この記事を読んでいる障がいや疾患のある子どもがいるご家族は、休める時間を取れていますか?
1日中、子どものお世話や介助などのケアにつきっきりで、自分の時間がないご家族も多いのではないでしょうか。
そんな日頃の疲れが溜まりがちなご家族に知ってもらいたいのが「短期入所」です。この記事では、息子の短期入所を活用している筆者が短期入所が、必要な理由や種類、利用対象、費用などを紹介します。
\この記事を監修してくれた先生/
相談支援専門員・看護師 井上悠貴(いのうえゆき)先生
岡山県立倉敷中央高等学校専攻科を卒業。看護師免許を取得し、小児科病棟や保育園に勤務する。現在2児の母であるが、上の息子が3歳の時に発達障害と診断される。その中で相談支援専門員の方にお世話になり、その経験から自身も相談支援専門員の資格を取得。現在相談支援事業所うえまつで相談支援専門員として活動中。
短期入所とは
短期入所は、レスパイト事業を提供している施設へ子どもを預け、その間に介護者や障がいのある子どもの家族が休めるようにする事業・サービスです。「ショートステイ」と呼ばれたり、「レスパイト入院」と呼ばれることもあります。
レスパイトとは
介護者のための休息を意味し、在宅での介護やケアで疲れた時に一時的に休める時間を作ることです。レスパイト(respite)の語源の由来は、「休息」「息抜き」からきています。
高齢者向けにも短期入所という制度がありますが、利用制度などが異なる場合があります。言葉は同じなのですが、内容として違う場合があるので、病院ホームページに「短期入所」と記載があっても障がい児が受け入れ可能か確認しましょう。
短期入所の現状
約10年で医療的ケア児は2倍に増えているにもかかわらず、短期入所ができる医療型短期入所施設の事業所数は、全国で349 か所(2018年1月時点)にとどまっていて不足しています。
医療型短期入所施設事業所を対象に行ったアンケートでは、80%以上が地域に医療型短期入所施設が不足していると回答しています。
医療の発展とともに多くの命を助けられるようになりましたが、同時に増えていかなければいけない介護者や家族のケアとなる医療型短期入所施設が増加していないのは、大きな問題です。
【参照】医療型短期入所事業所 開設のためのガイドブック|厚生労働省
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000654272.pdf
短期入所が必要な理由
短期入所は、日頃介護や医療的ケアで疲れている家族が、休息するために必要とされています。
疲れの限界が近いとき、子どもに対してイライラしてしまったり、体調が悪くなったりと、生活に余裕がなくなってしまいますよね。
そんな風に休みなく続く介護や医療的ケアに疲れた時、介護者や家族が休める時間を作ることはとても大切です。
介護者や家族が自分たちの時間を持ちリフレッシュすることで、心に余裕を持って子どもと向き合うことは、子どもにとってもプラスにもなります。
短期入所はどんな時に利用するの?
介護者が休息をとりたいときや、冠婚葬祭、きょうだいの行事など障がい児を連れて行くには難しい日に利用できます。また、子どもの体調が安定している時のみ利用ができます。
筆者の場合は定期的に家族で休息をとるために、2ヶ月に1回3泊4日程短期入所し、月に4〜6回ほど日帰りショートステイを利用しています。
最初は「体調不良でもないのに病院に子どもを預けていいのかな…」と罪悪感のようなものがありましたが、利用してみるとはやり心身ともに元気になり、その後より楽しく息子と関われることがわかったので、今では積極的にサービスを利用することにしています。
前述の通り、定期的にレスパイトすることで、心身ともにリフレッシュできます。短期入所するときはいつも息子に「お互い元気に再会しようね!」と言ってバイバイするようにしています。
短期入所の利用対象者
短期入所の主な利用対象者は障がいのある子どもです。ただし、短期入所は前提として障害福祉サービスの「短期入所」の給付を利用することが多く、サービスの利用要件に短期入所の給付が必要な場合が大半です。
まずは、短期入所の受給対象になるかどうかを確認しましょう。確認は自治体の障害福祉サービスの取り扱い窓口(障害福祉課等)でできます。
また、短期入所の事業をしている施設によって受け入れ対象者が異なります。子どものケアの状況や障がいによって利用できる施設が異なるので、子どもの状況で利用できる施設を判断しましょう。
施設の違いとしては、主に重症心身障がい児や医療的ケアが必要とされる「医療型」の施設と特段医療的ケアが必要ない障がいのある子ども向けの「福祉型」の施設にわかれます。
医療型 | 遷延性重度意識障害児・者や重症心身障害児・者が対象の施設 |
福祉型特化 | 医療的ケアが必要な人も利用できる施設 |
福祉型 | 医療的ケアが特段必要ない人が利用できる施設 |
保育士が配置されていたり、レクリエーションの部屋があったりする施設もあります。遊んでもらえたりする子どもにとって楽しい環境は、親としても嬉しいポイントで施設の人気も高くなっています。
人気の施設や病院の場合は、新規受付が抽選になることもあるので、いざ使いたいとなる前の早めの時期から初回申込をしておくのがおすすめです
悠貴先生からのワンポイントアドバイス
障害児入所支援の短期入所で利用できる施設と介護給付を利用する短期入所施設があります。子どもだけの所もあれば、大人の障害の方も利用されている施設があり、場所によってはすべてケアをしてくれる施設もあれば、子どもが身辺の事が一定できる必要がある施設もあります。利用するのであれば利用先の施設はしっかり選ぶことが大切です。
福祉型施設への短期入所
福祉型の施設への短期入所は、医療的ケアのない、身体、知的または精神に障がいのある子どもが利用できます。主な入所先は、福祉型障害児入所施設で短期入所もできる施設(短期入所の併設型)や福祉型の短期入所専用施設(単独型)になります。
「福祉型」のため、施設でしてもらえることは、食事、排せつ、入浴の介助など、あくまでも日常生活での支援が基軸となります。医療的ケアがある子どもも「福祉型強化」の施設では受け入れが可能なこともあります。
子どもの面倒を見てくれるのは介護福祉士や介護職の職員が中心で、施設によって看護師がいることもあります。
医療型施設への短期入所
医療型の施設への短期入所は、遷延性重度意識障害児・者や重症心身障害児・者が対象となっており、医療的ケアがある子どもも利用ができます。医療型の施設には、病院や障がい児入所サービスを提供している施設(併設型)、医療型の短期入所専門施設(単独型)などがあります。
「医療型」のため、疾病の治療や看護、医学的管理の下における食事、排せつ、入浴等の介助が基軸となります。
障がい児の面倒をみてくれるのは看護師や医師です。福祉型と比べて医療対応が整っているのが特徴です。一方で、介護福祉士や保育士などはいる施設といない施設があるため、どちらかというと一般的な治療のための入院と同じ扱いになることも多いです。
▼医療型の短期入所について詳しくはこちらの記事で紹介しています
空きがある場合のみ利用可能な「空床利用型」
施設の機能や対象者の違いともう1つ覚えておきたいのが、施設が空床利用型かどうかです。「空床利用型」は、短期入所用にベッド(入院できる枠)が常に確保されておらず、他の障害児入所の方や病院への入院患者がいなくて空いている場合に短期入所として利用できるタイプの施設です。
「〜型」となっていますが、福祉型や医療型とは違った概念です。福祉型の施設でも、医療型の施設でも「空床利用型」の場合があります。
空きがなければ、短期入所できないため、病院によっては短期入所の予約がなかなかできないこともあります。予約のしやすさや予約できる頻度を可能な限りあらかじめ確認して、利用の施設選びをしましょう。
短期入所のメリット・デメリット
短期入所をすることでのメリットとデメリットをご紹介します。
メリット
家族が休息できる
短期入所の1番のメリットは、親が休息できることです。家に子どもがいないので、医療的ケアも介護もすべてお休み。夜の見守りもしている方は、しっかりと睡眠時間も確保できます。休息している間は自由なので、子どもがいてはなかなか行けない場所やお店に行ってみたり、家で思い切りゴロゴロしたりと自由きままに過ごせます。
デメリット
子どもがいなくて寂しい
いつもいる場所に子どもがいないのは、家がガランとしていて寂しく感じます。子どもがいるからこそ思える「楽しい」「嬉しい」という気持ちは大切なものなのだなと、いないからこそ考えさせられます。
普段と違う環境で体調を崩す子どももいる
短期入所先と家庭での環境の違いで体調を崩してしまう子どももいます。短期入所先にもよりますが、例えば入院先が病院だとしたら、看護師が忙しく普段より吸引回数が少なくなってしまい、子どもが体調を崩してしまったり、オムツを替える回数が少なくなってしまいお尻が荒れてしまったりなど、普段の生活との違いで体調不良になってしまうこともあります。
なるべく子どもが普段の生活に近い状態で過ごせるように、入院前のアセスメントをしっかり行って、細かいことでも伝えるようにしましょう
悠貴先生からのワンポイントアドバイス
お子様によっては、敏感であったり、環境の変化に弱かったりするといきなり宿泊で知らない所に預けられる事に抵抗を持つこともあります。また、ご家族の方が不安で預けられないケースも多いです。そういったハードルがある一方で上手に活用できるとレスパイトやいざ困った時に安心して預けられるメリットも大きいので、ご家庭にあわせて上手に利用できると良いですね。
短期入所の費用
短期入所の費用は施設によって内容や計算が変わります。ただし、多くの場合では短期入所の制度を使うことになるため、他の障害福祉サービスと合算した自己負担上限額までを支払います。その他、食費や個室を利用した場合には個室代がかかる場合もあります。
全体金額の目安としては、1週間以内の場合で0円(自己負担分を他制度で補った場合等)から数千円です。
また、小児慢性疾患の対象の場合は短期入所の受給者証と合わせて利用できる場合があります。
短期入所の利用の流れと手続き
短期入所の利用開始の流れと手続きは大まかに以下の流れです。なお、受給者証や制度前半の手続きに関しては、相談支援専門員や障害福祉課の窓口が相談先となります。施設のルールや施設のことは、施設の窓口に問い合わせましょう。
短期入所には短期入所の受給者証が必要な場合が多いため、まず自治体で手続きをいます。
申請と並行して、短期入所する施設を探しましょう。対象であるかどうかや自宅からの距離などを検討して決めます。自治体で一覧をもらえる場合もあります。
施設の候補を決めたら、連絡して利用申込をしましょう。連絡時に予約や利用可能日数など施設のルールなどを確認してから利用申込をすると、後で思っていたのと違った!とならず、スムーズです。
施設ごとに主治医の診断書が必要であったり、医療型であれば施設の医師の受診が必要であったりと必要な手続きや書類があります。指示に従って、手続きを進めましょう。
施設によって具体的な手続きや利用ルールは異なっているので、おおまかな流れに沿って自治体や施設の案内に従って手続きするようにしましょう。
▼医療型の手続きに関してはこちらでも紹介しています。
▼受給者証についてはこちらで解説しています
現実問題としては、短期入所できる施設がまだまだ足りておらず、施設を十分に選べない地域もあります。レスパイトがしやすいように短期入所も普及していくと良いですね!
短期入所を利用して心身ともにリフレッシュしよう
休みなく続く介護や医療的ケアに疲れている介護者やご家族に知ってほしい短期入所の制度。休息だけでなく冠婚葬祭やきょうだいの行事のような障がい児を連れて行くにはハードルが高い場面でも利用できます。
短期入所にも宿泊を伴うもの(入院)や日帰りと種類があるので、家族のライフスタイルに合った方法でサービスを利用するのがおすすめです。
また、施設によって受け入れている対象児や入院・入所児の過ごし方は異なるので、短期入所先を選ぶ際は「対象かどうか」「空床利用か、常時ベッドが確保されているのか」「子どもの過ごし方はどうか」などを確認しながら、なるべく利用したい条件に合った施設を選びましょう。
筆者はこれからも定期的にレスパイトを利用して家族の心身の健康を保ち、息子との生活の質を上げられたらなと思っています。
\短期入所特集はこちら/
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