障がいのある子が学校に通う際、学校で使用する持ち物の購入費や通学費を補助する「特別支援教育就学奨励費」という制度があります。しかし、この制度は分かりにくく、対象品目や申請方法、支給上限額など、入学して初めて知ることも少なくありません。
この記事では、小学校入学を控えた子をもつ保護者に向けて、特別支援教育就学奨励費の申請方法や利用する際の注意点を分かりやすく解説します。
筆者が特別支援学校で1年間給付を受けた経験をもとに執筆しています。事前に知っておくと役立つポイントをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
特別支援教育就学奨励費とは
特別支援教育就学奨励費とは、障がいのある幼児や児童、生徒が、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級などで学ぶ際、保護者が負担する教育にかかる費用を国や自治体がサポートする仕組みです。支給額は家庭の収入状況によって決まります。
【参照】特別支援教育就学奨励費|文部科学省
URL:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/hattatu_00001.htm
特別支援教育就学奨励費の対象者
特別支援教育就学奨励費の対象となるのは、以下に在籍する児童生徒です。
- 特別支援学校
- 小中学校の特別支援学級
また、平成25年度からは、通常の学級で学ぶ子ども(特定の障がいの程度に該当する場合)も対象に含まれるようになりました。通級指導教室へ通う児童生徒の場合、教室に通うための交通費のみが補助対象となります。
特定の障害の程度については以下を参考にしてください。
【参照】学校教育法施行令第22条の3に関する資料|文部科学省
URL:https://www.mext.go.jp/content/20221227-mxt_tokubetu02-000026808_5.pdf
特別支援教育就学奨励費が支給されない場合
特別支援教育就学奨励費は、世帯の所得状況によって支給されない場合があります。以下の2つのケースについて解説します。
生活保護を受けている場合
生活保護を受けている方や準要保護者に該当する方は、基本的には特別支援教育就学奨励費の対象ではなく、就学援助制度の対象となります。就学援助制度とは、経済的に困難な保護者を支援するもので、学用品購入費などが補助されます。
ただし、自治体によっては就学援助制度を受けている場合でも、特別支援教育就学奨励費の申請が可能です。なお、重複する支給項目については「就学援助」または「生活保護(教育扶助)」から支払われ、両制度から重複して支給されることはありません。
【就学援助制度の対象者】
- 生活保護を受けている方
- 準要保護者
(生活保護を受けていないが、生活保護に準ずる程度の困窮が認められる方)
※準要保護者の認定基準は自治体ごとに異なります。
一定以上の所得がある場合
所得が一定額を超える家庭は、新入学用品や学用品・通学用品の購入費は対象外です。この場合、通学費などの一部経費のみが支給対象となります。
特別支援教育就学奨励費の支給対象品目や支給額
ここでは、仙台市を例に特別支援教育就学奨励費の支給対象品目や支給限度額について解説します。
支給対象となる品目
支給対象となる主な経費は、以下のとおりです。
- 通学費
- 給食費
- 教科書費
- 学用品費
- 修学旅行費
- 寄宿舎で使用する日用品費
- 寄宿舎で使用する寝具費
- 寄宿舎からの帰省費
なかでも、入学前後に購入する可能性がある学用品について、主な対象品目を以下にまとめました。
区分 | 品目例 |
新入学用品 | ランドセル、通学カバン、制服、通学用靴、雨靴、傘、帽子、運動着、上靴など |
学用品 | ノート、筆記用具、運動着、水着など |
通学用品 | 通学用靴、雨靴、傘、帽子、奨励服、防寒着など |
ただし、以下の品目は学校で使用するものであっても対象外です。
区分 | 対象外品目 |
---|---|
衣類 | 私服、下着 |
消耗品 | おむつ |
福祉用品 | メガネ、装具、車いす、補聴器など |
対象になるかどうか迷ったら、領収書やレシートをとっておいて入学後に学校の先生に聞いてみてね!
支給額
特別支援教育就学奨励費で補助される金額の割合や対象品目ごとの支給上限額は、支弁区分によって異なります。
支弁区分とは補助の割合を決める基準で、保護者の年収や世帯構成に応じて設定されます。
以下は仙台市の支給限度額の一例です。
区分1(実費) | 区分2(実費の1/2) | 区分3(一部経費のみ) | |
給食費 | 実費 | 実費の1/2 | なし |
通学費 | 実費 | 実費 | 実費 |
学用品購入費 | 11,640円 | 5,820円 | なし |
新入学用品購入費 | 51,110円 | 25,555円 | なし |
※実費=実際にかかった費用全額
新一年生のみが対象となる「新入学用品購入費」の支給額は、通常の学用品購入費よりも限度額が高く設定されています。
ランドセルやリュックなどの通学カバンも新入学用品購入費の対象です。カバンの予算を決める際は、支給額の上限を参考にしましょう。
特別支援教育就学奨励費を利用する際の注意点
特別支援教育就学奨励費を利用する際に、事前に知っておくべき注意点をまとめました。
購入する日付に注意
特別支援教育就学奨励費では、対象となる品目ごとに購入期間が定められています。
例えば仙台市の場合、新入学用品として認められる品目は入学前(3月31日以前)の領収書も対象ですが、それ以外の学用品や通学用品は入学後(4月1日以降)の領収書のみが対象です。
入学前に購入したもので対象となるのは新入学用品に該当するものだけだよ!該当しない商品は入学前に買っても支給してもらえないことがあるから気をつけてね!
領収書やレシートは必ず取っておく
特別支援教育就学奨励費を受け取るためには、領収書またはレシートの原本が必要です。ネット通販を利用する場合は、領収書が発行される支払い方法を選びましょう。
領収書が発行されない場合、以下の3点が必要です。(自治体により異なる場合があります)
- 購入履歴を印刷したもの
- クレジットカード会社からの請求書の写し
- 通帳の引き落としが確認できるページの写し
これらをすべて用意するのは手間がかかります。また、申請に関係のない情報は黒塗りにして提出する必要があるため、さらに手間が増えます。できるだけ領収書を発行してもらうようにしましょう。
ポイント精算分は対象外
ポイントで支払った分は、特別支援教育就学奨励費の補助対象になりません。支払った経費が全額補助されるとは限らないため、「ポイントを使用しないほうがよい」とまでは言えませんが、ポイントを使用する際は慎重に検討することをおすすめします。
特別支援教育就学奨励費の申請手続きの流れ
特別支援教育就学奨励費の申請方法は、特別支援学校と小中学校の通常学級・特別支援学級で異なることが多いです。
ここからは仙台市を例に、特別支援教育就学奨励費の申請手続きの流れを簡単に解説します。
通常学級・通常支援学級の場合
通常学級・特別支援学級に通う場合、市町村に申請を行います。仙台市の場合、9月中旬までにオンラインで市町村に申請を行います。
特別支援学校の場合
- 2月~4月
入学説明会で必要書類(交通調書や指定口座届けなど)を受け取り、入学式までに記入した書類を学校に提出します。 - 5月中頃
市・県民税課税または非課税証明書の原本を提出します。18歳以上の家族全員分の証明が必要です。 - 7月初旬
領収書を提出します。- 1年生:新入学用品の領収書
- 全学年:学用品の購入品の領収書
- 9月初旬
支弁区分決定のお知らせが届きます。 - 9月中旬
指定口座に特別支援教育就学奨励費が振り込まれます。
なお、学用品購入費は年3回に分けて支給されました。
- 7月初旬に申請 → 9月中旬振込
- 10月下旬に申請 → 12月下旬振込
- 1月下旬に申請 → 3月下旬振込
申請時期や振込時期は自治体によって違うよ。
特別支援教育就学奨励費について学校や自治体に確認しよう
この記事では、仙台市を例に特別支援教育就学奨励費について解説しました。自治体によって対象品目や支給額、購入期間が異なりますので、自治体のホームページや通学予定の学校で申請条件を確認することが重要です。
入学前(3月31日以前)の買い物で対象となるのは新入学用品のみです。入学前に準備をする際には、新入学用品に該当するものか確認してから購入すると良いでしょう。また、領収書やレシートは必ず保管しておきましょう。
特別支援学校の場合、1月から3月頃に開催される学校説明会で案内があることが多いです。説明会に参加した後、準備を進めると安心です。
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