ファミケア相談Q&Aアプリで解決!>> 無料で使う

ヨーゼフの海外障がい児子育て奮闘記#3「STで断られる!?息子に訪れた言語の壁」

  • URLをコピーしました!

こんにちは、ヨーゼフです。この連載「ヨーゼフの海外障がい児子育て奮闘記」では、私が海外で障がいのある子どもを育てた経験から日本と海外の環境の違いや実際に体験してみて感じたこと、おどろいたことなどをご紹介しています。

日本と違う発見やさまざまなカタチの子育てをみなさんにお届けできたら嬉しいです。

今回は「アメリカの小児リハビリ事情について#2」。第二弾では、「STで断られる!?息子に訪れた言語の壁」をテーマにご紹介します。

前回の記事:ヨーゼフの海外障がい児子育て奮闘記#2「日本とアメリカの小児リハビリ、同じことと違うこと

目次

言語聴覚に関する訓練を断られる

息子には先天性の難聴があり、生後6ヵ月から補聴器を使用しています。そのため、できるだけ早い段階から言語聴覚に関する訓練を開始するよう、病院から指示を受けており、私も「少しでも早く息子の訓練を開始したい」と思い、言語聴覚専門の療育施設へ行きました。

後ろから音楽を鳴らしたり、様々な音量・色々な種類の音を聞かせたりして、息子の難聴の度合いを調べてくれました。しかしその後伝えられたのは、予想外の言葉でした。

「ここでは息子さんの言語聴覚の訓練を提供することはできません。」

理由はとても単純なものでした。

言語の壁です。

言語の類似性は国の距離に比例すると言われています。例えば日本語と中国語は似ていますが、日本語と英語は似ていません。

言語の類似性についての図解

アメリカで二番目に多く使われているのはスペイン語と言われており、スペイン語を母語としているのであれば診ることができますが、日本語は英語とかけ離れているため、指導が困難とのことでした。

書き手ヨーゼフ

まだまだ本格的な言語の訓練は先だし、喃語が出るくらいまでは診てくれてもいいのにな…

という気持ちもありましたが、無理だと断言された以上、何も言うことができずに帰宅したのでした。

手元には聴力検査の結果の資料などがありましたが、当時の私はその資料の見方すらわからず、誰に頼れば良いのかもわからなくなり、先の見えない状態に陥ってしまい、どん底に突き落とされたような気分になりました。

どん底から這い上がれない日々と、ちらつく海外生活の切り上げ・本帰国

このまま引き下がるわけにもいかなかったので、オンラインで息子に訓練してもらえる日本のSTをインターネットで探しました。現在では少しずつオンラインで相談や訓練をしてくれるSTが増えてきていますが、4年前の当時は私が調べる限りでは見つかりませんでした。

書き手ヨーゼフ

少しでも早く息子に言語聴覚の訓練を受けさせたい

相談に乗ってくれそうな施設を見つけては、とにかくメールや問い合わせをし続ける日が続きました。しかし返信すらないことも多く、「STが見つからなければ息子の成長のためにも本帰国も検討しなければならない」という考えも出始めていました。

どん底から救ってくれたのは日本のSTだった

それでも「できるだけアメリカにいたい!」という気持ちを諦めきれず、検索ワードを変えて探し続けていく中で、あるSTの先生が開いている相談室を見つけました。施設での訓練がメインな中「オンラインプログラムも開催」という表記。

思わず飛び上がりそうになる気持ちを抑えながら、今とても困っていること・どうしても助けてほしいという熱い気持ちを長文にしたため、送信。「また無視されるかもしれない」という不安と「どうか前向きな返事が来てほしい」という希望を持ちながら、返信を待ちました。

すると、なんとその日のうちに先生から返信が!そこには「乳児への指導、オンラインサービスは公開したばかりで未経験」ということ、「アメリカで訓練してくれるセラピストを探してみる」こと、そして「もしセラピストが見つからなければ、できる範囲でお手伝いする」ということが書かれていました。思わず私は飛び上がりそうになりました(二度目)。

その後すぐにお礼の国際電話をかけたのですが、これまでの経緯を丁寧に聞いてくださり、聴力検査の内容についても、とても細かく解説してくださいました。相談したり解説を聞いているうちに、自分の中で固くなっていた暗黒の闇がどんどんと溶けていき、軽くなっていくような気がしました。

結局先生とは1時間以上電話をしてしまいましたが、3年以上経った今でもこの日のことは鮮明に覚えていますし、一生忘れることのない出来事になりました。先生の優しさに、電話中何度涙を流したことか(今書きながら思い出してまた泣いています…)。

日本にいるSTとのオンラインセッションがスタート

それから本帰国までの隔週日曜日の夜(時差があるので先生は日曜の朝)、オンラインセッションが行われました。先生から息子に対する「訓練」というより、息子の様子を診ていただきながらアドバイスを頂いたり、現地での診断や検査結果の解説、日常の聴こえに関する悩み相談などが中心の「セッション」を行いました。

「訓練」ではなく「セッション」に時間を割いたことが財産に

当初私たちが求めていたものは、息子に発話の方法や言葉の指導をする「訓練」でした。しかしそれは当時1歳だった息子にとってはなかなか困難でした。

1歳の場合、その日のコンディションや機嫌などにより、対面でも訓練は困難な事が少なくありません。それに加えて私たちの場合、オンライン形式であったり、また時差の壁もあり、訓練が上手くいかない事が多くありました。

書き手ヨーゼフ

せっかく前向きにご指導頂けるSTの先生と巡り会えたのだから、何か良いご指導の受け方はないだろうか?

そう思い先生と話し合った結果、訓練を早めに切り上げ、残りの時間を私たち家族と先生がコミュニケーションを取る時間に充てることにしました。

その時間は、日常において私たちが息子の言語聴覚や補聴器に関して困っていること、アメリカの医師やオーディオロジスト(聴覚士のこと。詳しくは前回のコラム参照)による診断や指示を先生にお伝えし、解説していただいたりしていました。

この訓練+コミュニケーションの時間を、私たちは「セッション」と呼ぶようになりました。

この「セッション」という形になったことは、結果的に私たちにとって大きな財産となりました。

この記事を読んでくださっている方の中には、ご家族がセラピストさんにお世話になっている方もいらっしゃると思いますが、そのセラピストさんと疑問が解決するまでとことん相談に乗ってもらう機会って、なかなかないと思います。私たちは、その貴重な機会を多く設けて頂くことができました。この経験は、難聴児である息子を育てる私の大きな支えとなっています。

子どもに聴こえの障がいがあっても、言語の壁があっても、海外で障がい児育児はできる!

一度は言語の壁によって挫折しそうになった海外障がい児育児ですが、日本のSTの先生との出会いによって何とか乗り切ることができました。

障がいの中でも特に聴覚障がいのある方のご家族は、海外で育児をするなんて想像がつかないかもしれません。

特に日本語は日本でしか使わない言語です。海外で日本語を学べる場として、日本人学校・日本語補習校などはありますが、訓練が必要な家族がいると、海外生活で言語発達の遅れを取るのが心配になる方もいると思います。

海外生活が選択肢の一つとして浮上した時「ただでさえ海外生活は大変なのに、聴覚障がい児を連れて行くなんて…」と思うかもしれません。私も海外生活を経験していなければ、同じ気持ちだったと思います。

しかし3年間聴覚障がい児を海外で育てた経験のある母親として、もしチャンスがあるのならばぜひ海外生活に挑戦してみてほしいです。

確かに母語(日本語)が溢れた生活ではないですし、日本語を専門としたSTもほとんどいません。しかし、海外でできる経験は日本ではできないことばかりです。

文化、行事、訓練、医療…全てが日本と異なる海外での経験で得られるものは、たとえ言葉の壁があったとしても、障がい児本人とご家族にとって、困難を上回る大きな財産となるでしょう!

「アメリカの小児リハビリ事情について」はこのコラムを含めて、3回にわたってお届けしています。

次回は小児リハビリ事情シリーズの最終回、「アメリカの小児リハビリにおける医師とセラピスト」です。

▼内容はこちら▼

  • アメリカの医師免許は取得以上に維持がものすごく大変で、常に勉強をし続けているため、安心して頼ることができる
  • アメリカではPTになるまでの道のりがとても長い。その分、深く・広く知識と技術を持っていて、訓練を受ける子どもの親としてはとても心強い

どうぞお楽しみに!


ファミケアの掲載記事およびコラムに関しては、当事者および専門家によって作成しておりますが、全ての方に当てはまる情報ではございません。投稿された情報の利用により生じた損害について、ファミケア運営元では責任を負いかねますので、あくまでもご家庭での判断のもと参考情報としてご利用ください。また、特定の施設や商品、サービスの利用を推奨するものではありません。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よろしければシェアおねがいします!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

2014年生まれの女の子と2019年生まれの重複障害(下肢3級,聴覚6級)の男の子のママです。アメリカで妊娠・出産と障がい児育児を経験。お仕事はフリーランスのWebデザイナー。

コメント

コメントする

※コメントは運営の承認後、表示されます
※コメント欄は現在一時的に公開しております。状況によってはコメント欄を停止する場合がございます。ご了承ください。

目次