祉サービスの体系の中では居宅介護を利用する形になります。なお、夜間に利用できる制度として夜間対応型訪問介護(介護保険)や重度訪問介護(障害福祉サービス)等のサービスもありますが、制度上いずれも障がい児は対象にならず、利用できません。
夜間ヘルパーの対象者
夜間ヘルパーってとても助かるサービスなんだね!どんな人が利用できるの?
夜間ヘルパーは行政が必要性を認めた受給者証が発行された人が利用できるよ!
厚生労働省 文部科学省資料によると、夜間ヘルパーの対象者は障害支援区分1以上の障害者等とされています。障害支援区分とは、お子さんの心身の状態に応じて必要とされる支援の度合いを示したものです。
区分の数字が低いほど必要とされる支援の度合いが低く、大きいほど高いことになります。
区分だけでなく、本人の状態や家庭の状況によっても利用できるかが変わってきます。利用できるかどうかは認定次第になるので、相談支援専門員の方や市区町村の役所にまずは確認しましょう。
私の息子の場合は、退院する段階で障害者手帳1級を持っており、退院まえに相談支援専門員と役所の支援課の人たちと退院後についての話をし、そこで夜間ヘルパーの必要性がわかり手続きをはじめました。
手続きには医師のスコアの手配が必要であり、そこで「息子くんは障害福祉サービスを利用できます」と判定してもらいました。
夜間ヘルパーの利用内容
夜間ヘルパーのサービスで利用できる内容は、夜間の間の子どもの見守りやお世話です。ただし、介護福祉士の方に対応してもらえる内容と対応ができない内容があります。
対応してもらえる内容
医療行為にあたるもの以外の身の回りのお世話は対応してもらえます。具体的には、体位交換やおむつ交換、吸引、呼吸器の回路の水切りなどです。
吸引は、介護福祉士の資格を持ち、第3号研修を受け、訪問看護師の実施研修を受けているスタッフの方ならできます。吸引ができるスタッフの方がいるかどうかは、事業所によって異なるため、吸引をお願いしたいと思っている方は事前に伝えておくと良いかもしれません。
筆者が利用している夜間ヘルパーの事業所の場合は、第3号研修を受けた介護士が初めてシフトに入る前に訪問看護師の方の前で実際に吸引して実施研修してもらっていました。
対応してもらえない内容
医療行為は夜間ヘルパーでは対応してもらえません。我が家では、注入や鼻のチューブ交換などは自分たちでしなければいけません。
我が家では、注入のアラームが鳴った時や何か問題が起きた時に自分たちを呼んでもらえるように、寝室に繋がっているアラームボタンを押してもらうようにしています。
筆者がお願いしている夜間ヘルパーは、入眠・覚醒やサチュレーション、体位交換、おむつ、水切りなどすべての記録をノートに残してくれているので安心です。
そして、日中の息子の様子がわかるように、息子の連絡帳を毎日書いて見てもらうようにしています。
夜間ヘルパーの利用時間
夜間ヘルパーの利用時間は夜22:00〜朝6:00を含む時間とされており、実際の利用時間は利用する家庭によって異なっています。具体的には22時に開始して朝6時に終了、夜12時に開始して朝7時に終了などです。相談支援専門員が必要時間を計画に基づいて役所に提案し、支援課が利用時間を認定すると月の利用可能時間が決まります。
夜間ヘルパーの事業所の多くは、夜間の間に定期的に巡回してケアをしてくれる夜間巡回と夜間の体調の急変や緊急時等の場合に呼び出しを行える随時対応のサービスを提供しています。障がいのある成人の方や高齢者の方の場合は、こういったサービスを使うのが多くなっていますが、子どもの場合では我が家のように夜から朝までの付き添いで利用できる事もあります。
また、入院やレスパイトで月の利用時間が余ると「この日は19時に来てください」などと調整をしていつもより早く来てもらう日をつくったり、朝長めに居てもらう日をつくったりすることも可能です。
家庭の状況によって月の利用時間が決まるため、場合によっては途中で時間数が変更することもあります。
相談支援専門員さんに「もっと利用時間を増やすことができる」と提案していただき、筆者が利用している事業所の利用時間も途中から変わりました。
また夫の出張があった時、息子が入院する月で利用時間が余っていたので、出張の日に数時間早く来てもらい、見守りをお願いすることもありました。
夜間ヘルパーの利用料金・利用費用
夜間ヘルパーの利用料金は、市区町村の受給者証による助成と自己負担によって支払います。具体的な金額は所得に応じて決定されます。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 | |
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 | |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 | |
一般1 | 市町村民税課税世帯 | 通所施設、ホームヘルプ利用の場合 | 4,600円 |
入所施設利用の場合 | 9,300円 | ||
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
所得に応じて月額の条件が決まっており、生活保護世帯が0円、市町村民税非課税世帯が0円、世帯収入約900万円以下が4,600円、それ以上が37,200円です。(参照:障害者の利用負担|厚生労働省)
児童発達支援や放課後デイサービスなどの障害福祉サービスを複数利用している人は、そのままだと重複して費用を払わないといけなくなるため、1番利用回数が多い障害福祉サービスの業者に「上限額管理」をお願いして役所に提出する必要があります。
筆者も夜間ヘルパーの他に児童発達支援を利用しており、そのままだと費用が2倍になってしまうため夜間ヘルパーの事業所に上限額管理をお願いし、役所に提出しました。
夜間ヘルパーの利用方法・利用の流れ
夜間へルパーの利用方法や利用の流れもご紹介します。相談支援専門員の方がいる場合はその方の流れや順番に沿って進めることもあります。
1. 夜間ヘルパーの事業所を探す
夜間ヘルパーを利用するためには、夜間ヘルパーのサービスを提供している事業所を探すところからはじまります。事業所を探す方法としては、以下の方法があります。
相談支援専門員を通して事業所を提案してもらう
相談支援専門員が知っている事業所や空きがある事業所を提案してもらい、好きな場所を決めるパターンです。
役所の支援課に相談して紹介してもらう
相談支援専門員のサービスを利用していない場合は、役所の障害福祉を担当している支援課に行って相談しましょう。地域の事業所の一覧がもらえます。ただし、事業所の詳細の空き状況などは役所ではわかることが少ないです。
自分で事業所を見つける
相談支援専門員がついていてもいなくても、自分で利用したい事業所を探すパターンです。インターネットやお母さん同士のクチコミなどで知るパターンが多いです。
2. 受給者証を発行してもらう
夜間ヘルパーを利用するには、受給者証を発行してもらう必要があります。受給者証の手続きをしていない人は、市区町村の役所で手続きをして発行してもらうようにしましょう。
3. 事業所と契約して利用開始
事業所と契約して、受給者証も揃えば利用が開始できます。
夜間ヘルパーのメリット・デメリット
夜間ヘルパーを利用してみて、実際のメリット・デメリットについても紹介します。
夜間ヘルパーのメリット
メリットはやはり、睡眠時間が確保できることです。日中のケアで溜まった疲労を十分に回復させる時間ができるのは、何より助かります。
夜間ヘルパーのデメリット
夜中、他人が自宅にいることにストレスを感じる方もいるかもしれません。また、大切な我が子を夜中に他人に預けることが心配になってしまう人もいると思います。
信頼し、安心して預けられるヘルパーを見つけて依頼しましょう。
筆者も最初は夜中に他人がいることにストレスを感じ、寝付けない日が続きました。しかしヘルパーとの信頼を築き、慣れてくると安心して息子を預けられるようになりました。今では睡眠時間を確保するのに、なくてはならないサービスになっています!
夜間ヘルパーを利用できる地域
夜間ヘルパー自体は国の制度上はどの地域でも利用できる事になっています。しかし、自治体ごとの制度条件や事業所の兼ね合いで利用が難しい地域があるのも現状です。
筆者の地域にはたまたま夜間ヘルパーサービスを行っている事業所がありますが、夜間ヘルパーサービスを実施している事業者がいない地域もあります。
また、「親が健常だと利用できない」といったような条件をクリアしなければ利用できない地域もあると、とある障がい児を育てるママから聞いたことがあります。しっかりと地域の情報を調べるようにしましょう。
日中の医療的ケアでさえ大変な障がい児のいる家庭の慢性的な睡眠不足がなくなるように、どの地域にも夜間ヘルパーが利用できるようになり、必要な人が利用できるようになればいいなと思います。
夜間ヘルパーを利用して慢性的な睡眠不足を防ごう
夜の子どもの見守りをしてくれる夜間ヘルパー。行政が認め、受給者証を発行された家庭が利用できるサービスです。相談支援専門員や役所の支援課、自分で探すなど、夜間ヘルパーを見つける方法は様々。
夜間ヘルパーは医療行為ができませんが、吸引やオムツ交換、水切りなどの行為ができるので、医療的ケアがある子どもでも安心して見守りをお願いできます。
利用時間はご家庭の状況によって変わりますが、利用可能時間内であれば日によって時間の調整も可能です。また具体的な料金は所得によって変わります。
最初は他人が夜家に居ることにストレスを感じたり、子どもを一晩預けることを心配したりするかもしれませんが、信頼できる夜間ヘルパーに出会えると安心して自分の睡眠を確保することができます。
筆者は毎日夜間ヘルパーにお世話になっており、今ではなくてはならないサービスになっています。
気になる人は、相談支援専門員や役所の支援課に相談してみてくださいね。
▼家族の負担軽減のための短期入所については、こちらの記事で解説しています
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夜中、実家で仕事する際に
中学生高校生の留守番の際に、見守って頂きたいです