障がい児への支援制度の一つに「居宅介護」というものがあります。居宅介護というと聞きなれない言葉ですが、いわゆる「ヘルパーさん」が来てくれる制度というと、なんとなくイメージが付く方も多いかもしれません。
障がい児を育てる上で、ヘルパーは強い味方になります。
そこでこの記事では居宅介護とは何か、対象者やサービス内容について解説していきます。利用方法についても紹介しますので、支援を受けたい方はぜひ参考にしてください。
居宅介護(ホームヘルプサービス)とは
居宅介護とは、訪問介護員(ホームヘルパー)に自宅に来てもらって日常生活の介護を受けたり、調理や掃除といった家事の援助を受けることのできるサービスです。
障害者総合支援法に基づいた制度で、ホームヘルプサービスとも呼ばれます。
居宅介護と訪問介護の違い
居宅介護と訪問介護は、いずれも訪問介護員が利用者の自宅に出向いて介護サービスを提供する制度ですが、基になっている法律や対象者が違います。
居宅介護は障害者自立支援法に基づいた障害福祉サービスで、一定程度以上の障がいのある者(児)が対象です。
一方、訪問介護は介護保険法に基づいた介護保険サービスであり、加齢や病気によって身体の機能が低下し、介護認定を受けた方が対象です。
居宅介護と居宅介護支援の違い
さらに似ている言葉に「居宅介護支援」があります。居宅介護支援は介護保険法に基づいた制度で、在宅の要介護者がサービスを適切に利用できるように、介護支援専門員がサービス計画を立案・評価したり、事業所との調整を行う制度のことをいいます。
居宅介護、訪問介護、居宅介護支援…制度の名前が似ていてややこしいね。この中で障がい児が対象となるのは居宅介護だけだよ!
居宅介護を利用できる対象者
厚生労働省は、居宅介護を利用できる対象者を以下のように定めています。
障害支援区分が区分1以上(障害児にあってはこれに相当する支援の度合)である者
ただし、通院等介助(身体介護を伴う場合)を算定する場合にあっては、次のいずれにも該当する支援の度合(障害児にあっては、これに相当する支援の度合)であること
(1) 障害支援区分が区分2以上に該当していること
(2) 障害支援区分の認定調査項目のうち、次に掲げる状態のいずれか一つ以上に認定されていること
・「歩行」 「全面的な支援が必要」
・「移乗」 「見守り等の支援が必要」、「部分的な支援が必要」又は「全面的な支援が必要」
・「移動」 「見守り等の支援が必要」、「部分的な支援が必要」又は「全面的な支援が必要」
・「排尿」 「部分的な支援が必要」又は「全面的な支援が必要」
・「排便」 「部分的な支援が必要」又は「全面的な支援が必要」
障害福祉サービスの内容|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html
では、障害支援区分とは一体どのようなものなのでしょうか。
障害支援区分とは
障害支援区分とは、障がいの多様性やその他心身の状態に応じて、必要とされる支援の度合いを総合的に示した指標です。障害支援区分は区分1から区分6の6段階に分けられ、区分が高いほど必要とされる支援の度合いが高いことを表します。
ただし、小児は発達の過渡期であり障がいの程度が変化する可能性があること、特に乳児期の場合は一般的な育児上のケアとの区別が必要なことから、18歳以下には障害支援区分は適応されません。
障がい児の場合は、日常生活状況を食事、排泄、入浴など、いくつかの項目に分けて調査し、医療的ケアの有無なども加味して、市区町村が支給量(月に何時間居宅介護を利用できるか)を決定します。
筆者の場合、ひと月あたりの支給量は14時間です。支給量の範囲におさまるよう、週に2回1時間ずつ利用しています。
居宅介護で受けることのできるサービスの内容
居宅介護で受けることのできるサービスは大きく以下の4つに分けられます。
身体介護
身体介護は、利用者の身体に直接接触する介護サービスのことをいいます。例えば、食事や排泄、入浴の介助などです。研修を受けている介護福祉士であれば、喀痰吸引や経管栄養など一定の医療的ケアも可能です。
その他、安全確保のためにいつでも介護を提供できる状態での見守りも身体介護に該当します。
筆者は週に2回入浴介助を利用しています。訪問の間に下の子の送迎を行ったり、短時間買い物に出かけたりと、とても助かっています。
家事援助
家事援助は、掃除や洗濯、買い物、調理などの家事のサポートのことです。
居宅介護は利用者本人が対象であることから、利用者が小児の場合、家事援助は利用者の親へのサービス提供となるため、基本的には対象外となります。
しかし、子どもに重度の障がいや医療的ケアがあって保護者の介護負担が大きい場合、医療介護に追われて十分に家事をできない状態も考えられます。そこで、子どもの障がいの程度や状況によっては家事援助を受けることができるケースもあります。
通院等介助、通院等乗降介助
通院時の付き添いや、ホームヘルパーの運転する車両への乗降の介助を受けることができます。
居宅介護における通院等介助は、通院する場合と、手続きや相談のために役所などに行く場合に限られるため、通学等のための介助は依頼できません。通学時の介助を利用したい場合は、移動支援や障がい児通学支援事業で対応できる自治体もあります。
相談、助言指導に関すること
各種制度や介護の仕方についてなど、相談したり助言を得ることができます。
居宅介護の利用料金
居宅介護の利用料金は、利用時間数に応じて30分単位で料金が定められています。また、世帯所得に応じて以下のようにひと月の自己負担金の上限が定められているため、これ以上はかかりません。
生活保護 | 0円 |
低所得(市町村民税非課税世帯) | 0円 |
市町村民税課税世帯(※所得割28万円未満) | 4,600円 |
それ以外 | 37,200円 |
居宅介護を利用するには
居宅介護の利用には、障害福祉サービス受給者証が必要です。まずはお住まいの自治体窓口で受給者証を申請するか、担当の相談支援専門員に相談しましょう。すでに短期入所等を利用していて受給者証が手元にある場合でも、新たに居宅介護を利用したい場合は市区町村の窓口に申請する必要があります。
ただし注意したいのは、自治体によっては障がい児の場合は居宅介護の申請が通らないケースがあることです。居宅介護を利用したいと思ったら、まずは自治体窓口や相談支援専門員に相談することをおすすめします。
筆者の自治体では小児で居宅介護を利用している事例は少なく、当初相談した際にも小児は利用が利用するのは難しいといわれました。しかし、長男のてんかん発作が頻発しており介護負担が大きかったことや第2子出産直後であったこと、ワンオペ育児であったことからサービスの利用が可能となりました。年齢によって難色を示されることもあるかもしれませんが、本人の状態や家庭状況を詳しく伝えることで給付が下りるケースもありますので、まずは相談してみましょう。
▼受給者証についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
居宅介護を利用して負担を軽減しよう
居宅介護は、訪問介護員(ホームヘルパー)に自宅に来てもらい、身体介護や家事援助などを受けられるサービスです。
障がい児育児をしていると、身体的にも精神的にも負担を感じることがあります。居宅介護を利用すれば、子どもの身体介護を受けたり、親が介護上の相談を行うこともできたりと、保護者の負担軽減に繋がります。
サービスの利用には、障害福祉サービス受給者証が必要です。小児の場合は給付が難しい場合もありますが、生活状況を細かく伝えることで給付が下りるケースもありますので、まずは自治体の窓口や相談支援専門員に相談してみましょう。
【参考】
介護給付費等に係る支給決定事務等について |厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001242850.pdf
心身障害児(者)ホームヘルプサービス事業について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta9078&dataType=1&pageNo=1
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