在宅で介護や医療的ケアをしている家族が休息をとることを意味する「レスパイトケア」。
家族が心身を休めることで、余裕を持って子どもと関われるようになったり、家族の体調不良防止になったりするメリットがたくさんあります。
そこで今回は、レスパイトケアとは何かやレスパイトケアの種類、レスパイトケアではないものの、利用することで子どもと離れることができるサービスなどを紹介します。
\この記事を監修してくれた先生/
相談支援専門員・看護師 井上悠貴(いのうえゆき)先生
岡山県立倉敷中央高等学校専攻科を卒業。看護師免許を取得し、小児科病棟や保育園に勤務する。現在2児の母であるが、上の息子が3歳の時に発達障害と診断される。その中で相談支援専門員の方にお世話になり、その経験から自身も相談支援専門員の資格を取得。現在相談支援事業所うえまつで相談支援専門員として活動中。
レスパイトケアとは
レスパイトケアとは、在宅で介護や医療的ケアをしている家族や介護者の休息を意味します。
ずっと続く在宅での障がい児の育児やケアは、親や介護者にとって大きな負担になります。その負担を軽減するためにレスパイトケアをして介護や医療的ケアで疲れた時に一時的に休む時間を作ることが可能です。
つまり、レスパイトケアはケアする人のためのケアなのです。
レスパイトケア中は、家でゴロゴロしたり、子どもを連れては行けない場所に出かけたり、自由に自分の時間を使ったりして心身を休めることができます。また、レスパイトケアの期間中にきょうだいと過ごす時間を作ったり、冠婚葬祭の行事に出席したりすることも可能です。
レスパイトケアの歴史・始まった背景
レスパイトケアは、元々は欧米で生まれた考え方です。日本では、1976年の「在宅重度心身障害児(者)緊急保護事業」が始まりとされています。当時は介護者の病気や冠婚葬祭等の行事、妊娠・出産などやむを得ない事由がある際にだけ使える制度としてはじまりましたが、1989年には休養やプライベートな事由での利用も認められるようになりました。
2000年には、宿泊を伴わないいわゆる「日中ショート」が導入され、さらに利用の幅が広がりました。
レスパイトケアの種類
レスパイトケアは「これをしたらレスパイトケア」というものではなく、家庭や家族のスタイルに合ったレスパイトケアの方法を取ります。レスパイトケアとは、具体的に何を指すのか、いくつか種類があるのでここでご紹介します。レスパイトケアを受けられる人(家族)や使い方、費用は制度、サービスによって異なっているので、気になるものがあればより詳しく調べてみてくださいね。
1.短期入所(ショートステイ)
障害福祉サービスの短期入所制度を利用してレスパイトケアを受けることができます。受給日数により最短1日から最大30日まで利用することが可能で、子どもを宿泊させて見守りしてもらう場合には「レスパイト入院」、1日の利用の場合は「日帰りショートステイ(日帰りショート)」と呼ばれることもあります。
短期入所(宿泊を伴うもの・レスパイト入院)
宿泊での短期入所を受け入れている病院や施設へ入院・入所する形で子どもを預けることができます。通常、何泊か宿泊する形で利用することが多くなっています。
入院している間は医師や看護師、介護福祉士など施設のスタッフが子どもの面倒をみてくれるので、その間に親や介護者のレスパイトケアができる仕組みです。
施設機能によって医療型と福祉型、福祉型強化があり、それぞれ提供可能なケアや利用対象者が異なっています。
また、病院や施設の空いている入所・入院用ベッドを使う形(空床利用型)の施設と常時短期入所する人のためのベッドを確保している施設があり、前者の場合では、あくまでも他の入院患者さんがいる中での空きを利用しているので、タイミングによっては利用できない事もあります。後者の場合は、枠が満員にならず、施設に必要性が認められれば利用することができます。
日帰りショートステイ
入院だけでなく、日帰りで子どもを預かってくれる日帰りショートステイもあります。こちらも短期入所の受給者証で利用できます。1日の決まった時間、日帰りショートステイを受け入れている施設で子どもを預かってもらえます。
子どもを預かってもらえる場所はクリニックや專門短期入所施設など様々です。施設によって送迎がある場合もあります。預かってもらえる時間も10時〜16時や11時〜15時など施設によってさまざまです。
日帰りなので入院よりゆっくりできないと思われるかもしれませんが、入退院の手続きがなく、荷物も普段出かける時とあまり変わらない量なので、その点では気軽に利用できます。
筆者が利用している日帰りショートステイは、預かり先はクリニックです。送迎をしてもらえるので、10時〜16時のような決まった時間に利用でき、自宅から施設まで車で送迎して来てくれます。
子どもの面倒をみてくれるのは主に看護師ですが、おもちゃやバウンサーなどを使って楽しく時間を過ごすことができています。
2.自治体独自の支援事業
自治体でレスパイトケアができる事業を独自で行っているケースもあります。
在宅レスパイト
東京都の複数の地区では、自宅で子どもの見守りをしてもらえる在宅レスパイト事業を行っています。
自治体によって異なる場合もありますが、利用時間は1日2〜4時間で、市区町村によって違いますが年間96時間または144時間まで制度を利用できます。
子どもの面倒をみてくれるのは看護師です。対象者は重症心身障害児等を在宅介護していて、かつ訪問看護サービスを利用している家族や介護者となっています。
訪問看護サービスを利用していても、その訪問看護ステーションが在宅レスパイトを利用できなければサービスを受けられないので注意が必要です。
訪問看護ステーションによって土日対応していないことや人気のため予約を1ヵ月前にとっていることがあります。
子どもを自宅でみてくれている間は外出も可能なので、自分の時間を楽しむことができます。
3.シッター
医療的ケアがない子どもの場合は、シッターも利用できます。ただ、障がいや疾患がある場合は、元病棟保育士のような、病院等で経験のあるシッターを選ぶ必要があります。
マッチング型(サイト等を使って自身で直接シッターとやりとりするタイプ)のシッターサービスでは、プロフィールをみて依頼打診ができるため、条件に合う人を選んでみるのもおすすめです。
4.日中一時支援
宿泊を伴わず、数時間単位で子どもを預けられる「日中一時支援」というサービスもあります。こちらは日帰りショートと似ていますが制度としては異なるため、短期入所の受給者証では利用できません。利用したい施設が「日中一時支援」の制度を使って子どもを預かるところなのか、「日帰りショート(短期入所)」の制度を使って子どもを預かるところなのか確認しておきましょう。
利用するには、市区町村の担当課にて「日中一時支援」の利用申し込みが必要です。
各自治体で利用限度や金額などが異なるため、担当課への申込の際に確認しておくと安心です。
レスパイトケアではないが子どもから離れられるサービス
レスパイトケアが目的とはされていませんが、一時的に用事を済ませたり、サポートしてもらえるサービスもあります。
1.居宅介護
障がい児が利用できる障害福祉サービスとして居宅介護があります。
訪問介護事業所のヘルパーさんが、入浴・食事介助、通院時の付き添いなどを行ってくれます。また、身体介助だけでなく、家事援助支援として医療的ケア関連物品の洗浄、入浴に関わる準備・片付け、子どもが使用している部屋の清掃などのサポートもお願いすることが可能です。また夜間に子どもを見守ってくれるサービスもあります。
利用する際のポイントは、障がい児本人に関わるものに限定される支援であることです。
夜間見守ってもらえることで睡眠時間を確保できたり、家事援助支援をしてもらうことで家事の負担を減らしたりしてレスパイトケアを受けることができます。
なお、訪問介護事業所によって提供しているサービス内容や費用は異なります。希望するサービスを提供しているかどうかや対応できるかどうかは、訪問介護事業所へ確認しましょう。
▼居宅介護(ホームヘルプ)についてはこちらの記事で詳しく解説しています
2.移動支援事業
移動支援事業も、障がい児が利用できる障害福祉サービスの1つです。年齢制限はありません。
屋外での移動が困難な障がい児に対し、外出のための支援を行い、地域での自立生活や社会参加を促進します。
お散歩や公園、買い物、動物園など社会参加のために必要とされる場所にヘルパーさんと一緒に出かけることができます。ただし、通勤・通学や政治活動など一部外出先が制限されることがありますので注意が必要です。
目的は子どもの社会参加ですが、出かけている間、親や介護者は休息をとることができます。
3.訪問看護
訪問看護が必要な子どもの場合、訪問看護を利用している間に休息をとることもできます。家庭によって訪問看護師が訪問する頻度は違いますが、例えば1週間のうち6日間、1回2時間、訪問看護をお願いすることができます。
看護師が訪問してくれている間に、子どもから離れて外食をしたり、買い物をしたりすることも可能です。
目的は子どもの看護ですが、看護師が子どもを見てくれている間、親や介護者は休息をとることができます。また、事業所によっては子どもの入浴をお願いできる場合もあります。
▼訪問看護についての詳細はこちらをチェック!
4.児童発達支援や放課後等デイサービスへの通所
児童発達支援や放課後等デイサービスを利用している間も、親は休息をとることができる場合があります。親子分離のものに限りますが、子どもが専門家にみてもらっている間に自分の時間をつくることができます。
▼児童発達支援についての詳細はこちらをチェック!
5. フリースクール
フリースクールは不登校などを理由に学校に行きにくい子どものための学校に変わる場所です。個人経営の場所もあれば、ボランティア団体やNPO法人が運営していることもあります。基本的には民間の教育機関のため、費用やフリースクールで提供している内容もさまざまです。
子どもにとって学校の環境がしんどい場合は、フリースクールを利用することで親だけでなく、子どものレスパイトケアにもなります。施設にはよるものの、障がいや疾患がある子どもも利用できるフリースクールもあります。
レスパイトケアで日頃の疲れをとろう
レスパイトケアにも種類があるので、自分たちのライフスタイルに合った方法でレスパイトケアできる時間を作りましょう。
レスパイトケアを目的としたものではなくても、子どもと離れる時間を作れる方法もあるので、活用しながら自分の時間を作り心身ともにリフレッシュしてくださいね。
相談支援専門員・看護師 井上悠貴(いのうえゆき)先生からのひとこと
障がいを抱える子どもの子育ては、大変な事が多いです。私も無理をして倒れた事がありました。保育者の心身の休息は、積極的にとっていく必要があると感じています。一人で抱え込まずにレスパイトを使ってしっかり休息をとってください 。
▼この記事は以下のサイトを参照して作成しました。
・東京都在宅レスパイトについて【一例】(※市区町村ごとに詳細が異なります)
重症心身障害児(者)及び医療的ケア児在宅レスパイト事業|東京都府中市
URL:https://www.city.fuchu.tokyo.jp/kenko/shogai/shogainoarukata/jyushinrespite.html
重症心身障害児(者)在宅レスパイト支援事業|東京都江東区
URL:https://www.city.koto.lg.jp/222030/fukushi/shogaisha/service/nichijo/resupait.html
・地域における短期入所(ショートステイ)の 利用体制の構築に関する調査について報告書|独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園
\短期入所特集はこちら/
コメント