身体に障がいのあるお子さんがいるご家庭では、ご自宅の新築や改修をきっかけに、リフトの導入を検討する方も多いのではないでしょうか。
リフトの導入は、介助者の負担軽減だけでなく、介助される障がい児本人にとってもメリットがあります。
▼リフトの種類や導入のメリットについてはこちら
筆者の場合は、主に入浴時の介助者の負担軽減を目的として、新築時に天井走行リフトを導入しました。そこで今回は、筆者の体験をもとに、天井走行リフトについて解説していきます。
天井走行リフトってそもそもどんないいことがあるの?
導入するには実際いくらぐらいかかる?
天井走行リフトにはどんな種類がある?
天井走行リフトを検討されているご家庭の様々な疑問が解消できたら嬉しいです!
天井走行リフトとは?
天井走行リフトは、利用したいエリアの天井に走行用レールを固定または埋め込み、レールが通過する範囲であれば自由な場所で昇降操作が可能なリフトです。
リフトの昇降操作はリモコンを使って電動で行いますが、移動は電動でできるタイプと手動でできるタイプがあります。また、通常は緊急停止用のボタンや紐がついています。
我が家は手動で移動できるタイプにしました。昇降操作に使うリモコンは壁際で充電し、リフトを使うときは、ハンガーにはめてリフトと一緒に移動できます。
天井走行リフトには、面での移動が可能になるXYレールと、あらかじめ利用範囲を線で設定するシングルレールがあります。
XYレール
XYレールは、縦軸と横軸にそれぞれ可動域をつくり、組み合わせることで領域内であれば自由に動かすことができるというもの。広いスペースが確保できる福祉施設や病院などで推奨されており、ご家庭でもこのXYレールを導入するケースが増えているといいます。
想定した導線だけではなく、設置範囲ならどこでも自由に利用できるため、お部屋の模様替えや間取りの変更も安心です。一方で、この場合、レールを天井に埋め込むことはできないため、どうしても存在感は大きくなってしまいます。
シングルレール
利用する導線をある程度設定したうえで、1本のレールを走らせるシングルレールという方法もあります。XYレールのように面移動はできませんが、スペースに合わせてカーブレールを設置したり、方向転換するパーツを組み合わせることで、比較的自由に可動域を設定できます。
シングルレールの1番の特徴は、新築時にレールを天井に埋め込むことができることです。圧迫感のあるレールの本体部分を天井に埋め込んでしまうことで、スタイリッシュな見た目に仕上げることができます。
天井走行リフトのメリット
自由度が高く、スペースの制約が少ない
固定式や据置き式リフトと比較すると、天井走行リフトや床走行リフトは走行場所の自由度が高いのが大きなメリットです。
床走行リフトは使いたい場所に運べるため最も走行場所の自由度が高いといえますが、スタンドが走行できるだけの幅やスペースが必要です。一方天井走行リフトは、あらかじめ利用する範囲に合わせたレールの配置をすることで、その範囲内であればスペースの制約はありません。
圧迫感が少ない
床走行リフトや固定式リフト、据置型リフトの場合は、いずれもスタンドやレール部分などの存在感が大きく、ともするとその見た目から圧迫感を感じてしまいます。
天井走行リフトは、設計に組み込んでレールを埋め込むことで、すっきりと見せることが可能です。見た目がスマートになると、圧迫感を感じにくいです。(ただし、XY型のレールを選択する場合はこの限りではありません。)
福祉施設や病院などと違って、ご家庭の場合はやはり圧迫感なくお部屋に馴染むデザインも大切ですね。
天井走行リフトのデメリット
新築では費用補助なし
家を新築する際に天井走行リフトや据え置き型リフトなど住宅の工事を伴うリフトを導入する場合、筆者の住む自治体の場合は新築での費用補助はありませんでした。
新築ではなく「住宅改修」の場合には日常生活用具の「居宅生活動作補助用具」に該当するとして費用補助があるとのことでしたので、補助金を利用しての天井走行リフト導入を考えている場合、タイミングには注意が必要です。
また、床走行リフトや固定型リフトなどで、住宅の工事を伴わない場合は、日常生活支援用具等に該当すれば、補助対象になる可能性があります。
自治体によって補助の有無や程度などは異なりますので、お住まいの自治体の福祉課に問い合わせてみてください。
子どもが通る空間スペースと本体の保管場所確保が必要
他のリフトと違って、天井走行リフトの場合はスタンドや支柱がない分、スペースはとりません。ただし、利用したい導線にリフトに乗って子どもが通れるだけの空間スペースがあるかどうかは確認する必要があります。また、利用しないときに本体を置いておける場所の確保や、本体を充電するための電源も必要です。
天井走行リフト導入の価格目安
あくまでも筆者が導入した天井走行リフトの費用感にはなりますが、ざっと以下のような内訳でした。
- リフト本体:80万円〜90万円程度
- リフティングハンガー:7万円程度レール
- レール:50万円程度 ※設置経路や距離によって異なります
- スリング:8万円〜10万円程度 ※スリングの種類により異なります。また、自治体の補助を受けられることがあります。
トータルで約160万円かかりました。スリング以外は補助金の対象外だったので全額自費です。
決して安くない金額なので、ご家族の生活スタイルや子どもの状態を鑑みてよく検討する必要があります。
筆者の場合は、寝室から隣接した脱衣所、そして浴室まで埋め込み型のシングルレールを敷きました。シングルレールの場合でも、方向転換用のパーツ等を取り入れると費用はあがり、レールをひく距離によっても金額は変わってきます。
スリングも高額ですが、筆者が住む自治体では生活補助具として申請することで2枚まで補助を受けることができました。
あくまでも目安として参照していただき、詳しくは購入するリフトを取り扱う業者さんに見積を依頼してください。スリングの補助についても、お住まいの自治体の福祉課に問い合わせてみることをおすすめします。
天井走行リフトにはどんなものがある?
天井走行リフトを作っているメーカーのうち、小児用のスリングもセットでラインナップされている主な製品をご紹介します。
グルドマンGH
1980年にデンマークで創設された福祉機器メーカー、グルドマン社のリフトです。荷重基準によって種類があり、ニーズにあわせて選べるほか、子ども用のスリングも豊富に用意されています。
我が家はこちらを購入しました。コンパクトで最大荷重が少ないGH1を選びましたが、それでも205kgまでOKなので家庭での利用には十分すぎるくらいです。コロンとした楕円形のフォルムもかわいく、リモコン操作も簡単で使いやすいです。
リコロール
スウェーデンのLiko社が開発したシンプルなデザインのリフトです。機能の違いでいくつかの種類があり、スリングにも様々な種類があります。同じLiko社の「マルチロール」は、リコロールよりも軽量でコンパクトな作りになっており、持ち運びも容易です。
SOEL CX
介護リフト製品を取り扱う4社により設立された兵庫県の日本ケアリフトサービス株式会社が独自に開発したリフトです。日本人の体型や骨格にフィットするようなスリングを開発しているのが特徴です。
開発の中心となったウェルネット研究所では、公式サイトでリフトの使い方に関するセミナー情報やスリングに関する情報記事など、様々な情報を発信しています。
リフト導入のねらいを設定して検討を
以上、天井走行リフトのメリットやデメリットと合わせて、価格やメーカーなどをご紹介しました。導入にあたってはご自宅の間取りや予算、利用する子どもの障がいの程度やリフトの利用目的など、様々な要因が関わってきます。
ご家庭の事情を踏まえてリフトを導入するねらいを設定し、天井走行リフトの効果や特徴が合致するか検討してみてくださいね。その上で、普段かかわっている病院のスタッフさんや主治医などにも相談しながら、ご自身でも情報収集を進めてみましょう。
▼実際にリフト導入を検討しはじめたらこちらの記事で設置手順や注意点をチェック!
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