この記事を読んでいる読者のみなさんは、障がいや疾患のある子どもの育児や医療的ケアで疲れがたまっていませんか?
そんなみなさんに知ってほしいのが、病院での短期入所です。今回の記事では、病院(医療型・空床利用型施設)での短期入所とはどんなものなのか、実際に病院の短期入所を利用している筆者が、対象者や利用の流れ、費用などを紹介します。
\この記事を監修してくれた先生/
相談支援専門員・看護師 井上悠貴(いのうえゆき)先生
岡山県立倉敷中央高等学校専攻科を卒業。看護師免許を取得し、小児科病棟や保育園に勤務する。現在2児の母であるが、上の息子が3歳の時に発達障害と診断される。その中で相談支援専門員の方にお世話になり、その経験から自身も相談支援専門員の資格を取得。現在相談支援事業所うえまつで相談支援専門員として活動中。
病院での短期入所とは?
短期入所とは、日々育児や介護をする親のレスパイトケアのために介助やケアが必要な子どもを対象施設へ入院の形で預かってもらえる事業・サービスです。短期入所できる施設は短期入所施設や病院など様々あり、今回は病院での短期入所を紹介します。
レスパイトケアとは?
在宅で介護や医療的ケアを受けている家族や介護者の休息を意味し、介護や医療的ケアで疲れた時に一時的に休める時間を作ることです。
病院への短期入所の場合、病院へ2泊3日や3泊4日、1ヶ月単位などあらかじめ定めた一定の期間で入院します。病院に宿泊をして預かってもらうため、「レスパイト入院」と呼ぶこともありますが、子どもの体調不良の時に利用するものではありません。
短期入所には種類があり、以下のような分類になっています。今回の記事では医療型かつ空床利用型の病院での短期入所を紹介します。空床利用型は、併設型(他の入所サービスを一緒におこなっている施設)の際にベッド(入院枠)が短期入所用としては確保されておらず、空きがあれば利用できるタイプです。
併設型 | 他の入所サービスを行っている施設がレスパイト事業として短期入所も行っているタイプ |
単独型 | 他のサービスは行っていない短期入所専門の施設のタイプ |
医療型 | 遷延性重度意識障害児・者や重症心身障害児・者が対象の施設 |
福祉型特化 | 医療的ケアが必要な人も利用できる施設 |
福祉型 | 医療的ケアが特段必要ない人が利用できる施設 |
病院へ短期入所をする際に子どもの介助やお世話をしてくれるのは看護師や医師です。
病院へ短期入所をする場合は、多くのケースが空床利用型になっており、空いている入所・入院用ベッドを使って子どもだけを入所させます。また、制度や費用に関しては、病院への短期入所の場合、主に医療型短期入所の制度を利用することが多くなっています。
病院の短期入所はいつでも使える?
病院への短期入所の場合、利用したい病院の混み具合によって、短期入所を利用できるかが変わってきます。つまり、病気の入院患者で満床の場合は、短期入所用のベッドを確保できないため利用できないということです。
筆者は既に3回短期入所に病院を利用しましたが、今まで満床だったことはありません。しかし、満床の可能性ももちろんあるので、1ヶ月前までに病院へ希望日を提出し、1週間前までに短期入所できるかどうかの結果がくるようになっています。
短期入所できる病院
短期入所は短期入所の事業・サービスを提供している病院のみで利用できます。短期入所の事業・サービスを提供していない病院も多いため、注意しましょう。
短期入所を受け付けている病院の一覧は市区町村の役所でもらうことができます。市区町村によっては、ホームページで公開している情報から確認することも可能です。
市区町村の情報によって、対応している障がいや介助が詳しく書いてある自治体もあれば、医療型短期入所の専門施設しか情報がない場合もあります。
短期入所が利用できる対象者
短期入所の利用対象者は、在宅で生活している介助が必要な重症心身障害児や医療的ケアのある子どもです。「障害福祉サービスの受給者証を持っていて、短期入所が支給決定されている方」が条件になることも多いですが、実際の対象者や対象になるかどうかの判断は各施設の基準によって定められています。
具体的な対象者の条件の一例
・気管切開を伴う人工呼吸器をつけている人
・進行性筋萎縮症の人
・重症心身障害児・者
利用する施設や医療機関毎にルール等があるため、短期入所をしたい施設に自分の家庭状況の場合は条件を満たしているかどうか確認しましょう。また、必要に応じて自治体でも情報提供を行っています。障害福祉サービスの短期入所や受給者証等の制度の話に関しては、福祉相談員や自治体に確認しましょう。
また、短期入所は、子どもの体調や症状が安定している場合に限り、利用できます。
病院の短期入所が利用できる宿泊数・頻度
短期入所が利用できる宿泊数や頻度は病院が定めているルールによって異なります。
私が利用している病院のルールでは、1回4泊5日まで、年に5回まで短期入所が可能です。「年に5回」の対象期間は、4月1日から3月31日までの1年間です。
1ヶ所の病院でしか短期入所をしたことがないので他の病院のルールはわかりませんが、宿泊数の上限が1週間や2週間のところもあるようです。
ただし、障害福祉サービスの受給者証で支給されている日数以上は入院することはできないので注意が必要です。
病院での短期入所の流れ・利用方法
病院の短期入所の流れを初回の手続き時から説明します。
短期入所を初めて利用するまでの手続き
1.「短期入所」の支給決定を自治体から受ける
自治体に「短期入所」の利用申請を行い、支給決定を受け、障害福祉サービスの受給者証を発行してもらいます。障害福祉サービスの受給者証は、障がいのある子ども一人ひとりの障がいの度合いや状況をふまえて交付されますので、希望通りにならないこともあるため注意が必要です。
病院によっては、受給者証を使わずに、ルールに基づいて健康保険を使う場合もあります。
2.かかりつけ病院の医師に診療情報提供書をもらう
かかりつけの病院の医師に診療情報提供書をもらいましょう。障がいや疾患のある子どもの心身の状態を入所先の病院と共有することで、安心して短期入所ができます。なお、利用する施設によって提出が必須の場合、必須ではない場合があります。
3.入所先で診察を受けて入院の可否を判断してもらう
実際に入所先の病院に行って診療情報提供書を提出し、診察を受けることで、入所先の病院で入院の可否を判断してもらいます。
短期入所は治療ではなく、あくまで家族や介護者の休息を目的とした入院なので、子どもの症状が安定している必要があります。診察で症状が安定していることを確認してもらいましょう。
利用の流れ
筆者が利用している病院での、利用の流れを紹介します。
これは病院のルールによりますが、筆者や利用している病院では、1ヶ月前までに短期入所の希望日を郵送するようになっています。
本当は実際に病院に行って希望日を伝えなければいけないようですが、自宅からすぐに行ける距離にある病院ではないので、郵送でのやり取りにさせてもらっています。
病院によっては、1週間前までに希望入院日程を伝えればよい場合もあるようです。
必要な荷物を持って入院します。持ち物の詳細は後述しますが、筆者が利用している病院では、洋服や栄養剤、在宅用の人工呼吸器の回路と加湿器などを持ってくるように指示されています。なお、初回からアセスメントをして子どものみ宿泊の場合もあれば、病院によっては初回は親子同伴が必要な施設などもあります。
まずは受付をして、診察をし、症状が安定していることを確認したら病棟へ行きます。
筆者が短期入所に利用している病院では、感染症対策のため、病棟に入れる大人は1人と決まっているので1人が付き添い、病室で荷ほどきをします。
その後、看護師や医師と薬や注入の確認や、前に短期入所したときと変わったことはないかの確認、書類にサイン、お薬手帳の提出などをして入院となります。
そして最後に入院手続きカウンターで入院の事務的な手続きをします。書類を書いたり小児慢性特定疾病の受給者証を提出したりして、入院の準備は終了です。
いつも少し名残惜しく、バイバイするときは寂しい気持ちになり、何度も「バイバイ」と言っては戻ってくるという行動をしてしまいますが、「次会う時は元気に再会しようね」と約束をしてバイバイするようにしています。
退院のとき
私物や預けているものを片付ける
病棟に行き、退院の準備をします。ベッドサイドの引き出しやベッドの上に置いてある私物をすべてトランクやバッグに入れ、病院側で預かってもらっていた薬類や注入の栄養剤の余りなども忘れずに受け取ります。
会計を待つ
筆者が利用している短期入所の病院では、荷物の片付けが終わってもお会計が終わるまで病棟で待つよう指示されるので、準備万端の状態でお会計を待ちます。
会計をする
お会計が出たら、病棟を出てお会計をしてお家に帰ります。
病院での短期入所の持ち物
筆者が利用している病院での短期入所中に使用する持ち物は、以下の通りです。
病院によって持ち物は違うと思うので事前に確認しましょう。
息子の情報
病名:先天性ミオパチー
年齢:1歳3ヶ月
必要な医療的ケア:人工呼吸器、吸引、経管栄養(EDチューブ)
医療的ケアに必要なもの
- 人工呼吸器
- 在宅用の人工呼吸器の回路と加湿器
- 栄養剤(ツインライン)×日数分+2個ほど(こぼした時用)
- 薬類
- カニューレバンド
- アンビューバッグ
- カニューレ
お世話に必要なもの
- オムツ1セット
- お尻ふきシート
- 洋服×日数分+2着ほど(汚れた時用)
- おもちゃ
- ガーゼハンカチ
- バスタオル2〜3枚
- ハンドタオル2〜3枚
注入用のポンプやパック、人工呼吸器の加湿器用の水、サチュレーションモニターなどは病院が用意してくれるので持っていきません。
息子が短期入所するときは、お気に入りのおもちゃを2〜3個持っていくようにしています。
子ども7人に対して1人という配置の看護師は忙しいので実際に遊んでくれているかはわかりませんが、保育士が配置されている場合があるのでいつも用意しています。
病院での短期入所の費用
短期入所にかかる費用は、入院費の他に食費などがあり、病院が定めています。費用は、健康保険や障害福祉サービスの制度を利用し、自己負担分が発生する場合は自己負担分を支払うことになっているようです。詳しい計算や利用できる制度は病院によって異なります。
利用する制度やサービスは、障害福祉サービスの受給者証の短期入所を利用する事が比較的多いようですが、小児慢性特定疾病の受給者証や健康保険を使う場合もあります。病院によってルールが異なり、基本的には定められている方法に従う形になります。
こちらも病院毎にやり方があるため、短期入所する候補を決める際に費用も合わせて確認しましょう
小児慢性特定疾病の受給者証がある我が子の場合は、月の自己負担上限額が500円と決まっています。短期入所を利用する月はその他医療機関や施設利用時に、先に500円を支払っていることが多く、毎回病院での短期入所の自己負担額は0円です。
ただし、個室の利用や食事の提供があった場合は、その分の実費が発生します。
▼受給者証についてはこちらの記事で詳しく解説しています
▼小児慢性特定疾病についてはこちらの記事で詳しく解説しています
病院での短期入所で休息する時間をつくろう
病院の空いているベッドを使用して入院する病院での短期入所。あくまで「病院」なので、遊んでもらえることが少ない場合もありますが、医師や看護師がついているので安心して預けられます。
予約の取り方や入院の期間、頻度、持ち物などは病院によって違うので事前に確認しておきましょう。
近くに短期入所制度を取り入れている病院があるかどうかは調べる必要がありますが、毎日続く育児や医療的ケアで疲れがたまっているご家族や介護者は、病院の短期入所を利用してリフレッシュしてほしいなと思います。
参考資料
書籍「図解でわかる障害児・難病児サービス」
▼短期入所特集はこちら!
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