児童発達支援と療育って何が違うの?
児童発達支援や療育はどこで受けられるの?
うちは児童発達支援を使っているけど、これは療育とは違う?
障がい児育児をしている方の中には、「療育」や「児童発達支援」と聞いて違いが分からず混乱する方も多いのではないでしょうか。
今回は児童発達支援と療育の違いや実施されている場所について、知的障害のある子どもを育てている筆者が解説します。
児童発達支援と療育の違い
「児童発達支援」と「療育」は、どちらも障がいのある子どもに対して行う、日常生活がしやすくなるようなサポートや訓練のことを指します。近年では違いが曖昧になり、ほぼ同じ意味で使用されているようです。
もともと「療育」という言葉は「肢体不自由児への社会的自立に向けたチームアプローチ」という概念として誕生しましたが、今では知的障害者向けの障害者手帳にも使われるなど、その言葉が表す意味は拡大しています。
さらに「療育」を「発達支援」と呼ぶ動きもあるため、ますます「児童発達支援」と「療育」の境目は曖昧になっていくかもしれません。
【参照】第3回障害児支援の在り方に関する検討会/「主な検討課題」への意見|厚生労働省
「療育」と「児童発達支援」は同じ意味なんだね。でも、「児童発達支援に通う」なんていう言葉も聞いたことがあるけど、その場合も同じ意味なのかな?
それは違う「児童発達支援」を指しているかもしれないね。実は「児童発達支援」というのは意味が複数あるんだよ。
「児童発達支援」とは
「児童発達支援」という言葉は、文脈によって以下の3つの意味で使われます。
1.「子どもを支援する行為」を指す
前述のように、「療育」と同じ意味で使用するケースです。その字のとおり、児童の発達を支援する、という行為や概念として使われます。
「児童発達支援を行う」といった言葉の場合、この意味として使われている可能性が高いです。
2.「障害児福祉サービスの一つ」を指す
障害児福祉サービスの「障害児通所支援」の一つに「児童発達支援」というものがあります。障がい児の発達をサポートする児童発達支援センターや児童発達支援事業所に通所できるサービスで、利用することで療育プログラムが受けられるというものです。
「児童発達支援を使う」といった言葉の場合、障害児福祉サービスとしての児童発達支援を指していると考えられます。主に行政職員や支援者がこの意味で使うことが多いです。
3.「子どもが通っているところ」を指す
2.でお伝えした「児童発達支援」というサービスを使って通う児童発達支援センターや児童発達支援事業所のことを「児童発達支援」や「児発(じはつ)」と呼ぶこともあります。主に親同士の会話では「児童発達支援センター(事業所)」といった正式名称を使うことはほとんどなく、略称として「児童発達支援」が使われます。
「児童発達支援に通う」といった言葉で使われる場合にはこの意味で使われているとみていいでしょう。
以上のように「児童発達支援」という言葉がこのように複数の意味で使われるので、余計に療育と児童発達支援の違いがわかりにくくなっているのではないでしょうか。
ちょっと複雑だね。でも、つまりは児童発達支援を受けているというのは療育を受けているということでいいんだよね?
そうだね!それは間違いないよ。でも、療育を受けられる場所は児童発達支援以外にもあるんだよ。
療育を受けられる場所
療育を受けられる場所は複数あります。
児童発達支援センター・児童発達支援事業所
前述のように、障害児通所支援を使って児童発達支援を行う場所を児童発達支援センターや児童発達支援事業所といいます。児童発達支援センターや児童発達支援事業所は、日常生活の自立支援や機能訓練、遊びや学びの場を提供する支援を行う場所です。
児童発達支援センターは療育だけでなく、障がいや疾患のある子どもやその家族に援助・助言を行ったり、保育施設や障害児通所支援事業所の相談にも対応する地域の中核的機関としての役割を果たします。一方、児童発達支援事業所は、「身近な療育を提供する場所」として、地域によっては数多く存在する施設です。
児童発達支援の役割にくわえ、医療も提供する「医療型児童発達支援センター」が設置されている自治体もあります。
▼児童発達支援についてくわしくはこちら
放課後等デイサービス
放課後等デイサービスは、対象が就学後の児童(6歳~18歳)で、授業終了後や休日に利用できる支援施設です。障がいのある子どもの生活能力の向上や社会との交流を促進するために、さまざまなプログラムが用意されています。
病院や療育センターなどの医療機関
病院や療育センターなどの医療機関で行われる療育は、医師の指導・指示のもと、リハビリとして療法士が療育を行うことが多いです。また、訪問看護ステーションに在籍している療法士が自宅でリハビリを実施する訪問リハビリもあります。
医療機関でのリハビリとなるため、医療保険を使うことが一般的です。
障害児入所施設
障がいのある子どもの日常生活の指導、知識や技能の習得のために入所して療育や訓練を行う施設もあります。子どもが施設に数週間〜数ヶ月間にわたり入所し、集中して療育や訓練を受けられるのが入所施設のメリットです。子どもが単独で入所する場合や親と一緒に入所する場合があります。
筆者が利用してみて感じた各種サービスの違い
このように療育を受ける場は複数ありますが、実際に受けられる療育に違いはあるのでしょうか。これまでにいくつかの療育を利用した筆者が、これらを実際に利用してみて感じる違いや特徴についてご紹介します。
筆者の息子の情報
- 重度知的障害
- 状態:意思疎通は2語文、歩くことができる
- 医療的ケアあり(胃ろう)
- これまでに利用した児童発達支援や療育
- 児童発達支援事業所:25日/月
- 療育センター(児童発達支援センター):1回/月
- 訪問看護ステーション:2回/週
利用して感じた各種サービスの特徴や違い
児童発達支援事業所
児童発達支援事業所は、子どもが一番多くの時間を過ごしていた場所です。保護者と離れて過ごすため、子どもの自立に向けての総合的な相談場所という感覚でした。
子どもと別々に過ごす時間が確保されるため保護者のレスパイトにもなるというメリットがある一方、訓練の内容を直接見ることができないというデメリットがありました。
療育センター(児童発達センター)
筆者は療育センター内にあった児童発達支援センターを利用していました。そこでの療育は、医師の診察を元に具体的な課題に対して訓練メニューを組み立てるというものでとても内容が濃く、有意義な時間でした。
また、現在の我が子の発達段階に応じた遊びのアイデアやその他の相談ごとなどに対して、小児発達の専門家が具体的な解決策の提案をしてくれたこともありがたかったです。
デメリットとしては、月1回と頻度が少なかったことや、送迎や付き添いが必要なため保護者の時間を割く必要がある点です。
訪問看護ステーション(訪問リハビリ)
筆者は訪問看護ステーションの訪問型訓練でST(言語聴覚療法)とPT(理学療法)を利用しました。訪問看護ステーションの訪問型訓練は自宅で訓練してもらえるので、実際の日常生活の様子を専門家と共有しやすいというメリットがあります。
ただ、小児に詳しい専門家が少なく、普段成人の訓練や介助に当たっている方が担当することがほとんどなので、小児ならではの悩みに対応できるかどうかは担当者次第になることもあります。
複数の場所で療育を受けてみた筆者の感想ですが、小児分野での高い専門性の面では療育センターがよかった一方、生活全般の自立という面では児童発達支援事業所が最適だったなと思っています。ただ、地域や子どもの状況によって最適な場所がどこかは異なるかと思いますので、どこを利用するのがいいかは主治医や支援者と相談しましょう。
児童発達支援や療育は子どもや家庭に合わせて選べば大丈夫
「児童発達支援」や「療育」など、子どもの発達を促すための制度は種類が多いので混乱してしまいますよね。「これは利用しているけどこっちは利用していない…全部利用しないとだめなの?」と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。実は筆者もその一人です。
前述したように、筆者はこれまで複数のサービスを併用してきましたが、息子が4歳になる歳までは療育センターに足を踏み入れたことがありませんでした。「療育センターに行ったことがない」ということ自体を不安に思う時期もありました。
しかし、療育等の支援は、たくさんあればいいというわけではありません。付き添いや送迎に保護者の時間を割けない場合もあります。大切なのは子どもの発達に適した療育を受けられているかと家庭の状況を踏まえて無理なく継続できるかです。児童発達支援と療育は様々な形で提供されていますので、子どもの状態や家族の状況に合わせて選択していきましょう。
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