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「こんなの欲しかった!」障がい児家族の声を形に。日本山村硝子×ファミケアの挑戦で生まれた医ケア児用新製品開発の裏側

日本山村硝子とファミケアによる共創型プロジェクトで開発された医ケア児向け商品開発におけるインタビュー記事用サムネイル
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胃ろうから栄養剤を注入する際、注意していても周囲にこぼれてしまうことがある。

シリンジではうまく吸い上げられず、注入に手間取ってしまう…

そんな困りごとを解決する商品として開発されたパウチ専用コネクタ。この商品は、2025年3月にスタートした「#これがあればたすかる みんなでつくるプロジェクト」の取り組みによって誕生しました。

#みんなでつくるプロジェクト」は、全国の疾患児・障がい児家族の皆さんとファミケア、プラスチック製品の製造販売を行う日本山村硝子株式会社の三者で取り組む共創型プロジェクト

疾患や障がい児の子育てには、「もう少し便利なら…」と感じる課題が数多くあります。ファミケアでは、それらを解決するためのアイデアを全国の皆さんから集め、日本山村硝子さんのものづくりの力と掛け合わせながら、実際の製品へと形にしてきました。

プロジェクトの詳細はこちらの特集記事から

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プロジェクトは現在、無事にユーザーテストを終え、いよいよ10月23日(木)より予約販売開始となります。ここに至るまでに、商品開発の過程はどのように進んできたのでしょうか。

今回は、プロジェクト担当の日本山村硝子の皆さんとファミケアメンバーとの対談を実施。開発の裏側や製品に対する両者の想いを聞きました。

日本山村硝子株式会社

1914年創業の容器メーカー。国内トップシェアのガラスびんを主力に、技術を活かしてエレクトロニクスや自動車分野にも事業展開。プラスチック部門では環境配慮型製品や仕組みづくりに注力し、社会課題の解決にも取り組んでいる。

日本山村硝子とファミケアの共創プロジェクトから生まれた「医ケア児用新製品 パウチ専用コネクタ」の予約販売開始のお知らせ
目次

疾患・障がい児家族の不便を解消したい

日本山村硝子さんとファミケアがタッグを組んだ「#みんなでつくるプロジェクト」。当プロジェクトで開発が進む、パウチ専用コネクタについて教えてください。

ファミケア:

今回開発したパウチ専用コネクタは、市販のパウチ型ゼリー飲料と、注入用シリンジを接続するコネクタです。胃ろうのあるお子さまを育てるご家族の方に向けて開発しました。

今回のプロジェクトで誕生した、パウチ用コネクタ。
市販のパウチ型ゼリー飲料と、注入用シリンジを接続するコネクタ
今回のプロジェクトで誕生した、パウチ専用コネクタ
ファミケア編集部 新井

僕自身も本製品の検討・開発中に、息子が経鼻栄養から胃ろうへ移行する経験がありました。その際、外出時に「水分補給や栄養剤が足りない」「忘れたときにどうするか」という不安が常につきまといました。他の医ケアのパパママからも同じ悩みをよく聞いていたため、「もし我が家も同じ状況になったら必ず困る」と強く感じ、解決策を探し続けていました。

この新製品は、パウチとコネクタのねじを回して接続し、片手で押すだけでパウチの中身を吸い上げられるのが大きな特徴です。飲み口とシリンジを直接つなぐためゼリーが周囲にこぼれる心配がなく、外出先でも安心して使っていただけます。

キッズフェスタ2025での共同出展の様子。
キッズフェスタ2025での共同出展の様子。
2025年の4月、東京で行われた「福祉機器展(キッズフェスタ)」に試作品を持参し、実際に当事者の皆さんに手に取っていただくことができました
試作品を来場者の皆さんにお披露目しました。

2025年の4月、東京で行われた「福祉機器展(キッズフェスタ)」に試作品を持参し、実際に当事者の皆さんに手に取っていただくことができました。その際、皆さんから寄せられた声をもとに改良を重ね、いよいよファミケアショップで予約販売開始となります。

―ついに販売が始まるのですね…!そもそも、ファミケアと日本山村硝子さんとの共創のきっかけは何だったのでしょう?

日本山村硝子さん:

ファミケアさんとのご縁は2024年のキッズフェスタで、私たちがブースを突撃訪問したときに始まりました。

日本山村硝子 山村さん

弊社はもともと医療分野に参入していたこともあり、疾患・障がい児家族向け情報サイトや相談アプリを運営するファミケアさんとなら、新規事業に向けた新たな試みができるのではないかと考えてのことでした。

ファミケア:

会場で最初にお会いした時の山村さんの熱量には圧倒されました。ただ、その時点でプロジェクトが動き出したわけではなく、じっくり対話を重ねる中でまずは疾患・障がい児家族の悩みや実情を知ろうと、第1弾のアンケート特集を企画したんです。

▼第1弾の特集企画はこちら

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こちらの企画が24年冬に終わり、その後の打ち合わせの中で今回のプロジェクトを私たちからご提案しました。

ファミケア編集部 新井

疾患や障がいのある子どもと家族には、日々たくさんの困りごとがあります。それを解決する技術と、形にする力を日本山村硝子さんは持っています。具体的な現場の課題と解決策、この2つがそろった時に「疾患・障がい児家族の毎日を楽しく」という私たちのビジョンを実現できると考え、今回のプロジェクトを打診しました。

「この商品は必要とされている」ユーザーのリアルな反応に手ごたえ

―試作品づくり、ユーザーテストを終え販売にむけ着々と動きが進むパウチ専用コネクタ。これまでの開発過程についてお聞かせください。

ファミケア:

試作品を作るにあたって、まずはアンケートを実施。全国の当事者家族の皆さんからの困りごとをヒアリングし、またそれらを解決するアイディアを募りました。結果、44件のお声が集まり、その中から具体的なアイディア8件までを厳選。最終的に開発可能なものを絞り込んでいきました。

ファミケア公式Instagramで定期的に発信していたアイデア募集の途中経過の様子(一部抜粋)
吸引カテーテル専用ケース、経管栄養シリンジケースなど
ファミケア公式Instagramで定期的に発信していたアイデア募集
ファミケア公式Instagramで定期的に発信していたアイデア募集の途中経過の様子(一部抜粋)
ペットボトル用水分摂取補助グッズなど
途中経過の様子(一部抜粋)

―シリンジで栄養剤を吸い上げる時、これまでだと両手が必要でしたが、このパウチ専用コネクタは片手で押すだけで中身を吸い上げられるのですよね。

日本山村硝子さん:

開発にあたって、初めてシリンジでパウチの中身を吸い上げてみた際にもしかして片手で済んだら便利なのでは?」とふと思いついたんです。両手がふさがらずに注入できたら外出先などでも助かるだろうな、と。

日本山村硝子 境野さん

実際、ファミケアの皆さんやキッズフェスタ会場で出会ったご家族の皆さんから想像以上の反響をいただけて…。「これ、売っていないの?」と仰ってくださる方もいらして、開発者冥利に尽きるな、と感じました。

実際の声からニーズを拾い上げ必要なものを生み出せる達成感と同時に、日ごろなかなか得られないユーザーさんからのダイレクトな「ありがとう」の声が響きましたね。

日本山村硝子 千葉さん

実際に目の前で試作品を使っていただき、その反応をダイレクトに目にして「これは求められている!」と強く感じました。

試していただくまでは正直、アンケートを集めて作ってはみたものの、パウチ専用コネクタがどれだけ多くの方に求められうるものなのか未知数で。「売れないんじゃないかなぁ」と懐疑的ですらあったんです(笑)。

製造側が良いと感じているものと、実際の市場のニーズにはギャップがあるのかもしれない。キッズフェスタではそんな、作り手としての新しい発見と、学びがありました

「困りごと」を拾う場に。プロジェクトの今後の展望

―今回の共同開発は日本山村硝子さん、ファミケア双方の今後の事業にとってどういう意味を持つものでしょうか?

日本山村硝子さん:

日本山村硝子 住宮さん

ファミケアさんのような他社と組んで、ユーザーのニーズをヒアリングして商品開発するといった取り組みは、弊社にとって初めての試みです。

だからこそ、このプロジェクトを成功させて「現場の声」がいかに商品開発に重要かを社内にも示したいですし、将来に続きうる良いビジネスモデルにしていこうと決意しています。

このプロジェクトが成功し、第二弾、第三弾と続くことで、困りごとを持つ全国の皆さんの生活をより便利にできる新しいアイテムを一つ、二つ…と増やしていけるはずです。

2025年のキッズフェスタで日本山村硝子株式会社とファミケアの共同ブースにで試作品の使い心地を試していただいている様子。ユーザーのリアルな声を商品開発に活かしている
試作品の使い心地を試していただいている様子。ユーザーのリアルな声を商品開発に活かしていきます。

ファミケア:

疾患や障がいのある子どもやご家族に役立つものをゼロから皆さんと一緒に開発できる場に携われていること自体が、チーム・ファミケアにとって大きなやりがいになっていると感じます。

ファミケア編集部 原島

また疾患・障がい児を育てる当事者としては「日ごろ、こんなことに困っている」と声をあげる場すらないこともあって。だからこそ、こうしたプロジェクトを通じてその声を拾い、困りごとを抱える人の救いにつなげられるかもしれないと思います。

私たちがその一助を担えることが嬉しいですね。

―販売を経て、このプロジェクトを今後、どのように発展させていきたいですか?

日本山村硝子さん:

日本山村硝子 山村さん

今回のプロジェクトを通じて、世の中にある見えない困りごとを少しでも減らしたいと思っています。そのためにも、まずはこのパウチ専用コネクタがたくさんのご家族のもとに届いてほしいですね。

ファミケア:

今回のプロジェクトでは、2つのものづくりに挑戦していると考えていて。

ひとつはもちろん、新商品であるパウチ専用コネクタ。そしてもうひとつが日本山村硝子さんとファミケアが一緒に商品開発を進める“仕組み”そのものです。

日本山村硝子さんの「ものをつくる力」と、ユーザーさんから声を拾うファミケアの役割、それをつなぎ、今までにないものを生み出す取り組み自体が試行錯誤の連続で、まさに今回、形をなそうとしている段階だと感じています。

理想としては、疾患・障がい児家族の持つ課題をどんどん吸い上げながら、次々と新しいものづくりにつなげていける仕組みに育てていきたい。

疾患や障がい児、希少疾患のご家族が抱える課題は、世の中の子育て“一般”に共通するものとは違い、小さく局所的なものが多いかもしれません。しかしそれをうまくヒアリングし形にする工夫ややり方を見つけられれば、ビジネスとしても成立すると思っています。

ファミケア編集部 新井

1つ1つの利ザヤは小さくても、製品が100個、200種類と増えていけば世の中の注目を集めうるものにもなります。さらにこのプロジェクト自体が全国の疾患・障がい児家族の希望になって「ここに相談すれば解決の手立てが見つかるかもしれない」という心のよりどころにもなるのではないでしょうか。

気持ちの面で支えになると同時に、ビジネスとしても成功させ、多くの方に困りごと解決のためのツールを届けていきたいです。

今回、興味を持ってくださった方はパウチ専用コネクタをぜひ手に取っていただきたいですし、ご自身の周りの方にもシェアしていただけたら嬉しいです。日本山村硝子さん×ファミケアで挑戦した「#みんなでつくるプロジェクト」、これからもぜひ応援してください!

―プロジェクトに対する熱量を感じました。「#みんなでつくるプロジェクト」の成功、心より祈っています!

パウチ専用コネクタの購入方法

パウチ専用コネクタは、10月23日(木)からファミケア公式ショップで予約販売開始。価格は2個で1,000円(税込)。※全国一律送料無料

予約は11月30日までなので、買い逃しのないようにご注意ください。

ファミケアちゃん

詳細・予約購入はファミケアショップをチェックしてね!

全国の保育施設や支援事業所などへ寄贈する

今回のパウチ専用コネクタは、通常の購入だけでなく、全国の保育園や幼稚園、児童発達支援事業所、放課後等デイサービス、療育センター、医療機関といった施設への寄贈ができる『応援購入』も可能。

応援購入についての詳細は、以下の特設サイトからご確認・お申込みください。寄贈先としてのお申し出もこちらのページから受け付けています

子どもと家族みんなのここちよい清潔を考えよう 10家族の声とここちよい清潔のかたち

ファミケアの掲載記事およびコラムに関しては、当事者および専門家によって作成しておりますが、全ての方に当てはまる情報ではございません。投稿された情報の利用により生じた損害について、ファミケア運営元では責任を負いかねますので、あくまでもご家庭での判断のもと参考情報としてご利用ください。また、特定の施設や商品、サービスの利用を推奨するものではありません。

日本山村硝子とファミケアによる共創型プロジェクトで開発された医ケア児向け商品開発におけるインタビュー記事用サムネイル

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この記事を書いた人

フリーライター・インタビュアー。人やモノがもつストーリーをひもとくのが好き。ライター活動のかたわら、小学生向けの表現教室運営も行う。21年生まれの次女は中間位の鎖肛っこ。「自分でよかった」と心から感じられる人が増えるといいなぁと思いながら暮らしています。座右の銘は「一隅を照らす」。

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