1日に何回もある子どもの排泄介助に苦労しているご家庭も多いのではないでしょうか。ダウン症で重度知的障害のある小学4年生の息子を育てる筆者の私もその1人です。
かれこれ5年以上トイトレを続けているものの、四六時中トイレ誘導のことを頭の隅に置いている生活から親である私自身がもう解放されたい〜。
そんな思いで、支援学級へ排泄介助に1日3〜4回通っていた私が見つけたのが、排泄予測デバイス「DFree」です。今回は実際にDFreeの使い方や使ってみた感想などをレビューします。
排泄予測デバイスDFreeとは?
排泄予測デバイス「DFree」は本体の重さわずか26g、手のひらサイズのウェアラブルな介護機器です。
下腹部にペタッと貼っておくだけで、超音波が膀胱の膨らみを計測し、スマートフォンアプリや専用のタブレット等で尿の溜まり具合を視覚的にわかりやすくモニタリングすることができます。
モニタリングの他にも、10段階で表示されるメーターに、使用者に合わせて調節可能な「そろそろライン」を設定しておくと、尿の量が「そろそろライン」に到達した時点で音楽と音声でお知らせしてくれる機能などもついています。
2022年度から「特定福祉用具」の認定を受けており、排泄機能が衰えてきた高齢者にとってトイレの不安を解消しQOLを向上させるツールとして使われるようになってきました。また、介護施設でも入所者の排泄タイミングを一括管理することで介護従事者の業務負担を減らすことに役立っています。
子ども向けにはまだ認定などはありませんが、徐々に使われるようになっていくと良いですね!
DFreeを試してみたきっかけ
DFreeを試してみたきっかけは、かれこれ5年以上のトイトレ生活の悩みでした。
息子は現在支援級の小学4年生に通っていますが、自宅と放課後デイサービスでは完全にパンツ、学校ではパンツ+パッドやおむつで生活しています。知的障害があるため、トイレは理解しているものの、尿意の感覚が鈍いのか自己申告ができず、定期誘導でトイレに行かせています。
トイレに座らせてもなかなか排泄のタイミングにならなかったり、ずっと座らせているのもなんだか忍びない気持ちになってしまったり。
本人に羞恥心がないため、失敗もまだまだ多いです。かといって、おむつやパッドではなく自力排泄をさせてあげたい。そして「四六時中トイレ誘導のことを頭の隅に置いている生活から親である私自身がもう解放されたい」という思いで困っていたところ「排泄予測デバイスのDFreeというものがある」ということを知り、お試しをはじめてみました。
DFreeに入っているもの
まず1週間の無料お試しを利用し、翌々日には丁寧なお手紙と一緒にDFreeのセットが届きました。
DFreeのセットには本体の他にも充電用のケーブルや説明書などが入っています。
DFreeに入っているもの一覧
- DFree本体
- 専用のタブレット端末
- それぞれの充電器
- タブレットスタンド
- かんたんガイドやWi-Fi設定ガイドなど説明書類複数
- 装着用シート
- ジェル
- シートの位置をマーキングしておくペン
DFreeの使い方
DFreeの使い方は、貼って計測するだけなのでとても簡単です。モニタリングしながら、本人がトイレに行ったり、トイレを誘導したりすることができます。
使い方1:装着用シートを下腹部にペタッと貼る
まずは、子どもの下腹部に装着用シートをペタッと貼ります。計測のための超音波は数ミリの測定位置のズレがそのまま結果に影響するため、毎回貼る位置を固定させるのが望ましいです。
何度か使用して位置が定まったら、皮膚に直接マーカーでポイント(点)をつけると次の装着時に前回と同じ位置で装着ができます。
使い方2:本体電源を入れて、装着用シートにセット
装着用シートが貼れたら、本体を装着用シートを貼った位置にセットしていきます。本体に電源を入れたら、裏にジェルを塗布し、装着用シートにセットすれば完了です。
帽子やマスク、プロテクター類も嫌がるわが子なので、装着する際には拒絶が激しいものの、強行突破でパンツとズボンまで履かせてしまえば、ケロっと忘れてしまい気にせず装着し続けてくれています。
使い方3:あとは自動でタブレットモニターの計測情報を確認しながら、普通に生活してOK
おしっこが「そろそろライン」に到達すると音楽と声でアナウンスしてくれるのでトイレに連れて行き、排泄完了となったらモニターの「排尿あり」ボタンを押すと、記録が残り、メーターもゼロ位置からまた自動で再計測がはじまります。
排泄記録が自動で残るのも嬉しいポイントです!
実際にいろんなところでDFreeを使ってみた
実際にいろんなところでDFreeを試してみたので、使ってみた感想もレポートします!
自宅
文句無しの快適さに大感動です。お知らせ音が鳴るまではトイレ誘導のことを忘れて生活していても、おもらしゼロです。
今までは、息子が遊びやテレビに夢中になっていても中断させて、無理やりトイレに座らせ数分…「やっぱ出ないか」というやりとりを繰り返していたのですが、その必要が無くなりました。
お友達家族を自宅に招いていてもトイレ誘導で何度も客の眼前で一悶着起こさずに済むし、お知らせ音も『〜♪〜♪そろそろです!』というとてもシンプルな呼びかけセリフなので恥ずかしさもありません。
おでかけ
専用タブレットを透明のビニール製ポーチに入れて持ち歩いています。本体と専用タブレット間はBluetooth接続なので、離れられる距離は10メートルほど。それ以上離れると接続が切れてしまいます。
接続の部分に注意していれば、家と同じように通知音が鳴った時にトイレに行くことができました。通知音のあと必ずしもすぐに排尿があるわけでもなく、不発もありますが再通知3回以内にはトイレができています。
いろいろと試してみた結果、短時間のお出かけであれば、出かける直前にメーターを確認し、排尿が遠そうであればタブレット無しでも出かけるのが良さそうです。
スイミングスクール
息子はスイミングスクールに通っており、そこではトイレの自立は絶対条件です。
今まではスイミングの前は念のため15〜20分はトイレに座らせつづけて失敗が無いように備えていました。それでもスイミングに送り出す時は、粗相が無いかいつも不安でした。装着シート無しでも即座に計測ができる「スポット尿測定」モードもあるため、膀胱の様子を確認してから送り出せるので気持ち的な不安が軽減されました。
学校
学校では、本体を接続した状態では使えませんでした。
息子の担任に支援級でのDFreeの使用ができないか相談したところ、高額な機器なので個人所有のものを学校で管理することまでは踏み切れないのか「次年度に向けた備品購入の予算会議が今度あるのでそこで購入を提案する」との回答でした。
DFreeはまだ新しいプロダクトなので、学校での導入事例はまだ全国でもまだ少ないとのことです。
実は筆者の本音では、学校での利用をいちばんに切望しています。息子は地域の小学校の支援級に在籍していますが、学校ではずっとコロナ禍だったことや教員・支援員不足の影響もありズルズルとオムツ着用のまま。
担任は息子の他にも複数の児童を抱えていて、息子のトイトレだけに時間を割く余裕はありません。一時期は、家や放課後デイサービスではパンツ生活ですが、学校でだけオムツに甘んじ、ついにはトイレに入ることさえ面倒臭がって断固拒否という状態まで悪化してしまいました。
打開策として、筆者が仕事を休職して毎日3〜4回と学校を訪問しトイレ介助を開始。トイレに座らせ、タイミングが合えば排尿成功させる習慣は復活したところです。
しかし、今後も日に3〜4回も学校訪問し介助し続けるのは終わりが見えないし、負担が大きいです……!
排尿のタイミングを統計だけで予測できるようになったため、若干は活用できているものの、気温や本人のコンディションによってタイミングはすぐに乱れます。
DFreeにはWi-Fi接続することで「そろそろライン」へ到達したことをメール通知する機能もあるため、親が離れた自宅でリモートワークしていてもメール受信した時だけ学校へ介助に行くことが可能になるので、ぜひ来年度に期待したいです…!
DFreeの料金や費用
DFreeの料金は、専用のタブレット端末有りの「DFree HomeCare」版だと通常価格99,000円(税込)。専用タブレット無しの「DFree Personal」版は本体のみで価格は49,500円(税込)におさえられます。DFree Personal版の場合、自分のiPhoneからDFreeアプリをダウンロードして使用します。
専用タブレット用に作られたソフトウェアは、機械に詳しくない高齢者でも操作しやすい明解な設計になっていて画面も大きいため「習慣づけば息子も1人で操作して練習できそう!」という目的で、筆者は専用タブレット付きを使用しています。
「特定福祉用具」のため、要支援 / 介護認定を受けた高齢者であれば介護保険適用となり1割負担の方の場合は9,900円での購入が可能です。ただし、障がい児の使用では、日常生活用具等での助成対象申請例がまだ少なく、自治体での検討次第にはなりますが、現状は全額自己負担での購入が多いようです。
また、本体の他にも装着用シートとジェルは消耗品のため、毎日の使用で月2,000円ほどランニングコストが発生します。
DFreeのメリット・デメリット
実際にDFreeを親子の生活に導入して感じたメリットやデメリットもご紹介します。
メリット
時間を有効に使えるようになった
トイレに座らせて過ごしていた時間を遊びや他のことに使える時間にすることができました。また、オムツの使用頻度が減り、結果的に大量のオムツやパッドをお店に見積もり依頼し、役所へ給付金の申請、また店に注文しに行って入荷連絡を待ち、購入運搬するなどの大仕事の頻度と負担も減りました。
親がトイレ介助に関するストレスから解放された
トイレの誘導タイミングを常に気にかけ続けるストレスから解放されたのは、本当に嬉しいポイントです。今の息子の排泄状況が見える化したので、子どもの大切な時間を奪ってトイレに座らせ続けたり、漏らしてしまうんじゃないかという不安やストレスが大きく減っています。
息子のストレスも大きく減った
息子本人にとっても趣味や遊びを中断させられる回数が減ったのは、本当によかったことです。利用してみた結果、排尿成功率が高くなったことで、トイレ=褒められる楽しい場所という認識に変換されてきています。
息子のトイトレが進んだ
これは直接的ではないかもしれませんが、オムツ頻度が減った結果、かぶれがなくなり息子自身がパンツを進んで選ぶ姿を見られるようになりました。パンツに比べてオムツはやはり蒸れやすいので、よく腰回りがかぶれていた影響が改善されることが、結果的にトイトレが進む形になりました。
デメリット
貼り付けの位置に工夫が必要
超音波のセンサー範囲が狭いため、膀胱の位置特定が数センチ単位で厳密とのことです。利用者に合った位置が決まるまでは、測定結果のメーター表示と実際の排尿タイミングとを照らし合わせて位置調節が必要です。
ただ、我が家の場合は2〜3回の微調整ですぐにメーターと排尿感覚が合致しました。
汗やムレによるヨレ
使用者が高齢者であれば活動が激しくないのかもしれませんが、4年生男児は日々相撲や忍者修行に明け暮れているため、装着用シートが汗でムレ、ヨレていることもあります。
不快感で本人が外してしまったことも1度ありました。
装着シートは数回の使い回しがきくけれど、暑い日や活動量の多い日には新品のシートにしておいたり、夕方早い時間には外しておくなど工夫をしないと本体の紛失が怖いかも。
接続範囲に注意が必要
本体とタブレット端末はBluetooth接続なので、10メートルも離れれば接続が切れてしまいます。リビングにいたはずの息子がおもちゃ部屋に移動している場合は、接続も切れているため、使用者の移動に合わせタブレットも移動させる手間があります。
排便の計測はできない
排便の計測はできません。DFree使用前はトイレ滞在時間が長かったので、排便を同時に済ませていたたのですが、嬉しいことにトイレ滞在時間が激減したことで、一時排便サイクルが大幅に乱れて新しいサイクルを作り直しました。
DFreeはトイレ介助の味方でした
DFreeを使ってみて、結果としてはトイレ介助への負担は大幅に減りました。排泄状況が目で見える化し、予測して教えてくれるDFreeはまさにトイレ介助の味方でした。
そして、親や学校の先生など介助者の負担が軽減されるのはもちろん、なによりも嬉しいのは息子本人がトイレ内に拘束されている回数と時間を大幅に削減されることです。
中休みやお昼休みをお友達と遊ぶことに充てられて、夢中になっている趣味や遊びや勉強を不本意に中断させられることもなくなります。
他人の干渉を受ける必然性がグッと減る。それはつまり、息子が自分の人生の主導権を自分自身でとって生きていけるということです。
今後、成長しても尿意の鈍さが改善しなかった場合でも、DFreeの操作を息子自身が覚えれば、本人だけでトイレを完結させられる可能性もあります。
DFreeのパンフレットにも大きく記載されていますが「QOLの向上へ」はまさにその通りだと思いました。
息子と同じように、尿意感覚の鈍さや意思表示に困難をかかえた障がい児は全国にたくさんいると思います。トイレ介助に長年無駄な時間を費やし、仕事や生活を諦めなくてはならない家族や介助者も同じだけ存在します。
ぜひ、必要とする家族に届き、保育園や学校など生活の場で幅広く利用ができるようになってほしいです。
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