「片付けなさい!」と何度言っても効果がない
毎日のように片付けを促すことに疲れ果て、イライラしてしまう
発達障害の子どもの片付けの課題に、多くの保護者の方が頭を悩ませています。
この記事では、発達障害の子どもがなぜ片付けられないのか、その原因を解説していきます。具体的な対策や、自閉スペクトラム症の娘と暮らす実践例も合わせてご紹介するため、効果的なサポート方法を見つけたい方はぜひ参考にしてみてくださいね。
「片付けられない」と「発達障害」に関連性はある?
発達障害のある子どもが片付けられない背景には、特性によるさまざまな要因が隠れています。「やる気がない」「だらしない」など性格の問題ではなく、脳の働き方の特徴が関係しているのです。そのため、子どもを責めるのではなく、その特性を理解することから効果的な支援は始まります。
実行機能の弱さによる影響
片付けには「計画を立てる」「優先順位をつける」「行動を開始する」という能力が必要です。これらは実行機能と呼ばれ、発達障害のある子どもは苦手としやすい領域といえます。
例えば、床に散らばったおもちゃを前にしてどこから手をつければよいのかわからず、途方に暮れてしまうなどです。また、片付けの途中で「あ、これで遊びたい」と気が散り、最後まで片付けを完了できないケースも珍しくありません。
視覚的な情報処理の特徴
散らかった部屋を見た際「本は本棚に」「洋服はクローゼットに」と整理の仕方をイメージできるのではないでしょうか。しかし、発達障害の子どもは目の前の物がすべて同じように見え、何をどうすればよいのか判断できない場合があります。
また、物の位置関係や空間把握が苦手な場合「どこに何があるのか」を覚えるのも難しく、結果として物を置きっぱなしにしてしまいがちです。
注意力の持続と切り替えの難しさ
片付けは、単調な作業の繰り返しです。発達障害のある子どもは、興味のない作業に注意を向け続けるのが難しく、途中で気が散りやすい特徴があります。
また、一つの作業から次の作業への切り替えにも時間がかかるケースも少なくありません。例えば、本を本棚に戻す作業から床に落ちている洋服を拾う作業に移る際スムーズに切り替えられず、立ち止まってしまう場合があります。
感覚過敏による影響
発達障害の子どものなかには、特定の感覚に過敏な反応を示す方もいます。例えば「埃っぽさが気になって片付けに集中できない」「物の触感が苦手で特定の素材に触れたくない」などの特徴があると、片付け作業そのものがストレスとなってしまいやすいのです。
発達障害のある子どもも実践しやすい!効果的な片付けのサポート方法
子どもの特性を理解したうえで具体的で実践的なサポート方法を取り入れると、片付けのスキルを身につけやすくなります。ここでは、自閉スペクトラム症の娘と暮らす筆者が実践して効果が見られた方法をご紹介します。
視覚的な手がかりを活用する
写真やイラストを使って物の定位置を示すラベリングをすると、片付ける場所がわかりやすくなります。例えば「引き出しに中身の写真を貼る」「おもちゃの箱に中に入れるべきものの絵を描く」などです。視覚情報をサポートすると、片付け方の理解を助けられます。
特に効果的なのは、実際の収納場所の写真を使うことです。「きれいに片付いた状態」の写真があると、目標の状態が明確になります
片付けを小さなステップに分ける
「部屋を片付けて」という課題は、発達障害のある子どもにとって 圧倒的な要求になりがちです。そのため、以下のような具体的なステップに分けると取り組みやすくなります。
- 1日目:床の上の物を種類ごとに分ける
- 2日目:本を本棚に戻す
- 3日目:洋服をクローゼットに片付ける
上記のように「1日の目標を明確に設定」すると、達成感を得やすくなります
タイマーを使った時間管理
発達障害の子どもにとって「見通しが立つ」状況は大きな安心材料です。そのため、片付けの時間を決めてタイマーを使うと、終わりが見える形で取り組みやすくなります。
最初は15分など短い時間から始めて、少しずつ時間を延ばしていくのがおすすめです。「この時間だけ頑張ればいい」と見通しが持てることで、子どもの心理的な負担も軽減されます。
声かけは「前向き」に
片付けを促す際の声かけも重要です。「いつまでそんなにごちゃごちゃにしているの!」「もっとちゃんと片付けなさい」などの抽象的な指示は、発達障害の子どもにまっすぐ通らない場合があります。
否定的な言葉ではなく「まずは床の上の物を拾おうか」「この箱に入れてみよう」と、具体的で前向きな声かけを心がけましょう。また、もし途中で飽きてしまっても、批判するのではなく「ここまでよくできたね」とできたことを認める姿勢を見せると、子どもは「また頑張ってみよう」と思いやすくなります。
片付けがはかどる環境づくりのポイント
ここまでは「発達障害の子どもが片付けに取り組みやすくなる、本人への直接的なサポート方法」をご紹介してきました。ここからは「片付けやすい環境づくり」です。
片付けやすい環境を整えると、子どもの自主性を引き出しやすくなります。以下のポイントを意識して、環境を整えていきましょう。
物を減らす工夫をしてみる
発達障害の子どもは、いらないものを捨てられない傾向があります。また、ものごとを先延ばしにしたり、苦手なことや嫌いなことから逃げたくなったりするのも相まって、片付けをつい後回しにしてしまうのが特徴です。
これは「頭の中が整理できない」「空間認識力が低い」「目で見た情報を認識できていない」などの発達障害の特性が要因ともいえます。
そもそも所持品が多すぎると、整理整頓は難しいですよね。「3ヶ月以上使っていないものは処分を検討する」「新しいものを買うときは古いものを処分する」など、無理のない範囲でルールを決めて物を減らす工夫を検討してみましょう。
特に、おもちゃや本は「今」本当に必要なものだけを残すようにすると、見直しがスムーズに行えます
「取り出しやすくしまいやすい収納」を重視
前述したとおり、発達障害の子どもには「視覚的な手がかり」が有効です。そのため、引き出しや棚を使う場合は、中が見えるような透明の収納ケースを使用したり前述のラベリングを活用したりしてみましょう。
また、片付けしやすい環境を作るには、収納場所の高さを検討するのもポイントです。子どもの身長に合わせて「取り出しやすくしまいやすい高さ」を意識してみてください。
片付けやすい動線を確保する
物の出し入れがしやすいように、収納場所までの動線を確保するのも大切です。例えば、本棚の前に障害物があると、本を戻すのを面倒に感じてしまいます。
発達障害の子どもが「片付けるのもうやめた!」となってしまわないように、使用頻度の高いものは、取り出しやすくしまいやすい場所に配置しましょう。
片付けのサポートをする保護者のストレス軽減も忘れずに
頭ではわかってるんだけど、とはいえ、対策を含めてやっぱり片付けの指導はストレスを感じてしまう
そんな感情を持つのは、とても自然なことです。片付けの指導は、保護者の方にとっても大きな負担になり得ます。そのため、発達障害の子どもをサポートする保護者自身のストレス軽減も忘れないよう、あくまで長期的な視点で取り組むのが大切です。
「完璧にきれい」を求めすぎない
発達障害のある子どもにとって、一般的な「きれいに片付いた状態」を維持するのは、非常に大きなエネルギーが必要です。そのため「これくらいならOK」という基準を、子どもと一緒に決めていきましょう。
例えば「床に物が落ちていなければOK」「使ったものは必ず元の場所に戻す」など、シンプルで達成可能なルールから始めるのがおすすめです。
子どもの努力を認める
たとえ結果が期待通りでなくても、片付けようとする姿勢や、小さな成功を積極的に褒めましょう。「よく頑張ったね」「ここまでできたね」という言葉かけが、子どもの自信につながります。
特に、初めてのことに挑戦したり苦手な作業に取り組んだりしたときは、結果よりもその努力を認めるのが大切です。
定期的に休息を確保する
発達障害の子どもの片付けをサポートしていると、体力的・精神的に負担を感じる方もいらっしゃるかもしれません。そのため、ときには意識的に「今日は片付けはお休み」という日を設けるのも大切です。
この休息の日は、子どもと保護者の双方にとって、心身をリフレッシュする貴重な機会になります。片付けから一時的に解放されることで、翌日以降より前向きに片付けサポートに取り組みやすいのもメリットです。
「週に1日」などあらかじめ決めて休息日を設けると、長期的な視点での支援がしやすくなります
発達障害の子どもの「片付けられない」には特性に寄り添った工夫を
発達障害のある子どもの片付けの課題は特性の影響が大きく、意志の力だけでは改善が難しいものです。子どもの特性を理解し、適切なサポートを取り入れることで、少しずつスキルを身につけられます。
完璧な片付けを求めるのではなく、子どものペースを尊重しながらできることから始めていきましょう。そして何より大切なのは、保護者の方自身の心身の健康です。「これでいいんだ」と自分を認めながら、無理のないペースで取り組んでいきましょう。
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